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赤城山麓の鍋割山からの夜景は格別でした

2月11日午前10時・・・中野駅前


昨日の両神山登山で疲れていた水城涼真と若宮朱莉は起床したのが午前10時前であった。昨夜は母である本条真由美が出張でいなかったので若宮朱莉の実家で一泊したのである。2人は急いで準備をすると中野駅前のレンタカーショップへ向かい、スタッドレスタイヤ装着の車を借りた。予定としては15時に赤城山麓の鍋割山の登山口である姫百合駐車場に到着すればいいので時間が余っていた。だからといって他にどこか行きたいところもなく、そのまま環七に入って関越自動車の練馬インターチェンジに向かって車を走らせた。


若宮朱莉「涼真さん、今日は取材で雪山ナイトハイクするんだよね?」

水城涼真「そうやけど、昨日と違って初心者向けの雪山登山コースやから物足らんかもしれんな」

若宮朱莉「まだ午前中だし日没まで時間が余るんじゃない?」

水城涼真「だからといってどっか行きたいところがあるわけでもあれへんし、とりあえずアプローチに向かってるんやけどな」

若宮朱莉「そしたら伊香保温泉にでも立ち寄ってみない?結構観光地とかもあるみたいだよ」

水城涼真「山に登る前に温泉に入るんか。まあ暇やしええかな」


この話によって群馬県渋川市にある伊香保温泉へ立ち寄ることにした。環七で少し渋滞していたが、予定の時刻通りに練馬インターチェンジに到着した。練馬インターチェンジより関越自動車を新潟方面へと1時間程走らせたところにある上里サービスエリアへ立ち寄った。さすがに朝から何も食べていなかった2人はフードコートで何か食べることにした。そこで姫豚丼という美味しそうな写真が載せられていたので2人ともそれを注文することにした。この姫豚丼とは埼玉県のブランド豚である姫豚を特製ダレで焼いたものが乗せられている丼ぶりであり、味噌汁も付いていて上里サービスエリア名物となっているようだ。


若宮朱莉「姫豚って脂がジューシーだし、タレも甘さがあってめっちゃ美味しい!」

水城涼真「俺もはじめてこれは食べたけど、ホンマ美味しいわ!また味噌汁とよー合うんよな」

若宮朱莉「わたしもう一杯注文しよっかな!?」

水城涼真「温泉街でも食べる予定やし辞めといたほうがええよ」

若宮朱莉「そうだったね」


あっという間に姫豚丼を食べ終えた2人は食後に温かいお茶を飲みながらまったりしていた。ところが時計を見ると正午をまわっていることに気づいたすぐに車に乗って高崎、前橋市方面へと向かっていった。関越自動車道の渋川伊香保インターチェンジを出ると伊香保温泉まで車を走らせた。



午後12時50分・・・伊香保温泉


伊香保温泉街に到着すると、水城涼真はどこの日帰り温泉に立ち寄ろうか考えていた。希望としては外は寒いのだが露天風呂があるところがいいとのことで、温泉街から少し離れた場所にある露天風呂と大きな看板が立てられている温泉施設に入った。ここの露天風呂は掛け流しの茶褐色のお湯になっており、入浴すると寒さを忘れるほど体が温まる。ところが水城涼真はずっと入浴しているとのぼせてきてしまったので30分程で露天風呂から上がった。温泉施設の入口へ出てみると若宮朱莉が既に椅子に座って待っていた。


水城涼真「朱莉ちゃん、上がってくるの早いな」

若宮朱莉「ずっと入浴してるとのぼせてきちゃって、すぐに上がったの」

水城涼真「俺ものぼせてもうたからすぐに上がったんよ。ここの露天風呂って体は温まるんやけど長居はできんのやな」

若宮朱莉「そうだね。じゃあ石段街のほうに行ってみよう」


そう言って2人は石段街のほうへ歩いていくと伊香保の名物グルメである玉こんにゃくが売っているお店の前で立ち止まった。このお店に売っている玉こんにゃくは3個の丸いこんにゃくを甘辛く煮て串に刺していて値段も非常に安い。早速その玉こんにゃくを3本購入したのだが、そのうち2本は若宮朱莉が食べた。その後、今度は名物である伊香保焼のお店の前で立ち止まった。


水城涼真「これも美味そうやな」

若宮朱莉「これってたこ焼きじゃないの?」

水城涼真「見た目はたこ焼きやけど、ちょっと違うんとちゃうかな。まあ食べてみようや」


そこで2人はそれぞれ伊香保焼き6個入りを購入してその場で食べた。伊香保焼きは大粒のタコが入っているたこ焼きだが、外側は揚げ焼きのカリカリで中はトロっとしていて大阪のたこ焼きとはまた違った食感である。その伊香保焼きを食べ終えて時刻を見ると14時前になっていたので2人は急いで駐車場へ戻って車を発進させた。



午後15時10分・・・姫百合駐車場


県道4号線のからっ風街道を走らせて山道に入ると除雪はされているものの予想通りに道路は凍結していた。車はスタッドレスタイヤを装着していたがFF車だったので水城涼真は不安にながらも山道を走らせていた。しかしスリップすることなく赤城山麓の鍋割山のアプローチポイントである姫百合駐車場に到着した。駐車場付近の積雪量は50cm程度でラッセルの必要がなさそうな雪質であった。2人は車から下りるとアイゼンを装着してザックを背負って入山した。初心者にもやさしい傾斜の道が続き20分程歩いたところにある”ふれあいの十字路”という分岐に到着すると若宮朱莉が「トイレに行きたい」と言い出した。


水城涼真「携帯トイレ持ってきてたやろ。そこの樹林帯の中に入ってしておいで」

若宮朱莉「ごめんね。行ってくるからちょっと待っててね」


雪山登山でトイレに行きたくなった場合、女性だとズボンをおろしたりしなければならないので少し面倒なのかもしれない。姫百合駐車場にもトイレが設置してあったのだが凍結していて使えないこともある。そんなことを考えながら水城涼真は5分程待っていると、樹林帯の中から若宮朱莉が出てきて「お待たせ」と言った。


その先からしばらくはなだらかな登りが続いていったのだが、荒山高原の直下からは雪が完全に凍っている急登になった。2人は昨日の両神山に登った時に使用した12爪アイゼンを装着していたのだが、さすがに雪が凍った急登では少し滑りやすかった。先頭を登る水城涼真は蹴り込みながら登っていったものの、やはり滑りやすかった。この斜面だけは初心者向けの雪山登山ではないが滑りやすかったのは最初のうちだけで、途中からだんだん穏やかな登りになった。


水城涼真「ちょっとここの登り方はミスったな。でもこの看板のところまで来たからあともう少しで荒山高原やわ」

若宮朱莉「あたしこの登りで何度か滑りそうになっちゃったよ」

水城涼真「予想以上に雪が凍ってたからな。いくら12爪アイゼンでも滑りやすかったな」

若宮朱莉「でも、急登だったのは最初のうちだけでよかった」

水城涼真「日没も近いし樹林帯の中で気温も下がってるから雪が凍っててもおかしくないわ」


少し立ち休憩をしてから2人は再び荒山高原へと登りはじめた。



午後16時10分・・・荒山高原


姫百合駐車場から約1時間で荒山高原に到着した。この高原は樹林が生えており、北東を見上げると荒山(標高1572m)のどっしりした山容が見えている。この段階で積雪量が増えていたがワカンを装着するほどでもなかった。2人は荒山と反対側の火起山のピークがある稜線へと登っていた。その稜線への登りでは右側に雪庇につららが垂れ下がっているのが見えたので雪は完全に凍っているのだと判断できた。稜線に上がったところで夕日に照らされてオレンジ色に輝く雪道が非常に美しかった。


若宮朱莉「この稜線歩きすっごくいい感じ!」

水城涼真「朱莉ちゃん、ちょっと稜線の真ん中あたりまで歩いていって。その姿を撮影させてもらうわ」

若宮朱莉「わかった。ところであの西側に突き出た山は何だろう?」

水城涼真「あれは浅間山やな。夕日がちょうど浅間山に沈む光景がええ感じやからそれをバックに撮影するわ」


そうして夕日が浅間山に沈んでいく光景をバックに稜線を歩く若宮朱莉を撮影した。水城涼真はその写真を雑誌に掲載する予定だが、今回は若宮朱莉のギャラは出ない。それから2人は火起山と竈山の2つのピークを越えて鍋割山の山頂へと稜線を歩いていった。途中で振り向くと荒山の左に電波塔が並ぶ地蔵岳、その向こう側に日本百名山の赤城山を望むことができた。


水城涼真「赤城山懐かしいな。上州武尊山に登った後に登ったんよな」

若宮朱莉「また登山のハシゴしたんだ。上州武尊山ってたしか日本百名山だったよね?」

水城涼真「そうや。俺は上州武尊山の山頂で剣ヶ峰山までの稜線を見て感動したんよ」

若宮朱莉「涼真さんが感動した山か・・・わたしも見てみたい!」

水城涼真「そういえば天音さんが春に日光白根山でロケするって言ってたけど、それだけやと勿体ないから上州武尊山も提案してみるわ」

若宮朱莉「日光白根山ってそんな簡単に登れるの?」

水城涼真「簡単というか、ロケ収録にしては短い時間の山行になりそうやねん。まあ日光白根山からの景色も最高やったけどな」

若宮朱莉「そうなんだ。それなら2日かけて日光白根山と上州武尊山に登るのがいいのかもね」

水城涼真「蒲田さんが何て言うかが問題やけどな。あっそろそろ日没近いからさっさと鍋割山の山頂まで行こか」


そうして、鍋割山の山頂を目指して歩きはじめた。



午後17時15分・・・鍋割山(標高1332m)


稜線を一旦下って鍋割山のピークへの最後の登りが待っていた。ところがこの登りは特に息を切らすほどでもなくあっという間に登り切った。そして夕日が完全に浅間山のほうへ沈んでいったと同時に目的地である鍋割山の山頂(標高1332m)に到着した。鍋割山の山頂は山頂表記がされている大きな木の看板が立っており、南側には大パノラマで前橋市や高崎市といった群馬県の市街地を望むことができる。ここで水城涼真はカメラの三脚を出して一眼レフカメラで設置してトワイライトタイムを待っていた。それから20分程経つと、西側の空が青と赤のグラデーションに染まり市街地が輝きはじめた。そこから撮影開始となったのだが、どういうわけか水城涼真は西側の夜景とトワイライト色に染まった浅間山の光景ばかり撮影していた。


若宮朱莉「ここからの夜景ってすごいね。群馬県でもこんな光景が望めるんだ」

水城涼真「ここと水沢山ってところからの夜景は格別やねん」

若宮朱莉「涼真さん、どうして西側ばかり撮影してるの?」

水城涼真「ここの見所はあのトワイライト色に染まった浅間山と市街地の夜景やからな」

若宮朱莉「そうなんだ。あっずっと南側に立ってる高い塔ってスカイツリーじゃない?」

水城涼真「そうやで。スカイツリーはトワイライトが終わった後で撮影する予定やねん」

若宮朱莉「ここって東京から100km以上離れてるんだよね?スカイツリーが見えるなんて不思議な感じがする」

水城涼真「関東平野は広い平地になってるからスカイツリーは目立つんよ」


トワイライトタイムが終了すると水城涼真はザックの中からガスバーナーを出してお湯を沸かしはじめた。コーヒーでも作るのかと思ったらザックの中からカップのなめこ汁を2個出した。


水城涼真「寒い時はなめこ汁に限るで。その後で紅茶作るわ」

若宮朱莉「なめこ汁って珍しいね。でも体が温まりそう」


お湯が沸いたところで2人はカップのなめこ汁を飲んで体を温めた。その後、紅茶を作って飲み終えると水城涼真はパノラマ写真を撮影しはじめた。最後に望遠レンズを取りつけてスカイツリーを撮影すると今回の取材は終わりとなった。


若宮朱莉「そういえば今日はどこで宿泊するの?」

水城涼真「うーん、レンタカー返さなあかんし今日中に東京に戻りたいから都内のどっかかな」

若宮朱莉「今から予約取れるかな?」

水城涼真「それが問題やねんな。でも明日は平日やしどっか空いてるビジネスホテルあるやろ」


ところが水城涼真の思惑と反してどこのビジネスホテルも空いていないことに後で気づくことになる。それから下山をはじめたが姫百合駐車場まで戻ってきた時にはもう午後20時30分を過ぎていた。



午後22時10分・・・埼玉県内のラブホテル


関越自動車道を東京方面に走らせながら助手席に座っている若宮朱莉は東京都内のビジネスホテルの予約情報を調べていたのだが、どこも満室となっていた。明日は朝一番にレンタカーを返して新幹線に乗って大阪に戻らなければならない。若宮朱莉は母に連絡したところ通じないので実家で一泊することもできなかった。最終的には天音琴美の家に宿泊させてもらうことも考えたが、それはあまりにも迷惑すぎると思ったので連絡しなかった。


若宮朱莉「涼真さん、都内のビジネスホテルはどこも満室になってるよ」

水城涼真「カプセルホテルってわけにもいかんしな。どないしよかな」

若宮朱莉「とりあえず次の上里サービスエリアで考えない?」

水城涼真「そうやな。最悪車中泊になるけど、この車やとしんどいしな」


上里サービスエリアに立ち寄ってフードコートでお茶を飲みながら2人はどこで宿泊するか話し合っていた。しかしどう考えても宿泊施設がないのでどうすることもできなかった。


若宮朱莉「あ、あのね、変な意味じゃないんだけどラブホテルだったら空いてるんじゃない?」

水城涼真「ラブホって、そんなところスクープされたら大変なことになるで」

若宮朱莉「わたし達は夫婦なんだからいいじゃない。それに宿泊施設がないから仕方ないんじゃない?」

水城涼真「でもなあ、朱莉ちゃんとラブホ行くのはちょっと気が引けるんよな」

若宮朱莉「別にエッチなことする目的で行くんじゃないからいいじゃない。涼真さんは考えすぎなんだよ」

水城涼真「それはそうやけどな。まあしゃーないか・・・」

若宮朱莉「わたし、ラブホテルなんて入ったことないから一度行ってみたいと思ってたの」


そういう話になって2人はラブホテルで一泊することにした。上里サービスエリアから関越自動車道を走らせて20分程するとインターチェンジ前にラブホテルがあったので、すぐさまそのインターチェンジを出てラブホテルへと入っていった。そのラブホテルの外観はヨーロッパのお城のような感じで、中は意外と綺麗であった。空室はたくさんあったので比較的落ち着いた部屋を選んだ。


若宮朱莉「ラブホテルってこんな感じなんだ。なんだか普通のホテルと変わらないね」

水城涼真「落ち着いた部屋にしたからな。それよりシャワー浴びたらさっさと寝よか。もう俺くたくたやねん」

若宮朱莉「そうだね。じゃあわたし先にシャワー浴びてくるね」


若宮朱莉がシャワーを浴び終えた後に水城涼真もシャワーを浴びた。それから缶ビールを飲みながら2人は話をした。


若宮朱莉「涼真さんと一緒に寝るのってテント泊以来じゃない?」

水城涼真「そうやな。でもあんま引っ付いてこんといてな。俺は人が隣にいると寝られへんから」

若宮朱莉「それはわかってる。わたしも今日はくたくただからすぐに寝ちゃいそう」

水城涼真「昨日の両神山で相当疲れたんやと思うわ」

若宮朱莉「そういえばいつか聞こうと思ってたんだけど、涼真さんって谷川岳には興味ないの?」

水城涼真「いきなり谷川岳の話かい!俺2回登ってるけどもうええかなって感じやな」

若宮朱莉「東の谷川岳、西の伯耆大山って雑誌に書いてたから気になったの」

水城涼真「谷川岳は安易に初心者が手を出す山やから遭難率が高いんよ。登山レベル的にはそんな高くないと思うけどな」

若宮朱莉「そうなんだ。そろそろ眠くなってきた」


そう言って若宮朱莉はベッドに入ると5分もしないうちに寝息をたてた。その後、水城涼真もベッドに入ってすぐに眠ってしまった。結局、ラブホテルでは本当に就寝するだけとなったが、今はその距離感を保っておかないと2人の関係が崩れていくと水城涼真は思っていた。


早朝に起床してホテルを出た2人はさっさと東京に戻りレンタカーを返すと新幹線に乗って大阪へと戻っていった。

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