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雨の行者還岳は神秘に満ちてました

7月7日午後20時頃・・・


夜になっても雨は上がらず、世間では七夕イベントが各地で中止されていた。夕食を終えた水城涼真は昼間にあった若宮朱莉とそのマネージャーである井野口晃のやりとりに介入して少し疲れていたのだが、落ち着きを取り戻したところで登山仲間である樫田祐に電話をかけた。


水城涼真「もしもし樫田君、突然なんやけど次の日曜日は何か予定ある?」

樫田祐「今度の日曜日ですか?特に予定はありませんけど、こんな雨続きで取材でも行くんですか?」

水城涼真「実は大峰の行者還岳に取材にいこうと思ってるんやけど、たしか樫田君は行ったことなかったよね?」

樫田祐「はい。行者還岳は行ったことありませんね。雨の大峰を狙うんですか?」

水城涼真「大峰は雨が降ってなんぼの山だし、行者還岳は距離も短いからちょうどええと思ったんだけどどうかな?」

樫田祐「雨の大峰いいですね~雨続きで暇なので行きたいです!」

水城涼真「了解!じゃあ日曜日の朝6時に吹田駅のいつもの場所に来てもらえる?」

樫田祐「わかりました。じゃあ朝6時にそっちまで行きますわ」

水城涼真「それとなんやけど、俺らの登山仲間に入れて欲しいって女の子がおって、その子も連れていくんやけどええかな?」

樫田祐「女の子ですか!?別に構いませんけど、僕らの登山仲間に入れてほしいなんて珍しいですね。どんな子ですか?」

水城涼真「たしか樫田君と同じ年の女の子やねんけど、俺の登山仲間に会いたいって言ってて・・・まあ、直接本人に会った時に話してみて!」

樫田祐「はあーまあわかりました。ほんなら日曜日よろしくお願いしますわ」


電話を切った後、水城涼真はさっさとシャワーだけ浴びると、もうベッドに横たわっていた。



7月9日午前4時10分頃・・・


日曜日になり行者還岳に行く日が訪れた。朝早く目を覚ました水城涼真は天気や道路情報を再度確認していた。奈良県の天川村の天気は曇り時々雨で降水確率が午前中は30%で午後は50%と少し増えていた。特に通行止めになっている場所もなかったので、登山の準備をしていたのだが、取材は午前中が勝負になりそうだと感じていた。朝早いが樫田祐に電話をして早めに出発したいことを伝えた。そして、午前4時30分を過ぎると若宮朱莉の部屋である103号室へ行ってドアを何度かノックをした。するとドアが開いてまだ寝ぼけた状態の若宮朱莉が「おはようございます」と言った。早めに出発したいので至急登山の準備をしてほしいと伝えると「わかりました。急いで準備します」と言った。


先に車に荷物を積み終えた水城涼真は5分ほど待っていると若宮朱莉が急いでやってきた。さっさと車のトランクに荷物を積んで若宮朱莉は助手席に座った。水城涼真は「朝早くになってしまってごめんね。今日は午前中が勝負なんよ」と言った。若宮朱莉はまだ少し寝ぼけた口調で「そうなんですね。午後から雨が酷くなるのでしょうか?」と言うと水城涼真は「そうなんよ。早起きさせてごめんね」と答えた。そのまま車を吹田駅まで走らせて樫田祐の到着を待っていた。そして始発の電車が到着すると、樫田祐が走って車へやってきた。


樫田祐「涼真さん、お久しぶりです!今日はよろしくお願いします」

水城涼真「樫田君、先日の山スキー以来で本当にお久しぶり!助手席に乗ってる女の子が今回一緒に行くわけありの子なんよ」

樫田祐「わけありですか!?とりあえず、車に乗ってから詳しい話を聞かせてもらいますわ」


樫田祐が荷物を車のトランクに積み込むと後部座席に座ったので車を走らせた。助手席に座っていた若宮朱莉は「おはようございます」と挨拶した後に硬直状態になったかのように黙り込んでしまった。しばらく車内では沈黙が続いていたのだが、樫田祐が話を切り出した。


樫田祐「涼真さん、助手席に座ってる人ってどっかで見たことあるような気がするんですがお知り合いですか?」

水城涼真「それについて樫田君を信用して話すけど、実は全国的に有名なタレントの若宮朱莉ちゃんなんよ」

樫田祐「あの有名な若宮朱莉さんですか!ちょっとびっくりしましたけど、どういうことなんですか?」

水城涼真「これにはちょっとした理由があるんよ・・・」


水城涼真は樫田祐に若宮朱莉が登山仲間に入れてほしいために、わざわざ大阪へ引越ししたことや、その意気込みや経緯を説明した。樫田祐は一貫した姿勢でずっと話を聞いていた。そして、若宮朱莉が全くの登山素人であるという話もした上で、樫田祐は口を開いた。


樫田祐「涼真さん、僕は別に構わんと思いますよ。正直、僕のようなことをしてる人ってごく少数やないですか?その仲間に入りたいという人は歓迎するべきやと思いますよ」

水城涼真「そうなんやけど、俺らは命がけでしてることもあるからな。その意味を理解してもらう必要はあるんよね」

樫田祐「そこはこれから涼真さんが教えていけばええんとちゃいます?僕は登山仲間が増えることに賛成しますよ」


そこで黙っていた若宮朱莉が後部座席のほうに顔を向けた。


若宮朱莉「樫田祐さん、ありがとうございます!わたし、覚悟はできていますので今後ともよろしくお願いします」

樫田祐「若宮朱莉さんって同じ年齢やし、お互い敬語なしで話そう。これからもよろしくね」

若宮朱莉「わかりました。だったら樫田君と呼ぶね。わたしのことは涼真さんのように朱莉ちゃんって呼んでくれていいよ。これからよろしくね」

樫田祐「じゃあ遠慮なく朱莉ちゃんって呼ばせてもらうわ」


そういう話を聞いて水城涼真は心の中でほっとしていた。若宮朱莉という有名タレントを目前とした樫田祐が全く動揺せずに、仲間に入りたいという人を灌漑するべきだと言ったことについて自分と同じ考え方でいるという安心感もあった。その後、樫田祐と若宮朱莉は会話を続けているうちに同じAB型なのか、すっかりお互いに打ち解けているようであった。それから一時間程車を走らせてコンビニエンスストアに立ち寄った。


樫田祐「涼真さん、ほんまにこのコンビニ好きですね」

水城涼真「ここが時間的にも半分の場所やから休憩場所にもなるんよ。いつもの店員さんおるかな!?」


水城涼真はさっさと車から出てコンビニの店内へと入っていった。すると若宮朱莉が「食料調達ですね。涼真さんの言ってたいつもの店員さんって誰のことなの?」と言うと樫田祐が「大峰に行くときはいっつもこのコンビニに立ち寄って食料調達するんよ。その時、いつも可愛らしい高校生くらいの店員さんがいてはるんやけど、その人のことですわ」と言った。若宮朱莉と樫田祐がコンビニへ入ると水城涼真がやってきて「昼食は軍鶏鍋にしようと思って材料は持ってきてるから、飲み物と行動食だけ買っとけばええよ」と言った。


それぞれが買い物を済ませて再び車に乗って行者還岳の登山口を目指して車を走らせた。若宮朱莉はすっかり寝入っていたが、天川村に入って沢沿いを走らせていると、あまりにもガタガタした道になっていたせいか目を覚ました。細い沢沿いの道がひたすら車を走らせていると若宮朱莉が「とても綺麗な沢ですね。山道ではなさそうですが、登山口は近いのですか?」と聞いてきた。水城涼真は「大峰の沢は人があんまり入れへんから綺麗なんよ。今は沢沿いの道やけど山道に入るよ。ガードレールのところどころに番号が書いてるやろ?これは100メートル間隔で設置されてるみたいなんやけど、その番号が90になったところが登山口やわ。今は175番やから、まだ先やな」と答えた。

そこから橋を渡って広い道路になったが山道になった。山道をあがりきったところの駐車場にたくさんの車が並んでいた。


若宮朱莉「弥山登山口?どうしてここの駐車場だけ車が多いんですか?」

水城涼真「ここが近畿最高峰の八経ヶ岳、つまり日本百名山の大峰といわれるとこの最短ルートやからね」

若宮朱莉「そうなんですね。その先にある怖そうなトンネル入るのですか?」

水城涼真「もちろん、登山口はこのトンネルを抜けた先やから通るで」


車のライトをつけてトンネル内に入ると出口は見えているが意外と長い。そしてトンネルを抜けると今度は山道が下りになった。急カーブの連続が続いた先に道幅が広くなった場所に出た。その道路脇に車を駐車すると水城涼真は「到着したで」と行ってエンジンを止めた。


そして3人とも車を出てトランクを開けるとさっさと登山準備をはじめた。若宮朱莉は荷物が少なかったので最初に登山準備が完了して「登山口はどこですか?」と聞くと水城涼真が靴を履きながら「90番ポストの看板のすぐ横に登り階段があるやろ。それが登山口や」と言った。若宮朱莉が「うわー本当に90番のところなんですね。登山口の看板もなにもありませんね」と言ったので水城涼真が「そう、こういうのをバリルートって言うやけど、もう大勢の人が登ってるから整備された登山道になってるんよ」と答えた。3人の登山準備が完了して「よろしくお願いします」と声をかけあった。


水城涼真「朱莉ちゃん、そんなペースで歩くとすぐに息切れしてまうで」

若宮朱莉「ワクワクしてついついはしゃいじゃいました。このペースで歩くのはよくありませんか?」

水城涼真「長い山行工程になった場合、そのペースで歩いたら息切れして、すぐバテてしまうんよ」

若宮朱莉「なるほど。息切れするとまずいですか?」

水城涼真「一度息切れさせてしまったら、その先が続かんようになるから息切れせんようにスローペースで歩いていかなあかん」

若宮朱莉「そうなんですね。わかしました。息切れしないペース配分で歩くようにします」

水城涼真「スローペースで歩くのもコツがいるんよな。とにかく、今回は俺と樫田君の真ん中を歩いて、ついてくるようにして!」

若宮朱莉「わかりました」


水城涼真は厳しいことを言っているようだが、素人同然の若宮朱莉には一つ一つ教えていかないといけないということを意識していた。


ガスってもおかしくない気象条件だが、最初のうちは全くガスっていないただの樹林帯が続いていた。しかし、車で走っている時に麓から見ると稜線付近はすっかりガスっていたので、登っていけば期待はできそうな感じではあった。だからといって焦ってハイペースで登るのはよくないので、一定のペースを保ちながら徐々に標高をあげていった。そのまま樹林帯を登っていくと少しガスってきた。その先には有名な巨木が見えた。


水城涼真「この巨木が見所の1つやで」

若宮朱莉「変わった巨木ですね。一本の木から二つに割れているなんて珍しい」


水城涼真は巨木を数枚撮影して大普賢岳の展望地まで登ったが、ガスっていて何も見えなかった。そして、そこからすぐのところにタイタン広場と呼ばれる場所に到着した。「タイタン」とは、マツダのタイタンという車種で、ここにはそのE-2500という型番のトラックが捨てられている場所である。


水城涼真「もう40分ほど登ったからここで一旦休憩しよか。樫田君の撮影に時間もかかるやろうしね」

樫田祐「さすが涼真さん、わかってはるじゃないですか!もうこいつ可愛くてたまりませんわ」

若宮朱莉「それにしても、こんなところまでどのようにしてこんな車を捨てたのか不思議ですね」

水城涼真「さすがにこのタイタンは不法投棄やからとても雑誌には載せられへんなあ」


樫田祐はかなり興奮しながらタイタンを撮影しまくっていた。そのうち若宮朱莉も記念撮影といいながら何枚もスマホで撮影していた。どうやらオフィシャルブログにアップするつもりのようだ。30分ほど滞在して出発する事になった。


タイタン広場を後にして稜線まで登っている途中で完全にガスの中へ入ったようだ。樫田祐は「これは期待できるんとちゃいます?」と言った。もちろん水城涼真はガスの中の風景を何枚も撮影しながら登っていった。


そして、いよいよ稜線である大峰奥駆道まで登りつめた。完全に周辺はガスっていて最高のロケーションと化していた。目指すは行者還岳なので北側を歩いていった。撮影をしながらひたすら大峰奥駆道を歩いていくと、広範囲にわたる苔地帯があった。


若宮朱莉「これは・・・苔とガスった風景が完全にコラボしてとても幻想的で神秘的です!!」

水城涼真「大峰はガスってなんぼって言ってた意味が伝わったみたいやな」

若宮朱莉「十分に伝わりましたよ!!さっきから歩いていて人もいなくて本当に神秘的な場所だと感じていましたし、こんな景色が見れるなんて思いませんでした」

樫田祐「これはたまりませんわ。これぞまさに大峰ですやん!」


苔地帯を後にして20分ほど歩いていくと綺麗な小屋が見えてきた。水城涼真は「あれが行者還小屋やけど、ザックをデポして先にピークハントしよか」と言った。3人は小屋にザックを置いて先に頂上のピークハントをすることにした。カメラだけは持っていき15分ほどで標高1544mの行者還岳山頂に到着した。山頂は樹林に囲まれて展望も何もない場所なのでさっさと記念撮影だけして行者還小屋へ戻った。


水城涼真「さあ、軍鶏鍋作るでー!!軍鶏肉はたくさんもってきて野菜は少ないけど、うどんは一玉だけ持ってきたわ」

若宮朱莉「それにしても無人なのにすごく綺麗な小屋ですね。10人以上は宿泊できそう」

水城涼真「朱莉ちゃん、この鍋に半分だけ水を入れてきてもらってええかな?その右奥に水道があるから」

若宮朱莉「わかりました。水を入れてきますね」


若宮朱莉が水を半分入れた鍋を持ってくると、水城涼真がバーナーの上に鍋を置いて火をつけた。そして準備していた秘伝の鶏と甘味のある醤油出汁を鍋の中に入れて煮えてくるのを待っていた。


水城涼真「朱莉ちゃん、大峰はどう?こんな秘境の山は日本でここしかないって言えるくらいのところやで」

若宮朱莉「父の登山計画ノートに大峰という単語が多くあった意味がわかった気がします。雨だからこそ秘境感、そしてすごく非日常的で感動しました!!!」

樫田祐「大峰みたいなところ日本にはもうあらへんのとちゃいます?ここは公共交通機関でのアクセスは最悪ですし、その分人が少ないから秘境と言えるんやと思いますわ。生えてる植物や樹林もぜんぜんちゃいますしね」

水城涼真「大峰以外の山も行くけど、大峰には他の魅力もあるし、基本は大峰山脈が俺らのホームグラウンドやから朱莉ちゃんもそのつもりでおってな」

若宮朱莉「もっと他の大峰のことについても知りたいって思いました!」

水城涼真「よし、そろそろ軍鶏鍋が煮えてきたわ。さあ、みんな食べよ!!」


3人とも軍鶏鍋を食べて「めちゃくちゃ美味しい!!」と少し大きな声で言った。山で食べるとなんでも美味しく感じるが、この軍鶏鍋に関してはある小説のレシピから秘伝の出汁を作ったのだ。


若宮朱莉「すき焼きではないですが、砂糖醤油と鶏の出汁が濃厚ですごく美味しいです」

水城涼真「実はこの秘伝の出汁は江戸時代の小説を参考に作ったんよ」

樫田祐「江戸時代にこんな美味しいもん食べてはったんですか?鶏の旨味もちゃんとして最高やないですか!」


そんな話をしていると鍋の具材が一気になくなった。若宮朱莉が「3人だとすぐに無くなっちゃいましたね。もうこれだけですか?」というと水城涼真が「〆におじやを作るわ。東京やと雑炊っていうんかな」といって、ご飯のパックを2つ開けて鍋に入れた。そしてその上から生卵を2つ割って入れて、塩を少々かけると混ぜ合わせていった。水城涼真は「ご飯の量が少し多かったかもしれんわ。これ全部食べれるかな?」と言うと若宮朱莉が「わたし、まだまだ食べれますよ」と言った。持ってきていたプラスチック製のレンゲを配って、2分ほど経って軍鶏鍋雑炊ができあがると、若宮朱莉が大量のご飯を容器に入れて食べはじめた。樫田祐が「おじやも最高ですね」と言うと若宮朱莉は「山でこんな美味しいもの食べれるなんて幸せです」と言った。水城涼真と樫田祐はそれぞれ半分くらいの量を食べ終えて満腹状態になっていたが、若宮朱莉は残ったご飯も全て食べてしまった。


水城涼真「朱莉ちゃん、家系ラーメンの時もやったけど、そんなに食べて大丈夫なん?」

若宮朱莉「今日は運動もしましたし、わたし、昼間は結構食べるほうなので大丈夫ですよ。その代わり夜はほとんど食べないです」

水城涼真「じゃあ、朱莉ちゃんが綺麗に食べてくれたし、さっさと片付けて下山しようか」


食事中にも不要なものを片付けていたので下山準備はすぐに整った。小屋内の忘れ物チェックをした後、3人は小屋の外に出た。するとさっきのガスが嘘だったかのように晴れて陽がさしていた。樫田祐が「これは奇跡やないですか」と言うと水城涼真は「これやと展望を楽しみながら下山できるな」と言った。そして、まずは小屋から少し歩いて登り返したところにある展望地で立ち止まった。


水城涼真「朱莉ちゃん、ここから東側にみえるあの山脈が台高山脈といって大峰山脈と台高山脈は近畿の屋根と言われてるんよ。一番高くなってるところが、日本百名山の大台ヶ原あたりやわ」

若宮朱莉「あの辺りが大台ヶ原なんですね」

水城涼真「秋になったら大台ヶ原もバリルートで行こか」

若宮朱莉「是非連れていってください!」


そして大峰奥駆道をひたすら南下していくと今度は南西側が良く見える場所があったので立ち止まった。


若宮朱莉「ここよりさらに高い山があるんですね」

水城涼真「あの一番高い山が近畿最高峰の八経ヶ岳でその隣が弥山やで。この道をひたすら進んでいったら行けるんやけど、ここからやと4時間くらいはかかるな」

若宮朱莉「隣の弥山からずっと尾根伝いに下がっていくと、その途中に1つだけ尖った山が見えますが、あれはただの尾根道ですか?」

水城涼真「あれは鐵山てっせんという山で、あのカッコいい山容に惹かれて2年前くらいに樫田君と登ったわ。あそこはこの冬に登ると楽しいんよ」

若宮朱莉「たしかにカッコいい形をしていますね。わたしも登ってみたいです!」

水城涼真「朱莉ちゃんは冬に連れていく予定やから」

若宮朱莉「是非おねがいします!!」


そして大峰奥駆道との分岐地点から登ってきたタイタン広場のほうへ下っていった。途中で樫田祐が「ガスってないタイタンの撮影してもええですか?」と聞いてきたので水城涼真は「ちょうど休憩場所にしようと思ってたからええよ」と答えた。


そしてタイタン広場に到着すると、樫田祐がまたもやタイタンを撮影しまくっていた。水城涼真は「朱莉ちゃん、こっち来て」と言ってタイタン広場から50mほど離れた場所にある大普賢岳の展望地まで歩いていった。


水城涼真「あそこに見える3つのピークがある山が大普賢岳やで。一番右側にある小さなピークが和佐俣山で、その左側が日本岳といって孫普賢岳と呼ばれていて、さらに左側が小普賢岳、そして一番高いピークが大普賢岳。俺は全部登ったけどな」

若宮朱莉「大普賢岳!!!父の登山計画ノートに書かれていた一つ・・・それにしても変わった形をしていますね」

水城涼真「あの大普賢岳には冬のはじまりくらいに登ってみよか。お父さんの登山計画ノートに書かれた時期もちょうどそのくらいやったしな」

若宮朱莉「はいっ!」


そこに樫田祐が歩いてきて「お待たせしました」と言った。そして樫田祐は「おぉー大普賢岳がみえてるやないですか!一応、何枚か撮影しときますわ」といって撮影していた。


休憩が終わって下山しようとしたときに水城涼真が「ちょっと朱莉ちゃんのスマホ貸してもらえる?」と言うと若宮朱莉は「どうぞ」と言った。そのまま少し下ると、水城涼真が「朱莉ちゃん、そこの巨木の前に立って好きなポーズをして!写真撮ったるわ」と言った。若宮朱莉は巨木の前まで下ると左側に立ってガッツポーズをした。そして水城涼真は2枚ほど撮影をすると「他のポーズもしてみて」と何度か言っていろんなポーズをした若宮朱莉と巨木を撮影した。そして水城涼真が「1枚くらいええ写真が撮れてると思うわ。この巨木は人を入れて撮影すると迫力がわかるんよ」と言った。若宮朱莉は「ありがとうございます!!」といってスマホを受けとった。


そのまま20分ほど樹林帯を下ると車を止めた90番ポストの登山口へ下山できた。小屋での滞在が長かったので、時刻は14時前になっていた。荷物を積み込んで車に乗って帰宅したが、朝早かったせいか若宮朱莉と樫田祐はぐっすり眠っていた。吹田駅に到着して樫田祐が先に車を降りて「今日は最高でしたよ。おつかれさまでした」と言って駅のホームへあがっていった。


アパートに到着して荷物を降ろすと若宮朱莉が「今日はお疲れ様でした。雨の行者還岳は神秘に満ちていました」と言った。水城涼真は「大峰はまだまだ別の魅力があって秘境感満載やからまた行こう!バリルートで登ったらもっと秘境感を満喫できるで」と言った。


その後、水城涼真と若宮朱莉は仕事が忙しく少しの間山に行けなくなってしまった。そうしているうちに梅雨明けの発表がでた。異常気象のせいなのか、かなり蒸し暑い日が続く中、水城涼真は「そろそろ行かんと我慢の限界や」と意味深なことを呟いた。


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