京都の青葉山で父と共感、そして告白されました
4月8日午後22時・・・
3月の年度末は忙しかったのだが4月に入ってようやく仕事が落ち着いた。この日、若宮朱莉が某大阪のテレビ局で情報番組の出演を終えて帰宅したときは22時前になっていた。すぐにシャワーを浴びて着替えると水城涼真から「朱莉ちゃん、ちょっと俺の部屋にきて!」と大きな声で呼んだ。若宮朱莉が水城涼真の部屋に入ると500mlの缶ビール一本を渡されてテーブルの前に座った。
水城涼真「朱莉ちゃん、今週の12日やけど仕事はオフになってるやんな?」
若宮朱莉「うん。12日はオフになってるよ」
水城涼真「じゃあ12日に青葉山に行って下山飯は海鮮丼でも食べよか」
若宮朱莉「いよいよ父の登山計画ノートに書かれている予定の最後の一座に登るんだね」
水城涼真「そうや。これで制覇になるけど、この1年半、朱莉ちゃんよーがんばったと思うから」
若宮朱莉「でもまだまだわたしは涼真さんのような登山はできないんだけどね」
水城涼真「最初に会った岩湧山の時と比べるとかなり成長はしたから、これからは俺と朱莉ちゃんが新しい未来を作っていこう」
若宮朱莉「わかった。12日は絶対開けておくね」
こうして4月12日に福井県高浜町と京都府舞鶴市にまたがる青葉山に登ることになった。
4月12日午前4時・・・
目覚まし時計が鳴って起床した水城涼真と若宮朱莉は目覚めのコーヒーを飲みながら京都府舞鶴市の天気をチェックしていた。高気圧に覆われていて全国的に晴れという予報であった。
水城涼真「今日は朱莉ちゃんが運転な」
若宮朱莉「高速使うの?」
水城涼真「いや、朱莉ちゃんの運転の練習もあるから下道で行こうと思ってる」
若宮朱莉「高速道路のほうが楽なのになぁ」
水城涼真「朱莉ちゃん、もう少し山道に慣れなあかんからな」
若宮朱莉「そうだね。わかった」
コーヒーを飲み終えると登山服に着替えて2人は駐車場に向かった。今日もパジェロミニで行くことになったので運転席に若宮朱莉、助手席に水城涼真が乗って車を発進させた。新御堂筋線から外環状線線に入り国道176号線から川西市で国道173号線に入って北上していった。
水城涼真「朱莉ちゃんは今の家のままでええん?」
若宮朱莉「どういうこと?」
水城涼真「あれだけギャラもらってるんやからもっとええ家に引っ越したいんとちゃうかなって思ったんやけどどうなん?」
若宮朱莉「わたし、ほたか莊が好きなの。駅まで歩いても10分だし新大阪駅まで電車で5分、大阪駅まで10分、京都にも神戸にも行けるじゃない。あんな便利なところないから今のままでいいよ」
水城涼真「それやったらええんやけどな。芸能人ってもっと高級マンションとかに住んでるってイメージあるから」
若宮朱莉「それはもっと売れてる芸能人だよ。わたしはどこでも眠れるタイプだし、部屋も狭いほうがいいから今が一番いいの」
水城涼真「まあ、朱莉ちゃんは部屋の片づけよーせんもんな」
若宮朱莉「えへへ・・・ごめんなさい」
そんな話をしながら国道173号線を北上していった。車を2時間程走らせていると国道27号線に入って舞鶴方面へと向かって行った。西舞鶴駅付近までくると水城涼真が「朱莉ちゃん、朝食はあの牛丼屋でええかな?」と言った。若宮朱莉は「じゃああのお店に行くね」といって牛丼屋の駐車場へと入った。車から降りると2人は牛丼屋に入って水城涼真は牛丼小盛りの朝食定食、若宮朱莉は牛丼大盛つゆだくだくの朝食定食を注文した。カウンターで料理を受け取ると席に座って牛丼を食べはじめた。
水城涼真「朱莉ちゃん、朝からよー大盛なんて食べれるな」
若宮朱莉「これから運動するからいいの」
水城涼真「朝食に牛丼っていうのも変な感じやけど、この辺は朝開いてる店が少ないからな」
若宮朱莉「つゆだくだくにしてるから雑炊みたいで美味しい」
牛丼を食べ終えて2人は再び車に乗ってアプローチポイントとなる松尾寺に向かって車を走らせた。
午前8時50分・・・松尾寺駐車場
国道27号線から左折して松尾寺のほうへ山道を走らせていった。府道564号線に入って山道を走らせていると目的地である松尾寺に到着した。警備員さんに松尾寺第1駐車場へ案内されたのでそこに車を駐車したが、他に停まっている車は一台もなかった。2人は車から降りて登山準備を整えると駐車料金を支払って早速松尾寺のほうへ歩いて行った。
まずは松尾寺の本堂まで階段を登っていき右奥にある登山口のほうへ歩いていった。登山口には大きな案内板があったが詳しいことは何も書いてなかった。ここから石の階段を上がっていき入山となった。階段をあがったところで分岐になったが、ここは地図を見なくても右に登っていくのが正解なのは明らかであった。その先で道標があり青葉山山頂まで1.8kmと記載されていたが、それは西峰なのか東峰なのかわからない。そこから樹林帯の中に入るとまずはなだらかな登りがはじまった。登山道は少々荒れ気味だが踏み跡はしっかりとあった。途中で鳥居が壊れている場所があったのでそこで若宮朱莉が「ちょっと待って」と言った。
若宮朱莉「これって鳥居が壊れた跡だよね?こんなのはじめてみた」
水城涼真「倒木かなんかで割れたんやろな」
若宮朱莉「柱だけがまだ建ってるもんね。そういえば地図を見るとここから急登になるみたい」
水城涼真「まあ急登やけど、つづら折れになった道もあるからそこまでしんどくないと思うわ」
そんな話をした後、2人は再び登りはじめた。いよいよ急登がはじまったのだが、最初は結構しんどかったが途中でロープ場がでてきた。このロープ場は木の根っこ地帯の急登になっているが、ロープを掴まなくても登れた。さらにロープ場となったがやはりロープを使わなくても簡単に登っていくことができた。急登とつづら折れの道が連続していたが2人は休憩することなくひたすら登り続けた。その急登地帯が終わる直前で鉄の階段が現れた。この階段を登ったところで尾根に合流するのだ。今回2人はペースダウンせずに登ってきているので歩行速度は早かった。階段を登ったところで尾根に取り付くと石灯籠があって何か祀られていたのだが、2人にはよくわからなかった。そのまま尾根を少し進んだところに小屋があったのだが水城涼真が「ここは後で立ち寄るから先に青葉山の山頂まで行ってしまおか」と言った。実はこの小屋の裏側にある岩の上が西峰の山頂なのだが、水城涼真は何か考えているようであった。
そのまま尾根道を歩いているとこまめなアップダウンの道が続いていた。途中に巨岩の間を通るトンネルのようなところがあったが、スリムな若宮朱莉にとっては軽く通過することができた。続いて鉄のハシゴが連続していたがここも一気に通過していった。
午前10時50分・・・青葉山・東峰(標高693m)
最後のロープ場で岩場を登りきると登山口からわずか2時間程で青葉山の山頂ともいうべき東峰(標高693m)に登頂した。この山頂は樹林帯の中にあって周りには青葉山神社以外は何もなかった。
若宮朱莉「ここが青葉山の山頂なんだ。結局父が何を見たかったのかわからなかった」
水城涼真「いや、それは帰りにわかるわ。俺らは西峰にはまだ登ってなかったやろ」
若宮朱莉「西峰なんてどこにあったの?」
水城涼真「途中で小屋があったやろ。あの後ろにある岩の上やねんけど、先に東峰をピークハントしときたかったんよ」
若宮朱莉「そういえば、直下に日本海が見えるとか言ってたけど、それは西峰の山頂からだったんだね?」
水城涼真「楽しみは一番最後にとっといたほうがええやろ」
若宮朱莉「たしかに、それもそうだね」
2人は東峰の山頂で20分程休憩をするとピストンで西峰の山頂へ戻っていくことにした。
午前11時40分・・・青葉山・西峰(標高692m)
東峰から尾根を戻っていきまめなアップダウンを通過して約30分程で先ほどスルーした小屋まで戻ってくることができた。2人は小屋の後ろ側にまわって岩を登った。そしてついに青葉山・西峰(標高692m)に登頂したのだ。この西峰は山頂表記がされている木柱が岩に設置されており、その後ろ側は青空の下に輝く美しい日本海と左右には入り組んだ島々がある若狭湾ぽい地形を見下ろせる。周りには誰もいないのでひっそりした日本海の景色といえるだろう。
若宮朱莉「こんな真下に日本海が見える景色なんてはじめてみた。この静寂な雰囲気の海景色は好きかも」
水城涼真「俺もはじめて青葉山に登ってここからの景色みたとき、それと同じことを思ったわ」
若宮朱莉「父はこの静寂な雰囲気の日本海が見たかったんだね・・・これが最後の一座だったけど、また父と共感することができたと思う」
水城涼真「青葉山の見所はここなんよ。まあもう少し降りたところから高浜原発を見えるところもあるんやけど、お父さんはこの日本海が見たかったんやろうね」
若宮朱莉「わたし、父が残した登山計画ノートに書かれていた予定の山を達成したんだね。嬉しいような淋しいような複雑な気持ちかも」
水城涼真「朱莉ちゃん、1年半ほどでよー達成できたな。朱莉ちゃんのがんばりがあってのこそやし、今までよーがんばったと思うわ」
若宮朱莉「それもこれも涼真さんのおかげだよ。本当にありがとう!」
水城涼真「ありがとうはまだ早いで・・・今日はここで朱莉ちゃんにハッキリ言っておきたいことがあるねん」
若宮朱莉「言っておきたいことって?」
水城涼真はペットボトルの水をゴクリと飲むと話はじめた。
水城涼真「俺は今まで朱莉ちゃんのことを娘のように見てきた。愛おしいって気持ちにも気づいた。でも最近な、本気で朱莉ちゃんのことが好きになってることにも気づいたんよ。この人が俺の人生のパートナーなんやなって思わされてる。もし朱莉ちゃんのお父さんと俺が出会ってたら仲のいい登山仲間になれてたやろうってことは前に話したけど、今はそのお父さんの遺志を継いでる朱莉ちゃんが俺の人生のパートナーであり、最高の登山仲間になってる。これで登山計画ノートに書かれてた予定の山を達成したから、これからは未来に向かって俺と新しい登山計画の予定を立てていってほしい。それで俺のパートナーとして一緒に新しいものを発見していって非日常を共感していってほしい。朱莉ちゃん、辛いかもしれんけど、これでお父さんとさよならしてほしいんよ。これからは俺と一緒にお父さんの遺志を継いでいくって宣言してほしい。お父さんのことを忘れろって言ってるやなくて、もう朱莉ちゃんの心の一部やし、また他の山でも共感することもあると思うけど、それはええからな。まあ、話をまとめると俺、それほど朱莉ちゃんのことが好きやってことやわ・・・」
その水城涼真の話を聴いていた若宮朱莉は涙を流していた。
若宮朱莉「それってまるで告白されてるみたいでちょっと恥ずかしいかも。でも、お父さんとはここでさよならするね」
水城涼真「告白になるんかわからんけどな」
若宮朱莉もペットボトルの水をゴクリと飲むと日本海に向かって叫び出した。
若宮朱莉「お父さん、本当に今までありがとう!わたし、お父さんの遺志を継いで今横にいる涼真さんと人生を歩んでいく。お父さんができなかったこと、見れなかったものは、わたしが必ずしていくし見ていくよ。だから、だから・・・お父さんここでさよならだよ!」
涙を流しながら叫び終えた若宮朱莉に抱きついて水城涼真は口づけをした。水城涼真からキスをするのはこれがはじめてのことである。しばらくの間キスが続いて離れると若宮朱莉が嬉しそうな表情をしながら口を開いた。
若宮朱莉「うれしい、うれしい・・・わたし、涼真さんと出会えて本当に良かった。わたしも涼真さんのこと大好きだよ」
水城涼真「結婚する前にこうなってればよかったかもしれんな」
若宮朱莉「いいの。涼真さんと結婚したのはお父さんみたいな存在だったからっていうのもあったけど、わたし、これからは涼真さんのこと一人の男性として見ていくから」
水城涼真「俺もこれからは朱莉ちゃんのことは女性として見ていくけど、登山してる時は女性として見ないからな」
若宮朱莉「あはは、なんか今になって恋愛関係がはじまったみたいで変かもね」
水城涼真「恋愛関係とはちょっと違うんとちゃうかな。やっぱお互いに愛し愛されてる関係のほうが合ってると思うわ」
若宮朱莉「じゃあこれからは一緒に寝たりエッチなこともするってことでいいよね?」
水城涼真「いや、それは別の話や。やっぱ距離感は保たなあかんし、そういうことをするのはもう少し先にしてほしい。今は登山のことで頭がいっぱいやからな」
若宮朱莉「でもわたしに手を出したくなったらいつでも言ってね・・・えへへ」
水城涼真「わかった。それと今年の6月に北海道に行こう」
若宮朱莉「北海道ってまさか父が登った恵山に行くの?」
水城涼真「そうなんやけど、それだけやなくて北海道はええとこいっぱいあるからな」
それから2人は西峰から下山をはじめた。下山速度は早く西峰から1時間程で松尾寺駐車場に戻ってくることができた。
午後13時30分・・・舞鶴港
青葉山を満喫した二人は舞鶴市に戻って舞鶴港へ向かった。舞鶴港付近に海鮮丼と書かれた大きな看板があったので2人はそのお店に入った。若宮朱莉はもうお腹ペコペコ」と言ってさっさと注文する料理を決めて店員さんを呼んだ。水城涼真はうにねぎとろ丼、若宮朱莉はうにいくら丼と天ぷらうどんを注文した。10分程して注文した料理が運ばれてくると、若宮朱莉はガツガツと食べはじめた。
水城涼真「朱莉ちゃん、味噌汁ついてるのに、わざわざ天ぷらうどんまで注文したんやな」
若宮朱莉「だって足らないって思ったんだもん」
水城涼真「ホンマよー食べるわ」
若宮朱莉「涼真さん、ここから天橋立って近い?わたし、一度行ってみたいって思ってたんだよね」
水城涼真「宮津市かぁ・・・ここから1時間くらいやな」
若宮朱莉「じゃあさっさと食べて天橋立に立ち寄って帰ろうよ」
水城涼真「そうやな、時間も余ってるし行ってみよか」
その後、二人はさっさと海鮮丼を食べ終えて車に乗ると宮津市にある天橋立に向かって車を走らせた。
午後14時50分・・・天橋立
宮津市に到着すると天橋立リフトの手前にある有料駐車場に車を停めた。そのまま2人はリフトに乗って天橋立ビューランドへ行くと、まず若宮朱莉は股のぞき台へ向かった。
若宮朱莉「なんか空を舞う龍のように見えるって書いてたけどよくわかんないね」
水城涼真「まあ人によって視点が違うからな。そう見える人もおるってことやろ」
若宮朱莉「でも逆さまの景色って変な感じだね」
続いて若宮朱莉は”かわらけ投げ”に挑戦したいとのことで料金を払って投げてみたが智恵の輪には入らなかった。この知恵の輪にくぐらせることができたら願いが叶うと言われているのだ。
水城涼真「朱莉ちゃん、願い事でもあるんかいな」
若宮朱莉「志帆ちゃんみたいに歌が上手になれますようにって願ってみたんだけどダメだった」
水城涼真「あははははは、それは無理があるやろ。朱莉ちゃん、だいぶんマシにはなったけど、やっぱ歌はなあ」
若宮朱莉「それと涼真さんとの子供ができますようにってお願いもしたんだよ」
水城涼真「子供って、まだそれは先の話やから」
若宮朱莉「そうだけど、一生できないのは嫌だなって思っただけだよ」
最後に若宮朱莉の目に入ったのは美味しそうなソフトクリームだった。若宮朱莉は「涼真さん、ソフトクリーム食べたい」と言ったので一つだけ購入して二人で分け合いながら食べた。その他に興味を持つものがなかったのでさっさとリフトで下りて車に乗った。その後、宮津市にある温泉に立ち寄って疲れを癒して2人は大阪へと戻っていった。
次の山行はいよいよ日光白根山と上州武尊山の登山ロケになるのだが、水城涼真は一体何を考えているのか誰にもわからなかった。




