父と母の新婚旅行先だった長野県観光
9月28日午後14時・・・
この日、若宮朱莉は久しぶりに父親の遺品である登山計画ノートを読んでいた。このノートに記載されている登山予定の山を達成するまであと2座となっていた。この2座中の一つは冬に登る予定となっているが最後の一つに関してはいつでも登れそうだがなかなか腰が上がらないといった感じで未定である。実はこの登山計画ノートの表紙の裏側には古くて小さなメモ用紙が何枚か貼ってあった。今までずっと気にもしていなかったいくつかのメモ用紙の中から、鉛筆で書かれて今にも消えそうな薄い字で次のように書かれた一枚を発見した。
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HM長野予定
一日目 BL高原100名山2座、城跡(六文銭)、夜景駅
二日目 須坂市(有名2滝)、混浴温泉、小布施町(かつ丼)
三日目 C-ALPS登山
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これを読んだ若宮朱莉は理解ができなかったので、登山計画ノートを持ってすぐさま水城涼真の部屋に行った。
若宮朱莉「もう字が消えちゃいそうなんだけど、涼真さんこの意味わかる?」
水城涼真「うーん、内容はなんとなくわかるんやけど、このHMの意味がわからんな。お母さんの名前は本条真由美でイニシャルやったら普通はMHになるから逆やしな」
若宮朱莉「内容はなんとなく理解できるんだ!?」
水城涼真「完全にはわからへんけど、お父さんと俺ってこんなところまで似てたんやって思わされるわ」
若宮朱莉「似てるってどういうこと?」
水城涼真「まあ俺が長野旅行を計画したら、大体これと似たようなところを案内するかなって・・・あっ旅行って考えたらHMの意味がわかったかもしれん!」
若宮朱莉「どういう意味なの?」
水城涼真「もしかしたら朱莉ちゃんのお父さんとお母さんの新婚旅行は長野観光やったんちゃうかな。HMはハネムーンって訳したらつじつまが合うんよ」
若宮朱莉「なるほど!でも本当かわかんないから後でお母さんに聞いてみるね。でも父はどうしてこんな暗号みたいなメモをしていたんだろう?」
水城涼真「おそらくやけど、万が一このメモ用紙をお母さんに見られてもええように、お父さんは自分だけがわかるように書いたんとちゃうか」
若宮朱莉「そうなのかな・・・でもわたしだったら同じようなことしてたかも」
水城涼真「朱莉ちゃん、この前天音さんから新婚旅行の話されたけど、このメモ用紙に書かれてるところ巡ってみるのはどうや?」
若宮朱莉「それいいかも!父と母の新婚旅行と同じところを巡るなんて嬉しいかも!!」
水城涼真「ただ、何回も言うけど完全にはわからんからな!あとは、俺もこのメモ用紙の意味を最初のうちは黙っとくわ」
若宮朱莉「父が母に何を見せたかったのかも理解できるかもしれないから、絶対に行きたい!」
水城涼真「じゃあ10月11日の夜、朱莉ちゃんが仕事から帰ってきいたら出発にしよか。たしかその連休は空いてるって言ってたやんな?」
若宮朱莉「うん、空いてるから大丈夫。なんかワクワクしてきた」
そうして水城涼真と若宮朱莉の新婚旅行はこのメモ用に書かれた長野県観光で決まった。この後、若宮朱莉がSNSチャットで母親に聞いてみると、たしかに新婚旅行は長野観光だったということがわかった。
そして10月11日午後21時30分に若宮朱莉が仕事から戻ってくると、すぐさま車に乗り込んで長野県へと向かい、10月12日の深夜3時に塩尻インターに到着して健康ランドで過眠をとった。
10月12日午前9時30分・・・ビーナスライン(霧ヶ峰、美ヶ原)
健康ランドで午前7時過ぎに目が覚めた水城涼真と若宮朱莉は朝風呂に入った後で館内着から私服に着替えた。午前8時半に受付で清算を済ませると駐車場へ出て車に乗り込んだ。天気は晴天で気温も24℃と快適である。諏訪市から県道40号線に入って山道をひたすら上がっていった。
若宮朱莉「涼真さん、もしかして霧ヶ峰ってところに向かってるの?」
水城涼真「そうやで」
若宮朱莉「霧ヶ峰ってエアコンの名前だと思ってたけど、本当にそういう場所があるんだね」
そんな話をしながら車を走らせていると広大な高原地帯に出た。若宮朱莉は「すごい高原地帯の道になったね!」と驚いてフロントガラス越しに景色を眺めていた。そして車山肩駐車場で車を停めると水城涼真は「飲み物だけ持ってきてな」と言った。
水城涼真「車山の山頂までブラブラ歩いていこか」
若宮朱莉「ザックは持っていかなくていいの?」
水城涼真「30分くらいの散歩コースみたいなもんやから飲み物だけでええよ」
若宮朱莉「そうなんだ。じゃあこのお茶だけ持って行くね」
車山肩駐車場からガレ場の道をつづら折れにひたすら登っていくと30分程で車山山頂(標高1925m)に到着した。山頂からは360度の視界が広がり、霧ケ峰高原をはじめ八島ヶ原湿原、蓼科山や八ヶ岳連峰などが望めた。若宮朱莉は目を輝かせながら「すごい景色!!」と言いながらその景色を楽しんでいた。
水城涼真「一つ目の答えを言うけど、BL高原100名山2座っていうのはビーナスラインのことで100名山2座は霧ヶ峰と美ヶ原のことなんよ」
若宮朱莉「なるほど。父は母にこのすごい高原地帯の景色を見せたかったんだって思った」
水城涼真「まあ、こんな広大な高原地帯を見下ろせるのは珍しいからな」
若宮朱莉「あの台形みたいな山とその横に連なってる高い山は何?」
水城涼真「蓼科山と八ヶ岳連峰やな」
若宮朱莉「涼真さん、登ったことあるの?」
水城涼真「あるけど北八だけはまだ登ってないな。蓼科山は山頂がだだっ広いガレ場になってて不思議な感じがしたわ。じゃあ腹減ってきたしそろそろ下ろか」
下山して車山肩駐車場に到着した時は午前10時半を過ぎていた。その後、車で少し戻って直売所の駐車場に車を停めると水城涼真は「ここのじゃがバターが美味いんよ」と言って2人は車から降りて購入しにいった。ここのじゃがバターは大きめのジャガイモを四つ切にしてその真ん中に少し大きめのバターがのっている。若宮朱莉は「このじゃがバター本当に美味しいね!」と言って一つを食べ終えると二つ目を購入して食べた。その後、ビーナスラインを走らせて美ヶ原高原へ向かっていった。そして午前11時半前、美ヶ原高原の駐車場に到着すると車を降りた2人は山本小屋のほうへ歩いていった。
水城涼真「王ヶ頭にはもう登ってるから、美しの塔くらいまでブラブラ歩いていこか」
若宮朱莉「馬とか牛とかいて動物園みたいだけど、ここは牧場なの?」
水城涼真「牧場にもなってるみたいやで」
若宮朱莉「そうなんだ、それにしてもここは気持ちいい高原だね。あっ白い馬がいる!可愛い」
水城涼真「この先のベンチでちょっと昼寝するわ」
若宮朱莉「涼真さんが昼間なんて珍しい・・・そういえばあまり寝てなかたったね」
2人は美しの塔を経て塩くれ場を少し過ぎた先のベンチで休憩をした。水城涼真はベンチに寝転がると少し眠ってしまった。そこでは30分程過ごして時刻12時半をまわっていたので美ヶ原高原の駐車場へ戻っていった。車で美ヶ原のレストランに移動すると水城涼真が「腹減ったからここで昼食にしよか」と言って店内へと入っていった。2人はこのレストランで人気のカレーを注文して食べた。その後、展望テラスに出て景色を眺めていると、北アルプスから白馬三山、浅間山を望むことができた。そして車に乗って美ヶ原高原を後にしていると若宮朱莉が「父は母と一緒にあの気持ちいい美ヶ原高原を歩きたかったんだと思う」と呟いた。
10月12日午後15時・・・上田城跡~姨捨駅
美ヶ原高原から山道を下りていって県道62号線に入り長野県上田市の市街地へ向かった。時刻15時過ぎに上田城跡公園の駐車場に到着すると水城涼真が「久しぶりに来たわ」と言って2人は車から降りた。
若宮朱莉「上田城跡って書いてるけど、ここは何の場所?」
水城涼真「俺は真田幸村が好きやから立ち寄ったんやけど、おそらくお父さんも好きやったと思う」
若宮朱莉「真田幸村!?どういうこと?」
水城涼真「もう一つの答えを言うと六文銭は真田家の家紋のことで、城跡っていうのはこの上田城跡のことなんよ。真田幸村は大坂冬の陣と夏の陣で徳川家康をあと一歩のところまで追い詰めた天才的な戦国武将なんよ。おそらくここでお父さんはお母さんに同じ話をしたんとちゃうかな」
若宮朱莉「わたし歴史は詳しくないけど、その真田幸村の話をもっと詳しく聞いてみたい!」
水城涼真は真田幸村の話をしながら1時間程かけて上田城跡巡りをした後、予約している長野市のビジネスホテルへ向かった。ホテルのチェックインを済ませてツインルームに入って少し休憩をとると水城涼真が「朱莉ちゃん、もう一回出かけるで」と言った。ビジネスホテルを出た頃には暗くなっていて、そのまま車で姨捨駅へと向かって行った。姨捨駅に到着して駅の中に入ると千曲川を挟んだ向こう側に長野市街の夜景が広がっていた。ここは日本三大車窓の一つに数えられており、夜景を望むことができる珍しい駅である。
若宮朱莉「駅から夜景が望めるなんてすごい!」
水城涼真「おそらくメモに書かれてた夜景駅っていうのはこの姨捨駅のことで間違いないと思うわ」
若宮朱莉「たしかにここしか考えられないね。それにしても父はこんなところまで知ってたなんて驚きかも」
水城涼真「いや、この駅は有名やから知っててもおかしくないよ」
若宮朱莉「こうして父と母もこの駅で夜景を見てたんだね・・・」
若宮朱莉は父親のことを思い出したのか、少し涙をこぼしながら夜景を望んでいた。
10月13日午前9時30分・・・米子大瀑布
長野市のビジネスホテルで一泊して2人が目が覚ますと午前7時半だった。寝不足だった水城涼真も昨夜は早い時間に就寝したのでぐっすり眠れて疲れが取れていた。すぐさま着替えをして出かける準備をすると、ホテルのチェックアウトを済ませて車に乗り込んだ。今日の天気は少し雲が多いが晴れである。どこに行くのか全くわからなかった若宮朱莉は車の進行方向を見ながらワクワクしていた。長野県須坂市に入ると道路の案内標識に米子大瀑布という文字が出てきたので、その方向へ向かって車を走らせた。そのまま山道に入って進んでいくと迫力ある岩肌むき出しの山が見えた。そしてその先の米子大瀑布駐車場で車を停めた。
水城涼真「よし着いた。ここから軽くハイキングするけど飲み物だけ持ってきたらええわ」
若宮朱莉「わかったけど、ここからどこに行くの?」
水城涼真「それは後のお楽しみってことで、さっさと行くで!」
2人は車を降りて周遊コースを歩きはじめた。しばらく歩いていると岩肌の間から流れ落ちる滝が見えてきた。そして30分程して米子不動尊奥之院の本堂に到着すると、そのまま不動滝の真下まで歩いていった。不動滝(落差89m)の真下は迫力ある岩盤に勢いのある滝がぶつかっている光景を見ることができる。
若宮朱莉「こんな間近で滝が見れるなんてすごい!双門の滝とはまた違う感じの迫力だね」
水城涼真「せっかくやから滝のすぐそこまで行ってみたらええよ。ちょっと濡れるかもしれんけどな」
若宮朱莉「ちょっと近寄ってみるけどビショビショになったら嫌だな」
水城涼真「その辺で写真撮ったるわ」
若宮朱莉は不動滝のすぐ真下でピースポーズをして水城涼真がスマホのシャッターを押した。若宮朱莉はすぐに戻ってきて撮った写真を確認すると「これは天音さんに後で送るね」と言った。それから米子不動尊奥之院の本堂に一旦戻ると続いて権現滝のほうへ歩いていった。途中で権現滝(落差82m)を望めるポイントがあったが、ここは見所ではなくスルーして進んでいった。その先から周遊コースは少し登りになり、登り詰めた先でちょっとした高原地帯が広がっていた。そしてその高原の真ん中あたりに日本の滝百選標柱に米子大瀑布と記載されており、山の上の岩肌の間から流れる不動滝と権現滝の二つとその向こう側にどっしりとそびえる山々を望むことができた。
若宮朱莉「なんか山の上から二つの滝が流れてるこんな景色は珍しいね」
水城涼真「おそらくメモに書かれた須坂市(有名2滝)ってこの米子大瀑布のことやと思うんよ。その他に考えられへんから」
若宮朱莉「うんうん、間違いないと思う。父はこの珍しい景色を母に見せたかったんだろうね」
水城涼真「俺はここ知ってたけど、お父さんがこんなところまで知ってたとは思わんかったけどな」
若宮朱莉「あの山の向こう側に見える二つの山は何かわかる?」
水城涼真「あれは四阿山と根子岳やな。あの二つの山にも登ったことあるけど、個人的には根子岳が高原チックで良かったわ」
若宮朱莉「涼真さん、本当にどこの山でも登ってるんだね」
水城涼真「いや、あの山は百名山ってのもあったから登ったんよ」
米子大瀑布の景色を堪能した2人はそのまま米子大瀑布駐車場のほうへ下っていった。
10月13日午後12時20分・・・混浴できる温泉~小布施町
米子大瀑布駐車場から一旦須坂市に戻ってそこから高山村のほうへ進んでいくと山道に入ったが、そのまま車を走らせていると山の中にポツンと露天風呂と書かれた大きな看板が設置されていた。そこの駐車場に車を停めると水城涼真は「朱莉ちゃん、水着持って行くのを忘れんようにな」と言った。ここの露天風呂は混浴になっていて、かつてはバスタオルを巻いて入っていたのだが、今は水着で入らなければならない。そのまま2人は受付で入浴料金を支払うとそれぞれ男女別の脱衣所へ入って水着に着替えた。それから水着姿で露天風呂で合流して一緒に入った。
若宮朱莉「涼真さんと一緒に温泉に入るなんて、なんだか恥ずかしいかも」
水城涼真「いつも下着姿でうろうろしてるくせに、何を言ってるんよ」
若宮朱莉「えへへ、それは平気なんだけどなんでだろうね」
水城涼真「まあここは他のお客さんも入ってるからな。それに有名タレントってバレたらまずいで」
若宮朱莉「まさかこんなところにいるなんて誰も気づかないと思うから大丈夫だよ」
水城涼真「案外バレへんもんやねんな。あと、メモ帳に書いてた混浴温泉ってここのことかわからんけどこれでええやろ」
若宮朱莉「うん。父と母もこうして一緒に温泉に入ったんだって想像できるからこれでいいよ」
しばらく露天風呂に入っていて体が温まったところで温泉からあがった。温泉施設の駐車場から一旦山道を高山村のほうへ車を走らせていると水城涼真が「温泉あがりに美味しいアイスクリームでも食べよか」と言った。山道が終わり田園地帯が広がっている道路を走らせて途中で左折した先に少し大きい白い建物がポツンと建っていた。その白い建物はアイスクリーム専門店でその駐車場に車を停めた。2人はお店の中に入ると水城涼真はバニラ、若宮朱莉はバニラとチョコ味のダブルのアイスクリームを注文した。少し大きめの紙製パックの中にアイスクリームがたっぷり入っており、そこに小さなプラスチック製のスプーンが入っていた。2人は店外でそのアイスクリームを食べていた。
若宮朱莉「本当にこのアイスクリーム美味しい!涼真さんよくこんなお店知ってたね!?」
水城涼真「まあ、俺がこの店知ってたのはええやん。ここのアイスクリームは新鮮な生乳を使用して作られてるから美味しいんよ」
アイスクリームを食べ終えるとパックをゴミ箱に捨てて車に乗り込んだ。
続いて向かったのは長野県小布施町であった。コインパーキングに車を停めると小布施町をブラブラ歩きはじめた。ここは歴史的建造物が並んでいて、その風情ある町並みから信州の小京都と呼ばれている。水城涼真は「そろそろ腹減ってきたからソースカツ丼食べにいくで」と言うと、若宮朱莉は「うん、もうお腹ペコペコ」と言った。小布施駅の手前まで歩いていくと”カツ丼”とかかれた大きな看板が立っている木造の建物のお店があった。2人はそのお店に入ると水城涼真はソースカツ丼、若宮朱莉はソースカツ丼大盛を注文した。10分程するとソースカツ丼が運ばれてきた。ここのソースカツ丼はご飯の上にたっぷりとキャベツがのせられてボリューム感があり、カツは揚げたてであるが油っこくなく、自家製の濃い口の甘辛いソースがかけられている。
水城涼真「結構ボリュームあるけど、朱莉ちゃん全部食べれんの?」
若宮朱莉「このくらい平気!カツは油っこくないしソースも美味しい」
水城涼真「メモに書かれた小布施町(かつ丼)は、この店であってるんかわからんけどまあこれもええやろ」
若宮朱莉は「食が進む」といいながら大盛のソースカツ丼をあっという間に食べ終えた。その食のスピードに水城涼真は驚いたが急いで食べ終えた。お店を出ると水城涼真は「今日はこれから塩尻までブラブラとドライブしながらいこか」と言った。2人は車に乗ると一般道で塩尻市に向かっていった。
若宮朱莉「涼真さん、さっきアイスクリームを食べてる時にごまかしたでしょ?」
水城涼真「なんのこと?」
若宮朱莉「どうしてこんなに長野に詳しいの?」
水城涼真「あーそれか・・・朱莉ちゃん怒りそうだから言いたくないわ」
若宮朱莉「怒らないから教えて!」
水城涼真「うーん、じゃあ話すけどちょっと長くなるで」
若宮朱莉「わかった」
水城涼真は東京に住んでいる時に仕事で知り合った長野県出身の20代前半の女性に出会った。その女性と話をしてみると登山はしないが同じ山好きということで妙に気が合った。ただ、その女性は彼氏と別れたばかりだったということもあって悩みを抱えており、水城涼真はその悩み事をずっと聴いていた。ある日、その女性が西日本に行ったことがないので大阪や京都を巡ってみたいと言い出した。その時ちょうど連休があったので水城涼真はその連休に大阪、京都を案内すると言った。そしてその2人は大阪、京都巡りをしたのだが、その女性から「水城さんって田舎の人だと思ってたけど都会の人だったんだね。ちょっとショック」と言われた。それから一旦東京へ戻ると、今度はその女性が「今度は私が長野を案内してあげる」と言い出した。それに対して水城涼真は長野に興味を持っていたので案内してほしいと答えた。その次の週、1日だけ仕事を休んでその2人は長野を巡った。その時に水城涼真は長野のことを知ったのである。ちなみにその女性とは仲が良かったのだが特別な感情など持っていなかったので、恋愛関係に発展することもなかった。それから間もなくしてその女性は結婚することになったので、もう会わないことにした。
若宮朱莉「涼真さんと気の合う女の人ってちょっと焼いちゃうけど、別に怒ったりするような話じゃないよ」
水城涼真「まあでも他の女の人に教えてもらったところを案内したわけやしな」
若宮朱莉「その女の人とは何もなかったんだよね?」
水城涼真「仲が良かったってだけで何もなかったよ。ただ、その女の人ってかなりモテてたから、俺はそういう気にもならんかっただけやけどな」
若宮朱莉「やっぱり涼真さんって変わってる!そんなモテる人と一緒にいたら変な気をおこす男の人多いと思う」
水城涼真「そういう女の人を相手にしてもうたら自分の日常が支配されていくって思うから、俺はもう最初から心を閉ざすようにするわけよ」
そんな話をしながら長野県塩尻市へ向かって行った。
10月14日午前10時20分・・・千畳敷~木曽駒ヶ岳(標高2956m)
塩尻の健康ランドで一夜を明かすと朝早く出発して木曽駒ヶ岳に向かって車を走らせた。メモ帳に書かれたC-ALPS登山というのはセントラルアルプス、つまり中央アルプスの登山ということは明白であり、旅行の帰りに立ち寄っているということはそこまで険しい山でないこともわかるので木曽駒ヶ岳で間違いないだろう。
午前8時20分、黒川平臨時駐車場に到着すると2人はザックを持って駒ヶ岳ロープウェイバスに乗り込んだ。そこから40分程バスを乗ってしらび平駅に到着すると、駒ヶ岳ロープウェイに乗って千畳敷駅へ向かった。千畳敷駅に到着して外に出てみると空は曇っていたが千畳敷カールから宝剣岳の迫力ある岩稜はしっかり見えていた。そこから40分程登ったところで稜線に出ると市街地の向こう側に南アルプスが広がっている景色を望むことができた。
水城涼真「天気はギリギリ持った感じでよかったわ」
若宮朱莉「あそこに広がってるのが南アルプスだよね?」
水城涼真「そうや。富士山は見えてないけど塩見岳から間ノ岳、北岳がよー見えてるわ」
宝剣山荘は帰りに立ち寄ることにして、そのまま中岳に向かって登っていった。時刻が10時半を少し過ぎた頃に中岳(標高2925m)に到着した。ここで少し休憩をしていたのだが人が多かったのでさっさと木曽駒ヶ岳の山頂へ向かった。中岳から下っていると目の前に木曽駒ヶ岳のピークが見えたのであと一登りといった感じである。最後の登りは中岳より意外と楽であった。そして時刻11時15分に木曽駒ヶ岳(標高2956m)に登頂した。山頂からは360度の視界が開けており、南アルプスから北アルプス、空木岳や南駒ヶ岳とそこまでの迫力ある稜線、木曾御嶽山などを望むことができた。
若宮朱莉「木曽駒ヶ岳って旅行の帰りに手軽に登れるからお得だよね」
水城涼真「まあ、本来は空木岳まで縦走したいところやけどな」
若宮朱莉「父と母も新婚旅行の最後にこの景色を見たんだね。今回の長野旅行はいろんなところで父と共感できたと思うから本当に良かった」
水城涼真「それやったらよかったわ。ここでしばらく休憩やけど、俺はちょっと向こうで座ってるから朱莉ちゃんはゆっくり景色でも見といて」
水城涼真は木曽駒ヶ岳神社の社殿近くにザックを置くと座って休憩をしていた。若宮朱莉が景色を眺めていると30代前半ぐらいの女性登山者二人に声をかけられた。
女性登山者A「あの、タレントの若宮朱莉さんですよね?」
若宮朱莉「はい、そうです」
女性登山者B「うわーこんなところであかりんに会えるなんて思わなかったぁ」
女性登山者A「すみませんこの子ミーハーなんです。お一人で来られたんですか?」
若宮朱莉「いえ、旦那と一緒に登ってきました」
女性登山者B「夫婦で山に登れるなんて羨ましい!」
若宮朱莉「あはは、周りからはそういう風に見えるんですね」
女性登山者A「幸せそうでなによりです。これからも応援しますので頑張ってください」
女性登山者B「あかりん、頑張ってくださいね!じゃあ私達はお先に失礼します」
若宮朱莉「ありがとうございます、お気をつけて!」
そうして女性登山者二人は下っていった。それから10分程休憩をすると水城涼真と若宮朱莉も下山をはじめた。下山は中岳を巻く迂回ルートを使い、さっさと宝剣山荘に入った。ちょうどお昼だったので、この宝剣山荘で昼食をとることにした。水城涼真はビーフシチューセット、若宮朱莉は和風カレーうどんといった人気の二品を注文するとお互いに交換しあいながら食べた。その後、千畳敷に戻って山行を終えた。
こうして長いようで短い水城涼真と若宮朱莉の長野新婚旅行は終わって大阪へ戻っていった。




