静寂で落ち着いた雰囲気の紀泉アルプス縦走
5月12日午後22時・・・
ゴールデンウィークで忙しかった若宮朱莉もようやく落ち着いて、ベッドに横たわりながら天音琴美とSNS通話を繋いでいた。
天音琴美「あたし、今月は24日と25日がオフにしたんだけど、そのどちらかの日に白山に行けないかな?」
若宮朱莉「涼真さんの話だとまずアプローチまで行って一泊して、その次の日に白山に登る予定にしているようです」
天音琴美「そうなると24日にアプローチまで行って25日に白山に登るのはどうかな?」
若宮朱莉「わたしはそれで構わないと思いますが、ただその場合ですと23日の夜か24日の朝一で大阪まで来てもらわないいけません」
天音琴美「朝から出発ってことね。23日のお仕事は夕方に終わるからそのまま新幹線に乗って大阪入りすることは可能だよ」
若宮朱莉「それと25日はもう遅くなっちゃいますので東京へは戻れませんが、26日に東京へ戻ることは可能でしょうか?」
天音琴美「26日は午後からCM撮影だから、朝一に東京に戻れば間に合うと思う」
若宮朱莉「それではそのことを涼真さんに伝えておきますね」
天音琴美「あたし、絶対に白山には行きたいからよろしくお願いしますと伝えておいて!」
この通話を終えた後、若宮朱莉は水城涼真の部屋に行って今回の天音琴美の予定について説明した。
水城涼真「それやったら24日の朝出発、市ノ瀬の旅館で一泊して次の日の25日に白山へ登る予定でいこか」
若宮朱莉「わかった。その予定で行くって天音さんにも伝えておくね」
水城涼真「旅館は俺が予約しとくわ。それは別として今週末の17日土曜日ってたしか朱莉ちゃん空いてたよな?」
若宮朱莉「17日の土曜日はオフだけど、どこか行くの?」
水城涼真「いや、まだ何も決まってないんやけど、朱莉ちゃんはどっか行きたい山とかある?」
若宮朱莉「うーん・・・山情報を調べていて行ってみたいって思ったのは大阪の海が見える紀泉アルプスかな」
水城涼真「紀泉アルプスか、あそこは静寂で落ち着いた雰囲気の山域やから朱莉ちゃん好みではあると思うんやけど、紀泉アルプスのどの山に登りたいとかってないん?」
若宮朱莉「特定の山はないんだけど、紀泉アルプスを歩いてみたいって感じかな」
水城涼真「じゃあ紀泉アルプスの縦走でもしてみよか。時間ずらして最後は関空と明石海峡大橋の夜景を見て帰るって計画でどない?」
若宮朱莉「それいい!紀泉アルプスの縦走しようよ!!」
水城涼真「今回は縦走やから電車になるけどそれでもええ?」
若宮朱莉「別にいいよ」
そういうことで5月17日の土曜日は紀泉アルプスの縦走をすることになった。低山の縦走でありながらアップダウンが多くて累積標高差も1650m程、距離にして約22kmの工程になっているので初心者向けではないかもしれない。
5月17日午前5時・・・
目覚まし時計が鳴って起床した水城涼真と若宮朱莉は目覚めのコーヒーを飲みながら和歌山県和歌山市付近の天気をチェックしていた。降水確率は20%だが曇り時々晴れ、最高気温は24度と少し暖かい。コーヒーを飲み終えた2人は早速登山準備をして吹田駅へと歩いていった。吹田駅から電車で大阪駅まで行くと、今度は地下鉄御堂筋線に乗り換えて難波駅まで向かった。難波駅からは南海電鉄本線の和歌山行きに乗った。
若宮朱莉「涼真さん、到着予定が午前9時だけど日没は午後18時55分になってるよ。そんなに歩くの?」
水城涼真「たしかに距離は22km程やけど、その分途中でまったり休憩する予定やから夜景スポットに到着する頃には夕景が見れるはずや」
若宮朱莉「そうなんだ。今日のお昼は決まってたよね?」
水城涼真「お昼は手軽な鍋焼きうどんにしようと思ってるけど、途中で腹減ってきたら行動食でも食べといて」
若宮朱莉「それにしても南海電車ってはじめて乗ったけど、今はガラガラだよね」
水城涼真「朝早いからやと思うわ。それより若宮朱莉ってバレんようにせなあかんで」
若宮朱莉「今は大丈夫だよ。こんな時間にこんな電車に乗ってるなんて誰も思わないんじゃないかな」
そんな話をしながら和歌山方面に向かって電車は走っていった。
午前9時・・・南海電鉄・孝子駅
目的の駅である南海電鉄・孝子駅に到着した時は午前9時を少し過ぎていた。紀泉アルプスの縦走をする人は手前のみさき公園駅で降りるのであるが、今回は水城涼真がまだ歩いたことのない孝子駅からのルートを選んだ。駅を出た2人はまずすぐ横にある踏切を渡って分岐点で高仙寺のほうへ歩いていった。高仙寺山門には2つの仁王門があり、その山門をくぐりぬけて本堂で登山祈願のお参りをした。水城涼真はあまり神やら宗教などを信じていないのだが、気持ちとしてお参りしている。本堂から少し戻ったところに高野山への方向を示した道標があり、そこから入山してまずは高野山の山頂を目指していく。そこからいきなりの急登であったが15分程で高野山の山頂(標高285m)に到着した。
水城涼真「いきなりの急登でちょっと疲れたと思うからここで息を整えよか」
若宮朱莉「高野山の山頂って看板があるだけで樹林帯の中なんだね」
息を整えた2人は高野山の山頂からさらに登りはじめたが、登山道はシダ植物が多くて踏み跡がわかりにくかった。藪漕ぎまではいかないが、草木をかけ分けながらどんどん登っていった。その地帯を通過すると今度は反射板が現れた。その付近に札立山への道標があったのだが、まずは泉南飯盛山の山頂を目指して登っていった。
午前10時30分・・・泉南飯盛山(標高384m)
反射板からひたすら登り続けて、ついに泉南飯盛山の山頂(標高384m)に到着した。この山頂には三角点と展望デッキ、ベンチが設置されている広いスペースがあり、展望デッキからは大阪湾を真下に見下ろせて、その向こう側には淡路島まで望むことができる。
若宮朱莉「本当に静寂で落ち着いた大阪湾が見えるんだね。淡路島までちゃんと見えてるよ」
水城涼真「俺はこの静寂で落ち着いた雰囲気のこの山域が好きなんよ」
若宮朱莉「わたしもこの雰囲気は大好き!なんだか淋しい感じがするけど、それがまたいいんだよね」
水城涼真「朱莉ちゃん、ここで少し休憩しよ」
若宮朱莉はずっと景色を眺めながら思いふけっている感じがしていたのだが、水城涼真はベンチに横たわりながら寝そべっていた。この付近は人気があるものの、今はまだ登山者が少ないので非日常感を十分に満喫できたといえる。
若宮朱莉「涼真さん、山で寝ちゃまずいよ。起きて!」
水城涼真「あーあんまり気持ち良かったからうとうとしてたわ」
若宮朱莉「十分に休憩したから次の目的地に向かおう」
水城涼真「せやな。じゃあ行こか」
そのまま2人は泉南飯盛山を後にして登山道を少し戻ると孝子分岐で札立山のほうへ向かっていった。しばらくはなだらかな登山道が続いていたのだが、途中から関電道特有の黒いゴムの階段の登りとなった。この登りはあまりしんどいものでもなかった。途中で視界が開けた場所があったが、何の山が見えているかわからなかった。
11時30分・・・札立山(標高349m)
こまめなアップダウンがあったが泉南飯盛山から歩いて1時間程で札立山の山頂(標高349m)に到着した。この山頂は樹林に囲まれており、山頂看板とベンチ、三角点がポツンと設置されているだけで何もなかった。いわゆる縦走路にあるピークの一部的な扱いであろう。ここでは若宮朱莉が一応記念撮影をしただけで、次なる目的地へと向かっていくことになった。
水城涼真「朱莉ちゃんって山頂で必ず記念撮影してるけど、ブログはする気ないん?」
若宮朱莉「ブログしたいんだけど、なかなか作る時間がないというか・・・」
水城涼真「まあ今さらって感じもするしな」
若宮朱莉「オフィシャルブログはあるんだよ。でも、何を投稿していいのかわからないの」
そんな話をしながら歩いていると樹林の間から和歌山市内が見えるポイントがあった。そこにはテーブルとベンチが設置されていたので休憩とした。
若宮朱莉「あれが和歌山市内なんだ。中央に流れる紀の川がまたいい感じだよね」
水城涼真「それを直下に見れる夜景スポットを俺は発見したんよ。まあ今日はそこに行かんけどな」
若宮朱莉「和歌山市内の夜景か。ちょっとイメージできないけど綺麗なんだろうね」
水城涼真「一度、アウトドアウォーカーの雑誌に載せたことあるし、写真だけでも伝わると思うわ」
若宮朱莉「その写真、家に帰ったら見せてね」
水城涼真「朱莉ちゃんは和歌山県に仕事に行くことはないん?」
若宮朱莉「今のところはなかったよ。大阪に引っ越したから行く機会があるかもしれないけどね」
そんな話をしていると時刻は正午にさしかかっていたので、休憩を終えて先に進んでいくことにした。
12時40分・・・大福山(標高427m)
そこからしばらくはこまめなアップダウンが続く登山道になっていた。次の目的地である大福山までは結構な距離があり、縦走している2人も少し長く感じていた。途中に展望が開けた場所があったが、それをスルーしてひたすら歩き続けた。そして時刻12時40分前、ついに大福山の山頂(標高427m)に到着した。この大福山の山頂は非常に広く、山頂表記がされている木柱や石柱、テーブルやベンチが設置されており登山者も数名いた。
水城涼真「ここで昼食したいんやけど、先に俎石山をピークハントしとこか」
若宮朱莉「俎石山ってこの奥だったっけ?」
水城涼真「そうなんやけど、あそこから見る海も結構ええからな」
若宮朱莉「それじゃあ先に俎石山をピークハントしよう」
大福山で休憩せずに北の俎石山へピークハントすることになった。こまめなアップダウンはあるものの基本は平坦な登山道が続いた。そして大福山から20分程歩いて俎石山の山頂(標高419m)に到着した。この山頂は山頂表記がされている木柱と一つのベンチ、三角点が設置されているだけで何もなかったのだが、そのすぐ西に進んだ北展望台からは南大阪の落ち着いた雰囲気の海と関西国際空港を望むことができた。
若宮朱莉「りんくうタウンが見えるとちょっと賑やかになる感じだけど、大阪湾の南側ってやっぱり静寂で落ち着いた雰囲気の海なんだね」
水城涼真「この縦走もだんだん都会へと近いづいていってるからな」
若宮朱莉「関東だとこういう紀泉アルプスみたいなところってないと思う」
水城涼真「まあこれと同じようなところはあれへんかもな。関東平野は基本が平地になってるから」
景色を眺めて満足した2人は急いで大福山へと戻っていった。大福山に戻った頃には既に時刻が13時30分になっており、登山者も少なくなっていた。ベンチに座ってザックの中からガスバーナーと大きめの鍋を取りだした水城涼真は簡単な鍋焼きうどんを作りはじめた。うどんは3玉でざく切りしておいた鶏肉と白菜を入れて最後に生卵を2個落として鍋の蓋をしめて温めた。そうして鍋焼きうどんを作ってると40代前半くらいの女性登山者2名が話しかけてきた。
女性登山者A「もしかして、タレントの若宮朱莉さんじゃないですか?」
若宮朱莉「はい、そうです」
女性登山者B「うわ、本当にあかりんだった!?」
女性登山者A「似ている人がいると思ってたんやけど、やっぱり本人だったんやね。今日は大福山の登山ですか?」
若宮朱莉「いえ、泉南飯盛山から紀泉アルプスの縦走をしております」
女性登山者B「ええーわたしらもう大福山だけでお腹一杯やのに、縦走してはるんですか!?」
女性登山者A「やっぱ若いだけあるなあ。今日はどこまで行かれるんですか?」
若宮朱莉「今日は雲仙峰から山中渓駅まで歩いていく予定です」
女性登山者B「結構な距離あるけど大丈夫なん?」
若宮朱莉「はい、大丈夫です!」
女性登山者A「わたしらはこれで下りますけど、縦走がんばってください。若宮朱莉さんのことはこれからも応援します!」
女性登山者B「あかりん、これからも応援するからがんばってください!では、これで失礼します」
そうして女性登山者2名が立ち去って行くと水城涼真が「芸能人って山でも気を遣わなあかんねんな」と呟いた。
若宮朱莉「応援してくださってるとのことだったから、嬉しい気持ちになってるよ」
水城涼真「そうか。そろそろ鍋焼きうどんが出来たから食べよか」
若宮朱莉「うんうん、わたしもうお腹ペコペコだったんだよ。いっただきまーす!」
いうまでもなく鍋焼きうどんはすぐに無くなって、その6割以上は若宮朱莉がたいらげてしまったのだ。後片付けをして少しまったりしていた水城涼真が「そろそろ出発しよか」と言った。
13時50分・・・懺法ヶ嶽(標高381m)~紀泉高原
大福山から歩くこと30分で懴法ヶ嶽・西峰の山頂(標高381m)に到着できた。この山頂には大きなベンチとテーブルが設置されており、わずかながら和歌山市内の眺望が広がっている。
若宮朱莉「この山頂は立派だけど、休憩するにはちょっと早いね」
水城涼真「せやな。まあ東峰をピークハントしといて井関峠に向かおうか」
2人は懴法ヶ嶽・東峰の道標に従って進んでいった。すぐに東峰の山頂と思われる場所に到着したが先ほどの西峰の山頂と違って木柱が立てられているだけであった。そこからさらに井関峠に向かって10分程登山道を歩いていった。井関峠には立派な東屋が設置されており水城涼真と若宮朱莉は少し腰を下ろした。
若宮朱莉「ここから紀泉高原の六角堂まで20分程だね。この地蔵山というピークも登っておくの?」
水城涼真「せっかくやから地蔵山もピークハントしとこ。時間はまだまだあるんや」
若宮朱莉「登山をはじめて思ったんだけど、全部をピークハントしたいってなんだかあたしは欲張りだなって・・・」
水城涼真「あははは、みんなそんなもんやで。どこも登っておきたいみたいな感じになるんよ」
そうして2人は立ち上がって次なる目的地である紀泉高原の六角堂へと進みはじめた。井関峠からはなだらかな登山道が続き20分程して紀泉高原に出た。ここは高原地帯となっていていくつかのベンチが設置されており、和歌山市内の眺望が広がっている。その先に六角堂という東屋が設置されているのだが、2人はこの六角堂に立ち寄ってみたが休憩するにはまだ時間が早いとのことで、すぐに紀泉高原のベンチに戻って和歌山市内を眺望を眺めていた。
若宮朱莉「ここから和歌山市内の夜景が見てみたいかも」
水城涼真「今日は行かんけど、和歌山市内の夜景を見るんやったらこの直下にある岩神山が一番やねん」
若宮朱莉「そういえば、前に涼真さんが見せてくれた和歌山県でトップクラスの夜景の写真だけど、あれが岩神山なんだね?」
水城涼真「そうや。この紀泉高原からも撮影したことあるけど、ちょっと市街地から離れてるんよ」
若宮朱莉「たしかにここからだと少し離れてる感じがするね」
水城涼真「とりあえず紀泉アルプスの最高峰に向かって行こか」
そんな会話をしながら2人は紀泉アルプスの最高峰である雲仙峰へと進んでいった。
午後15時20分・・・雲仙峰(標高490m)~四ノ谷山(標高363m)
まず紀泉高原から雲仙峰に向かった2人は10分程、草木をかき分けながら登っていき地蔵山の山頂(標高446m)に到着した。この山頂は単なるピークになっており山頂表記がされているプレートがあるだけで、周りは狭い樹林帯の中であった。そこから縦走ルートに戻って雲仙峰のピークを目指していったが、比較的なだらかな登りとなっていた。地蔵山から20分程の登っていくと紀泉アルプスの最高峰である雲仙峰の山頂(標高490m)に到着した。この山頂には祠があって何かが祀られており、山頂表記がされている大きな石柱が設置されているのだが、縦走路の途中にあるピークといった雰囲気である。
水城涼真「ちょっとここで休憩しとこか。この先から尾根道になってるんやけど、休憩できるような場所はあらへんからな」
若宮朱莉「ここが紀泉アルプス最高峰の雲仙峰なんだね。標高は低いかもだけど、ずっと静寂で落ち着いた雰囲気のこの山域は好きかも」
水城涼真「朱莉ちゃんもだんだん俺の言ってることがわかってきたみたいで嬉しいわ」
若宮朱莉「わたし、人が多い山ってあまり好きじゃないの。アルプスとかは仕方ないって思うけど、非日常感を味わうなら人がいないに越したことはないよね」
水城涼真「でも紀泉アルプスは結構地元では人気なんやけど、全国的に見たら里山って感じで登山者数も少ないからな」
若宮朱莉「ここから1時間程で最後のピークなのかな!?四ノ谷山に到着できそうだけど、日没まで時間が余るんじゃない?」
水城涼真「時間は余ると思うけど、夜景スポットでまったりしながら日没を待てばええよ」
そんな話をしているうちに時刻は15時50分前になっていたので2人は最後のピークである四ノ谷山に向かって尾根道を歩きはじめた。四ノ谷山までの尾根道はこまめなアップダウンがあり、登山道はシダ植物に囲まれていた。しかし、踏み跡はしっかりあったので迷うことなく歩いていくことができた。もはや時刻は16時30分を過ぎており、樹林帯の中は薄暗くなっていったがヘッドライトを出すほどでもなかった。この四ノ谷山までの尾根は今回の縦走で一番長く感じさせられていた。雲仙峰から1時間程が過ぎたところでようやく四ノ谷山のピークの方向を示したプレートが木に設置されていた。そこから2人は尾根道から少し外れてピークを登りはじめた。そして午後17時10分前に四ノ谷山の山頂(標高363m)に到着した。この山頂は樹林帯の中にあって中央の木に山頂表記をしているプレートが巻かれており、足元にはポツンと三等三角点が設置されていた。
若宮朱莉「ここが今回の紀泉アルプス縦走の最後のピークなんだね。三角点は設置されてるけど何もないところなんだ」
水城涼真「まあ、ここも単なるピークって感じやからな」
若宮朱莉「えっと、この先から銀の峰ハイキングコースになって、夜景スポットは第一パノラマ台だったよね?」
水城涼真「そうやで。いよいよ終盤って感じやわ。とりあえず第一パノラマ台まで行ってまったりしようや」
その後、2人は尾根道に戻って夜景スポットとなっている第一パノラマ台へ向かっていった。
午後17時30分・・・第一パノラマ台~山中渓駅
四ノ谷山から尾根道を15分程歩いていくと銀の峰ハイキングコースに入り山中渓駅への分岐点に到着した。単なる縦走であればそのまま山中渓駅へ下っていけばいいのだが、今回は夜景を見る目的もあったのでそこから少し銀の峰ハイキングコースを進んでいった。そして17時30分過ぎに夜景スポットの展望台である銀の峰第一パノラマ台に到着した。この展望台からは主に北側の視界が広がっており、りんくうタウン、関西国際空港、北部は神戸から明石海峡大橋までを見渡すことができる。特に明石海峡大橋の直線距離が近いため、大阪府では珍しく北西側に見える位置となっている。
水城涼真「朱莉ちゃん、ここでまったり話ながら日没まで待とう」
若宮朱莉「うん。ここからの景色って不思議な見え方がするんだね。薄っすら見えてる橋が明石海峡大橋だと思うけど、この位置から見るのって珍しくない?」
水城涼真「山の位置と直線距離の関係でそう見えてるんやけど、こんな見え方するのはたしかに珍しいんよ」
若宮朱莉「それにりんくうタウンは関空をこんな間近で見られる場所も珍しいね」
水城涼真「そうやな。さて、紅茶でも作ってまったり話でもしよか」
そう言って水城涼真は大福山の山頂で沸かしたお湯を入れたポットをザックの中から取りだして紅茶を作った。2人はベンチに座って紅茶を飲みながら話をし始めた。
若宮朱莉「ねえ、涼真さんはどうしてわたしに手を出さないの?」
水城涼真「こんなところで何っちゅー質問してくるんや?」
若宮朱莉「だって、ずっと一緒に暮らしてるのに一度も手を出してこないって男性としてどうなのかって思うの」
水城涼真「あのな、俺だって男やから手を出したい気持ちはあるよ。でも、それをしたら朱莉ちゃんが次に求めてくることってわかるんよ」
若宮朱莉「わたしが次に求めてくること?」
水城涼真「そんな関係が続くと、途中でそろそろ子供が欲しいって言い出すと思うんよ。それって俺らの生活スタイルとは反してしまうわけやん?」
若宮朱莉「そこまで考えてなかったけど、そうなるのかな!?」
水城涼真「朱莉ちゃんの性格考えたらそうなってくると思うんよ。前から言ってるけど、あくまで今の距離感を維持していかんと関係そのものが壊れてしまう可能性があるからな」
若宮朱莉「そこまでわたしのことを大切に考えてくれているんだって思うと嬉しい!」
水城涼真「非日常を追い求めて命がけの登山をしてる今の俺らに子供を作るのはまだ早いって思うんよ」
若宮朱莉「涼真さんの言ってることはわかるけど、わたしは一度でいいから愛し合ってみたい・・・」
水城涼真「その気持ちは俺にもあるけど、もう少しだけそこは我慢してほしいんよ。できるだけ別の形で愛情表現はしていくつもりやから」
若宮朱莉「わかった。でも、やっぱり時々は甘えさせてほしいかな」
そういう2人の関係性の話をしていると日没時刻になっていよいよ空が暗くなってきた。その後、りんくうタワーゲートや関西国際空港、大阪湾の湾曲から神戸市街、西には明石海峡大橋といった夜景を望むことができた。そんな夜景を見て満足した2人は銀の峰ハイキングコースを下山していった。結局、時刻20時30分前、山中渓駅に到着して電車に乗って帰宅していった。
今回の紀泉アルプスの縦走は低山でありながらもかなりの距離と標高差があったので2人とも疲れてしまったことはいうまでもなかった。




