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立山で天空の結婚式をしました

6月20日午前11時・・・


天音琴美は先日の白馬の大雪渓の滑走に関する動画をブログにアップしたが、水城涼真の予想通り、批判の声などはなく逆に「白馬の大雪渓を滑走するなんてすごい」といった称賛するコメントが多かった。梅雨に入ってずっと雨続きでとても山に行ける状態ではなかった。それに若宮朱莉も仕事が忙しくなり、登山活動は一時停止状態になっていた。水城涼真が登山技術や知識などの執筆活動をしていると部屋のチャイムが鳴った。水城涼真は「はーい」と返事をして玄関のドアを開けると若宮朱莉の母である本条真由美が傘をもったまま立っていた。


水城涼真「お母さま、珍しいですね。どうぞあがってください」

本条真由美「それではお言葉に甘えて失礼します」


本条真由美は少し厳しい表情をしながら水城涼真の部屋に入っていた。お茶を出してお互いがテーブルに向かい合って座ると本条真由美が口を開いた。


本条真由美「私は前回お会いしたときに、水城さんに明里のことをよろしくお願いしますと言いました。しかし、結婚してほしいとまで言っていません」

水城涼真「お母さま、朱莉ちゃんは私と生涯を共にしたいと言いました。それはかなり考えての結論だと思って私もそれに応じることにしました」

本条真由美「明里は一時の感情でそう言ってるようにしか思えないないのです。まだ若いですし、お互いに考え直していただく気はございませんか?」

水城涼真「朱莉ちゃんの言ってることは一時の感情ではないと思います。相当悩んだ結果で真剣な目をしていました」

本条真由美「明里は昔から言い出したら聞く耳持たないところがありましたが、水城さんは明里のことをどう思っているのでしょうか?」

水城涼真「最初のうちは自分の娘のような感覚で可愛らしいと思っていましたが、今は朱莉ちゃんに大きな愛情を抱いています」

本条真由美「そこまで明里のことを想ってくださっているということですね?」

水城涼真「ただ、結婚してもこれからの関係を変えるつもりはありませんし、子供を作る気もありません。朱莉ちゃんが私を人生で失いたくない、かけがない人、なくてはならない人だと言ってますので、私はそれに応えて生涯を共にしていこうと考えています」

本条真由美「そこまで2人が真剣であるのであれば、もう私は止めません。水城さん、明里のことをよろしくお願いします」

水城涼真「はい」

本条真由美「ところでどこで結婚式を挙げる予定ですか?」

水城涼真「立山の雄山神社で行う予定です。今回は内緒の結婚式でもあるので登山仲間だけで行います」

本条真由美「それには私は参加できないけど、入籍はいつの予定ですか?」

水城涼真「一応、7月12日に婚姻届けを出す予定です。ただ、保証人を誰にするかまだ決まっていません」

本条真由美「では、私がその保証人の一人になります。婚姻届けは今持っていますか?」

水城涼真「ここにあります。既に2人の名前を書いてと印鑑だけは押しています」


本条真由美は涙を少し流しながらその婚姻届けの保証人の欄に名前を書いて印鑑を押した。


水城涼真「ありがとうございます。あと一人は登山仲間にお願いしようと思っています」

本条真由美「水城さん、明里のことを本当によろしくお願いします。おそらく私の夫も喜んでいるかと思います」


そうして本条真由美は部屋を出て行った。



7月12日午前9時・・・


先日、婚姻届けの保証人の欄に若宮朱莉の母である本条真由美、そして登山仲間の樫田裕に記入してもらい朝一番で役所へ行って提出した。これで水城涼真と若宮朱莉は正式な夫婦になったのだ。その後、水城涼真はさっさと帰宅すると登山準備をした。既に7月13日の早朝に立山雄山神社で結婚式をするという予約を入れていたので、今日中に立山に行かなければならない。今日は特別ということで有本淳史と樫田裕には吹田駅まで来てもらうことになっていた。若宮朱莉も結婚式があるとのことで今日の仕事は休むことになっていた。午前9時50分に登山準備を終えた水城涼真はアパートの入口へ行くと既に若宮朱莉がニコニコしながら立っていた。


若宮朱莉「婚姻届けは出してきたんだよね?」

水城涼真「出してきたよ」

若宮朱莉「やったぁ、これで涼真さんと正式に夫婦になれたんだね」

水城涼真「そういうことになるな。それより2人を待たせてるから急いで吹田駅に行こう」


吹田駅に到着すると既に有本淳史と樫田裕が駅で待っていた。2人は「おはようございます」といって車のトランクに荷物を積み込むと後部座席に座った。そこから名神高速道路・吹田インターチェンジに入って東に向かって車を走らせた。


有本淳史「今日って立山で待ち合わせしてるんすよね?」

水城涼真「天音さんと待ち合わせしてるんやけど、清水さんはどうなるかわからんのよ」

樫田裕「清水さん来てほしいですね。あの人めちゃめちゃ面白いですから」

若宮朱莉「今回は立山で結婚式した後、そのまま剱岳に登る予定なんだよね?」

水城涼真「うん。せっかくやし、天気もバッチリやから剱岳にも登るよ」


そんな話をしていると米原ジャンクションに到着して、そこから北陸自動車道に入って北上していった。さすがに3時間程ぶっ通しで運転していたので、途中の尼御前サービスエリアに立ち寄った。みんな車から降りると若宮朱莉はフードコートへ走っていった。水城涼真と樫田裕は軽く軽食を買って食べていたのだが、若宮朱莉はフードコートで金沢カレーを食べていた。


水城涼真「ほんま朱莉ちゃんはよー食べるな。それで太らんのが不思議やわ」

若宮朱莉「朝から何も食べてなかったからお腹ペコペコだったの。金沢カレー美味しいよ」

有本淳史「でも今夜は大量のビールとつまみを用意してるから、あんま食べ過ぎんようにしたほうがいいっす」


そうして若宮朱莉が金沢カレーをたいらげると時間も押しているということからさっさと車に乗り込んで出発させた。車を走らせて5時間程経った時刻午後3時過ぎに北陸自動車道・富山インターチェンジを降りた。そしてそこから40分程車を走らせて立山ケーブルカー駅に到着した。平日ということもあって、駐車場はどこも開いていた。4人は車から降りて天音琴美が来るのを待っていた。10分程待っていると黒い4WDクロスカントリー車がやってきて停車した。そして運転席からピンクの長袖Tシャツにグレーのトレッキングパンツを履いた天音琴美が降りてきて「おませしました」と挨拶した。そして助手席から清水紗理奈から降りてくると、後部座席から片瀬彩羽まで降りてきた。


水城涼真「片瀬さんまで来てくださるとは予想外です!」

清水紗理奈「私が呼んだのだじょ」

片瀬彩羽「水城さん、水くさいじゃないですか。わたしもお祝いをしに来ましたよ」

水城涼真「片瀬さん、わざわざありがとうございます。ただ、今回のことは内密にお願いします」

片瀬彩羽「わかっていますよ。世間に知られると大変なことになりますからね」

清水紗理奈「ただ私達は仕事があるから雄山の結婚式が終わったら先に帰るつもりだじょ」

水城涼真「でも天音さんは剱岳まで行くつもりなんですよね?車どうするんですか?」

清水紗理奈「電車で帰るつもりだから心配いらないじょ」

水城涼真「なるほど。じゃあ時間も押してるのでさっさと行きましょうか」


みんなケーブルカーと室堂までのバスのチケット往復分を購入してケーブルカーに乗った。



16時40分・・・室堂(標高2450m)~雷鳥沢


ケーブルカーに乗って美女平からバスに乗り換えて室堂平へ向かった。途中で落差350mの称名滝などを見ることができ、この付近まで来ると窓を開けると天然のクーラーがよく効いていて涼しい。バスに乗って1時間程で室堂平バスターミナルに到着した。今夜は雷鳥沢でテント泊する予定なので、みんな歩きはじめた。ミクリガ池からみくりが地温泉を経て下っていき、雷鳥莊を経て野営場に到着した。テント泊の受付を済ませると、みんなテントを設営しはじめた。


清水紗理奈「片瀬は私のテントで宿泊するんだが、どうして朱莉ちゃんまでテントを設営しているんだ?」

若宮朱莉「何か変ですか?」

清水紗理奈「もう夫婦になったんだから水城さんと同じテントで寝ればいいじょ」

若宮朱莉「そんな、いきなり恥ずかしいですよ」

天音琴美「あたしもそう思う。朱莉ちゃん、結婚したんだから水城さんと一緒に寝ればいいと思うよ」

樫田裕「そうですね。恥ずかしいことなんてあらへんと思いますわ」

水城涼真「いやいや、みんなおるのに一緒に寝るなんて俺も恥ずかしいわ」

有本淳史「涼真さん、いいじゃないっすか。朱莉ちゃん一人は可愛そうっすよ」

清水紗理奈「そんなことで恥ずかしがってたらこれからやっていけないじょ」

水城涼真「わかりましたよ。朱莉ちゃん、俺と一緒のテントでええ?」

若宮朱莉「う、うん・・・いいよ」


若宮朱莉のテントを片付けて、みんなテントを設営すると有本淳史が大きめのアルミシートを敷いてザックの中から500mlの缶ビール24本と日本酒を数本だしてきた。そしてみんな靴を脱いでアルミシートの上に座ると有本淳史が各自にビールを配って「乾杯」といって宴会がはじまった。今日はインスタント焼きそばを作って、それを肴にみんな酒を飲むペースが早くなった。それから40分程経って、前回のように天音琴美がほろ酔い状態になり有本淳史の隣に移動した。


天音琴美「ねえねえ、あっちゃん。あたしって魅力ない?」

有本淳史「魅力は十分にあると思うよ」

天音琴美「じゃあ少しくらいあたしに手を出してきてもいいんじゃない?」

有本淳史「いや、いくらなんでもそれはできへんよ」

樫田裕「またおもろいことになってきましたね!」

若宮朱莉「でも天音さんはあっちゃんに恋愛感情はないって言ってたけどね」

天音琴美「冗談よ。でもあっちゃんって本当に紳士よね。だからあっちゃん大好きなの!」

清水紗理奈「琴美ちゃんは、このあっちゃんでいいのかな?好きなのか?」

天音琴美「大好きですよ。でも、お付き合いしたいとかそういう感情はありません」

清水紗理奈「よくわからんがそういうことなのか」

水城涼真「天音さんにとってあっちゃんは思い切り甘えられる存在ってことやね」

天音琴美「そうなんですよ」

清水紗理奈「ところで片瀬は悔しくないのか?」

片瀬彩羽「悔しいってどういうこと?」

清水紗理奈「水城さんを取られたんだじょ。片瀬は密かに水城さんを想っていたんじゃないのか?」

水城涼真「えっ!?片瀬さん、そうなんですか?」

片瀬彩羽「そんなことあるわけないじゃないですか!清水、ちょっと飲みすぎよ」

清水紗理奈「片瀬はちょっと真面目すぎるんだ。だから未だに独身なんだじょ」

片瀬彩羽「清水も人のこと言えないじゃない。わたしは恋愛に興味がないだけなのよ」

水城涼真「でも、片瀬さんって結構美人だと思いますけどね」

片瀬彩羽「そ、そうですか?ありがとうございます」


そんな話をしていると午後8時を過ぎていたので宴会はお開きになった。明日は午前7時から雄山神社で結婚式になっていたので今日は早く寝ないといけないのだ。みんな後片付けをすると、それぞれテントに入って眠りについた。ところが、水城涼真とはじめて一緒に寝ることになった若宮朱莉は眼が冴えてしまってなかなか寝つけなかった。しばらく寝つけなかった若宮朱莉はシュラフから出て起き上がった。


若宮朱莉「涼真さん、もう寝ちゃったかな?」

水城涼真「いや、実は俺も眠れなくて起きてたんよ」

若宮朱莉「いきなり一緒に寝るなんてなんか緊張するね。ちょっと外の空気を吸うね」


若宮朱莉はテントのチャックを空けて顔を出した。すると満点の星空が広がっていて思わず「綺麗な星空」と呟いた。水城涼真も顔を出すと数えきれないほどの星が一面に広がっていた。そこで水城涼真と若宮朱莉の顔が間近に迫ってお互いに恥ずかしい気持ちになった。


若宮朱莉「ねえ、涼真さん。どうしてわたしに手を出さないの?」

水城涼真「朱莉ちゃんは俺にとって大切な人なんよ。手を出したいとか考えたことあれへん」

若宮朱莉「わたしにとって涼真さんはとても大切で絶対に失いたくない人だけど、愛情表現はしてほしいな」

水城涼真「愛情表現って?」

若宮朱莉「こういうことかな・・・」


そこで若宮朱莉はいきなり水城涼真に口づけをした。水城涼真は硬直状態になったが、こういうことをするのもこれから必要になってくるのだと思った。キスが数秒間続くと若宮朱莉は離れて「このくらいのことはこれからしてほしい」と呟いた。水城涼真は小声で「わかった」と呟くと若宮朱莉を抱きしめた。



7月13日午前4時・・・雷鳥沢~一の越山荘


目覚まし時計が鳴ったわけではないが、みんなきっちり午前4時に目を覚まして登山準備をはじめた。今日は連休で登山者がたくさん訪れるということもあって、早めに雄山神社まで登っていかなければならないので、テントを片付けてさっさと出発した。本当は浄土橋経由で一の越山荘まで登る予定であったが、そのルートは下手をすると余計に時間がかかってしまう可能性があったので、一旦室堂平に戻るルートをとった。室堂平に戻ってきた時には午前4時40分過ぎで時間的にはギリギリであったが、みんな一の越山荘を目指して歩きはじめた。こっち側のルートはなだらかな登りが続くので歩くペースもそれなりに早かった。そして時刻午前5時45分に一の越山荘に到着した。雷鳥沢からここまで約1時間40分程ぶっ通しで歩いてきたので、さすがに少し休憩をとった。


清水紗理奈「おぉーあの尖った山は槍ヶ岳だな。こんなところから見えるとは思わなかったじょ」

若宮朱莉「あれが槍ヶ岳ですか。いつかあの頂に立ってみたいです」

片瀬彩羽「わたし、登山にはあまり興味はないけど槍ヶ岳は登ってみたいって思ってるの」

天音琴美「富士山に登った時に涼真さんが言ってたけど、槍ヶ岳って登山者が憧れる山だってわかる気がします」

清水紗理奈「槍はいいじょ!登ってみればわかる」

樫田裕「涼真さん、剱の次はやっぱ槍でしょ!今年中に登りましょうよ」

水城涼真「せやな。槍は登っといたほうがええ山やからな」

有本淳史「そろそろ登っていったほうがいいんとちゃいます?もう15分も休憩してますし」

水城涼真「じゃあそろそろ雄山に登って行こか」


水城涼真の一声でみんな雄山へ向かって登りはじめた。



午前6時55分・・・立山・雄山(標高3003m)


一の越山荘から雄山山頂への登りはガレ場のちょっとした急斜面が続く。天気は快晴でじりじりと陽が照り付けるところを必死で登って行く。周りを見てみると奥大日岳の山容がでかでかとそびえていて景色としては最高である。見上げると雄山の山頂は見えているのだが、登れど登れどなかなか辿り着かない。何度か立ち休憩をしながら山頂を目指して登っていくがGPSで確認するとまだ距離はあるといった感じで答えを見て愕然としてしまうこともあった。一の越山荘から登ること約1時間、ついに雄山山頂(標高3003m)の神社に到着した。


既に神主さんや巫女さんが結婚式の準備をしていた。水城涼真は神主さんのところへ行って今日の結婚式を予約していた水城ですと言うと、すぐに結婚式をはじめることになった。みんなザックを置くと神主さんの誘導で山頂の雄山神社に向かっていた。そして新郎と新婦以外のメンバーはカメラで撮影をはじめた。続いて三三九度の儀式を行った後に誓いの言葉を交わし、指輪の交換となった。水城涼真はポケットの中からペアのプラチナリングを取りだして「朱莉ちゃん、安物やけどな」と言って指輪の交換をした。これで結婚式は終わったのだが、神主さんは雄山山頂の社前に立って何かを報告しているようであった。


天音琴美「朱莉ちゃん、おめでとう!!涼真さんとお幸せにね!」

片瀬彩羽「水城さん、おめでとうございます!」

有本淳史「お二人ともおめでとうっす!」

樫田裕「朱莉ちゃん、稲村ヶ岳で話してたことが現実になってよかったやん」

清水紗理奈「水城さん、こんな可愛らしい嫁さんはそういないじょ。大事にするんだじょ!」

水城涼真「みんなありがとう!!朱莉ちゃんとは生涯共にするって決めたんで大切にするよ」

若宮朱莉「みなさんありがとうございます。わたし、こんな幸せなことはありません!」


そうこうしているうちに一の越山荘からどんどん登山者が登ってきた。


水城涼真「じゃあ、これから縦走して剱沢まで行く予定やけど、清水さんと片瀬さんはここで戻るんですよね?」

清水紗理奈「うむ。本当は剱岳に登りたかったけど、仕事があるから仕方ないのだ」

片瀬彩羽「わたしもここで失礼します。お二人ともお幸せに!」

水城涼真「天音さんは来るんよね?」

天音琴美「もちろん行きますよ。だって剱岳ですよ!?無理してお仕事休みましたから絶対に登りたいです」

水城涼真「じゃあ、片瀬さんと清水さん、わざわざこんなところまで来ていただいてありがとうございました」


ここで片瀬彩羽と清水紗理奈の2人と別れて、他の5人は大汝山へ向かって縦走していった。


この話は次に続く・・・

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