表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/57

巨大な氷の芸術、大峰のシェイクスピア氷柱群

2月13日午後22時・・・


この日のこの時間、若宮朱莉は天音琴美とSNS通話をしていた。


天音琴美「あたし2月21日から23日まで京都で撮影なんだけど24日はオフなのよ。朱莉ちゃんもたしか24日はオフだって言ってたよね?」

若宮朱莉「はい、23日と24日はオフですよ」

天音琴美「その連休にどこか山にいく予定はある?」

若宮朱莉「まだ予定はありませんが、どこかご一緒しますか?」

天音琴美「うん!涼真さんに聞いてもらってもいいかな?」

若宮朱莉「わかりました。涼真さんに聞いておきますね」


天音琴美との通話を終えると若宮朱莉は水城涼真に24日の話をした。


水城涼真「そうやなぁ、じゃあ大峰の氷瀑でも見に行ってみようか?」

若宮朱莉「大峰の氷瀑!?そんなの見れるところがあるの?」

水城涼真「シェイクスピア氷柱群っていうところなんやけど、おそらくみんなあんな巨大な氷瀑は見たことないと思うわ。まあアイスクライミングのメッカでもあるんやけどな」

若宮朱莉「巨大な氷瀑ってイメージできないんだけど、見たことないものだから行ってみたいかも。そういえば涼真さんってアイスクライミングはしないよね?」

水城涼真「アイスクライミングは山岳会に入ってる時にやったことあるけど、全く面白いと思わんかったからな。それに金もかかるんよ」

若宮朱莉「そうなんだ。たしかにわたしも興味ないかも」

水城涼真「樫田君も行きたがってたから4人で行ってみよか。登山難易度は高いから12爪アイゼンとピッケル、ヘルメットの3つは絶対に忘れんようにと天音さんに伝えといて!」

若宮朱莉「うん、伝えておくね!」


シェイクスピア氷柱群は大峰の大普賢岳の直下に位置していて巨大な氷瀑を見ることができるのだが、現在は管理組合によって立ち入り禁止になっている。しかし水城涼真は昨年に管理組合の会員となり、今シーズンの入山許可証を手に入れていた。


水城涼真と話をした若宮朱莉はすぐにSNSチャットで天音琴美に24日は大峰のシェイクスピア氷柱群に行くこと、12爪アイゼンとピッケル、ヘルメットの3つは絶対に忘れないようにとメッセージを送った。次の日、水城涼真は樫田裕に2月24日にシェイクスピア氷柱群に行こうとSNS通話で誘ってみると「絶対に行きます!」との返事であった。



2月24日午前5時・・・


目覚まし時計が鳴って起床した水城涼真と若宮朱莉は目覚めのコーヒーを飲みながら奈良県川上村の天気をチェックしていた。朝は雪が降る予定だが午後には天気が回復するとの予報であった。すぐさま登山準備をして駐車場へ行くと水城涼真が「今日はパジェロミニで行くけど、雪道やから俺が運転するわ」と言った。パジェロミニに乗って出発すると天音琴美が宿泊している岸部駅のホテル前にあるコンビニへと走らせた。コンビニに到着すると既に水色のソフトシェルジャケットにグレーのトレッキングパンツ姿の天音琴美が40リットルの赤いザックを背負って待っていた。


天音琴美「涼真さん、おはようございます」

水城涼真「天音さんおはよう。ちゃんと装備は持ってきてるやんな?」

天音琴美「もちろん忘れずに持ってきていますよ」


天音琴美がトランクにザックを積み込むと後部座席に座ったの、今度は吹田駅に向かって車を走らせた。


天音琴美「朱莉ちゃん、おはよう。今日もよろしくね」

若宮朱莉「天音さん、おはようございます!今日もよろしくお願いします」

天音琴美「あたし、氷瀑って秩父の三十槌みそつちでしか見たことないから大峰の氷瀑がどんなものなのか楽しみ!」

若宮朱莉「わたしは全く想像がつきませんが、涼真さんが連れていってくれる所なので楽しみにしています」

水城涼真「シェイクスピア氷柱群は迫力そのものが違うとだけ言っとくわ」


吹田駅に到着すると15分程時間が早かった。若宮朱莉と天音琴美は車の中で会話をしながら待っていたが、水城涼真はずっと黙っていた。始発の電車がくると駅前に水色のソフトシェルジャケットに黒いトレッキングパンツ姿で緑色のザックを背負った樫田裕が現れてパジェロミニを目にすると走ってきた。


樫田裕「おはようございます。みなさん今日はよろしくお願いします」

水城涼真「樫田君、おはよう。とりあえずザックをトランクに積んで後部座席に座ってな」

天音琴美「樫田君、おはようございます。今日はよろしくお願いします」

若宮朱莉「樫田君、おはよう!」


樫田裕がザックをトランクに積み込んで後部座席に座ると水城涼真は車を走らせた。


樫田裕「涼真さんが胸に付けているのが入山許可証ですか?」

水城涼真「そうなんよ。今日入山することは管理組合には伝えてあるし、入山届もこっちで出しといたから大丈夫やわ」

樫田裕「昔は勝手に入山できてたのに面倒ですよね」

水城涼真「まあ所有地やからしゃーないんよ」

樫田裕「ところで天音さんって京都での撮影が多いみたいですけど、時代劇かなんかですか?」

天音琴美「うん、時代劇なんだけど、一昨日は滋賀県の近江八幡、昨日は京都の大覚寺で撮影してたの」

樫田裕「うちもテレビないんで見れないんですけど、天音さんがどんな役を演じてはるんか見てみたいですわ」

天音琴美「女侍役なんだけど、あたしだってわからないかも」

樫田裕「あと朱莉ちゃんのシングル曲聴いたけど、声がよーわからんかったわ」

水城涼真「あれ音をかなり修正しとるからな。朱莉ちゃんに歌手デビューはやっぱ無理やねん」

若宮朱莉「社長の提案だったから歌ったけど、結局売れなかったし、失敗だったと思う」


そんな話をしながら1時間程車を走らせたところで、大峰に行くときにいつも立ち寄るコンビニに到着した。みんなコンビニで行動食と水、カップ麺を購入して車に戻ると、珍しく水城涼真が少し過眠をとっていた。


若宮朱莉「涼真さん、昨日あまり眠れなかったみたいだけど運転代わろうか?」

水城涼真「いやええよ。ここから雪道になるから俺が運転するわ」


そうして水城涼真が運転をしてアプローチポイントに向かって車を走らせた。



午前8時30分・・・アプローチポイント


国道169号線を走らせて新伯母峯トンネルの手前で右折して大台ヶ原ドライブウェイに入ると雪道となっていた。そこから少し先に進んだところの冬期通行止めゲートの手前に広いスペースがあったのでそこに駐車した。少し雪が降っていたがホワイトアウトというわけでもなく午後には天気が回復する予報になっている。みんなトランクから荷物を出して12爪アイゼンを装着、ヘルメットをかぶって片手にピッケルを持って登山準備を整えた。


水城涼真「じゃあ出発しよか」

若宮朱莉「みなさん、よろしくお願いします」

天音琴美「よろしくお願いします」

樫田裕「よろしくお願いしますわ」


まず立入禁止と書かれた札が掲げられているロープを乗り越えて沢沿いの林道を歩きはじめた。トレースはなく積雪量は50cm程であったが雪は少し凍っていたので歩きやすかった。林道を歩いていると雪がやんで正面に迫力ある大普賢岳の山容が見えてきた。林道をしばらく歩いていると少し広くなった場所に出て水城涼真が「よし、ここから登っていくで」と言った。


若宮朱莉「テープも何もないけどここで合ってる?」

水城涼真「ここで合ってる。林道はこの先で終わるんやけど、登れるところがないんよ」


そう言って林道から左手の樹林帯の中に入って少し登っていった。樹林帯の中を少し登ったところで登山道らしき道がありそこをトラバースしていくように進んでいった。このトラバースでは細い道になっており右側がスパっと切れているので滑落すると大参事になる。途中で木の橋が出てきたことから道は合っていると若宮朱莉は確信できた。そのままトラバースしていくと右側に氷瀑が見えた。


若宮朱莉「あそこすごい!完全に滝が凍っているね」

天音琴美「本当だね。あれが大峰の氷瀑なんだ」

水城涼真「二人ともあんな氷瀑なんてシェイクスピア氷柱群に比べたらショボいで」

若宮朱莉「そうなの?もうどんな氷瀑が見れるのか想像つかなくなっちゃった」


そのままトラバースしていくと樹林帯を抜けて地獄谷分岐と呼ばれる沢筋に出た。ここからは沢沿いの登りになるのだが、少し高度なルーファイをしていかないと簡単にコースアウトしてしまう。


天音琴美「この付近は地図を見てもよくわからないね。それに雪が積もってるから地形がよく読めない」

若宮朱莉「わたしもさっきから地図を見ていますがルーファイも難しいですよね」

水城涼真「とにかく谷を詰めていけばええだけなんやけど、今のお二人にはちょっとここは難しいかもな」


そんな話をしながら先頭を歩く水城涼真はルーファイしながら谷を詰めていった。ところが20分程谷を詰めていったところで標高20m程のピークに差しかかりそこで水城涼真が立ち止まった。


水城涼真「前回はこのピークを巻けたんやけど、今日は積雪量も多いからこのピークに登ったほうが安全やな」

若宮朱莉「すごい急斜面だけどあのピークへ登っていくの?」

水城涼真「標高20m程の登りやからみんながんばって!」

天音琴美「こんなところを登るんだ・・・一歩間違ったら滑り落ちるね」

樫田裕「面倒やけど仕方ないですね」

水城涼真「ピッケルを雪に刺してアイゼンの前爪でしっかり蹴り込みながら登ってきてな」


まずは水城涼真がこの急斜面を登っていった。ピッケルを雪に刺しながらアイゼンの前爪で蹴り込みながらスルスルと登っていった。そのあとに若宮朱莉、天音琴美と続いて登っていったが、この二人はまだピッケルの使い方に慣れていなかったので少し時間を要してしまった。最後に樫田裕がスルスルと登ってきた。さすがの水城涼真もこの登りでは息を切らしていたのと、既に1時間歩いていたこともあったのでピークで一旦休憩となった。



午前9時50分・・・デンジャーポイントと激急斜面


息を整えて休憩を終えた4人は先へ進んでいった。再び樹林帯を抜けて沢に合流したところで今度は完全に凍った岩場の登りになった。この岩場には残地ロープが何本か設置されているのだが、滑り落ちてしまうと大怪我は免れず遭難事故となってしまう。また、女性にとっては足の置き場に困るような岩場でもある。


水城涼真「この岩場は前爪だけやなくて足を完全にペタンっと引っ付けながら登っていかなあかんで!」

若宮朱莉「これはちょっと怖いかも。足の置き場があまりないじゃない」

天音琴美「あたしもこの岩登りはちょっと怖い・・・」

水城涼真「女性にはちょっと不利な岩場やけど、足の置き場に困ったら思い切って足を伸ばして登ってくればええ。この残地ロープは切れへんから大丈夫や」

樫田裕「僕、こういうところ好きなんで一番に行かせてもらいますわ」


最初に樫田裕がロープを掴んでスルスルと岩場を登っていくと、若宮朱莉が登りはじめた。この中で一番身長が低く足も短いということでこの岩場の登りに苦労していた。水城涼真の言った通り思い切って足を伸ばして勢いで登ってみるとクリアすることができた。続いて天音琴美が岩場を登りはじめたが、運動神経がいいのか意外とあっさりクリアした。最後に水城涼真が慣れた手つきでスルスルと登っていった。


若宮朱莉「この岩、下りも不安だよ」

水城涼真「下りは意外と簡単やから心配せんでもええよ」


岩場をクリアした後で少し谷を詰めていくといよいよ沢を高巻きする登り地点に差しかかった。そこは道幅が狭くスキーで滑るのも怖いほどの激急斜面になっており残地ロープが設置されていた。その直下の広い場所で水城涼真が「ここで休憩しとこか」と言った。


若宮朱莉「涼真さん、これからこの斜面を登るんだよね?」

水城涼真「そうやけど、垂れ下がってるあのロープは信用したらあかん。ちゃんとピッケルを使って登っていかなあかん」

天音琴美「まさに激急登になるのね。あたし、まだピッケルを上手く扱えてないけど大丈夫かな!?」

水城涼真「ここからしばらくあんな斜面の登りが続くからここで休憩にしたんよ」

若宮朱莉「あんな斜面がずっと続くんだ。しかも道が細すぎるから落ちたら一発でアウトだね」

樫田裕「でも意外と簡単に登れるんとちゃいますかね。ここから見るとすごい斜面ですが、距離は短そうですしね」

天音琴美「これって本当に命がけって感じだし、両神山の時よりも難しい雪山登山のような気がする」


15分程休憩すると4人は激急登をはじめた。若宮朱莉と天音琴美はだんだんピッケルの扱いに慣れてきたのか、思っていたより意外と簡単に最初の斜面は登っていくことができた。次に現れたのは急斜面の途中にある岩場のトラバースポイントであった。ここも数本の残地ロープが設置されいたが、岩場の途中がスパっと削れていて片足しかおけないポイントがある。ここで足を踏み外してしまうと一発で滑落死となってしまう。


天音琴美「ここも怖いよね。岩の真ん中は片足しか置けなさそうだし・・・」

若宮朱莉「涼真さん、わたし、命がけの登山をする覚悟はしてたけど、さすがにこれは怖いよ」

水城涼真「ここのロープはしっかりしてるからゆっくりトラバースしてくれば大丈夫や。あんま下を見ないように来てな」


最初にこのポイントを通過したのは樫田裕であったが、さすがに高所恐怖症ということもあって少し怖かったという感想であった。続いて若宮朱莉がトラバースしていった。岩場の真ん中にさしかかったところで立ち止まると水城涼真が「朱莉ちゃん、そこで立ち止まったら怖いと思うから、思い切って通過していけばええ」とアドバイスした。若宮朱莉はそのアドバイスを聞いて勇気が出たのか細い地点を通過していった。次に天音琴美が岩場のトラバースをしていったが、やはり若宮朱莉と同じく真ん中で立ち止まってしまった。すると若宮朱莉が「天音さん、そこは意外と難しくないのでゆっくり通過してみてください!」と声をかけた。その言葉を聞いた天音琴美は思い切って細い地点をさっと通過していった。最後に水城涼真は慣れているのか恐れることなくスルスルとトラバースしていった。


樫田裕「ここのトラバースって意外と簡単でしたね。下を見るから怖いだけやったように思いますわ」

水城涼真「そうなんよ。ただ、ここで滑落する人も多いみたいやけどな」


そこから急斜面の登りが続いていったが、若宮朱莉と天音琴美はすっかりピッケルの扱いに慣れていた。そして急斜面が終わったところで水城涼真が「よし、急登はここまでや。あと20分程でシェイクスピア氷柱群やで」と言った。



午前11時10分・・・シェイクスピア氷柱群


急斜面が終わって樹林帯を20分程歩き続けていると広い場所に出た。岩壁には迫力ある巨大な氷柱が束になってなっており、その後ろ側には台高山脈の山々を望むことができる。まさにここが目的地であるシェイクスピア氷柱群である。ちなみにこのような景観がシェイクスピア劇場のようだというで、シェイクスピア氷柱群と呼ばれるようになったという。そんなシェイクスピア氷柱群を目の当たりにした若宮朱莉と天音琴美、樫田裕の3人は目を輝かせながらかなり驚愕していた。


若宮朱莉「何これ何これ!?すごい、すごすぎる!!滝が完全に凍ってるじゃない」

天音琴美「これはすごいね!あたし、こんな迫力ある氷瀑を見たのははじめてだよ」

樫田裕「これはすごいですね!まさに自然の壮大なアートじゃないですか。さすが大峰って感じですわ!!」

若宮朱莉「氷瀑の裏にも入れるみたい!天音さん、岩の中に入って一緒に記念撮影をお願いしませんか?」

天音琴美「そうだね。苦労してここまできたんだもん。記念撮影しなきゃ勿体ないね」


若宮朱莉と天音琴美は氷瀑の裏側の岩の中に入ってピッケルを片手であげると、水城涼真はそんな2人の姿を何枚か撮影した。一方、樫田裕は氷柱の真下に立って見上げながら何枚か撮影していた。


水城涼真「こんな迫力ある氷柱群はそんじょそこらでは見られへんよ」

天音琴美「そうかもしれませんね。今回は立入禁止エリアだけど、あたし絶対にブログに載せるって決めました!」

若宮朱莉「天音さん、ここに来るまでずっと撮影してましたもんね」

天音琴美「朱莉ちゃんメインのブログになっちゃうかもだけど、あたし達もここまで成長できたんだってブログに書くよ」

樫田裕「また批判の声が殺到しなければええんですけどね」

水城涼真「まあ入山許可証を持ってる登山ガイドと一緒に登ったってことにすれば大丈夫やろ」


その後、シェイクスピア氷柱群の迫力が伝わるように、少し離れた場所からの撮影もおこなった。


若宮朱莉「ここで昼食は無理そうだね」

水城涼真「帰り道の駅に立ち寄るから、そこで美味しいうどん食べて温泉に入ろか」

樫田裕「あー、途中にあった道の駅ですよね?」

水城涼真「そうそう。あそこのうどんかそばが美味しいんよ」

天音琴美「あたし、温泉はどうしよっかなぁ・・・」

若宮朱莉「天音さん、もしかして生理中ですか?」

天音琴美「昨日で終わったと思うんだけど、すぐ後だから念のために入らないほうがいいのかなって」

若宮朱莉「出血してなければ大丈夫だと思いますよ」

天音琴美「そうだね。道の駅のトイレで確認してみる」


天音琴美は下山後の温泉が大好きなのだが、やはりこういう時の女性には気の毒だなっと水城涼真は感じながら話を聞いていた。結局、ここでは行動食をとるだけとなってしまったのだが、若宮朱莉と天音琴美はシェイクスピア氷柱群の迫力に圧倒されてはしゃいでいた。



午後13時50分・・・アプローチポイント~道の駅


シェイクスピア氷柱群の直下で1時間程過ごして下山開始となった。若宮朱莉と天音琴美は景観を惜しむように何度も振り返りながら下山をしていた。下山は楽であったが、途中にある岩場のトラバース地点で少し怯えていながらも無事にクリアすることができた。ところが最後の急斜面を下っている途中で一番後ろにいた天音琴美が足を踏み外して5m程滑り落ちてしまった。それを見た水城涼真はすぐにかけつけて「天音さん、大丈夫?」と聞くと天音琴美は「ちょっと怖かったけど平気です。どこもケガはしていません」と答えた。ただ斜面に沿って滑ってしまっただけなので大参事にはならなかったものの、やはり下山時のピッケルの扱いや体勢には慣れていなかったのだろう。それから凍った岩場の下りに関しては、登りの時に水城涼真が言っていたように意外と簡単で4人とも無事に岩を下りていくことができた。そこから休憩なしに下山をしていき午後13時50分にアプローチポイントの駐車場所まで戻ってくることができた。


水城涼真「みんなお疲れ様!よーがんばったわ」

若宮朱莉「お疲れ様でした。こうして無事に戻ってくることが登山の基本なんだなって改めて思わされた」

天音琴美「お疲れ様でした。あんな自然の壮大な芸術ともいえるシェイクスピア氷柱群を見れて本当に良かったです!」

樫田裕「お疲れ様でした。今度いつ行けるかわかりませんけど、ここは毎年行ってみたいですね。氷柱群も毎年違うと思いますから」


みんなトランクに荷物を積み込んで車に乗ったところで道の駅へと出発した。道の駅は国道169号線沿いにあるので30分程で到着した。もうみんなお腹を空かせた状態だったので、早速うどんを注文したのだが若宮朱莉はさらにフランクフルト2本までも注文した。


水城涼真「朱莉ちゃんと天音さん、関東のうどんは出汁に濃口醤油と鰹節やけど、関西のうどんは薄口醤油に鰹節と昆布を使用してるねん。醤油味が濃いのは関東やけど、出汁の旨味がよー効いてるのは関西やから、別物として意識して食べたほうがええで」

天音琴美「あたし、どちらかといえば撮影で京都に行った時にしかうどんは食べないから関東出汁ってよくわからないのよね」

若宮朱莉「わたしは別の食べ物って感覚ですね。でもここのうどんは本当に美味しいと思います!」

樫田裕「僕はどっちのうどんでも食べますけど、関東のうどんはちょっと醤油が効きすぎてる感じがしますわ」


そんな話をしながらみんなうどんをたいらげると、日帰り温泉施設へ向かった。天音琴美はもう完全に生理は終わってるとのことだったので、若宮朱莉と一緒に入ることにした。若宮朱莉と天音琴美は体を洗った後で温泉に浸かって話をしはじめた。


天音琴美「4月の登山ロケなんだけど、朱莉ちゃんのご期待通り、日光白根山になりそうよ」

若宮朱莉「本当ですか!?それなら嬉しいです」

天音琴美「大日テレビの番組企画部長の蒲田さんとしてはゴールデンウイークに入る前の4月23日から25日までの72時間枠が希望とのことだけど、朱莉ちゃん、大阪でのお仕事はお休みできるよね?」

若宮朱莉「わたしが今レギュラー出演してる情報番組のテレビ局は大日テレビ系列ですから大丈夫だと思います」

天音琴美「涼真さんも大丈夫なのかな?今回の登山ガイドもお願いしようってことになってるんだけどね」

若宮朱莉「そういえば、先日、赤城山麓の鍋割山に登った時、涼真さんが日光白根山だけだと時間的に短いからもう一つの山にも登るよう蒲田さんに提案すると言ってました」

天音琴美「もう一つの山って?」

若宮朱莉「涼真さんが登って感動したという上州武尊山です。谷川岳は人気すぎてつまらないと言っていました」

天音琴美「上州武尊山かぁ・・・あたし、あのあたりは谷川岳しか登ったことないからよくわからないんだけど、涼真さんが感動したってことはそれだけ価値があるんじゃないかな」

若宮朱莉「わたしもそう思います。珍しく涼真さんが感動したなんていってましたから、それなりの見所があるんじゃないかと思います」


それからも2人は話続けていたが、さすがにのぼせてきたので温泉から出た。そして4人は車に乗って大阪へと戻っていった。今回のシェイクスピア氷柱群に入山するためには管理組合に入会して入山許可証をもらわないといけないのだ。たとえ入山許可証を手に入れたとしても万全な雪山登山装備で挑まなければならない。


4月23日の登山ロケは水城涼真の提案通りに日光白根山と上州武尊山になるのだろうか。また、どのようなルートで登るのだろうか。それに日光白根山はロープウェイを使えるのだが、それを利用するのは水城涼真の登山ポリシーに反しているのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ