鈴鹿山脈最高峰の御池岳は素晴らしい雪原地帯だった
12月20日午後22時30分・・・
帰宅してシャワーを浴び終えた若宮朱莉は天音琴美と年末の予定に関してSNS通話をしていた。
天音琴美「年末は29日から31日までオフだけど朱莉ちゃんは?」
若宮朱莉「わたしは28日から31日までオフになっています」
天音琴美「じゃあ29日か30日に荒島岳へバックカントリースキーの予定にしてもらえないかな?」
若宮朱莉「わたしはどちらの日でも構わないのですが、涼真さんに替わりますので直接聞いていただけますか?」
天音琴美「じゃあ涼真さんに替わってもらえる?」
若宮朱莉「少々お待ちください」
若宮朱莉はスマホを持って水城涼真の部屋へ入っていって事情を説明すると通話を替わった。
水城涼真「天音さん、28日の夜に大阪入りすることって可能?」
天音琴美「それは可能です。それでは29日に荒島岳へ行くということですね?」
水城涼真「いや、せっかく大阪まできてくれて荒島岳だけやと勿体ないから、29日は別の山に登って30日に荒島岳に行くのはどう?」
天音琴美「別の山ってどこに登る予定ですか?」
水城涼真「方向的に米原のビジネスホテルで一泊するのがええから、前々から行きたがってた伊吹山に登ってもええよ」
天音琴美「伊吹山は高山植物や花を見たいので春頃に一人で登ろうと思っていますので他の山でもいいですよ」
水城涼真「うーん、それやったら鈴鹿山脈最高峰の御池岳なんてどない?人も少ないし静寂な雪原地帯になってると思うわ」
天音琴美「鈴鹿山脈最高峰!?それは登ってみたいですね!」
水城涼真「そしたら29日は御池岳に登ろう。ちょっと荷物大変やけど、スノーシューとスキー靴と板持ってきてな」
天音琴美「わかりました」
そうして12月29日に御池岳に登り、米原駅前のビジネスホテルで一泊した後の30日に荒島岳でバックカントリースキーをすることに決定した。SNSの通話を切った後、若宮朱莉が話しかけてきた。
若宮朱莉「ねえ涼真さん、御池岳って静寂な雪原地帯になってるの?」
水城涼真「そうや。来週に寒波が訪れるみたいやから、ええ感じに雪が積もってくれると思うわ」
若宮朱莉「御池岳ってたしか遭難事故があったところじゃなかった?」
水城涼真「そういえば遭難事故があったな。でも今回俺らが登るルートは反対側やけどな」
若宮朱莉「そうなんだ。静寂な雪原地帯か・・・なんだか楽しみ!」
12月29日午前4時30分・・・
目覚まし時計が鳴って起床した水城涼真と若宮朱莉は206号室にスキー靴と板、ワカンを取りに行った。先週の寒波で大雪になっていたので雪はたっぷりあるだろう。駐車場に行ってトランクに荷物を積み込むと天音琴美が宿泊している岸部駅にあるホテル前のコンビニに向かって車を走らせた。コンビニに到着すると50リットルの黒いザックにスノーシューとスキー板を装着した天音琴美が既に待っていた。水城涼真は車から降りて「天音さん」と呼ぶと天音琴美はトランクに荷物を積み込んで後部座席に乗った。
水城涼真「天音さん、新しいザック買ったんやね」
天音琴美「そうなんですよ。アイゼンやストックも積み込まないといけないし、あたしのザック小さかったから新しいの買いました」
若宮朱莉「今回は荷物が多いですからね」
天音琴美「それと明日の荒島岳ではバックカントリースキーをしている姿を動画撮影してもいいですか?」
水城涼真「別にええけど明日は樫田君も来るから俺と樫田君の顔は入れんといてな」
天音琴美「あたしと朱莉ちゃんだけ撮影しますので大丈夫です」
若宮朱莉「撮影した動画はブログで使われるんですか?」
天音琴美「あたしはそう考えてたんだけど、テレビ局のプロデューサーにもお願いされてるのよね」
水城涼真「情報番組のドキュメントに使うんじゃないかな」
天音琴美「そうかもしれません」
そんな話をしながら車は吹田インターチェンジから名神高速道路に入り京都方面へ向かっていた。大津インターを通り過ぎて左側に近江冨士(三上山)が見えるとその先から雪に覆われた比良山地が琵琶湖の向こう側に見えてきた。
若宮朱莉「そういえば、涼真さんって比良山地には行かないよね?」
水城涼真「沢で一回行ってるやん。山岳会に入ってる時、厳冬期に蛇谷ヶ峰から縦走させられたことはあるけどもう二度とやりたくない。武奈ヶ岳は人が多いしな」
天音琴美「関東に住んでるあたしでも武奈ヶ岳は知ってたから有名なんですね」
そうして多賀サービスエリアで少し休憩をするとその先の彦根インターチェンジで高速道路を出た。天候は文句のない晴天だったので雪景色は期待できそうだ。その後、国道306号線を三重方面へ走らせているとコンビニがあったので立ち寄った。そこで水城涼真は「昼食用に鍋の材料買ってるから行動食と飲み物だけ購入したらええからな」と言った。3人は車から降りてコンビニで行動食と水を購入した。
午前7時50分・・・鞍掛橋
国道306号線で山道に入ると道路は除雪されておらずアイスバーンの雪道となっていた。水城涼真の車はFF車であるが、かなり滑りにくいスタッドレスタイヤをはかせていたのでスムーズにに雪道を進んでいくことができた。そして鞍掛橋の手前の路肩に車を駐車した。ちなみに鞍掛橋を渡った先は冬期通行止めゲートが閉まっている。3人は車から降りて登山準備を済ませると雪山登山をはじめた。
若宮朱莉「涼真さん、この付近の地図を見ても破線がないけどバリルートで登っていくの?」
水城涼真「一応バリルートになるんかな。この標高471m付近にあるこの尾根を登っていくんやけど道標はあるんよ」
天音琴美「たしかその尾根って鞍掛尾根のことですよね?」
水城涼真「そうそう。天音さん、よー調べてるやん」
天音琴美「あらかじめネットで調べていました」
まずは沢を左に見ながら林道を歩いていった。雪道にはトレースがきっちりついていたのでルートはわかりやすかった。標高471m付近で道標が設置されておりここからまずは鈴北岳へ向かって尾根道を登っていく。トレースは尾根道を直登しているのではなく、つづら折れになっていた。ここは無積雪期でもつづら折れの道になっているので、トレースをつけた登山者もそれと同じように登っていったのであろう。しかし、それにも関わらず最初からかなりの急登が続いてた。若宮朱莉と天音琴美はこの急登で若干息を切らしていたが、休憩する場所がないこともあり先頭を歩く水城涼真のペースに合わせながら登っていった。そのまま樹林帯をひたすら登り続けること約1時間程で一つ目の鉄塔に到着した。鞍掛橋からぶっ通しで登ってきたので、この鉄塔下で休憩することになった。
天音琴美「ここまでの登りはちょっとキツかったね」
若宮朱莉「そうですね、でも標高は少し稼げたと思いますよ」
水城涼真「標高約200m弱は稼げたけど、まだまだ先は長いよ。ただ二つ目の鉄塔からは少し緩やかになるから登りは楽になると思うわ」
若宮朱莉「次の鉄塔まではすぐだからもう一登りって感じだね」
天音琴美「それにしても見事な晴天だね。どんな雪景色が見れるのか楽しみだよ」
10分程休憩をすると3人は再び鞍掛尾根を登りはじめた。若宮朱莉の言った通り、二つ目の鉄塔までは意外と早かった。その先からは植林帯が終わり自然林となって景色が一変した。この付近からはまさに霧氷のトンネルともいえるべき登りになった。天音琴美は「ひゃぁーまるで霧氷のトンネルだね」と言って、はしゃぎながら登っていった。若宮朱莉もスマホで霧氷を撮影をしながら、最初のしんどい登りのことなんて忘れていた。その霧氷のトンネルとなった樹林帯をひたすら登り続けて上を見ると稜線が見えてきた。鞍掛橋から登りはじめて約2時間程で樹林帯を抜けて稜線に合流した。ここで視界は一気に開けて周囲は雪原地帯となった。
午前11時10分・・・鈴北岳(標高1182m)
稜線に合流して雪原地帯に出た3人は少し休憩を兼ねて北東側の景色を眺めていた。
水城涼真「今日は景色がよー見えてるわ。右側の奥に見えてるのが木曾御嶽山でその左側の二つの峰があるのが白山やな」
若宮朱莉「手前に見えてる台形みたいな山が伊吹山だよね?真っ白になってるけど、伊吹山でバックカントリーしてもよかったんじゃない?」
水城涼真「伊吹山は重い雪質でスキーがあんま滑らんのよ」
天音琴美「そうなんだ。だから涼真さんはあまり伊吹山は好きじゃないんですよね?」
水城涼真「いやそういうわけじゃないんやけどな」
天音琴美「そういえばこれからこの雪原地帯の稜線を登っていくのよね!?スノーシューはまだ装着しなくても大丈夫?」
若宮朱莉「ずっとトレースがついてますし、まだいらないんじゃないでしょうか」
水城涼真「スノーシューやワカンは鈴北岳から先から装着する予定やったけど、この調子やと御池岳の山頂まではいらんかもな」
話し込んでいると20分も休憩していたことに気が付いた水城涼真は「そろそろ登りはじめよか」と言った。3人は雪原地帯となっている稜線の登りをはじめた。若宮朱莉と天音琴美はこの美しい雪原地帯の登りが楽しくて、ついついはしゃぎすぎてしまった。トレースがあるからといっても雪道の登りなので通常よりペースはゆっくりになってしまう。稜線を20分程登っているとついに鈴北岳のピークが見えたが、この付近から見ると結構まだ距離があるように思えた。
若宮朱莉「あのピークが鈴北岳だよね!?まだ距離は結構あるんじゃない?」
水城涼真「そう見えるけど意外と近いんよ。あと20分程やからもう一登りって感じやわ」
そうしてピークを目指して登りはじめると本当に20分程で鈴北岳の山頂(標高1182m)に到着した。この山頂は鈴北岳という看板がピークの真ん中にポツンと立っているだけで他に何があるわけでもなかった。しかし、周囲は遮るものがないので360度の視界が広がっていて素晴らしい景色を望むことができる。北側の景色はなんども稜線を登っている時に振り向いて見ていたのだが、南側の御池岳方面を見てみると青と白のコントラスと化した素晴らしい雪原地帯を望むことができた。
天音琴美「素晴らしい雪景色ね。あたし、こんな感じの雪景色を見るのははじめてかも」
若宮朱莉「わたしもカルスト台地の雪景色を見るのははじめてですが、青と白のコントラストが本当に素晴らしい!」
天音琴美「涼真さんおススメの山はハズレがないよね」
水城涼真「俺もお二人に感動してもらうために結構山選びしてるからな」
天音琴美「でもそれだけいろんな山に登ったことだと思いますよ」
若宮朱莉「そうですよね。たくさんの山に登ったからこそ知っていると言えますね」
鈴北岳からの景色に感動していた若宮朱莉と天音琴美であったが水城涼真は「じゃあさっさと御池岳に登ってしまおうか」と言ったので3人とも再び歩きはじめた。
午前11時50分・・・御池岳(標高1247m)
鈴北岳から一旦下って左に進路をとると雪原地帯をひたすら歩き続けていった。その雪原地帯の途中で霧氷と化した木が立っているところがあり、そこで若宮朱莉と天音琴美の二人の記念撮影をした。天音琴美は「あたし、この山行記録も絶対にブログに載せるね!」と言ったので若宮朱莉は「こんな素晴らしい雪原地帯をブログに載せないと勿体ないですよね」と言った。その先から右に曲がって樹林帯の中に入るといよいよ御池岳のピークを目指して登りはじめた。ここもまさに霧氷のトンネルとなっており、天音琴美は目を輝かせながら「青空と霧氷が本当に綺麗!」と呟きながら登っていった。途中で何度も立ち止まって撮影をしていたせいか、結構な時間を要してしまっていた。そして霧氷のトンネルを抜けた先で鈴鹿山脈最高峰である御池岳の山頂(標高1247m)に登頂した。この山頂付近は樹林帯の中にポツンと山頂表記がされている木柱が立っているだけで何もない。
若宮朱莉「ここが鈴鹿山脈最高峰の御池岳山頂なんだ。でも周りに何もないね」
水城涼真「この先の奥の平からボタンプチまでがまた素晴らしい雪原地帯になってるから、昼食後にワカンとスノーシュー装着してそこを歩こう」
天音琴美「ねえ朱莉ちゃん、二人で記念撮影しよ」
若宮朱莉「はい。涼真さん、撮影お願いね」
若宮朱莉と天音琴美からスマホを受け取った水城涼真は御池岳の山頂でピースポーズをしている二人を何枚か撮影した。その後、3人は御池岳の山頂から奥の平のほうへ向かっていった。その途中にあるP1241付近の樹林帯の中で広くなっている場所があったのでそこで昼食をとることにした。水城涼真はまず4人用のポールテントを設置すると3人はその中に入り、若宮朱莉はザックの中から鍋料理を材料を出した。水城涼真はガスバーナーと少し大きめのチタン製の鍋を出すと水を入れてお湯を沸かしはじめた。天音琴美はザックの中からサバイバル用のナイフを出すと「お豆腐切るの手伝うね」と言った。お湯が沸騰したところで味噌鍋の素を投入してかき混ぜると、具材を鍋にどんどん投入していった。ちなみに鍋料理の材料といってもカットされた白菜と鶏肉、豚肉、豆腐、鮭、もやしだけである。具材を投入して鍋に蓋をして数分すると美味しそうな味噌の匂いがテント内に漂ってきた。そして具材が煮えたところで3人は鍋を食べはじめた。
若宮朱莉「味噌鍋って体が温まるし、山で食べると本当に美味しい!」
天音琴美「どんな高級鍋より美味しいよね。そうだ、朱莉ちゃんが味噌鍋を食べてるところも撮影するね」
若宮朱莉「わたしも天音さんが食べてるところ撮影しますね」
天音琴美「ありがとう。あとで写真の交換しようね」
水城涼真「そういえば天音さん、明日のバックカントリーを動画撮影するって言ってたけどテレビ局に渡すんやったらもっといい機材で撮影したほうがええんとちゃう?」
天音琴美「実はテレビ局のプロデューサーからビデオカメラを借りてきましたので、明日はそれで撮影します」
水城涼真「やっぱりなんかのドキュメントにするつもりなんやね。ただ明日のバックカントリーは樹林帯の中も滑るから慣れてないお二人からするとちょっと難しいと思うわ」
若宮朱莉「そうなんだ。でもそれがバックカントリースキーだよね」
天音琴美「それもまた経験になるからあたしは楽しみにしてる」
話をしながら食べていると一気に鍋の具材がなくなってしまった。もちろん一番食べていたのは若宮朱莉であることはいうまでもない。そこから今度は水城涼真がザックの中からご飯と生卵2個を取りだして鍋の中に投入して〆の雑炊を作りはじめた。この味噌鍋の雑炊は予想以上に美味しかったので、若宮朱莉は最後まで食べつくした。
午後13時20分・・・奥の平~ボタンプチ
ポールテントを片付けてワカンおよびスノーシューを装着した3人は再び雪原地帯に出るとまずは奥の平に到着した。この雪原地帯には霧氷と化した木も立っており、まるで絵のような光景が広がっている。ここからはトレースがないのでとりあえずボタンプチの方向へ歩いていった。
天音琴美「朱莉ちゃん、ここでも記念撮影しよ」
若宮朱莉「そうですね。涼真さん、雪原地帯とあの霧氷をバックに撮影をお願い」
若宮朱莉と天音琴美はお互いに手を握り合って片手でピースポーズをした。その二人の姿を水城涼真は撮影した。それからボタンプチのほうに雪原地帯を歩いていった。それから30分程経ったところで、ボタンプチと書かれた看板が立っていてその先は崖になっていた。このボタンプチからは東側の眺望が広がっており、藤原岳からの稜線がよく見える。
水城涼真「今日は藤原岳までの稜線がよー見えてるやん」
天音琴美「藤原岳って名前だけは知ってたけど、あんな山なんだね」
若宮朱莉「あれが藤原岳なんだ。涼真さん、あの山には登ったことあるの?」
水城涼真「冬に樫田君と二人で登ったけど、ヒップソリをして大変なことになったんよ」
若宮朱莉「大変なことって?」
水城涼真「9合目付近の急斜面を滑って止まらんようになってな、わざと転んだんよ」
若宮朱莉「急斜面をヒップソリで滑るなんて危ないことしたんだね」
天音琴美「涼真さん、ヒップソリで遭難したら笑い話になるんじゃないですか?」
水城涼真「まあそれで怪我したら恥ずかしいもええとこやけどな」
若宮朱莉「そういえばこの御池岳で遭難事故があった時ってこのボタンプチからのルートを間違えたんじゃなかった?」
水城涼真「そうやったと思うわ。たしかここから間違えて沢のほうに下ってしまったとかやったな」
天音琴美「その遭難事故のことならあたしも知ってる。かなり話題になってたよね?」
若宮朱莉「そうですね。ニュースになっていましたから」
水城涼真「まあ暗い話はそのくらいにして、お二人ともこの景色を焼き付けときや」
ボタンプチで15分程滞在した後、ピストンで下山することになった。奥の平までの登り返しは急斜面ではないが意外としんどかった。それから御池岳、鈴北岳と戻っていき、最終的に鞍掛橋に戻ったのは午後16時30分過ぎであった。
午後19時・・・米原駅前のビジネスホテル
コンビニで大量のビールとおつまみを購入した後、3人は米原駅前のビジネスホテルでチェックインを済ませた。今回は各自一人部屋の予約をしていたのだが、登山後の宴会は水城涼真の一人部屋でおこなうことになった。午後19時になり3人は500mlの缶ビールの蓋をあけると「乾杯!」といってビールを飲みはじめた。それから天音琴美がビールを3本飲み干した後で少しほろ酔い状態になって話はじめた。
天音琴美「ねえ、どうして二人は夫婦なのに一緒の部屋を予約しなかったの?」
水城涼真「俺は寝るとき一人がええんよ。それに天音さんだけ一人部屋ってわけにもいかんやろ」
天音琴美「あたしに気を遣う必要なんてないですよ。それに今住んでる家も二人別々の部屋ですよね?」
水城涼真「そうやけど、俺の部屋狭いし、朱莉ちゃんも自分のプライベートがあるからな」
天音琴美「さっきも言いましたけど、夫婦なんだから一緒に寝ればいいんじゃないですか?」
若宮朱莉「わたしは一緒に寝てもいいんですけど、涼真さんが嫌がるんですよね」
水城涼真「俺は隣に誰かがいると寝られへんのよ」
天音琴美「そんなこと言って、本当は恥ずかしいんじゃないですか?」
若宮朱莉「あはは、涼真さんってそういうことに奥手ですからそうかもしれませんね」
水城涼真「いや恥ずかしさはないし、ほんまに寝られへんのよ。天音さんはあっちゃんとなら一緒に寝れると思うけどな」
天音琴美「それはさすがに恥ずかしいですよ。それにあたし、あっちゃんのことをそういう目で見ていませんから」
水城涼真「俺も朱莉ちゃんのことをそういう目で見てないんよ。たしかに結婚はしたけどな」
若宮朱莉「じゃあどういう目でわたしのことを見てるの?」
天音琴美「そうだよ。どういう目で朱莉ちゃんのことを見てるんですか?」
水城涼真「俺は朱莉ちゃんを娘のように見てるよ。愛おしいって気持ちはあるけどな」
若宮朱莉「たしかにわたしも涼真さんのことは父のように見ているところはあります」
天音琴美「あー二人は恋愛感情はないけどお互いに愛し合ってるんだったね」
水城涼真「天音さん、もう四本目に突入してるけど、明日はちょっと大変やからあんま飲みすぎんようにしてな」
そう言いながらも結局天音琴美はビールを6本飲んで眠くなったといって部屋に戻っていった。その後、若宮朱莉もさすがに疲れたのか水城涼真と少し話をしてから部屋に戻って眠ってしまった。
今回、厳冬期の御池岳に登って素晴らしい雪原地帯を歩いたことは若宮朱莉と天音琴美の心に深く刻み込まれたといえる。そして明日はいよいよ日本百名山の一つである荒島岳に登ってバックカントリースキーをするのだ。




