厳冬期に八丁峠から両神山へ
1月27日午後22時・・・
氷ノ山に登って以来、若宮朱莉の仕事が忙しくなって休日には大阪の低山には登っていたものの、一日かけるような登山はできなかった。そんな毎日を過ごしていた水城涼真に久しぶりの執筆依頼がきていた。それは『初心者でも行ける関東周辺の雪山ナイトハイク』という依頼であった。ところが水城涼真にとって非常に難しい依頼内容であった。そもそも雪山ナイトハイク自体が初心者向けではないということと、関東周辺は夜景に適した山が少ないのである。最初に考えたのは丹沢の大山であったが、雪山にしては積雪量が少ない山域なので取材をしても雪が積もっていない可能性がある。三つ峠山ということも考えたが、山行工程が長すぎるので初心者向けではない。
そこで水城涼真はパソコンで昔登った山の情報を調べたところ、群馬県の赤城山麓にある鍋割山の記事が出てきた。片道2.5kmでコースタイムも登り1時間半、道標もきっちり設置されているので初心者向けであり、素晴らしい夜景を望むことができるのだ。この鍋割山こそ今回の依頼にぴったり一致する山だと思った水城涼真だが、せっかく関東遠征してこの鍋割山だけ登って帰るのは勿体ないと感じた。そこでもう一つ本格的な雪山登山を楽しめるような山を調べていると、埼玉県の両神山の記事が目に入った。以前の秋頃、水城涼真は八丁峠経由で両神山に登ったが、厳冬期にこのルートで登ったことがない。このルートで雪山登山をすると面白いのではないかという衝動に駆られたのだ。そんなことを調べていると若宮朱莉が帰宅してきた。
水城涼真「朱莉ちゃんおかえり、ちょっと部屋に来てほしいんやけどええかな?」
若宮朱莉「ただいま!部屋に来てほしいってどうしたの?」
水城涼真「とりあえず部屋に入って」
若宮朱莉「わかった」
若宮朱莉は部屋に入ってテーブルの前に座ると、水城涼真はパソコンの前に座って話しはじめた。
水城涼真「朱莉ちゃん、最近はよー東京に行って仕事してるみたいやけど、今度はいつ行く予定なん?」
若宮朱莉「えっと2月8日の朝かな。バラエティー番組の収録と天音さんのラジオのゲスト出演、9日は原宿から渋谷歩きの収録になってる」
水城涼真「その次の日の10日と11日の祝日の予定は?」
若宮朱莉「10日と11日はオフだから9日の夜に大阪へ戻る予定にしてるけど、どこか行くの?」
水城涼真「実は取材で群馬にある赤城山山麓の鍋割山へ雪山ナイトハイクに行く予定なんやけど、朱莉ちゃんは9日に大阪へ戻らんとそのまま東京に滞在することは可能?」
若宮朱莉「滞在することは可能だけど、別のホテル予約しないといけないかも。わたしは12日の午後までに大阪に戻れればいいんだけどね」
水城涼真「じゃあ10日は両神山に登って、その次の日の11日に鍋割山で雪山ナイトハイクに行くのはどない?」
若宮朱莉「日本百名山の両神山だよね?涼真さん一度登ったんじゃないの」
水城涼真「そうなんやけど雪山登山してみると面白そうなんよ」
若宮朱莉「まさか上級ルートの八丁峠だったっけ!?そのルートで登るの?」
水城涼真「当然や。日向大谷口からのルートなんて面白くないからな」
若宮朱莉「そんな上級ルートを厳冬期に登るなんて涼真さんらしいね・・・せっかくだから天音さんにも声かけてみるよ」
水城涼真「せやな。10日に決定やから天音さんに空いてるか聞いてみて」
そういうことで2月10日は八丁峠経由で両神山へ登り、11日には赤城山麓の鍋割山へ雪山ナイトハイクに行くことが決定した。その後、シャワーを浴び終えた若宮朱莉は早速天音琴美にSNS通話を繋いで誘いをかけてみた。
天音琴美「10日はオフだけど11日は残念ながらお仕事だから、両神山だけご一緒させてもらうね。でも厳冬期に八丁峠経由で登るなんて最上級レベルで危険じゃない?」
若宮朱莉「わたしもそう思ったのですが、涼真さんはどうしてもそのルートで登りたいみたいです」
天音琴美「涼真さんが一緒なら大丈夫かもしれないけど、あたし自身がついていけるか心配かも」
若宮朱莉「大峰の鐵山に登れたんだから大丈夫だと言ってました」
天音琴美「そうなんだ。冬の両神山には登ってみたいと思ってたから楽しみにしておくね」
若宮朱莉「それと必ず10爪か12爪のアイゼンとピッケルを必ず持ってきてとのことです」
天音琴美「わかった。それじゃあ10日はあたしが車を出すので涼真さんによろしく言っておいて!」
2月9日午後20時前・・・ラジオ局
若宮朱莉はテレビ局でバラエティー番組の収録を終えると、天音琴美のラジオにゲスト出演するためラジオ局へと向かった。明日の10日は全国的に高気圧に覆われて快晴になっていた。ラジオ局に入った若宮朱莉は天音琴美と打ち合わせを少しすると午後20時になった。エコーのかかった天音琴美の声で「天音琴美のあま~い夜」というジングルから音楽が流れて放送がはじまった。
天音琴美「2月9日午後20時を回りました。みなさん、こんばんは。女優の天音琴美です。寒い日が続いておりますが皆様はいかがお過ごしでしょうか?・・・(中略)さて、本日も素敵なゲストの方にお越しいただいておりますので早速ご紹介させていただきます。あたしの大の親友でもあり登山仲間でもありますタレントの若宮朱莉さんです!」
若宮朱莉「みなさんこんばんは。タレントの若宮朱莉です!ゲストとして呼んでいただいたのはこれで3回目なのですが、本日もよろしくお願い致します」
天音琴美「朱莉ちゃん、今回もわざわざ東京まで足を運んでくれてありがとうね!」
若宮朱莉「いえいえ、こちらこそまたゲストに呼んでいただきありがとうございます」
天音琴美「今日の天音琴美のあま~い夜はあたしと若宮朱莉ちゃんの山ガールトークを中心にお送りしていきたいと思います」
(・・・中略・・・)
天音琴美「今夜の山ガールトークですが、一ヵ月ほど前に雪山登山をした氷ノ山について、感想も含めてお話していきたいと思います。感想をまとめると猛吹雪の中を歩いてとても辛かったのですが、そのあと晴れてスノーモンスターを見て楽しめて良かったです。朱莉ちゃんの感想としてはどうだった?」
若宮朱莉「あのブリザードの中を歩くのはいい経験になりましたが、何度も心が折れそうになりました。でも急に天気が回復して素晴らしいスノーモンスターを見れたので本当に良かったと思います」
天音琴美「そういえば三の丸避難小屋の中にあった温度計が氷点下20度になっていて驚いちゃったのと同時に逆に寒さを感じたよね」
若宮朱莉「そうですね。わたし自身が凍えるんじゃないかと思ってドキドキしていました」
天音琴美「後で調べてみたんだけど、厳冬期の氷ノ山って天候が悪化しやすくて上級者向けらしいのよ。標高1500m程度の山だからといって侮れないよね」
若宮朱莉「そうなんですよね。標高だけで登山レベルを判断してはいけないってことを身にしみて感じました」
その後も1時間半ほど山ガールトークが続いていた。
2月10日午前5時・・・恵比寿のビジネスホテル前
午前4時30分に起床した水城涼真と若宮朱莉はすぐに着替えて登山準備を済ませるとホテルのチェックアウトをした。外に出るとまだ薄暗くて歩いている人もほとんどいなかった。ホテルの前で待っていると天音琴美が運転する黒い4WDクロスカントリー車がやってきた。そして運転席から水色のソフトシェルジャケットに黒いトレッキングパンツを履いた天音琴美が降りてきて「おはようございます」と挨拶した。水城涼真と若宮朱莉は荷物を積み込んで車に乗ると天音琴美は運転席に座って車を発進させた。
天音琴美「厳冬期の両神山ってどうなんだろうね」
水城涼真「今日は景色というよりあのギザギザを楽しむことが目的やけど、積雪期やからめちゃくちゃ面白いんとちゃうかな」
若宮朱莉「それ楽しみにしてるの涼真さんだけだと思うよ」
水城涼真「いや、八丁峠経由のルートは秋でもめっちゃ楽しかったんよ。ただ登り返しがうっとおしいけどな」
天音琴美「あたし、昨日から不安しかなかったんですけどね。これも経験だと思ってチャレンジしてみます」
若宮朱莉「わたしは今も不安しかありませんよ。でも本当に経験ですよね」
水城涼真「両神山はあのギザギザをクリアしてこそやと俺は思ってるからな」
車は首都高速から関越自動車道に入って新潟方面へと走らせていた。途中で高坂サービスエリアに立ち寄ると若宮朱莉はフードコートで朝から唐揚げ定食を注文して食べていた。
水城涼真「朱莉ちゃん、朝からよーそんな油っこいもん食うよな」
若宮朱莉「だって朝は何も食べてなかったからお腹ペコペコだったんだもん」
天音琴美「あたしも朝からそんなに食べれないよ」
水城涼真「そういえば天音さんって独身やのになんであんなでかいクロカンに乗ってるん?」
天音琴美「あれは山に行く用に買った車なんだけど、大きいほうが運転しやすいからですよ」
若宮朱莉が唐揚げ定食を食べ終えると3人はさっさと車に乗った。その理由として今回のルートに関してコースタイムがあまり読めないので早めにアプローチとなる上落合橋登山口に到着したかったのである。車は花園インターチェンジを出て国道140号線の彩甲斐街道を西に走らせた。
午前7時50分・・・上落合橋登山口~八丁峠
国道140号線から県道210号線に入ると除雪はされておらず道路は積雪していた。積雪量はそれほど多くなかったので立往生することはなくスムーズに車を走らせることができたが、上落合坂登山口の前の駐車スペースに到着した時は結構な積雪量であった。さすがはパワーのある4WDだけあってその積雪量であっても走らせることができた。3人は車から降りるとすぐに登山準備をして12爪アイゼンを装着すると上落合橋登山口の階段を登って入山した。まずは樹林帯の中の登りであったが、誰も登っていないのかトレースがついていなかった。最初はかろうじて登山道はわかったが、その先からは水城涼真のルーファイがはじまった。天気は晴れていたのだが樹林帯の中は陽が届かず少し薄暗かった。
若宮朱莉「この尾根を登っていくと八丁峠に到着するみたいだけど直登はしないの?」
水城涼真「いやそこガレ場になってるやろ。浮石もいっぱいあるから直登したら危ないねん」
天音琴美「ところどころ登山道ってわかるところもあるから直登は避けたほうがいいかも」
若宮朱莉「こういうところは直登しないほうがいいんですね」
そこからわずかながらの登山道を辿りながら3人は樹林帯の中を登っていった。そのうち樹林が少なくなり明るくなってきたが、斜面が急にもなってきた。水城涼真は「この斜面急やから蹴り込むような感じで登ってきてな」と言った。そうして後ろを歩く若宮朱莉と天音琴美は蹴り込むような感じで急斜面を登っていった。植林地帯から自然林に変わると大きな岩が出てきた。そこからは岩の多い登りになったが、ピンクテープがところどころに巻かれていたのでほぼ登山道で登っていくことができた。次第に周りの風景は白銀の世界へと化していき上落合橋登山口から樹林帯を登って約1時間程で八丁峠に到着した。八丁峠には表記されている木柱にベンチとテーブルが設置されていたので、そこで一旦休憩とした。
水城涼真「よし、本番はここからや」
天音琴美「いよいよここからギザギザを縦走していくんですよね」
若宮朱莉「ここまではこれといった危険はなかったけど、ここからなんですね」
水城涼真「アップダウンが激しいから下山はだるいんやけどな」
八丁峠で15分程休憩をした後で3人はいよいよ両神山のギザギザに挑みはじめた。
午前10時10分・・・西岳(標高1613m)~東岳(標高1660m)
八丁峠からルートを東にとってしばらく歩いていると岩場が出てきた。まずは簡単な岩場の登りだったのでクリアできたのだが、八丁峠から0.5km地点からだんだん細尾根になってきた。すっかり積雪量も増えてきて若宮朱莉と天音琴美は道なき道を歩いている感覚に陥った。その先で今回はじめての鎖場となった。もちろん鎖は凍っていたが持てないことはなかった。
水城涼真「鎖はしっかり持つことができるんやけど、アイゼンの前爪を上手く使いながら岩場を登ってきてな」
若宮朱莉「わかった。大峰の鐵山直下の鎖場の時と同じ登り方だね」
天音琴美「八丁峠のルートってやっぱり険しいんだね」
水城涼真「まだこれは序盤でこの先もっと険しくなるから覚悟しといてな。じゃあ先に登るわな」
水城涼真は鎖を持つとアイゼンの前爪を使いこなしながらスルスルと岩場を登っていき「これめちゃくちゃ面白いわ!!」と言った。続いて若宮朱莉が登りはじめたが、意外とスルスルと登ることができた。最後に天音琴美が怯えながら鎖を掴むとゆっくりと登っていった。そこから細尾根を少し進んだところで西側の眺望が開けた場所に到着した。
若宮朱莉「すごい景色!」
天音琴美「こっち側のルートは途中でこんな景色が見れるんだね」
若宮朱莉「これから進む方向にピークがあってさらにピークがあっての連続だけど全部登っていくの?」
水城涼真「そうや。まず手前に見えてるのが西岳やと思うわ」
天音琴美「すごいアップダウンの連続が続くのね」
そこから少し先に進むと左右が崖になっている細い道になった。水城涼真は「ここの通過は気を付けてな」と言ってゆっくりとそこを通過していった。八丁峠から約1時間の細尾根歩きと鎖場のアップダウンをして行蔵峠に到着した。予想以上に時間がかかってしまったが西岳まであと100m程の距離である。そこから約5分程度でついに西岳の山頂(標高1613m)に到着した。西岳山頂には山頂表記がされている木柱と道標が設置されており少し広い場所となっている。若宮朱莉と天音琴美は体力的にもだが精神的にも疲れていたようだったのでこの西岳山頂で少し休憩することにした。
若宮朱莉「ちょっと精神的に疲れたかも」
天音琴美「そうだよね。でも涼真さんはめちゃくちゃ楽しんでるみたい」
水城涼真「厳冬期の両神山がこんな面白いとは思わんかったからな。二人ともこのくらいクリアできんと冬のアルプスとか行かれへんで」
若宮朱莉「非日常感はあるんだけど、この先もっと危険な場所があるんだよね?」
水城涼真「せやな。これまでは序盤みたいなもんなんよ」
天音琴美「あたし、こんな雪山登山ははじめてだし、厳冬期の両神山がこんなにレベルが高いとは思わなかった」
若宮朱莉と天音琴美が落ち着いたところで3人は先を進みはじめた。まずは西岳を下っていくのだが、そこは3人ともスルスルと下りていくことができた。そこから次に登る東岳のピークが見えたが先はほぼ岩稜地帯になっている。
若宮朱莉「次はあのピークに登るんだよね!?ずっと岩稜地帯になってない?」
天音琴美「雪が積もっていても岩がむき出しになってるもんね」
途中で龍頭神社奥宮を通過したが雪に埋もれていたのでよくわからなかった。そこから先はもう積雪した岩登りがはじまった。まずは鎖場の登りだが、これまでより急斜面になっておりもはや崖登りと化していた。しかし若宮朱莉と天音琴美はだんだん積雪した岩登りに慣れてきたのかスルスルと登っていった。そんな2人を見た水城涼真は「二人とも前爪の使い方が上手くなってきたやん」と言った。ところが問題はその次の鎖場で、ここは細い岩場になっており足の置き場があまりないのだ。
若宮朱莉「涼真さん、ここ足の置き場に困るんだけどどうやって登るの?」
水城涼真「足の置き場はあるよ。俺が最初に登るからその足跡に沿って登ってくればええよ」
そういって水城涼真はその細い岩場をスルスルと登っていった。たしかにここは女性にとって足の置き場に困るような岩場であるが、水城涼真はそれを考慮してわざと小足で登っていった。その足跡を辿って若宮朱莉と天音琴美は登っていった。続いて今度は誰が見ても危険と思われる少し長い鎖場が現れた。さすがにこの岩場を見た若宮朱莉と天音琴美は少し怯えてしまった。ところが水城涼真は目を輝かせながら「もうこんなんみたらアドレナリンがバンバン飛ぶわ!二人ともかなり上手くなってるからこの岩場も大丈夫や」とい言ってスルスルと登っていった。続いて恐る恐る若宮朱莉と天音琴美も鎖を握りながら登りはじめたが鎖場のアップダウンを繰り返してきてすっかり慣れていたので、意外と簡単に登っていくことができた。そして西岳から約40分程で東岳の山頂(標高1660m)に登頂した。東岳の山頂はベンチとテーブルが設置されていたので、ここでも休憩することにした。
水城涼真「ここまで来たらあともう少しやわ。まあ冬はこの東岳で引き返す人も多いみたいやけどな」
若宮朱莉「わたし、だんだん慣れてきたよ」
天音琴美「あたしも慣れてきた。恐怖心もだんだんなくなってきた」
水城涼真「もう俺ここ楽しくてしゃーないんよ。ただ、最後まで油断せんようにせなあかんけどな」
3人は東岳の山頂で十分に休憩をとった後、いよいよ両神山の山頂へ向けて出発した。
午前11時50分・・・両神山(標高1723m)
東岳からは意外とすんなり進んでいくことができた。金山岳、前東岳を経て細尾根を歩いていき、ついに両神山の山頂(標高1723m)に登頂することができた。山頂には三角点と岩上には立派な山頂看板が設置されていた。積雪量は膝上まであったが、厳冬期に八丁峠経由で両神山の山頂まで登ることができたのは、天候に恵まれたことと、これまでの経験からであろう。ただ、今回は水城涼真が楽しんでいたのだが、普通に考えると無茶な山行であったのかもしれない。
水城涼真「二人とも記念撮影はその岩の上の山頂看板の前がええと思うわ」
天音琴美「そうですね。朱莉ちゃん、岩の上で二人並んで撮影してもらおう」
若宮朱莉「はい。涼真さんこのスマホでも撮影してね」
岩の上に設置されている両神山の山頂と記載された看板の前に2人が並ぶと水城涼真は何枚か撮影した。
水城涼真「今日は景色もよー見えてるやん。左側の高い山が雲取山で右側の高い山が甲武信ヶ岳やな」
天音琴美「そういえば涼真さん、あの雲取山を四時間で登ったって本当ですか?」
水城涼真「ホンマやけど、あの時は早歩きで登ったからやと思うわ。日帰りでキツかったのは北岳と燧ヶ岳の日帰り登山やったな」
天音琴美「北岳を日帰りしたんですか!?本当に化け物ですね」
水城涼真「あの時は寝不足で高山病になって下山が大変やったんよ。距離で言ったら燧ヶ岳も片道12kmで辛かったわ」
天音琴美「片道12kmって往復で24kmですよね?それを日帰りするなんて考えられない」
若宮朱莉「わたし、まだまだそんなことできないよ」
天音琴美「あたしもそんなこと真似できないよ」
水城涼真「そこまで真似せんでもええよ。俺がめちゃくちゃなことしてただけやから」
そんな話をしながら昼食となった。両神山の全域は火気厳禁なのでガスバーナーは使えず、あらかじめポットに入れていたお湯を使ってカップラーメンを作っておにぎりと一緒に食べていた。
天音琴美「今回の雪山登山であたし自信ついたかも!いい経験になって本当に良かった」
若宮朱莉「わたしも登山レベルが一段階上がったように思う」
水城涼真「それならよかったわ。下山も同じように鎖場のアップダウンになるけど、そこまで慣れたら楽しめると思うで」
昼食を終えて少し休憩していると1時間経っていたので3人は下山をはじめた。登りの時と違って若宮朱莉と天音琴美もすっかり積雪した岩場に慣れていたので意外と早く八丁峠まで戻ることができた。しかし上落合橋登山口に戻ってきた時、時刻は既に午後17時前となっていた。その後、3人は車に乗って東京へと戻っていった。
先ほどの述べたように今回の山行は水城涼真のわがままでもあってのことで、安易に真似して厳冬期に挑むのは非常に危険であるのだ。




