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波乱万丈だった厳冬期の釈迦ヶ岳

2月25日午前4時30分・・・


水城涼真はザックを背負って部屋から外に出ると辺りはまだ真っ暗であった。アパートの入口へ行くと赤いソフトシェルジャケットに黒いトレッキングパンツ姿の若宮朱莉が「おはようございます」と言った。水城涼真が「おはよう」と挨拶をすると2人は駐車場へ向かった。駐車場には既に樫田裕の車が停まっていて「おはようございます。今日はこの白い4WDのRV車で行くんですね?」と聞くと水城涼真は「樫田君おはよう。そう昨日レンタカーで借りておいたんよ」と答えた。車を入れ替えてトランクに荷物を積み込むと樫田裕が助手席、若宮朱莉が後部座席に座ると岸部駅へ向かって車を走らせた。


樫田裕「そういえば昨日、あっちゃんと天音さんってデートしてはったんですよね?」

若宮朱莉「そうそうそう。どんなデートになったのか詳しく聞いてみたい!」

樫田裕「めちゃめちゃ面白いことになったんとちゃうかな」

若宮朱莉「わたしもそう思う。あっちゃん、どんな感じだったんだろうね」

水城涼真「二人とも悪いわぁ。めっちゃ人の不幸を楽しんでるやん」

樫田裕「不幸ではないですやん。あっちゃんがどんな対応してたんか興味があるだけですよ」

若宮朱莉「うんうん!わたしもそれが気になります」

水城涼真「まあでも、あんま聞かん方がええと思うで。あっちゃんも俺らに聞かれたくないやろうしな」


そんな話をしていると岸部駅のホテル前にあるコンビニに到着した。待ち合わせ時間まで少し早かったが、コンビニの前にグレーのザックを背負って水色のソフトシェルジャケットに黒いトレッキングパンツ姿の天音琴美が立っていた。水城涼真は車から降りて「天音さん、おはよう。今日はこの車で行くんよ」と声をかけると天音琴美が「涼真さん、おはようございます」と言ってトランクにザックを積み込むと後部座席に座った。そして釈迦ヶ岳に向かって車を走らせた。


若宮朱莉「天音さん、おはようございます!早速ですが、昨日、あっちゃんとデートしてみてどうでしたか?」

水城涼真「朱莉ちゃん、その質問は直球すぎるやろ」

天音琴美「すっごく楽しかった!あたし、あっちゃんと出会えて本当によかったって思えたよ」

若宮朱莉「それはよかったですね」


天音琴美が嬉しそうな表情をしながらそう答えたので、誰もそれ以上の質問はできなくなってしまった。


天音琴美「涼真さん、天川村に美味しいお豆腐屋さんがあるとあっちゃんに聞いたのですが、今日はそのお店に立ち寄れますか?」

水城涼真「あーあの豆腐屋さんか。残念ながら今日は天川村ほうには行けへんのよ」

天音琴美「それは残念です。あたし、お豆腐大好きなのでいつかそのお店に連れていってください」

水城涼真「わかった。あの店どうも冬はやってないみたいやから、また暖かくなってからな」

樫田裕「そういえば今日はどっかコンビニに立ち寄りますか?」

水城涼真「高速降りたところのコンビニに行く予定やけど、行動食と飲み物だけ買えばええよ。今日は気合入れてすき焼きの材料とチャーハン持ってきてるから、みんなでそれ食べよ」

若宮朱莉「山でチャーハンってなんかいいですね!」


車は近畿自動車道から南阪奈道路を経て奈良県に入ると京奈和自動車道を南下していった。そして京奈和自動車道の五條インターチェンジを出たところにあるコンビニへ立ち寄った。みんな水城涼真が言ったようにちょっとした行動食と水だけを購入した。



午前5時40分・・・奈良県五條市~十津川村


五條インターチェンジから国道168号線を30分程南下していくとカーブの多い山道に入った。だんだん道幅も狭くなってきてあまりスピードが出せなくなってきた。それにも関わらず水城涼真以外の3人は朝早く起きたこともあって眠っていた。そして時刻が午前6時45分を過ぎた頃に予定していた休憩場所である道の駅・吉野路大塔に到着した。この道の駅は大塔コスミックパーク「星のくに」という天文台があることで有名になっているが、この時間帯には誰もいない。眠っていた3人も起き上がると外の空気を吸いに車から降りた。さすがの水城涼真も2時間余りぶっ通しで運転していたので「あーちょっと疲れたから休憩」と呟きながら車から降りた。空はすっかり晴れていて気温も少し暖かく爽やかな朝といった感じだろう。それから水城涼真は自動販売機で購入した温かいブラックの缶コーヒーを飲みながら車の中でまったりと休憩していた。


若宮朱莉「涼真さん、運転でお疲れじゃないですか?」

水城涼真「まあ、ちょっと休憩したら大丈夫やわ」

天音琴美「あとどのくらいで登山口に到着します?」

水城涼真「せやな、あと1時間ちょっとくらいかな」

天音琴美「釈迦ヶ岳ってかなり遠いんですね」

若宮朱莉「こんなに遠いなんて想像していなかったです」

樫田裕「そら大峰の南側に位置してますし、アプローチ場所も奥深い所にありますからね」

天音琴美「あたし一人じゃとても行けそうにありませんので、今日ご一緒できてよかったです!」


午前7時10分を過ぎに休憩を終えて道の駅から国道168号線をさらに南下していった。30分程車を走らせていると奈良県十津川村に入り、ようやく釈迦ヶ岳登山口の道路案内表示板が見えた。そこから国道168号線からもみじ街道に入って東へと進んでいった。そして冬期通行止めという看板が立っており、そこから先はまだ10cm程の雪が積もった細い林道になっていた。そんな看板を無視するかのように林道の雪道を車であがっていった(現在、完全に冬期通行止めになっています)。


若宮朱莉「冬期通行止めって看板に書いてありましたが大丈夫ですか?」

水城涼真「ここから先は自己責任ってことやな」

天音琴美「こんな雪の積もった細い林道を運転していくなんて、あたしには絶対できません」

水城涼真「まあここを走るためにわざわざレンタカーで車を借りたんよ」

樫田裕「ここからまた林道が長いんですよね」


雪の積もった細い林道を走っていると次第に連続したカーブになっていたが、水城涼真は運転技術を駆使しながら一定の速度で走り続けた。



午前8時30分・・・土砂崩れ地点


林道をさらに走らせていると樫田裕が「涼真さん、結構飛ばしますね」と言ったので水城涼真は「そのための4WDやからな」と答えた。そしてカーブを曲がった少し先で土砂崩れによって林道がせき止められており、とても車でその先に行くのは不可能であった。土砂崩れ地点の少し手前で車を停めると、みんな車から降りて外へ出た。


樫田裕「これはもう車通れませんね」

若宮朱莉「この土砂を少しどかしたりできませんか?」

水城涼真「朱莉ちゃん、それは無理や」

天音琴美「ここまで来てこんなことになるなんて、厳冬期の山は何が起こるかわかりませんね」

樫田裕「どないします?」

水城涼真「朱莉ちゃん、ちょっとGPSで現在地を確認してみて」

若宮朱莉「わかりました」


若宮朱莉はポケットからスマホを取りだすとGPSで現在地を確認した。そしてその地図を水城涼真に見せた。


水城涼真「登山口まであと5km程か・・・もうこっから歩いていこか」

樫田裕「僕もGPSで確認しましたけど、登山口まで結構長いですよ」

水城涼真「それでも1時間ちょっとくらいやと思うわ。天音さんもわざわざ東京から来てるわけやし行けるとこまで行ってみよ」

天音琴美「1時間くらいであれば林道を歩いてもいいですよ」

若宮朱莉「わたしは涼真さんの判断にお任せします」

水城涼真「じゃあちょっと長いけど林道歩きしていこか。ただ、みんな落石にだけは注意してな」


結局、この土砂崩れ地点でみんな登山準備をして林道歩きをはじめていった。林道を歩いていると結構落石ヵ所があったのでどのみち車は通れなかったのだろう。しばらくすると綺麗なつらら群を見ることができた。そこで若宮朱莉と天音琴美は「綺麗なつらら群だね」といってスマホで撮影した。その先から林道の雪は深くなっていてズボズボとハマってしまい少し歩きにくくなった。そこから10分程歩いた地点のガードレール越しに、これから登る予定の尾根が見えた。


水城涼真「あそこに見えてる尾根道を歩くんよ」

若宮朱莉「うわーあんなところまで・・・まだ結構遠いですね」

天音琴美「まだまだ先じゃないですか。時間は大丈夫でしょうか?」

樫田裕「いや、こっから見ると結構遠そうですが意外と距離は短いと思いますわ」

水城涼真「とりあえず先に進んでいこか」


しかし、水城涼真の予想以上に林道歩きに時間を要してしまった。



午前9時50分・・・沢筋の登山口


林道を歩き出して約1時間20分程経ったところで沢筋に出ると、釈迦ヶ岳登山口まであと1.5kmという道標があった。さすがにみんな林道歩きに疲れていたので少し休憩となった。この沢筋も別ルートの釈迦ヶ岳の登山口になっていて水城涼真は少し考えていた。


水城涼真「朱莉ちゃん、ちょっとGPSの地図を見せて!」

若宮朱莉「はいどうぞ」

水城涼真「うーん・・・この南側の尾根にのって、一気にP1465まで登ったほうが距離的には近いな」

若宮朱莉「でもどこからこの尾根に取り付くのですか?」

水城涼真「この沢筋の少し先のこの地点くらいから尾根に向かって登っていけばええわ」

樫田裕「ちょっと地図見せてください・・・えっと、ここを無理矢理登っていくってことですよね?」

水城涼真「そそそ。地図で見た感じ、ちょっと急登やけど登れると思う。もう林道歩きは飽きたしな」

樫田裕「まあ太尾登山口まであと1.5kmですけど、この感じやと1時間近くかかりそうですしね」

天音琴美「ここで突発的にそんな判断するなんて・・・」

若宮朱莉「わたしもそんなこと考えつきませんでした」

水城涼真「いや、こういう時にも柔軟に対応するために普段からバリルートを歩いてるんよ」

若宮朱莉「そうでしたね」


そうして水城涼真の提案した南側の尾根へ取り付いて釈迦ヶ岳の稜線であるP1465まで登っていくことになった。沢筋を少し進んで登りやすそうな場所から南側の尾根へ向かって登っていった。当然、無理矢理に登っているわけなのでそこは急斜面になっており、ルーファイ(ルートファインディング)をしていく必要もあった。そして20分程登っていくと目的の南側の尾根に取り付いた。


水城涼真「この天気やからトレースは残ってると思うけど、一応目印としてこの木の枝にテープ巻いとくわ」

樫田裕「この辺から結構積雪量が増えてズボズボ足がハマりますけどワカンはまだ履きませんか?」

水城涼真「結構倒木も多いし細尾根になってるからこのまま登っていこか」

若宮朱莉「ここからP1465まで標高180m程の登りみたいですからこのまま頑張って登っていきましょう」


この標高180m程の尾根の登りが、倒木や枝をかき分けたりと障害物が多く意外に大変だった。この尾根道を40分程かけて登っていったところで、ようやく釈迦ヶ岳の稜線になっているP1465地点に到着した。そこから先はだだっ広い雪原地帯の尾根道になっていて、少し遠くに釈迦ヶ岳のピークが顔を出していた。


天音琴美「青空にこの雪原地帯の風景は素晴らしいですね」

若宮朱莉「うんうん!わたしもこんな風景が見られるなんて思っていなかったです」

水城涼真「たしかに綺麗な風景やけど、ここからかなりしんどくなりそうやわ」

天音琴美「それってどういうことですか?」

樫田裕「天音さん、この時点でこんなに足が雪にハマってるわけですから、この先からラッセル地獄がはじまるってことですわ」

天音琴美「ラッセル地獄って体験したことないからイメージできない・・・」

若宮朱莉「ラッセルは八経ヶ岳に登った時にはじめて経験しましたが、少し息切れしちゃいましたね」

水城涼真「朱莉ちゃん、あの時より今日のラッセルはキツイと思う。とにかくここからワカンを装着していこか。天音さんはスノーシューに履き替えてな」


そこで3人はワカンを装着、天音琴美はスノーシューに履き替えると雪原地帯を進んでいった。雪質は水分を多く含まれた湿雪でワカンやスノーシューでも沈み込んでしまっている。さすがの水城涼真も数歩進んだだけで息を切らしてしまうほどであった。そこから20歩ずつ交替制でラッセルをしていくことになった。


樫田裕「この雪、クソ重いですわ!朱莉ちゃんと天音さんはこれ行けます?」

若宮朱莉「わたし、がんばるよ!」

天音琴美「あたしもがんばる!これも後でいい経験になるって思うから」

水城涼真「二人ともその意気込みはええんやけどペースゆっくり目で息切らさんようにな」


若宮朱莉と天音琴美はラッセルをしてすぐに息を切らしていたが、だんだん慣れてきてペースが整ってきた。



午後12時10分・・・古田ノ森(標高1618m)~千丈平


交替制でラッセルがはじまってから1時間程経った頃、ようやく一つのピークである古田ノ森(標高1618m)に到着した。この時点でみんな汗だく状態になりながら息を切らしていた。


水城涼真「はぁーやっと古田ノ森か。ここで少し休憩しよか」

若宮朱莉「ふぅ~ラッセルってこんなキツいものなんですね・・・」

天音琴美「はぁはぁ、たしかにここまでかなりキツかったね!」

樫田裕「湿雪やったんで余計にしんどかったと思いますわ」

水城涼真「ここから千丈平までは下ってなだらかな登りになるからマシになると思う」

樫田裕「千丈平からはもう釈迦ヶ岳に登るだけですからね」

天音琴美「下山の時間は大丈夫でしょうか?」

水城涼真「下山はトレースがあるから早いとは思うけど、まあ暗くなってもええやろ」


10分程の休憩を終えて出発すると、水城涼真の言った通り最初は下りになったあとなだらかな登りになると樹林帯に入った。この付近から雪が締まってきて、ラッセルの必要もなくなった。そして時刻が午後13時を過ぎた頃に千丈平に到着した。この千丈平は樹林帯の中でも平地になっており、近くに水場もあることからよくテント泊に利用される場所である。ここで水城涼真はザックの中から4人用のワンポールテントを取りだした。


水城涼真「もうあとは釈迦ヶ岳のピークまで登るだけやから3人で行っといで。俺はここでテント立ててすき焼きの準備しとくわ」

樫田裕「それは僕がやっときますから、涼真さんが連れて行ってあげてください」

水城涼真「樫田君はもうええん?」

樫田裕「釈迦ヶ岳は登ってますんでもうピークハントはええですわ」

水城涼真「じゃあすき焼きの材料と鍋を置いとくから樫田君にお願いするわ。2人ともさっとピークハントしてこよか」

若宮朱莉「わかりました。樫田君、よろしくお願いするね!」

天音琴美「樫田さん、よろしくお願いします。では行きましょうか」


そうして水城涼真、若宮朱莉、天音琴美の3人は釈迦ヶ岳のピークを目指して登り始めた。



午後13時30分・・・釈迦ヶ岳(標高1800m)


千丈平からは少し足が雪にハマりながらの登りになったが意外とスムーズに進んでいけた。そして予想より早く30分程で釈迦ヶ岳(標高1800m)に登頂することができた。山頂には青空の下で立派な釈迦像が設置されており、その向こう側には雪景色の七面山をはじめ八経ヶ岳や明星ヶ岳など大峰の北側の眺望が広がっていた。


若宮朱莉「やっと釈迦ヶ岳の山頂!ここまで長かったけど登頂できて嬉しいです!!」

天音琴美「本当に長かった・・・それにしてもお釈迦様の象って予想より大きいね!」

若宮朱莉「うんうん!それに景色も最高ですよ!」

水城涼真「手前の山にある雪原地帯になってるところがアケボノ平でその隣に七面山、そこから稜線が続いていて向こう側に見える山が八経ヶ岳と明星ヶ岳やね」

若宮朱莉「あの一番高い山が去年登った八経ヶ岳なんですね」

天音琴美「ここからずっと稜線が八経ヶ岳まで繋がっているなんてすごい・・・縦走できるってことですよね?」

水城涼真「大峰奥駈道やから吉野から縦走してくる人も多いんよ」

天音琴美「朱莉ちゃん、せっかくだからお釈迦様と並んで一緒に記念撮影しない?」

若宮朱莉「いいですね。涼真さん、撮影をお願いします」


若宮朱莉と天音琴美が釈迦像の隣に並ぶと、水城涼真は2人それぞれのスマホで記念撮影をした。山頂で10分程滞在した後、千丈平で樫田裕を待たせてるということもあったのでさっさと下山を開始した。千丈平へ下山している間に天音琴美が話しかけてきた。


天音琴美「涼真さんから見て、朱莉ちゃんの登山レベルってどのくらいだと思っています?」

水城涼真「そうやなあ、基本的なことは身に付いてるんやけど、今回のような時の判断とかルーファイ(ルートファインディング)に関してはまだまだって感じやな。それはもう経験して身に付けていくしかないんよね」

若宮朱莉「涼真さんのおっしゃる通り、わたしなんてまだまだです」

天音琴美「それでも一般の登山者よりは詳しくなっていると思うよ」


そんな登山レベルの話をしながら下山していくとあっという間に千丈平に戻ってくることができた。しかし時刻は午後14時を少し過ぎており、これから昼食をとるとなればかなり遅い下山になってしまう。千丈平では樫田裕によって既にポールテントが設置されていて、すき焼きの美味しそうな匂いが漂っていた。そして3人はポールテントの中に入っていった。


水城涼真「樫田君、お待たせ!今戻ってきたわ」

樫田裕「ちょうどすき焼きができあがったところなんですよ」

若宮朱莉「樫田君、ありがとう。グッドタイミングだね!」

天音琴美「樫田さん、ありがとうございます。すき焼き、すごく美味しそう」

水城涼真「じゃあ時間も押してるし、早速食べよか」

樫田裕「そこに割り箸に小皿と卵も用意してますので、取って食べてください」


それぞれ小皿に生卵を入れると「いただきます」と言ってすき焼きを食べはじめた。水城涼真はすき焼きを食べながらザックの中からバーナーとチタン製のフライパン、冷凍のチャーハン2袋を取りだしてチャーハンを炒めはじめた。


天音琴美「すき焼きすっごく美味しい!!雪山でこんな美味しいものを食べることができるなんて思いもしなかった」

若宮朱莉「山で食べると何でも美味しいけど、このすき焼きは高級料理を食べてる感じがします!」

樫田裕「ところでずっと気になってたんですが、こんな雪山に有名な売れっ子の芸能人を連れてきて大丈夫なんですか?」

水城涼真「それはこのお二人が決めたことやから別に気にせんでもええよ」

若宮朱莉「今のわたしはただの登山者だから芸能人とか気にしなくていいよ。最近のファンレターには『登山頑張ってください』って書いてくださる人が多くなりましたから」

天音琴美「登山している時のあたしは完全にプライベートだし、こうしてみなさんとご一緒させていただいてとても楽しいので特別扱いしなくていいですよ」

樫田裕「そういうもんですか・・・」

天音琴美「芸能人だってただの人間ということです」

樫田裕「でも、天音さんの場合は僕らと登山してるってファンの人らに気づかれたらまずいんとちゃいます?」

水城涼真「俺らは登山ガイドをしてるだけってことにすれば何の問題にもならんよ」

天音琴美「涼真さんのおっしゃる通りです!ただ、マネージャーに気づかれちゃうとまずいだけです」

水城涼真「そろそろチャーハンができたからみんなに配っていくわな」


水城涼真はスプーンでチャーハンを四等分くらいにして配っていった。


若宮朱莉「このチャーハンも美味しい!」

天音琴美「あたし、山でチャーハンを食べるのははじめてだけど、これはこれで美味しいね!」


すき焼きとチャーハンは一気になくなってしまい、4人は空腹を満たした。それから後片付けをしてポールテントもザックにしまい込んだ時には午後3時20分を過ぎていた。遅い時間になってしまったが下山を開始した。下山はトレースが残っていたのでスムーズに戻っていくことができたのだが、最後の林道歩きをしていると暗くなってきたのでみんなヘッドライトを装着した。そして車を駐車した土砂崩れ地点に到着した時には午後18時30分前になっていた。


波乱万丈の雪山登山となったが若宮朱莉と天音琴美は満足していたようで、帰りの車の中でぐっすり眠っていた。

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