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結婚会見と芸能人の新婚生活

7月18日午後14時・・・結婚会見


若宮朱莉は剱岳から帰宅した次の日の7月16日に大阪の情報番組で結婚したことを公表した。それを聞いたアナウンサーやコメンテーター達は驚きの声をあげた。その情報は大阪だけでなく、全国にまで広がり、一部のSNSで話題となった。ただ、不思議なことに批判の声はあまりなく「おめでとうございます」といったコメントが多数寄せられていた。結婚を公表した後、楽屋の前にはマネージャーである井野口晃が待っていて「朱莉ちゃん、こういうことを勝手に公表されると困るんだよ」と言った。しかし、若宮朱莉は「だってみんなに黙っておくなんて嫌なんだもん。結婚会見を開いてちゃんと説明するから!」と言い返した。その後、若宮朱莉の結婚会見は18日の午後14時から大阪のホテルで行われることになった。


7月18日午後14時、大阪の某ホテルの会見場はマスコミや記者達で溢れていた。そこに白いレースの半袖ワンピース姿、白い革のレースアップシューズを履いた若宮朱莉が会場の前の椅子に座って会見がはじまった。この服装は岩湧山ではじめて水城涼真と出会った時のものである。もちろん、水城涼真は妹の志帆の部屋にまだ置いているテレビでこの会見の様子を見ていた。


若宮朱莉「みなさん、こんにちは。突然ではありましたが、わたしは7月12日に入籍をして、13日に北アルプスの立山の主峰、雄山神社で結婚式を挙げました。その人とは数ヵ月前に結婚を前提にお付き合いすることになったのですが、そのことを黙っていて申し訳ありませんでした。ただ、今回の結婚のことも含めて最初はみなさんに黙っているつもりでしたが、わたしを応援してくださっているみなさんに黙っていることがどうしても嫌でしたので、このような形で公表させていただきました。どのような方と結婚したかにつきましては後でご説明させていただきます。まず、わたしは若くして父を亡くしました。子供の頃から父のことは大好きでしたが、最近になってわたしは父の感性にとても似ていることに気づきました。父は関西出身で、わたしが今のお仕事をはじめた頃に大阪へ単身赴任となり、関西の山を登るようになりました。しかし、ある日、父は関西で山岳事故を起こしてこの世を去りました。そんな父の遺品に登山計画ノートというものがありました。その登山計画ノートを開くと、父が登った山、そしてこれから登ろうとしていた山が記載されていました。その時、わたしは父が見た景色、これから見ようとしていた景色に興味を持ち始めました。そして、登山のことを何もしらなかったのですが、わたしは無防備に一つの山に登ってみました。その山で見た景色はとても素晴らしく、父はこれが見たかったのだと共感することができました。その時、出会ったのが今回結婚した彼でした。その彼に登山計画ノートを見せると、父と非常に共感できるけど、わたしには登山を辞めるように言いました。しかし、いろいろ考えた結果、わたしはこの先の人生、父の遺志を継いでいこうと心に決めました。それから無理矢理ではありましたが、東京から大阪へ引越しをして彼の近くに住むことにしました。父は人とかなり変わった性格をしており、普通の登山では満足できないタイプだったのです。そしてその彼も父と同じ感覚の登山者でありましたので、父の遺志を継いでいくには、その彼について行くしかないと思いました。最初の頃はその彼から女性として見てもらえなかったのですが、だんだんわたしの心が変化してきました。その彼は父によく似ている部分があり、わたしが唯一心から素直に甘えられる存在になってきました。そのことに気づいた頃はかなり悩みましたが、その彼と生涯を共にしたいと思うようになりました。そして、わたしのほうからあなたと生涯を共にしたいから結婚を前提にお付き合いしてほしいとお願いをしました。それを聞いた彼は最初困惑していましたが、彼もわたしのことを娘のように愛情を感じているとおっしゃってくださいました。彼はそれまでも何度か愛情を注いでくださいましたし、わたしもその愛情を感じていました。そういう経緯があって今回、結婚させていただきました。もし、応援してくださってるファンの方々がどうしてもこんなわたしのことを許せないということであれば、わたしは芸能界を引退する覚悟もあります。わたしからは以上となります。」


若宮朱莉は少し涙を流しながらも引退の覚悟をしているということを強くアピールした。この会見を聞いた一瞬、マスコミや記者達はシーンとした。そこで司会者のような人が「質問等がございましたら挙手をお願いします」と言った。


記者女性A「日朝テレビの浅沼と申します。若宮さんがご結婚された彼とは、以前スクープされた男性のことでしょうか?」

若宮朱莉「その男性です。ただ、彼は別の業界で有名な方ですが、テレビや芸能界を嫌っていますので、名前を公表するのは辞めてください」

記者女性A「以前、その男性と恋愛関係になることはないとおっしゃっていませんでしたか?」

若宮朱莉「今も恋愛関係とは言えません。彼とわたしの間は親子のような絆で結ばれているような感じですし、子供を作る気もございません」

記者男性A「エレテレビ芸能レポーターの木下と申します。みなさんに黙っていることがどうしても嫌だったという若宮さんには感服いたしました。ただ、結婚を前提にお付き合いをはじめた頃はまだそのように思わなかったのでしょうか?」

若宮朱莉「その時はまだいつ結婚するかも決まっていませんでしたし、想像もできませんでした。そんな中途半端な状態で公表するわけにも行きませんでしたので黙っていました」

記者男性B「芸能新聞の沢口と申します。先ほどの質問の続きになってしまうのですが、子供を作る気がないとはどういうことでしょうか?」

若宮朱莉「それは彼との約束でもありますが、わたしも父の登山計画ノートに書かれている山を登ることが優先になっています。それに彼はわたしのことをとても大切に扱ってくださっていますから、子供を作るようなことは年齢が落ち着いてから考えようと言ってくださっています」

記者女性B「FTテレビ芸能レポーターの南城と申します。もしファンの方々が若宮さんのことをどうしても許せないということであれば、芸能界を引退するとおっしゃっていましたが、それは1000人のファンのうち何人くらいの方が許せないとおっしゃった場合でしょうか?」

若宮朱莉「数字のことを聞かれると困りますが7割から8割くらいの方ですね」


こうして若宮朱莉の結婚会見は続いたのだが、あとはつまらない質問が多かった。問題はこの会見をした後のファンの反応にかかっている。若宮朱莉は本気で芸能界の引退を覚悟しているのだ。



7月18日午後15時30分・・・東京都赤坂


東京赤坂のスタジオで女優の仕事を終えた天音琴美は外に出ると多くの記者達に囲まれてしまった。そこには天音琴美と仲のいいヘアメイクの來未さんと、水城涼真の妹である志帆も一緒にいた。


記者女性A「東京テレビレポーターの金城と申します。天音さん、若宮朱莉さんがご結婚していたことについて何か知っておられたのでしょうか?」

天音琴美「もちろん知っていました。あたしは2人のことを応援していましたし、結婚式にも行きました」

記者女性B「天音さんはいつからお2人の関係をご存じだったのでしょうか?」

天音琴美「今年の冬くらいからだったと思います。申し訳ありませんがしばらくお待ちください」


天音琴美はヘアメイクの來未さん(立川來未)と水城志帆のところへ行った。


天音琴美「來未ちゃん、志帆ちゃん、ここはあたしに任せて、二人は先に次のスタジオに向かってて!」

立川來未「わかりました。志帆ちゃん一緒に行こう」

水城志帆「でもこれってわたしにも関係あることやないですか?」

天音琴美「志帆ちゃんは何も心配しなくていいよ。大丈夫!」

立川來未「ここは天音さんに任せておきましょう。志帆ちゃんまで巻き込まれたら大変だから」

水城志帆「じゃあ天音さん、よろしくお願いします」


そうして立川來未と水城志帆はその場を離れていった。もし、ここで水城涼真の妹であることが知れたらそれこそ大変なことになりかねないのだ。


天音琴美「みなさん、お待たせしました。ハッキリ言わせていただきますが、朱莉ちゃんの気持ちを考えてあげてください。マスコミのみなさんが騒ぎたくなるお気持ちはわかりますが、朱莉ちゃんは若くして父を亡くして、やっと心から信用して甘えることのできる人と出会うことができたのです。おそらく朱莉ちゃんの人生でそんな人と出会うことはもう無いかもしれません。朱莉ちゃんにとってそのくらい大切な人であり、生涯を共にしたいと思える人と結婚したのです。朱莉ちゃんが芸能界の引退を覚悟してまで、みなさんに黙っておくのは嫌だったので公表したとお聞きしています。あたしも朱莉ちゃんと結婚した男性とは何度かお会いしましたが、朱莉ちゃんのことをとても大切にしていると感じさせられました。ですから、もう騒ぎ立てるのは控えていただきたく思います。あたしからは以上となります」


さすがはベテランだけあって、天音琴美のこの発言にさすがのマスコミも黙り込んでしまった。


立川來未「ねえ、若宮朱莉さんと結婚した男性って志帆ちゃんのお兄さんなの?」

水城志帆「はい。わたしの兄が結婚相手です」

立川來未「そうなんだ。おめでたいことなのに、みんな面白がるなんておかしいよね」

水城志帆「そうですね。ただ、わたしもお兄ぃがあかりんと結婚するなんて思ってませんでしたよ」

立川來未「志帆ちゃんのお兄さんって何者なの?天音さんもなんか頭あがらないみたいだし、すごい人って感じがするんだけど」

水城志帆「ただの登山バカですよ。それにオタクでもありますし、全然すごくないです」



午後22時20分・・・


結婚会見を終えて大阪の情報番組の出演を終えた若宮朱莉は201号室へ帰ってきた。もともと水城涼真の部屋は2DKだったが、隣の部屋は荷物置き場になっており、立山・剱岳から帰ってきてすぐに部屋を片付けて103号室からベッドやタンスなどを運んできて若宮朱莉と一緒に住むようになった。部屋に入ってくるなり水城涼真が「おかえり」というと若宮朱莉は突然抱きしめてきて「わたし、ちゃんと会見でみんなに話したよ」と言った。水城涼真は会見後のSNSの反応をずっと見ていたのだが、批判しているようなコメントはほとんどなく『ご結婚おめでとうございます』、『あかりん、幸せになってくださいね』、『これからも応援しますので芸能界を引退しないでください』、『若くしてお父様を亡くされて大変だったと思います。これからは旦那様とお幸せに!』、『みんなに黙っておくのは嫌だというあかりんに涙が出そうになりました』などのコメントが圧倒的に多かった。つまり、ほとんどのファンが若宮朱莉の結婚を祝福しているという結果に見えるのだ。そんなコメントを見た若宮朱莉は涙を流しながら水城涼真の胸に寄り添った。


水城涼真「朱莉ちゃん、よかったな。でもこんなことでファンがいなくなるようやったら、それまでやったってことかもな」

若宮朱莉「うん。わたしもずっとそう思ってた。だけど芸能界を引退するのって本当は怖かった」

水城涼真「話は変わるけど、隣の部屋は狭いから朱莉ちゃんの登山道具は206号室に置けばええよ。志帆の道具ももうあんまあれへんしな」

若宮朱莉「わかった。そうさせてもらうね」

水城涼真「さあ、これからもっと厳しい登山をしていくから朱莉ちゃんも覚悟しといてや」

若宮朱莉「はい、わたしこれからも涼真さんについていくから!」



7月20日午前9時・・・これが芸能人の新婚生活!?前編


朝9時前に起床した水城涼真は目覚めのコーヒーを飲んでいた。この日は少し雨がパラついていたのでどこにも出かけることはなく、家事でもしようかと考えていた。隣の部屋では仕事で疲れているのか若宮朱莉がまだ眠っていた。水城涼真はまだ寝ぼけていたので、パソコンを起動してアニメ動画を見ていた。それから30分程経つと完全に目が覚めたので洗濯をしようと脱衣所へ行った。脱衣所のドアを開けると女性用の下着上下が転がっていた。水城涼真は「もう・・・」と呟くとその下着を洗濯かごへ入れた。そして洗濯機の中へ洗濯物を入れてスイッチを押した。するとジャージ姿の若宮朱莉が隣の部屋から出てきて「おはよう」と寝ぼけた声で言った。


水城涼真「朱莉ちゃん、脱衣所に下着が転がってたで!脱いだらちゃんと洗濯かごに入れるようにしてな」

若宮朱莉「ごめんなさい。ついつい癖で脱ぎっぱなしにしちゃうの」

水城涼真「仮にも売れっ子の芸能人やのに、こんなん知られたら完全にイメージダウンやで」

若宮朱莉「あはは、でもみんなこんな感じだと思うよ」

水城涼真「いや、朱莉ちゃんだけやと思うで」

若宮朱莉「あっ!下着は下着ネットに入れて洗濯機回してね。ぐちゃぐちゃになっちゃうから」

水城涼真「ちゃんと入れてるよ。志帆の洗濯するときにうるさく言われてたからな」

若宮朱莉「ところで、今日のお昼はどうするの?」

水城涼真「せやな、今日は暇やし美味しいつけ麺でも食べにいこか」

若宮朱莉「やったぁ!どんなつけ麺なの?」

水城涼真「こってりドロ系の鶏豚骨魚介スープやな」

若宮朱莉「想像できないけど美味しそう!」


午前11時になると2人は駐車場へ行って車に乗り込むとつけ麺屋へ行った。近くにあるコインパーキングに車を駐車するとつけ麺屋は目の前にあった。そのつけ麺屋は少し古い建物でのれんではなく看板が立っている。ガラス張りのドアを開いてつけ麺屋に入ると、厨房から鶏豚骨の匂いが漂ってくる。券売機で水城涼真はつけ麺のチケットを購入すると、若宮朱莉はつけ麺とごはん(中)のチケットを購入した。カウンターの席に座ると店員さんがやってきて「麺の量はいかがしましょう?」と聞いてきたので、水城涼真は「200gでお願いします」と言うと若宮朱莉は「300gでお願いします」と言った。


若宮朱莉「美味しそうな匂いがするね。早く食べたい!」

水城涼真「つけ麺は時間がかかるからな」


それから20分程経ってぐつぐつに煮えたつけ汁の入った器とラーメン鉢に入った冷やされた極太麺が運ばれてきた。2人は「いただきます」と言ってまずレンゲでつけ汁を少しすくい上げて飲んでみた。つけ汁はドロっとこってりした鶏豚骨ベースの魚介醤油味で若宮朱莉は思わず「美味しい!」と言った。次に麺を少しつけ汁に浸して啜った。つけ汁が麺に絡んでいて若宮朱莉にとってはじめて食べた味であった。その後、食が進んでどんどん麺をつけ汁に浸して食べていった。若宮朱莉はつけ汁の中にあるトロトロに煮えたむね肉をすくい上げてごはんにかけて食べはじめた。水城涼真はさっさと麺をたいらげると、つけ汁をレンゲですくい上げてゆっくり飲んでいた。そして2人は完全に食べ終えた。


若宮朱莉「こんな美味しいつけ麺屋さんがあるなんて、もっと早く教えてほしかった」

水城涼真「いや、朱莉ちゃんがそこまでこのつけ麺にハマるとは思わんかったから」

若宮朱莉「このつけ麺って胃に残るよね。まだ口の中でつけ麺の味が広がってるよ」

水城涼真「そう、ここのつけ麺は後々胃に残るんよな。それで数日経ったらまた食いたくなるんよ」

若宮朱莉「またこのつけ麺屋さんに行こうよ」

水城涼真「そうやな。暇な日にでも行こか」


そうして2人はつけ麺屋を出て家に帰っていった。



7月20日午後18時30分・・・これが芸能人の新婚生活!?後編


水城涼真は自分の部屋のパソコンで山の情報を見ていた。次に行く山については若宮朱莉の希望を聞いてみようかと考えていた。一方、若宮朱莉はシャワーを浴びていた。最近は暑いので低山での登山ではなく行くなら沢登りになりそうだと予想していた。しばらくすると若宮朱莉がシャワーを浴び終えて脱衣所から出てきた。そして水城涼真の部屋のドアを開いて「涼真さん、わたし行きたいところがあるの」と言いながら下着姿で入ってきた。


水城涼真「ちょっと朱莉ちゃん、下着姿でうろうろせんとちゃんと服着て!」

若宮朱莉「だって暑いんだもん。わたし達夫婦なんだしいいじゃん」

水城涼真「朱莉ちゃんには恥じらいとかないん?」

若宮朱莉「涼真さんの前だったら恥ずかしくないの」

水城涼真「とにかく服着てきて!それから朱莉ちゃんの行きたいところ聞くから」

若宮朱莉「わかった!涼真さんが恥ずかしいんだ。じゃあ服着てくるね」


水城涼真は少し赤い顔をしながら「まったくもう」と呟いた。しかし、そんな若宮朱莉のことも心の中では愛おしいと思っていた。それからしばらくして若宮朱莉がTシャツと半パンを履いて水城涼真の部屋に入ってきた。


水城涼真「それで朱莉ちゃんが行きたいところってどこ?」

若宮朱莉「わたし、双門の滝壺に行ってみたい!」

水城涼真「あーあそこか・・・まあ今の朱莉ちゃんやったら行けるやろ」

若宮朱莉「すごく神秘的な場所なんでしょ?」

水城涼真「せやな。かなり神秘的な場所やったよ。じゃあ27日の土曜日に行こか」

若宮朱莉「うんうん。27日ならオフだから大丈夫。また双門ルートで行くの?」

水城涼真「いや、時間がかかるからトサカ尾根でいくことにするわ」

若宮朱莉「トサカ尾山がある尾根のことだよね?」

水城涼真「そう。せっかくやからトサカ尾山もピークハントしとこか」

若宮朱莉「うん!楽しみ!!」


そういう話になり7月27日の土曜日に双門の滝壺へ行くことになった。

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