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アルプスの頂、槍ヶ岳に登りました

9月4日午前4時・・・


いよいよ今日から槍ヶ岳ロケがはじまる。目覚まし時計が鳴って起床した水城涼真と若宮朱莉は準備していたザックを背負って玄関を出た。アパートの入口に行くと既に若宮朱莉のマネージャーである井野口晃が運転する黒いワゴン車が停車していて、2人はザックをワゴン車のトランクへ積み込んだ。大阪からであれば「あかんだな駐車場」よりシャトルバスで上高地に向かったほうが早いのだが、今回はバスに乗車するところから撮影をはじめるとのことで沢渡の駐車場で待ち合わせとなっている。


水城涼真「井野口さん、おはようございます。今日も井野口さんがずっと運転されるんですか?」

井野口晃「そのつもりです」

水城涼真「その恰好だと今回も登られないんですか?」

井野口晃「はい、私は上高地で待機しています」

水城涼真「そうですか。朱莉ちゃん、道案内するから俺が助手席に乗るわ」

若宮朱莉「うん」

水城涼真「それでは安全運転でお願いします」


そうして井野口晃が運転するワゴン車は名神高速道路に入り、一宮ジャンクションから東海北陸自動車道を北上していった。長良川サービスエリアで休憩をすると、水城涼真と若宮朱莉はフードコートで名古屋の味噌カツ丼を食べていた。


井野口晃「あの、食事中に申し訳ありませんが、お二人が一緒にいるところを誰かに見られるとまずいので離れていただけませんか?」

若宮朱莉「大丈夫。わたしだってバレたことないから」

水城涼真「だったら井野口さんもそこに座ってればいいじゃないですか」

井野口晃「そうですね。では私は座って待っています」


サービスエリアで食事と休憩を終えると3人は車に乗り込み、さらに東海北陸道を北上していった。ちなみに水城涼真があらかじめ調べておいた本日の天気予報では、上高地付近の天気は前線が通過する影響で曇り時々雨で降水確率は60%と高い。しかし明日は高気圧に覆われて快晴となっているので眺望は期待できる。ワゴン車が高鷲インターチェンジを過ぎた頃、若宮朱莉が左の窓を見ながら「あそこに山頂が丸い変な山がある」と言った。


水城涼真「あれは大日ヶ岳やな。芝生のようになってるのは高鷲スノーパークやわ。あそこでもちょっとやけどバックカントリーできるんやで」

若宮朱莉「へぇー涼真さん登ったことあるの?」

水城涼真「大日ヶ岳は冬に3回くらい登ってるよ。山頂から白山がよー見えるんよ」

若宮朱莉「涼真さんって本当にいろんな山に登ってるんだね」


さらに東海北陸道を北上して飛騨清見インターチェンジから高山清見バイパスを東に向かって走らせた。高山西インターチェンジを出て国道158号線をひたすら松本方面へ向かって進んで山道に入りトンネルを抜けると一瞬、頭が少し尖った高い山が見えた。


若宮朱莉「涼真さん、後ろに傘みたいな形の高い山が見えるよ」

水城涼真「あれは笠ヶ岳やな。あそこは登る機会がなかなかないんよ」

若宮朱莉「笠ヶ岳は登るのって大変なの?」

水城涼真「笠新道ってルートなんやけど、稜線に出るまで急登続きでかなり大変らしいわ」


そんな話をしているうちに長野県松本市に入った。



午前10時20分・・・さわんどバスターミナル


井野口晃が運転するワゴン車は国道158号線を走り続けて、ついに待ち合わせ場所となっている”さわんどバスターミナル”の駐車場に到着した。井野口晃はすぐに車を停めるとすぐに車から降りて大日テレビのロケバスを探していた。


井野口晃「まだ大日テレビさんは到着していないようですので、このまま車の中で待っていましょう」

水城涼真「待ち合わせは10時半から11時ですので、それまでに到着してくれるといいんですが・・・」


それから5分も経たないうちに大日テレビのロケバスと思われる少し大きめのシルバーのワゴン車2台が駐車場に入ってきた。井野口晃が「来たようですね。車から降りましょう」と言った。シルバーのワゴン車2台が駐車するとスライド式のドアが開いて数人のスタッフが降りてきた。その後にピンク色のハットをかぶって、黒いインナーシャツにピンク色のポロシャツ、濃いグレーのトレッキングパンツを履いた天音琴美が「朱莉ちゃーん!」と大声で呼びながら降りてきた。


若宮朱莉「天音さん、おはようございます。剱岳以来だけどお久しぶりって感じもないですね」

天音琴美「そうだね。まさか立山で見ていた槍ヶ岳に朱莉ちゃんと登れることになって嬉しいよ!」

若宮朱莉「わたしも嬉しいです!」

天音琴美「あっ涼真さん、おはようございます。今回もよろしくお願いします」

水城涼真「天音さん、今回はあっちゃんもおらんから飲みすぎんようにな」

天音琴美「こんなところでその話は辞めてください!それより新婚生活はどうですか?」

水城涼真「いや、その話はまた後にしよ」

蒲田博之「水城さん、富士山ロケ以来でお久しぶりです。今回もよろしくお願いします」

水城涼真「こちらこそよろしくお願いします」


各自が挨拶をしていると、シルバーのワゴン車から2人の女性が出てきた。そのうちの1人を見て水城涼真は驚いた。


立川來未「わたくし天音琴美さんのヘアメイクを担当します立川來未です。よろしくお願いします」

水城志帆「わたしは今回、若宮朱莉さんのヘアメイクを担当します水城志帆です。みなさんよろしくお願いします」

水城涼真「なんや志帆、こんなところまで来たんか。お前に山は似合わへんわ」

立川來未「志帆ちゃん、この人がお兄さん?」

水城志帆「はい。山バカでオタクの兄です」

水城涼真「うるさいわ!それにお前、一人称が”うち”から”わたし”に変わっとるがな。東京に毒されたんやな」

水城志帆「毒されてへんわ。”うち”って言うと京都の人に間違えられるから変えただけや」

立川來未「志帆ちゃんってお兄さんと仲いいんだね」

水城志帆「仲良くないですよ。お兄ぃ、この人がわたしによくしてくれてる來未先輩や。挨拶くらいしとき」

水城涼真「來未さんね。いつも志帆がお世話になっています」

立川來未「いえいえ、こちらこそ!志帆ちゃんはよく頑張ってくれているので助かっています」


そこに若宮朱莉がやってきた。


若宮朱莉「まさか志帆ちゃんがわたしのヘアメイクの担当してくれるなんて思わなかった。よろしくね!」

水城志帆「こちらこそ。それにあかりん、ご結婚おめでとうございます。こんな兄ですがよろしくお願いします」

水城涼真「お前、俺にはおめでとうって言わへんのか」

水城志帆「お兄ぃはあかりんを大切にすることだけ考えとけばええねん」

水城涼真「それはそうと、お前はどこまで歩いてくるつもりや?」

水城志帆「槍沢ロッジやったっけ!?その小屋までや」

蒲田博之「お話し中申し訳ありませんが、そろそろロケの準備をさせてもらっていいでしょうか?」

水城涼真「そうですね、すみません。じゃあはじめてください」

蒲田博之「では、ロケの準備をはじめます。今スタッフがバスのチケットを購入しにいってますが、カメラマンと音声さん以外は先にタクシーで上高地へ向かいます」


若宮朱莉と天音琴美は音声装置を装着して、ヘアメイクを済ませるとバス停で槍ヶ岳登山のロケ収録がはじまった。カメラが向けられると天音琴美と若宮朱莉が横に並んで「登山女子二人が登る槍ヶ岳、目指せアルプスの頂!」と大きな声を揃えて言った。バスの到着を待っている間も2人の会話は次のように収録されていった。


天音琴美「朱莉ちゃん、前回は庶民が憧れる富士山登山だったけど、今回は登山者が憧れる槍ヶ岳登山だね」

若宮朱莉「そうですね。いろんな山から北アルプスを見えると槍ヶ岳を探していましたが、今回はその槍ヶ岳に登るということで本当に楽しみです」

天音琴美「うんうん。そういえば朱莉ちゃんの結婚式をした立山からも見えていて、いつか一緒に登ろうって話をしてたね」

若宮朱莉「はい。まさか本当に天音さんと一緒に登ることなんて思いもしませんでした」

天音琴美「あっバスが来たよ。まずは上高地までレッツゴー!」


そうして2人がバスに乗るまで収録が行われた。その後、水城涼真がバスに乗って上高地へ向かった。



午前11時40分・・・上高地


バスが上高地に到着すると既にタクシーに乗ってきてたスタッフが待っていた。いつもここは人で賑わっているが、平日ということもあってあまり人がいなかった。河童橋の上で収録がはじまった。しかし天気は雨がポツポツと降っていて穂高連峰はガスで覆われていた。水城涼真は「今日は天気が悪いんで、ここは帰りにもう一度収録したほうがええですよ」と蒲田博之にアドバイスした。若宮朱莉と天音琴美は「上高地に到着しました。これから槍ヶ岳を目指していきます」程度の発言だけして上高地から出発した。梓川を左手に歩きながら収録されていった。一番後ろを歩いていた水城涼真に水城志帆は話しかけた。


水城志帆「お兄ぃ、来月から仕送りはもうええで」

水城涼真「もう自分でやっていけるんか?」

水城志帆「今月から天音さんの事務所の社員になったから自分でやっていくわ」

水城涼真「それはよかったな。でもお前、大阪には戻ってこーへんのか?」

水城志帆「天音さんや來未先輩にはよーしてもらってるし、東京で何年か頑張るわ。その後のことはまだ考えてへん」


そうして水城志帆は独立宣言をした。



午後12時15分・・・明神館


上高地から40分程経って明神館に到着した。水城涼真は「ここで15分程休憩します」と言った。若宮朱莉と天音琴美はあまり疲れていなかったが、大きな荷物を持ったスタッフや登山に慣れていない水城志帆や立川來未のことを考えての休憩でもある。


若宮朱莉「涼真さん、いきなり休憩時間が長くない?まだ全然疲れてないよ」

水城涼真「あんな、これから平坦な道が続くんやけど、やっぱみんなペース早くなってるからこの先で疲れてくるんよ。明日のこともあるからそれを考えてこまめに休憩しとかんとあかん」

天音琴美「なるほど、そんなことまで考えてスケジューリングしているんですね!勉強になります」

水城涼真「それに登山に慣れてない人もおることも忘れたらあかん」

若宮朱莉「それはそうだね!」


若宮朱莉と天音琴美は妙に納得した表情をして明神館での収録を少しすると休憩時間が終わって再び歩きはじめた。



午後13時10分・・・徳沢


明神館からさらに40分程歩いてくると徳沢ロッヂに到着した。水城涼真の予想通り、やはり平坦な道が続いているのでみんな歩くペースが早くなっていた。水城涼真は「ここでも15分程休憩します」と言った。若宮朱莉と天音琴美は徳沢に到着するロケを収録の収録を済ませるとロッヂの前のベンチに座った。


天音琴美「ここから蝶ヶ岳に登っていけるんだよ」

若宮朱莉「蝶ヶ岳の向こうが常念岳でしたか!?こんなところから登るんですね」

天音琴美「たしか涼真さんは常念岳には登ったことあるって聞いたけど、ここから登ったのかな?」

水城涼真「まさか、ここからやなくて反対側から直で登ったよ。上高地からやとバス代がかかるし遠いからな」


天気は不安定で雨が降ったりやんだりを繰り返していた。今のところ誰も疲れている様子はなかったが、このペースで歩き続けるとどこかで疲れてくると水城涼真は心配になってきた。そして休憩時間を終えてみんなさらに歩きはじめた。



午後14時20分・・・横尾


天気があまり良くないので少しずつであったが歩きながらの収録が続いていった。徳沢から歩きだして約1時間弱で横尾山荘に到着した。ここは蝶ヶ岳へ登っていける登山道と横尾大橋を渡って涸沢から穂高連峰に登っていけるルート、そして槍ヶ岳へ登って行けるルートの四辻のようになっている。ずっと穂高連峰はガスっていたのだが、この横尾大橋からの上からは迫力ある屏風ノびょうぶのあたまがよく見えていたので収録と写真撮影が行われた。


水城涼真「上高地から約11km歩いてきましたので、ここで30分の休憩とします。みなさん、ここから先は本格的な登山道になりますので、歩くペースを一段階落とします」

蒲田博之「水城さん、1時間おきぐらいに結構な休憩をとっていますが時間は大丈夫でしょうか?」

水城涼真「テント場まではあと1時間半くらいなので大丈夫です。それにこの先でバテないようにするためにもここで休憩しておく必要があります」

蒲田博之「そうですか。スケジューリングのことは水城さんにお任せしていますが、天気が心配になってきました」

水城涼真「この後、本降りになりそうですが、今日はもう諦めるしかありません」


さすがに重い荷物を背負っているスタッフは少し疲れているようであった。


天音琴美「あたしが奥穂高岳に登った時はここから横尾大橋を渡って涸沢に登っていったんだよね」

若宮朱莉「じゃあこの先からは天音さんもはじめてということですよね?」

天音琴美「そうだね。今日はお天気が悪いけど、明日は楽しみ!」

若宮朱莉「涼真さんがこの上高地ルートを選んだ理由が明日わかるってことですね」


そんな話をしながら休憩をしてみんなの表情が少し元気になったところで水城涼真は「じゃあ行きましょうか」と言った。



午後15時40分・・・一の俣~ババ平のキャンプ場


横尾山荘から少し歩いていくと蝶ヶ岳との分岐点になり、そこからは本格的な登山道になった。ちゃんと分岐点の道標にも『この先から登山エリア』と書かれていた。ここからは水城涼真がペースダウンを配慮しながら、ペースが早いスタッフにも指摘していった。横尾山荘から1時間弱歩いたところで一の俣に到着して、橋を渡ったところで10分程の休憩となった。まだバテている人は見られなかったがここから槍沢ロッジ、ババ平キャンプ場までは登りが続くのでペース配分を十分に考慮しないといけない。休憩を終えて歩き出したところでロケ収録はされていき二の俣を過ぎた辺りから雨は本降りになった。そこから水城涼真は先頭を歩いてスローペースで登っていった。そして午後16時30分前に槍沢ロッジに到着した。


蒲田博之「ここでカメラマンと音声さん以外は宿泊となりますが、この雨でテント泊しても大丈夫でしょうか?」

水城涼真「大丈夫です。天気はこれから回復していきますので、ここで少し雨宿りをしてババ平のキャンプ場へ向かいます」

蒲田博之「明日は午前4時からスタートでしたよね?」

水城涼真「そうです。ここからババ平のキャンプ場までは歩いて30分程かかりますので3時30分には出発してください」

蒲田博之「承知いたしました」


水城涼真は槍沢ロッジでテント泊の受付を済ませると水城志帆が立川來未を連れて近づいてきた。


水城志帆「はぁ、疲れたわ。お兄ぃ、こんなしんどいことして何が楽しいん?」

水城涼真「お前、体力なさすぎや。こんな程度でバテんなよ」

水城志帆「わたしだけやないよ。來未先輩もかなり疲れたって言うてるわ」

立川來未「登山ってしんどいですよね。お兄さん、平気そうで感心します」

水城涼真「登山に慣れてない人にとってはしんどいのはわかるよ」


そんな話をしながら雨宿りをしていると雨が上がってきた。今夜には天気が回復するという予報になっていることもあって槍沢ロッジを後にした。水城涼真が先頭を歩き出して30分程でババ平のキャンプ場に到着した。このキャンプ場も人で賑わっていることが多いのだが、平日ということもあってあまりテント泊している人はいなかった。すっかり雨は上がったので水城涼真と若宮朱莉はザックの中から500mlの缶ビールを合わせて24本と2人前のお好み焼きの材料が入った6カップを取りだした。


水城涼真「朱莉ちゃんは天音さんのテントで一緒に寝てな」

若宮朱莉「うん、わかってる」

水城涼真「それとスタッフの方々はテントを設営した後に、この2人がお好み焼きを焼いて食べてるところを撮影してください。その後で一緒にお好み焼きを焼いてたべましょう」

天音琴美「あたしもビール6本持ってきたんだけど、そんなに飲めるかな?」

水城涼真「天音さん、結構飲むくせによーそんなこと言うわ」

天音琴美「えへへ、それが楽しみだったりします」


まず若宮朱莉と天音琴美がテントを設営しているシーンの収録をすると、水城涼真がチタン製のフライパンを出してきてお好み焼きを焼く準備をした。そして若宮朱莉と天音琴美がお好み焼きを焼いて食べているシーンの収録をしていた。


天音琴美「山でお好み焼きなんて食べたことなかったけど、本当に美味しいね!」

若宮朱莉「うんうん!思い切ってお好み焼きにチャレンジしてましたが、これは当たりでした」

天音琴美「これは朱莉ちゃんのアイデアでーすっ!このカップのお好み焼きなんてよく見つけたね」

若宮朱莉「関西のスーパーでよくこのカップのお好み焼きが売っているのを見かけていたからです」


そこで本日の収録が終わって、ようやく水城涼真がビールを持ってきた。若宮朱莉と天音琴美はお好み焼きを三分の一程しか食べていなかったのだが、待っていましたかのようにビールを手にした。水城涼真は「では、スタッフの方々もお好み焼きを食べてください。ビールを飲みたい方もどうぞ」と言った。そしてスタッフも混ざってビールを手にすると「乾杯!」といってお好み焼き宴会がはじまった。それから40分程するとさすがに登山慣れしていないスタッフ達はかなり疲れていたせいか、さっさとテントに入って眠ってしまった。


天音琴美「ねぇねぇ、それで新婚生活はどうなの?」

水城涼真「いやーもうな、朱莉ちゃんってホンマに芸能人?って思うようなことばっかするねん」

天音琴美「どういうことですか?」

水城涼真「脱衣所で下着を脱ぎっぱなしにするし、シャワーを浴び終わった後は下着で俺の部屋をうろつくんよ」

若宮朱莉「だって暑いんだもん。天音さん、みんなそんな感じですよね?」

天音琴美「あははははは、さすがに脱ぎっぱなしにはしないけど、一人だから下着のままでいることはあるね」

若宮朱莉「ほら、やっぱりそうですよね!?脱ぎっぱなしの癖は直そうかと思っていますが・・・」

水城涼真「いや、お二人がおかしいだけやろ。天音さん、あっちゃんの前で下着姿でうろうろできる?」

天音琴美「さすがにそれは恥ずかしいですけど、夫婦だからいいんじゃないですか」

若宮朱莉「そうですよね。涼真さんの前だからいつもの自分でいられるわけです」


そんな話をしながらビールを飲んでいると午後9時を過ぎていたので、宴会はお開きとなり各自がテントに入って就寝した。



9月5日午前3時30分・・・ババ平のキャンプ場~殺生ヒュッテ


少し早めに起床した水城涼真はテントから外へ出てみた。天気は完全に回復されており、数えきれない満点の星空が輝いていたので今日は晴天で間違いない。すぐさま天音琴美のテントのほうへ行き「天音さん、朱莉ちゃん、そろそろ起きる時間やで」と声をかけた。すると天音琴美が寝ぼけたような口調で「わかりました」と言ってテントから外に出ると水城涼真から「星空を眺めてみ」と言われた。天音琴美は空を見上げると満点の星空をみて一気に目を覚まして「うわー綺麗!!」と少し大きな声で言った。その後、若宮朱莉も起きてくると天音琴美に「朱莉ちゃん、めちゃくちゃ星空が綺麗だよ」と言われてテントの外で星空を見上げて「うわぁーすごい!」と言って目を覚ました。その声に反応したのか、スタッフも別のテントから出てきて星空を見ると驚きながらすぐにカメラの用意をした。さすがに動画で星空を撮影するのは無理があるので一眼レフカメラと三脚をだしてきて長時間露光で星空の撮影をはじめた。そして各自がテント内の片付けをした後で水の補給をしていると、3人がヘッドライトを照らしながら下から登ってきていた。


蒲田博之「水城さんおはようございます。なんとかこのババ平のキャンプ場まで登ってくることができました」

水城涼真「蒲田さんおはようございます。今、みんな水を補給してるところなんですが、終わったら収録して出発にしましょう」

蒲田博之「わかりました。天音さんと若宮さんに音声のセットしておいてね」


水の補給を終えると、さっそく収録がはじまった。


天音琴美「みなさん、おはようございます。現在時刻は午前4時前になりますが、これから槍ヶ岳の山頂を目指していきます」

若宮朱莉「その前に、この満点の星空をご覧ください。とても素晴らしいです」

天音琴美「あたしもこの星空を見て一気に目が覚めちゃったからね」

若宮朱莉「わたしも同じく一気に目が覚めちゃいました」

天音琴美「それでは槍ヶ岳の山頂を目指してスタートしましょう!」


そこからナイトハイクがはじまったのだが、暗いためにあまり収録はされなかった。そしてババ平のキャンプ場から30分程歩いたところで槍沢大曲りの分岐に到着した。ここでは特に休憩することなく先に進んでいったが、続いてそこから1時間程歩いたところで天狗原との分岐点に到着した。水城涼真は「ここで15分程休憩をとります。この先から空気が薄くなってくるのでスローペースで登っていくことを心がけてください」と言った。そこでしばらく休憩していると空は青とオレンジのグラデーションになってきて夜が明けてきた。休憩時間を終えて登っていくとオレンジ色に染まった大喰岳をハッキリ見えるようになった。


蒲田博之「よし、この辺りから本格的に撮影をはじめていこう。天音さん、若宮さんは先頭を歩いて、カメラマンは後ろと前から撮影するように!」

水城涼真「蒲田さん、あそこからご来光が見えてきましたよ」

蒲田博之「カメラマン、あのご来光を先に撮影だ」


そして完全に夜が明けたところで後ろを振り向いて景色をみると富士山が顔を出していた。


天音琴美「朱莉ちゃん、昨年登った富士山が見えるよ」

若宮朱莉「本当だ!天音さん、今日もがんばりましょう」


そんな収録を簡単に済ませると、いよいよ正面に尖った槍ヶ岳の穂先が見えた。


若宮朱莉「素晴らしいアルプスの迫力ある景色!涼真さんはこれを見せたかったんだ!?」

水城涼真「まあ、そうやな。ここまで綺麗に槍ヶ岳の山容が見えるのがこのルートの醍醐味やからな」

天音琴美「本当に素晴らしいです!ひゃぁーテンション上がってきちゃった!!」


蒲田博之はその景色を見ながら登って行く収録に力を入れているようで、何度も撮影を指示していた。そして午前7時30分前に殺生分岐(殺生ヒュッテ)に到着した。あと1時間弱で槍ヶ岳山荘まで登れるのだ。槍ヶ岳に近づくにつれて槍の穂先の迫力が増していき、その先からずっとカメラマンが上下から構えて収録がひたすら続いた。



午前8時50分・・・槍ヶ岳(標高3180m)


殺生分岐(殺生ヒュッテ)から約50分程で槍ヶ岳山荘に到着した。問題はここから槍の穂先の登りでカメラマンや音声さんが鎖場や岩場などを駆使して登ってこれるのか心配になっていた。水城涼真は「ここで少し休憩をしたらさっさと穂先を登ってしまいましょう。カメラマンの方々や音声さんは十分に気をつけて登ってください」と言った。しかし、休憩時間を終えて実際に槍の穂先の登りになると、若宮朱莉と天音琴美が先頭で登っていき、カメラマンと音声さんは立ち止まりながら安全な場所で収録をしていたので、さすがはプロだと思わされた。そしてついに槍ヶ岳(標高3180m)の山頂に到着した。山頂は狭いが、今日はあまり人がいないので収録する時間はあった。若宮朱莉と天音琴美は山頂にある祠の前で槍ヶ岳山頂の看板を持ちながら収録をはじめた。先に若宮朱莉と天音琴美はお互いに抱き合った。


天音琴美「やったね!朱莉ちゃん、あたし達、アルプスの頂ともいえる槍ヶ岳に登頂できたよ」

若宮朱莉「やったぁ!ついに天音さんと槍ヶ岳に登頂でました。今とても嬉しいです!!」


それから2人は離れて景色を見渡した。


天音琴美「笠ヶ岳から遠く白山まで見えていて乗鞍岳や木曽御嶽山も見えてる」

若宮朱莉「北側は黒部五郎岳、双六岳、鷲羽岳、水晶岳、奥大日岳、野口五郎岳などの山が下に見えています。わたし、山を上から見下ろすのって好きなんですよね」

天音琴美「正面には常念岳とその北側には雨飾山、火打山、高妻山、戸隠山なんかも見えていて、うっすらと浅間山も見えてるね」

若宮朱莉「あの、わたし思わず槍ヶ岳を探していましたが、今槍ヶ岳の山頂にいるんですよね」

天音琴美「それわかる!あたしも、一瞬槍ヶ岳を探そうとしていたんだよね」

若宮朱莉「えっと北東側は白馬岳や立山連峰、剱岳が見えているんでしょうかね」

天音琴美「そうだね、あれは立山で間違いないよ」


そんな会話の収録をした後、山頂で2人の記念撮影が行われた。若宮朱莉は「あの、天音さん、このスマホで涼真さんとの記念撮影もお願いします」と言うと水城涼真は「しゃーないな」といって若宮朱莉の隣に並んだ。そして天音琴美がスマホで記念撮影をした。


収録を終えるとみんな槍の穂先から下っていって槍ヶ岳山荘へ戻った。


水城涼真「最高の天気で収録できてよかったわ」

蒲田博之「水城さんありがとうございます。今回も結構な視聴率がとれそうです」

水城涼真「ところで、天音さんと朱莉ちゃんって明日の何時まで時間を押さえているんですか?」

蒲田博之「天音は明日の24時までですね。明後日の午後からCM撮影が入っているとのことです」

水城涼真「朱莉ちゃんは?明後日は土曜日やけど、たしか仕事やったよな?」

若宮朱莉「うん、午後から名古屋でトークショーがあるの」

水城涼真「じゃあ体力あればの話やけど、明日沢渡に戻ったらそのまま焼岳にも登っておけへん?」

天音琴美「焼岳は登りたいけど、体力的に大丈夫か心配です」

若宮朱莉「焼岳ってたしか火山だよね?登ってみたい!」

水城涼真「今日は横尾山荘まで行くし、明日の体調次第でチャレンジしてみよか。2時間半くらいで登れるからロケの続きにもなりますよ」

蒲田博之「さすがに私は遠慮させていただきますが、カメラマンや音声さんが行けるのであれば是非登ってほしいです。番外編として使えます」

水城涼真「とりあえず、明日の体調を見て判断するってことにしましょう」


槍ヶ岳を登頂してロケの収録を終えたのだが、次の日に焼岳に登るなんて誰もが予想していなかった。はたして、それは実現できるのであろうか!?

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