奥多摩三山の御前山は静寂でとても良かった!
11月23日午後20時前・・・ラジオ局
この日、若宮朱莉は上京してテレビ局でバラエティー番組の収録を終えると、天音琴美のラジオにゲスト出演するため、そのままラジオ局に向かった。明日は全国的に高気圧に覆われて奥多摩周辺も快晴になっていた。ラジオ局に入った若宮朱莉は天音琴美と今回の話題に関する打ち合わせを少しすると午後20時になった。エコーのかかった天音琴美の声で「天音琴美のあま~い夜」というジングルから音楽が流れて放送がはじまった。
天音琴美「11月3日午後20時を回りました。みなさん、こんばんは。女優の天音琴美です。最近は寒くなってきましたが皆様はいかがお過ごしでしょうか?・・・(中略)さて、本日は2回目になるのですが素敵なゲストの方にお越しいただいておりますので早速ご紹介させていただきます。あたしの登山仲間でずっと仲良くしていただいてるタレントの若宮朱莉さんです!」
若宮朱莉「みなさんこんばんは。タレントの若宮朱莉です!ゲストとして呼んでいただいたのは2回目なのですが、本日もよろしくお願い致します」
天音琴美「朱莉ちゃん、今回もわざわざ足を運んでくれてありがとうね!」
若宮朱莉「いえいえ、こちらこそまた呼んでいただきありがとうございます」
天音琴美「今日の天音琴美のあま~い夜は前回同様にあたしと若宮朱莉ちゃんの山ガールトークを中心にお送りしていきたいと思います」
(・・・中略・・・)
天音琴美「今夜の山ガールトークですが、あたしのブログでもたくさんのコメントをいただいた大峰の神仙平と七面山、アケボノ平についてお話していきたいと思いますが、その前に一つだけご報告がございます。明日、あたしと朱莉ちゃんの二人で登山することになりました。(パチパチパチ)朱莉ちゃん、よろしくお願いします」
若宮朱莉「こちらこそよろしくお願いします!」
天音琴美「あたし達が明日どこの山に登るのかは内緒にしておきますが、またブログにアップしますので皆様よろしくお願いします」
(・・・中略・・・)
天音琴美「神仙平に登った時は最初大変だったよね。あの林道歩きは忘れられないよ」
若宮朱莉「うんうん、あの林道は本当に長かったですよね」
天音琴美「でも、大峰のあの神秘的な高原の中で食べたチーズフォンデュは美味しかった」
若宮朱莉「あれは本当に美味しかったですよね。それに景色も最高でした!」
・・・
ラジオの生放送ではそんな会話が1時間半ほど続いていた。
11月24日午前6時40分・・・中野駅~奥多摩駅
今回、若宮朱莉はホテルではなく中野区にある実家で一泊して天音琴美と午前6時40分に中野駅のホームで待ち合わせをしていた。休日といえども人がたくさんいたのでさすがに伊達メガネをかけて変装していた。ちなみに若宮朱莉は明日仕事が入っているので今日の山行を終えたら新幹線で大阪に戻らなければならない。しばらくすると中央快速が駅に到着して水色のソフトシェルジャケットにグレーのトレッキングパンツ姿で赤いザックを背負った天音琴美がサングラスをかけて電車から降りてきて「朱莉ちゃーん」と呼びかけた。若宮朱莉は「おはようございます」と言うと、2人は次にやってきた”ホリデー快速おくたま青梅行き”に乗った。電車には数名のザックを背負った登山者と思われる人が乗っていたが、なんとか席に座ることができた。
天音琴美「御前山の情報は調べておいたんだけど、写真だけじゃどんな山なのかわからなかった」
若宮朱莉「たしかにネットの写真だけじゃわからないですよね。でも涼真さんが関東で好む山なのできっと何か魅力があるんだと思います」
天音琴美「そうよね。それに奥多摩三山っていうくらいだからそれなりの山なんだろうね」
若宮朱莉「ただ、休日ですので人が多くなければいいのですが・・・」
電車に乗って1時間程で終点である青梅駅に到着した。ここから青梅線奥多摩行きに乗り換えると乗客が一気に減ったが、ホリデー快速に乗っていた数名の登山者らしき人達も同じく乗り換えていた。ところが途中の御嶽駅でほとんどの登山者らしき人達は降りた。この御嶽駅からケーブルカーがある人気の御岳山やそこから奥多摩三山の一つである大岳山に登る人が多い。
若宮朱莉「電車の中ガラガラになっちゃいましたね」
天音琴美「御岳山に登る人多いからね。奥多摩まで行く人は少ないのかも」
そんな話をしながら電車に乗っていると午前8時50分に終点の奥多摩駅に到着した。奥多摩駅から今度は停車していた西東京バスの鴨沢西行に乗った。午前9時になるとバスが出発して15分程で奥多摩湖バス停で2人は下車した。
午前10時20分・・・サス沢山(標高940m)~惣岳山(標高1341m)
奥多摩湖バス停から小河内ダムを横切って山のほうへ歩いていった。休日でありながら登山者や観光客などおらず奥多摩湖周辺はシーンとしていた。その先でベンチとテーブルが設置されている場所に御前山への方向を示された道標があり、それに従って2人は進んでいった。そして石の階段が続く入山口に到着した。
若宮朱莉「天音さん、この地図を見てください。ここから尾根の登りがはじまりますがサス沢山までは急登になっています」
天音琴美「うん。たしかに標高400mくらいの登りは結構しんどそうね。下調べしたときの記事にも最初は急登だったって書いてた」
若宮朱莉「それにしても人がいませんね。ここって人気のない山なんでしょうか」
天音琴美「そういえば御前山はキツイから人気がなくて、それなりの覚悟を持って登らないといけないって記事に書いてた」
そこから入山して石の階段を登っていくとその先から急登の山道になった。2人ともペースダウンして一歩ずつリズミカルに登っていたのだが、だんだん息が切れてきた。途中で立ち止まって息を整えていたのだが、まだまだ登りが続いている。
天音琴美「やっぱりこの登りはキツイね」
若宮朱莉「はい。御前山って甘くないんですね」
そういうネガティブなことを言いながらも登っていった。入山して1時間程経ったところでサス沢山(標高940m)に到着した。ここは山頂看板などはなかったが、直下に奥多摩湖が広がっていて西側の山々を望むことができたので15分程休憩することにした。
若宮朱莉「奥多摩湖って上から見るとグリーンなんですね」
天音琴美「本当だね。あの中心に見えてる一番高い山がたしか大菩薩嶺だったかな」
若宮朱莉「大菩薩嶺って涼真さんが甲武信ヶ岳の帰りに立ち寄った山だったと思います」
天音琴美「日帰りで登山のハシゴをするなんて、やっぱり涼真さんってある意味化け物だよね」
若宮朱莉「あはははは、でもわたし達もその化け物になりつつありますよね」
天音琴美「たしかに槍ヶ岳に登った後で焼岳に登ったからね」
休憩時間を終えると2人はさらに登りはじめた。サス沢山から先は比較的おだやかな登りになったが、御前山の山頂まではまだまだ距離があった。標高1128m地点を過ぎると次の惣岳山のピークへの登りになった。ここから再び急登になったが距離は短いので必死に登っていった。特に惣岳山直下は落ち葉でかなり滑りやすかった。そして入山してから約2時間弱で惣岳山の山頂(標高1341m)に到着した。この山頂は登山道の途中にポツンとある感じで周りには何もなかった。
天音琴美「やっと惣岳山に登頂かぁ・・・それにしてもこの山って本当にひっそりしているんだね」
若宮朱莉「そうですね。この静寂さのことを涼真さんは言っていたって気づきました」
天音琴美「あたしこの雰囲気は大好きかも」
若宮朱莉「わたしもこの静寂さは大好きですよ」
天音琴美「やっぱり朱莉ちゃんとは山の好みも合うから一緒に登れて嬉しい!」
若宮朱莉「あたしも天音さんとご一緒できて嬉しいです!」
天音琴美「御前山の山頂までもうすぐだからさっさと登っちゃおうか」
若宮朱莉「そうですね。山頂で大休憩としましょう」
そこから少し登ったところに道標があり御前山まであと0.6kmと記載されていた。そこから10分程登ったところの御前山山頂の手前で富士山ビュースポットがあったので2人は立ち止まった。
天音琴美「今日はよく富士山が見えてるね。でもこの前涼真さんが言ってたように、あたしももう富士山はいいかなって思う」
若宮朱莉「そうですね。もう何度も山から富士山を見ていますから飽きちゃいました」
午前11時50分・・・御前山(標高1405m)
富士山ビュースポットから少し歩いたところで御前山の山頂(標高1405m)に到着した。この山頂は静寂な雰囲気が漂っており他の登山者が2名いた。また視界は狭いが雲取山から鷹ノ巣山といった北側の山々を望むことができる。若宮朱莉と天音琴美は急いで山頂にいた登山者にお願いをして、山頂看板の前に2人並んで撮影してもらった。その後、撮影を終えたその登山者はすぐに下山していったので2人は景色を少し眺めていた。
天音琴美「あの左奥に見えてる一番高い山が東京最高峰の雲取山だね。あたし、数年前に一泊二日で登ったよ」
若宮朱莉「雲取山ってたしか涼真さんが四時間で登ったと言ってました」
天音琴美「ええー四時間!?あたし、あそこは一泊二日じゃないと無理だって思ってたけど日帰りできるんだ」
若宮朱莉「時間が押してたとかで相当急いで登ったようです。そのあとで三頭山に登ったとか言ってました」
天音琴美「やっぱり涼真さんがおかしいんだよ」
若宮朱莉「あはは、たしかにそれは言えますね」
天音琴美「話は変わるけど今日の昼食はあたしがトマトリゾットを作るから任せて!」
若宮朱莉「わたし、一応カップ麺を持ってきたのですが、天音さんのお言葉に甘えさせていただきますのでよろしくお願いします」
天音琴美「関西ではいつも涼真さんや朱莉ちゃんに昼食を作ってもらってたからね」
天音琴美はザックの中からガスバーナーとチタン製の長方形型鍋、パックのご飯、水、トマト缶、ソーセージ、カットマッシュルーム、キャンディチーズを取りだしてトマトリゾットを作りはじめた。鍋を温めているとだんだん鍋から美味しそうなトマトの香りがしてきた。そしてトマトリゾットが完成すると2人はスプーンで分け合いながら食べはじめた。トマトの味がしっかり染みついたご飯とチーズが絡んで絶妙に美味しく、若宮朱莉は食が進んでいった。2人がベンチに座って食べていると30代中半くらいの男性登山者が登ってきた。その男性登山者はそんな2人を見て近づいてきた。
男性登山者「こんにちは。あの、もしかして女優の天音琴美さんとタレントの若宮朱莉さんでしょうか?」
天音琴美「こんにちは。その通り、あたしが女優の天音琴美です」
若宮朱莉「こんにちは。わたしがタレントの若宮朱莉です」
男性登山者「やはりそうでしたか。昨日のラジオ、車で聴かせていただきましたが、お二人が今日登山される山ってこの御前山だったんですね」
天音琴美「ラジオ聴いていただいてありがとうございます。そうなんですよ、これで奥多摩三山を制覇しました」
男性登山者「こんなマニアックな山をチョイスするなんてお二人は本格的な登山をされているんですね」
天音琴美「御前山ってマニアックな山だったんですか!?だから登山者もあまりいないわけなんですね」
若宮朱莉「でも関西では結構マニアックな山を登っていますよ」
男性登山者「あっ突然話しかけて申し訳ありません。私は縦走中ですのでこれで失礼します。お二人のことはこれからも応援してますね」
天音琴美「ありがとうございます。お気をつけて!」
若宮朱莉「これからもよろしくお願いします。お気をつけて!」
男性登山者は急ぐかのように御前山を去っていった。その後、トマトリゾットを食べ終えた2人は食後のコーヒーを飲みながらまったりしていた。
午後13時40分・・・大ダワ~鋸山(標高1109m)
休憩を終えて御前山を後にした2人は大ダワを目指して下りはじめた。ここからは少しアップダウンが続く登山道になっているが基本は下りになっている。登山道をひたすら歩いていたが、一度も登山者とすれ違うことはなかった。御前山から約40分程で鞘口山(標高1142m)に到着したが、ここは登山道の途中にあるピークといった感じで何もないのでスルーした。そこから20分弱程歩くと大ダワに到着した。ちなみにタワというのは鞍部、峠という意味がある登山用語で尾根上の標高が低く窪んだ場所である。もう1時間程歩いたので2人はこの大ダワで休憩することにした。
若宮朱莉「涼真さんに提案してもらったルートではここから鋸山にピークハントして奥多摩駅へ下っていくのですが急登なんですよね。鋸山を巻くこともできますがどうします?」
天音琴美「ちょっと地図見せて・・・標高100mもない登りだし、せっかくだから登っちゃおう!」
若宮朱莉「そうですね。わかりました、登りましょう!」
天音琴美「朱莉ちゃん、今日中に大阪へ戻れそう?」
若宮朱莉「この調子だと16時くらいに奥多摩駅へ下っていけそうなので時間的には大丈夫そうです」
天音琴美「それならよかった。あたし達のお仕事ってさ、こういう時は大変だよね。登山した次の日くらいゆっくりしたいのにね」
若宮朱莉「それ本当に思います。でももう慣れちゃいましたけどね」
天音琴美「そういえば涼真さんのお仕事って登山雑誌の執筆だっけ?よく毎月書くことあるよね」
若宮朱莉「よくわかりませんが、登山のことだけじゃないみたいですよ。それにときどきアウトドアメーカーさんからアウトドア用品の新作が送られてきてそのレビューを書いて謝礼をいただいてるようです」
天音琴美「だからあれだけ登山道具を持ってるのね」
若宮朱莉「そうかもしれませんね。あとは名前を変えて登山関係の書籍を出版してるとも言ってました」
天音琴美「そうなんだ!?でもどうして名前を変えてるんだろうね」
若宮朱莉「雑誌社との関係みたいですが、それもよくわからないんですよね」
天音琴美「いろいろあるんだろうね。あっそろそろ行こうか」
休憩を終えた2人は大ダワから鋸山へ登りはじめた。標高100mもない登りだが、かなりの急登であった。15分程で鋸山の山頂(標高1109m)に登頂したが、2人とも息を切らしていた。この山頂は樹林帯の中にポツンと山頂表記がされている木柱が立っているだけ何もなかった。
天音琴美「鋸山までの登りはちょっとキツかったね」
若宮朱莉「うんうん。でも距離が短くて助かりました」
何もない山頂だったが2人は息を整えるために立ち休憩をした。そしてここからは鋸尾根の下りとなる。
午後15時20分・・・愛宕神社~奥多摩駅
鋸山までの登りは急斜面だったが下りは比較的穏やかであった。鋸尾根を下っていると標高1046.7m地点に澤入という三等三角点が設置されていた。若宮朱莉は「こんなところに三角点が設置されていますね」と言うと天音琴美が「なんでここなんだろうね」と不思議そうな表情をしながら言った。そこから先の下りが2人にとって予想以上に長いと感じられた。
若宮朱莉「さすがにこの尾根は長いですね」
天音琴美「標高700mくらいの下りだからね」
そんな話をしているとお天狗様と呼ばれているものが祀られている祠が設置されている天聖神社奥宮に到着した。この天聖神社は商売繁盛にご利益があるとされている。2人はここで手を合わせると膝が笑いそうになっていたので少し休憩とした。
天音琴美「あともう少しで愛宕神社だと思うけど、鋸山からぶっ通しで下ってきたから膝が笑っちゃいそう」
若宮朱莉「大丈夫ですか?わたしも下りで疲れてきました」
天音琴美「大丈夫!登山は登りより下りのほうがしんどいって聞いたことあるけど本当だね」
若宮朱莉「たしかに最初は登りのほうがしんどいって思っていましたけど、最近は下りのほうがしんどいって思うようになりました」
ここで10分程休憩して少し膝がマシになったところで再び下りはじめて鋸山から約1時間半で愛宕神社に到着した。ここからは愛宕神社の階段を下って道路に出て最後に奥多摩駅まで歩いていくことになった。そして午後15時40分過ぎに奥多摩駅に到着した。
天音琴美「朱莉ちゃん、やったね!またあたし達二人だけで山行工程を達成させることができたよ!!」
若宮朱莉「はい!わたし達だけで登山ができて本当に良かったです!!」
天音琴美「今日は一年前に登った檜洞丸の時のような不安がなかったけど、それだけ成長したってことだよね」
若宮朱莉「そうですね。でも、まだまだ涼真さんのような登山はさすがに出来ませんが、このくらいの山なら不安はありませんね」
天音琴美「あはは、涼真さんの真似したら命がいくつあっても足らないよ」
若宮朱莉「それもそうですよね」
天音琴美「それにしても御前山って静寂で本当に良かった!」
若宮朱莉「わたしも御前山が大好きになりました!」
天音琴美「そういえば、年末はどこか山に行かないの?あたし、今年も一緒に行く人がいないのよね」
若宮朱莉「年末は荒島岳でバックカントリースキーをする予定ですが、天音さんもご一緒します?」
天音琴美「百名山の荒島岳だよね?ぜひご一緒させて!」
若宮朱莉「では涼真さんに伝えておきますね」
駅前で話し込んでいると電車がきたので2人は急いで乗って都内に戻っていった。若宮朱莉は中央線で直接東京駅へ向かって新幹線に乗って大阪へと帰宅していった。




