八ツ淵の滝からまぼろしの滝へ・・・
8月2日午後19時30分・・・
大阪の某テレビ局で情報番組の出演を終えた若宮朱莉が自分の楽屋前に戻ると、マネージャーの井野口晃が待っており「朱莉ちゃん、今日もお疲れ様でした。お仕事の話があるんだけど、ちょっといいかな?」と声をかけてきた。若宮朱莉は「じゃあ、楽屋の中に入って!」と言うと二人は楽屋に入っていった。若宮朱莉はテーブルの前にあるソファーに座って「ふぅー」と言うと井野口晃が近くにあったパイプ椅子に座った。
井野口晃「1年程前に天音琴美さんと朱莉ちゃんが富士山登山のロケをしたのを覚えてる?」
若宮朱莉「もちろん覚えてるよ。あのロケがキッカケで天音さんと仲良くさせてもらってるからね」
井野口晃「実はあのロケの視聴率がかなりよかってね、今年もどこかの山でロケしないかって企画が立てられているんだよ」
若宮朱莉「どこかってことは登る山はまだ決まっていないってこと?」
井野口晃「そうなんだよ。ただ、収録は去年と同じ9月初旬、72時間枠、もちろん登山ガイドは水城さんにお願いしようと思っているんだけどどうかな?」
若宮朱莉「わたしは別に構わないけどどこの山に登るかは誰が決めるの?」
井野口晃「それは番組企画部長と水城さんで話し合ってもらうことになると思う」
若宮朱莉「わかった。わたしはそれを涼真さんに伝えておけばいいの?」
井野口晃「そうしてほしいんだけど、もう一つ話があって、今回の登山ロケは全国放送にしようと思ってる」
若宮朱莉「でも、富士山ロケは大阪でも放送していたよ?」
井野口晃「大阪は放送されてたけど、他の地域では放送されていないところもあったんだよ」
若宮朱莉「そうだったの。ところで番組企画部長は涼真さんの電話番号を知ってるの?」
井野口晃「番組企画部長は去年と同じ人だから知ってるはずだよ」
こうして若宮朱莉は天音琴美との登山ロケを引き受けた。その夜、自宅に帰った若宮朱莉は水城涼真に今回の登山ロケに関する話を説明した。
8月7日午前10時30分・・・
ずっと猛暑日が続いているが水城涼真は若宮朱莉が自動車教習所に通っているため、なかなか登山や沢登りに行くことができなかった。今日も若宮朱莉は朝から教習所へ行っているので一人でアニソンを聞きながら山の情報を見ていた。するとスマホの着信音が鳴った。それは富士山ロケの話をした番組企画部長の蒲田博之からの着信だったので、水城涼真は電話に出た。
蒲田博之「もしもし水城涼真さんのお電話で間違いないですか?」
水城涼真「はい」
蒲田博之「わたくし、大日テレビ番組企画部長の蒲田です。お久しぶりです。来月の登山ロケに関してお電話させていただきました」
水城涼真「お久しぶりです。大まかな話は聞いていますよ」
蒲田博之「ロケ日は9月4日から6日までの三日間でフィックスされました。そこで水城さんとどこの山に登るのかを検討したいと思っているのですが、おススメなどございますでしょうか?」
水城涼真「去年は庶民の憧れる富士山でしたから、今年は登山者が憧れる北アルプスの槍ヶ岳でいいのではないでしょうか?」
蒲田博之「槍ヶ岳は危険だと聞いたことがございますが、大丈夫でしょうか?」
水城涼真「それは槍の穂先だけの話で、槍ヶ岳山荘までは普通の登山道ですよ」
蒲田博之「剱岳なんかも考えていたのですが、やはり槍ヶ岳のほうがいいですか?」
水城涼真「剱岳は先日、結婚式で行きましたし、とても岩場が多くてカメラマンさんや登山に不慣れな人が行くと危険です」
蒲田博之「わかりました。では槍ヶ岳にしましょう。ルートやスケジューリングに関しては今回も水城さんにお願いする形で構いませんか?」
水城涼真「はい構いません。ルートは新穂高から登るのが最短ですが、景色として絵になるのは上高地ルートですので、距離は長くなりますが上高地ルートでいくのがおススメです」
蒲田博之「ではこちらのほうでも上高地ルートを調べてみます。今回は小屋などの予約は不要でしょうか?」
水城涼真「基本はテント泊になりますので不要です。ただスタッフのみなさんは小屋泊でも構いませんが、テント泊しているところも撮影したいのであれば、テントを持ってこられたほうがいいと思います」
蒲田博之「承知いたしました。それに関しましてはこちらで検討します」
こうして電話を切って数時間程経つと蒲田博之から「上高地ルートで槍ヶ岳に登ることにしました」とメッセージが届いた。これで9月4日~6日は若宮朱莉と天音琴美の念願でもあった槍ヶ岳に登ることが決まった。
8月20日午後22時10分・・・
仕事を終えて帰宅した若宮朱莉はシャワーを浴び終えると500mlの缶ビールを冷蔵庫から出してきて水城涼真の部屋に入った。水城涼真は500mlの缶ビールを飲みながらアニメの動画を見ていた。
水城涼真「朱莉ちゃん、教習はどのくらいまで進んだん?」
若宮朱莉「先週、やっと仮免許を取ったからあともう少しかな」
水城涼真「仮免あるなら俺が隣に乗って運転教えてもええんやけど、事故ったら終わりやからな」
若宮朱莉「免許取ってから練習させてもらうよ。それよりわたしがいきなり涼真さんの車を運転してもいいの?」
水城涼真「そのことやけど、練習用に軽の中古車を一台買ってもええなって思ってるんよ」
若宮朱莉「できれば天音さんみたいな車がいいな」
水城涼真「それやったら軽自動車の4WDクロカンがええかもな。俺の車より雪道は強いからな」
若宮朱莉「じゃあわたしが免許取ったら中古車見に行こう!」
水城涼真は冷蔵庫からもう一本500mlの缶ビールをを出してきた。
水城涼真「それにしても毎日毎日暑いな。沢一本行きたいところやけど、朱莉ちゃんの教習が終わらんとな」
若宮朱莉「今週の土曜日は人がいっぱいで教習がないから空いてるよ。どこか沢に行ってみる?あまり疲れないところがいいけど・・・」
水城涼真「24日やな。いきなりやから二人だけになると思うけど、あまり疲れない沢ねえ・・・う~ん」
若宮朱莉「大峰はやっぱ遠いんだよね?」
水城涼真「大峰は遠いし工程が長いからな。それやったら初心者向けの沢でも行ってみる?」
若宮朱莉「初心者向けの沢?」
水城涼真「比良山地に八ツ淵の滝ってあるんやけど、横に登山道があるからいつでも敗退できるからちょうどええんとちゃうかな」
若宮朱莉「猛暑が続いてるし、比良山地って行ったことないから行ってみたい!」
水城涼真「じゃあ週末は八ツ淵の滝にいこか。余裕があればまぼろしの滝まで行くで」
若宮朱莉「まぼろしの滝!?何それ?」
水城涼真「到達が難しい滝と言われてたりしてるんやけど、そないに難しいこともあれへんのよ」
若宮朱莉「そうなんだ」
そういう話で8月24日の土曜日に八ツ淵の滝へ行くことが決まった。
8月24日午前5時30分・・・
目覚まし時計が鳴って起床した2人は寝起きのコーヒーを飲んでいた。
水城涼真「朱莉ちゃん、沢靴の他にスニーカーもザックに入れてる?」
若宮朱莉「うん。下山は登山道を歩くんだよね」
水城涼真「そう。沢靴のままやとフェルトが傷むからな」
コーヒーを飲み終えると2人は玄関を出て駐車場へ向かった。トランクに荷物を積んで車に乗ると名神高速道路・吹田インターチェンジを目指して走らせた。名神高速道路に入ると京都方面へ車を走らせた。滋賀県高島市の天気は快晴で最高気温は35℃の猛暑日となる予報であった。
若宮朱莉「涼真さん、やっぱり車の運転上手だね」
水城涼真「いや、今朱莉ちゃんは教習所に通ってるからそう思うだけで、慣れたらこんなもんやで」
若宮朱莉「釈迦ヶ岳の雪道を走らせてる時みたいな運転、わたしにはできないよ」
水城涼真「あれも慣れやわ。俺、車の免許取った時はよー山道ばっか走らせてたから」
名神高速道路を40分程走らせて京都東インターチェンジでおりると、続いて国道161号線バイパスに入って高島方面に向かって車を走らせた。そのまま琵琶湖西縦貫道路40分程走らせて県道588号線に入った先で近江高島駅前のコンビニに立ち寄った。今回は行動食と水、そしてカップのカレーメシを購入してさっさとコンビニを出た。それから県道296号線を走り続けているとアプローチであるガリバー青少年旅行村の看板が道路案内表示が出てきたので従って進んでいった。
午前8時10分・・・ガリバー青少年旅行村~貴船ノ滝
大阪からコンビニに立ち寄った時間も含めて約2時間でガリバー青少年旅行村に到着した。駐車料金を支払ってできるだけアプローチから近い場所に車を停めた。2人は車から降りるとすぐに沢登りの準備をはじめた。さっさと準備を済ませた水城涼真は少し運転に疲れていたのか、ベンチに座って休憩していた。すると若宮朱莉も準備を済ませて「涼真さん、準備できたよ。やっぱり運転疲れちゃった?」と聞いてきたので、水城涼真は「いや、大丈夫。それより暑いからさっさと入渓しよ」と答えた。2人は「暑い暑い」と呟きながら林道を10分程歩いていき八ツ淵の滝の登山口に到着した。登山口から少し進んだところで、分岐点があったので入渓ポイントである魚止滝・障子滝方面のほうへ進んで沢筋まで下っていった。沢筋に出たところで入渓ポイントとなり、水城涼真と若宮朱莉は早速沢に入った。
水城涼真「あー気持ちいいわ。暑さが一気に吹っ飛んでいった感じや」
若宮朱莉「ひゃー気持ちいい!大峰と違って寒くないね」
水城涼真「やっぱ夏は沢やな。さあじゃんじゃん遡行していくで!」
若宮朱莉「うふふ・・・なんか涼真さんと沢登りデートしてるみたい」
水城涼真「そんなデートするやつおらんやろ」
若宮朱莉「わたし達らしくていいじゃん!」
そこから2人は本当は巻ける岩でもそのまま登っていって魚止の滝に到着した。本来、魚止の滝もロープを出して登っていくことができるのだが、この日は水量が多かったのと、あまり時間をかけたくないということもあって左岸から巻いた。魚止の滝の上部にも小さな滝があり、水城涼真と若宮朱莉は滝壺でプカプカと浮かびながら少し休憩をしていた。
若宮朱莉「涼真さん、もう沢から出たくないよ」
水城涼真「気持ちはわかるけど、ここからは一旦巻いて登山道に出るんよ」
巻道にはちゃんと鎖が設置されおり、2人はスルスルと岩を登っていった。そのさらに上部は連続する滝を巻いていくため急斜面の岩場になっていた。そこには足の置き場として鉄杭がさされており、ロープが設置されているので慣れている2人にとって登るのは簡単であった。その岩場を登ると最後に急斜面の山道となっており、そこにも鎖が設置されていた。その急斜面の山道を登り詰めて登山道と合流したとき、あまりにも急斜面が続いたので2人とも少し息を切らしていた。少し立ち休憩をして登山道を歩いていくと再び沢筋にでた。そこはこの八ツ淵の滝で唯一のスライダーポイントである。
水城涼真「朱莉ちゃん、あそこからスライダーできるからやってみ」
若宮朱莉「やったぁ!えっとこの辺りからかな!?じゃあいきまーすっ!!」
若宮朱莉は「ひゃぁー」と言いながらスライダーをして小さな滝壺へ滑っていった。続いて水城涼真が「やっほー!」と言いながらスライダーをして滑った。若宮朱莉は目を輝かせながら楽しんでいた。
若宮朱莉「涼真さん、もう一回だけ滑ってもいい?」
水城涼真「ええよ。俺ももう一回だけ滑るわ」
そう言って2人も再びスライダーをして滑った。それから遡行を続けていくと屏風ヶ淵というゴルジュに到着した。このゴルジュは一部の人達からカッコいいと言われており、両岸が垂直に近い岩壁に挟まれていて、陽の光に照らされて水面が非常に綺麗なエメラルドグリーンと化している。
若宮朱莉「このゴルジュも綺麗だね。わたし真ん中まで行くから記念撮影お願いしてもいい?」
水城涼真「朱莉ちゃん、そのまま行くとかなり深いで!」
若宮朱莉「キャッ!本当だ、かなり深くて足が届かない」
水城涼真「もっと手前で撮ったるから戻っておいで」
若宮朱莉「じゃあこの辺りで撮って!」
水城涼真は屏風ヶ淵の途中で立っている若宮朱莉の写真を撮った。
若宮朱莉「これは天音さんに送って自慢しようっと」
水城涼真「そういえば天音さんって沢登りはやらんかったな。山にしか興味ないんかな」
若宮朱莉「興味はあるかもだけど、一緒に行く人がいないんじゃないかな」
水城涼真「たしかにそうかもな」
それから2人は登山道に戻って屏風ヶ淵を巻くと八淵の滝の中で一番大きいとされる落差約30mの貴船ノ滝に到着した。時刻は午前9時50分を過ぎていた。
水城涼真「これが八淵の滝の中で一番大きい滝やわ。ちょっとぶっ通しで来たからここで一旦大休憩にしよか」
若宮朱莉「うん。少し疲れちゃった」
この貴船ノ滝の下で2人は行動食を食べながら大休憩をとった。
午前10時40分・・・七遍返しの滝~まぼろしの滝
貴船ノ滝の下で20分程休憩をとった後、2人は遡行をはじめた。対岸に渡ると貴船ノ滝の巻道となっている岩場の登りになる。まずは鉄製のハシゴを登って、その先は足の置き場として鉄杭がさされており、ロープが設置されている。この岩場の登りはそこまで難易度が高いものではないが、特に女性の場合は途中で足の置き場に戸惑うことがある。まずは若宮朱莉がその岩場を登っていくと予想通り途中で足の置き場に戸惑っていた。水城涼真は大きな声で「思い切って足を上の岩に乗せたらええ」とアドバイスした。若宮朱莉は「わかった」と言って少し右足を上げて上の岩場に乗せると、全身で体を持ち上げるようにして登っていった。続いて水城涼真の番になったが、もうこの岩場を何度も登っていて慣れていたのでスルスルと登っていった。それから流れる水に逆らいながらどんどん遡行していった。そして水量が多い滝があるところで水城涼真が立ち止まった。
水城涼真「以前、あっちゃんがこの滝を登ろうとしたんやけど、その時滝に吹き飛ばされてコンタクトレンズを落としてしまったんよ」
若宮朱莉「それは大変だったんじゃない?でも、よくこんな滝登ろうとしたよね」
水城涼真「左のコンタクトレンズだけを落としたからなんとか行けたんやけど、俺は絶対登られへんって言ったんよ」
若宮朱莉「あっちゃんって結構無茶なことするからね」
水城涼真「さて、もうそこ登ったところが七遍返しの滝やからいこか」
そこから少し登山道を歩いた先で橋がかかっている七遍返しの滝に到着した。橋は渡らず下をくぐって七遍返しの滝の途中にある広い岩場のところまで登っていった。そこで水城涼真は時計を見た。
水城涼真「さて、ここからどうするかやな。ここで遡行を終える人が多いんよ」
若宮朱莉「ここからまぼろしの滝まではまだ遠いの?」
水城涼真「ここから1時間くらいかな」
若宮朱莉「じゃあお昼までに着きそうだね。下山はどのくらい時間かかるの?」
水城涼真「下山は2時間かからんくらいやな」
若宮朱莉「だったら行こうよ。なんかここだと中途半端な気がする」
水城涼真「わかった。じゃあここでちょっと休憩したらいこか」
2人は10分程休憩すると七遍返しの滝を登りだした。七遍返しの滝の上部からしばらく岩登りなどない沢歩きとなった。陽はじりじりと照り付けて暑くなってきたので時折沢の水を浴びたりしながら歩いていった。30分程歩いたところで沢は右に大きくカーブしていて、その先でようやく少し大きい滝が出てきた。2人は滝壺に入って少しプカプカ浮かんだあと、右岸から岩場をトラバースしてその滝を巻いた。それからしばらく歩いて時刻が午前11時50分にさしかかったところでようやく「まぼろしの滝」に到着した。このまぼろしの滝と呼ばれる由来は諸説あるらしいが、到達の難しさや神秘性を表していることが定着したといわれている。
水城涼真「これがまぼろしの滝やで」
若宮朱莉「誰もいないから神秘的な感じがしないでもないけど、普通の滝なんだね」
水城涼真「なんか昔の地図にも関係してそう呼ばれてるみたいやけど、よーわからんわ」
若宮朱莉「でもここまで来れて満足した!」
水城涼真「じゃあまぼろしの滝を巻いてその上の岩場で昼食にしよか」
若宮朱莉「うん!もうお腹ペコペコ」
まぼろしの滝を右岸から巻いて岩場を登っていったが、ホールドできるところがあまりなかったので若宮朱莉は少し戸惑っていた。そしてまぼろしの滝の上部にある大きな岩場の上で昼食となった。今日のお昼はカレーメシとのことで水城涼真はお湯を沸かすと2つのカップにお湯を注いだ。
午後14時20分・・・ガリバー青少年旅行村
昼食を終えて午後12時40分になると下山をはじめた。下山といってもまず登山道へ取り付く場所まで少し遡行しなければならない。少し沢を歩いていくと大きな岩の間を流れる滝があらわれた。本来ならこの滝を巻いてから山道を登るのだが、今日は水量が多いので滝の下から無理矢理山道を登っていった。
若宮朱莉「ここも無理矢理登ってるよね?」
水城涼真「さっきの滝は水量が多くて巻くの大変やから、もう山道を登って登山道と合流しようと思ってな」
山道は急斜面になっており途中まで藪漕ぎをしていかないといけない。水城涼真が先頭で藪漕ぎをしながら登っていったが、後ろにいる若宮朱莉も藪漕ぎをしないといけなかった。ここでは直登せず一旦右側の尾根に取り付いて、その尾根伝いに登っていった。その尾根を登り詰めると登山道と合流した。
水城涼真「よし、ここでスニーカーに履き替えるで」
若宮朱莉「わかった」
2人は沢靴を脱いでスニーカーに履き替えると、登山道をひたすら下山していった。登山道に合流して40分程下山していくと大摺鉢に到着した。この大摺鉢にある大きな岩には不思議な文字が刻まれており、明治時代から昭和初期にかけて滋賀県知事などが書き込んだものとされている。
水城涼真「もう40分程歩いてるから、ここでちょっと休憩しよか」
若宮朱莉「うん。この大きな岩に変な文字が刻まれてるね」
水城涼真「たしか八徳って書いてあるんやったかな。意味はよーわからんけどな」
しばらく休憩をして2人は下山をはじめた。あとはもう下っていくだけなので高速道路を走っているように早かった。八ツ淵の滝の登山口まで下ってくるとまた西日の暑さが増してきたので2人はさっさと林道を歩いていった。そしてついにガリバー青少年旅行村の駐車場まで戻ってくることができた。
水城涼真「朱莉ちゃんは更衣室で着替えといで!」
若宮朱莉「面倒だから車の中で着替えるよ。別に涼真さんには見られても構わないし」
水城涼真「じゃあ俺は外で着替えるから、朱莉ちゃんは車の中で着替えたらええわ」
水城涼真はバスタオルを巻ながらさっさと着替えをすませると、若宮朱莉もロケなどで慣れているのか車の中でさっと着替えた。そして2人は車に乗り込んでガリバー青少年旅行村を後にした。
水城涼真「朱莉ちゃん、帰りにちょっとマックに立ち寄ってもええ?」
若宮朱莉「マクドナルドのことだよね!?関西の人はマクドって言うんじゃないの?」
水城涼真「俺はマックって言うねん。朝マックしよとかビッグマックとか、会社がそう言ってるんやからマクドっておかしいやん」
若宮朱莉「たしかにそうかもしれないけど、わたしはどっちでも気にしないけどね」
水城涼真「とにかくポテトが食べたいねん」
若宮朱莉「あははは、涼真さん子供みたい」
そんな話をしながら2人は車に乗って大阪へ帰っていった。
9月2日午後15時・・・
教習所を卒業した若宮朱莉は運転免許試験場で学科試験を受けた。この日、大阪の某テレビ局での出演は遅刻することになっていた。そして合格発表が終わると若宮朱莉は水城涼真に電話をかけた。
若宮朱莉「もしもし涼真さん、学科試験に合格したよ!」
水城涼真「朱莉ちゃんよかったね!」
若宮朱莉「これで涼真さんの代わりにわたしが運転するよ」
水城涼真「まずは運転の練習してからやな」
若宮朱莉「うん。涼真さん運転教えてね!」
水城涼真「じゃあ落ち着いたら中古車ショップに行こか」
若宮朱莉「うんうん。今日はわたし、このままテレビ局に行くからまた夜ね!」
しかし中古車ショップに行くのはもう少し後になった。まずは槍ヶ岳へのロケが今週中にあるのだ。




