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あっちゃんと天音琴美の嵐山デート

2月15日午後22時30分・・・


仕事から帰ってきてシャワーを浴びた後、若宮朱莉はベッドに横たわってまったりとしていた。テーブルの上には登山で役立つ読図、お天気の基本知識という本が置かれていた。そろそろ就寝しようと思っていた時にスマホから天音琴美からSNSの通話着信音が鳴った。


天音琴美「朱莉ちゃん、こんばんは。こんな時間にごめんなさいね。今少し大丈夫?」

若宮朱莉「こんばんは。大丈夫ですが、どうかしました?」

天音琴美「実はね、2月23日に京都で撮影があるんだけど、その週末の24日と25日がお仕事がオフになったの。そのどちらかの日に涼真さんとどこかの山に行く予定はある?」

若宮朱莉「24日はわたしもお仕事が入っていますが、25日は涼真さんと樫田君の3人で釈迦ヶ岳に行く予定です」

天音琴美「もしかして山頂にお釈迦様の象がある大峰の釈迦ヶ岳のこと?」

若宮朱莉「そうです。涼真さんが今シーズン中に大峰の雪山登山がしたいとのことで決まりました」

天音琴美「その日、あたしもご一緒させてもらえないかな?大峰の山には登りたいの!」

若宮朱莉「わかりました。涼真さんに聞いておきますね」

天音琴美「ありがとう。じゃあ24日は京都でブラブラ観光でもしようかな」

若宮朱莉「京都観光いいですね!どこか行きたいところがあったりするんですか?」

天音琴美「特に当てはないけど、京都らしい風情のあるところに行ければいいかな」

若宮朱莉「それならあっちゃんに案内してもらうのはどうですか?たしか京都のことにかなり詳しいみたいですよ」

天音琴美「でも、あっちゃんの予定はわからないし、それにそんな簡単に引き受けてくれるかな?」

若宮朱莉「そのことも涼真さんに聞いておきますが、あっちゃんに天音さんのSNSアカウントを教えても構わないですか?」

天音琴美「それは別に構わないよ。じゃあ諸々お願いするね」

若宮朱莉「はい。あっちゃんと京都でデートできるといいですね・・・うふふ」

天音琴美「そうよ。あっちゃんとデートすることになるのよね。それも強く伝えておいてね!」

若宮朱莉「あははは、強くって・・・わかりました!」


そういう話になって通話を終えると若宮朱莉は即座に眠ってしまった。



2月16日午前10時・・・


若宮朱莉は水城涼真の部屋に訪れて昨晩の天音琴美と話した内容について説明した。


水城涼真「まあ、釈迦ヶ岳にはレンタカーで4WDのRV車を借りて行く予定やから4人でも十分行けるから天音さんが来ても全然ええよ」

若宮朱莉「それならよかったです!」

水城涼真「ただ、あっちゃんのことに関してはちょっと聞いてみんとわからんから今晩にでも電話してみるわ」

若宮朱莉「お願いします。たしか涼真さんも天音さんとSNSの交換していましたよね?天音さんはSNSアカウントをあっちゃんにも教えていいとのことですので、伝えてもらって構わないです」

水城涼真「あっちゃん、SNSはじめたの最近やから上手くできるかわからんけど、とりあえず伝えておくわ」

若宮朱莉「それと、天音さんからこれはデートだと強く伝えておいてほしいと言われていますので、それも伝えておいてください」

水城涼真「わかった。これはおもろいことになるかもな」


その夜、早速水城涼真は有本淳史に電話をかけた。


有本淳史「もしもし、涼真さんすか。こんな時期に珍しいっすね」

水城涼真「突然なんやけど、あっちゃんは2月24日の土曜日って空いてる?」

有本淳史「24日は休みですけど低山でも予定してるんすか?」

水城涼真「実はその日、女優の天音琴美さんがあっちゃんに京都案内してほしい言うてるんよ」

有本淳史「またあの人っすか!?もう勘弁してくださいよ」

水城涼真「まあ、今度は別に酔って言ってるわけやないから、そこは安心してくれてええよ。ただ、俺も24日は空いてないからあっちゃんにお願いするしかないんよ」

有本淳史「まあそれならいいですけど、京都案内っつうてもどういうところに連れていけばええんすか?」

水城涼真「天音さんの希望として、京都らしい風情のあるところに行きたいとのことらしいわ」

有本淳史「なるほど、それなら嵐山から東海自然歩道で清滝まで歩くのがええかもしれないっすね」

水城涼真「それはあっちゃんにお任せするわ。天音さんのSNSアカウント教えとくから、あとは二人で待ち合わせ時間とか決めてほしいねん」

有本淳史「わかりました。そしたら天音さんと連絡とってみますわ」

水城涼真「あとな、天音さんがこれはあっちゃんとのデートやってことを強く伝えといてって言われてるからよろしく!」

有本淳史「まだそんなこと言うてるんですか?あの人、普段から酔っぱらてるんとちゃいます?」


水城涼真は有本淳史に伝えることは伝えて電話を切った。そして、有本淳史と天音琴美はSNSでやり取りをして待ち合わせ時間が決まり、二人の嵐山デートが決まった。



2月24日午前10時30分・・・嵐山駅


嵐山駅前で赤い厚手のジャケットに紺色のハイネックセーター、黒のジーンズを履いた有本淳史が喫煙所でタバコを吸いながら待っていた。すると濃い茶色のロングコートに白と黒のストライプ柄のタートルネック、濃いグレーのタイツに黒いスカートと黒いスニーカー型の革靴を履いて伊達メガネをかけた天音琴美が駅の改札口から出てきた。天音琴美は周りをキョロキョロと見渡して有本淳史を見つけて走っていった。


天音琴美「あっちゃん、お久しぶりかな?今日はよろしくお願いするね!」

有本淳史「天音さん?全然気づかなかった・・・お久しぶりってほどでもないけどね」

天音琴美「そうかもね。今日はどこを案内してもらえるの?」

有本淳史「ここから東海自然歩道を歩いて清滝まで行こかなって考えてる」

天音琴美「東海自然歩道ってたしか東京の明治の森高尾国定公園から大阪の明治の森箕面国定公園まで続いてる登山道だよね?」

有本淳史「そそそ・・・よー知ってはるやん。とにかく行きましょか」


それから二人は東海自然歩道を歩いていって渡月橋を渡ると左に曲がって嵐山公園のほうへ向かった。嵐山公園に入ると階段が多くなったが人が少なくなり、有本淳史の歩くペースが早くなって天音琴美から少し離れた。


天音琴美「あっちゃん歩くの早い!せっかくのデートなんだからもっとくっついて歩こうよ」

有本淳史「デートっつっても、あなたは有名女優で芸能人、僕はただの一般労働者、二人で歩いてんのがバレたら大スクープになるんとちゃう?」

天音琴美「そんなこと気にしなくてもいいよ。簡単にはバレないし、あたしが芸能人だとかどうだっていいことじゃん!」

有本淳史「天音さんがそう言うてもなあ・・・」

天音琴美「それに天音さんじゃなくて琴美って呼んでくれなきゃやだ!」

有本淳史「いきなり呼びにくいけど、ほいじゃあ琴美ちゃんでいい?」

天音琴美「それでいい。これからはあたしのことそう呼んでよ」

有本淳史「琴美ちゃん、もう酔っぱらってるんとちゃう?」

天音琴美「酔ってないよーお酒なんて飲んでないもん。それよりこっちに来て!」


有本淳史が少し戻ってくると天音琴美は腕を組んで「今日はデートなんだから!」と強く言った。有本淳史はやれやれという表情をしながら歩きはじめた。嵐山公園を抜けて少し歩いていくと愛宕街道へ入った。愛宕街道は瓦屋根の町家と茅葺きの農家が立ち並び、古都の風情を感じさせる土産店や茶屋などが軒を連ねており、国土交通省より京都市内で唯一の日本風景街道に選定されている。


天音琴美「あたしが求めていたのはこれよ!まさに古都京都を感じる街道だわ」

有本淳史「ロケで来たことあるんちゃうかって思ってたけど、はじめて来たんやったらよかったわ」

天音琴美「いろいろ立ち寄ってもいい?」

有本淳史「時間はたっぷりあるからお好きなだけどうぞ!」


天音琴美は土産店に入ったり古風ある建物をスマホのカメラで撮影したりしながら、少し進んでは戻ってを繰り返していた。そんなことをしているうちに時刻は12時半を過ぎていた。


天音琴美「ねえ、少し小腹が空いたからそこの茶屋に入らない?」

有本淳史「別にええよ」


2人は茅葺屋根の古風ある茶屋へ入ると抹茶と甘酒、桜餅のセットを注文した。しばらくすると注文した品が運ばれてきて天音琴美は甘酒を一口飲んだ。


天音琴美「この甘酒、生姜が効いていて温まるわ」

有本淳史「琴美ちゃん、甘酒を飲み過ぎるとまた僕に絡んで、いや、この先しんどくなるよ」

天音琴美「今、絡んでって言おうとしたでしょ?あたし、前の飲み会でも別にあっちゃんに絡んでたわけじゃないの」

有本淳史「いやいやいや、あの時かなり飲んでテンション上がってたし」

天音琴美「あたしね、お仕事ではいつも上辺だけの関係なんだけど、あっちゃんの前だと素直な自分で居られるの。だからわがまま言ったり甘えたりできるんだけど、それって迷惑かな?」

有本淳史「別に迷惑ではあれへんよ」

天音琴美「だったらこれからもたくさん甘えさせてもらっていい?」

有本淳史「わかった。でも節度を持っての行動にしといてな」

天音琴美「うん。ありがとう!」


それから30分程まったりして茶屋を出てからも、天音琴美は愛宕街道にあるいくつかの土産店に入って行ったり古風な建物などの撮影をしていた。



午後13時30分・・・化野念仏寺~トロッコ保津峡駅


愛宕街道を北上して賑わいがなくなってきたところで化野念仏寺の入口に到着した。


天音琴美「これが化野念仏寺ね。名前だけは知ってたけど、ちょっと入ってみてもいい?」

有本淳史「そうやね。せっかくやから入ってみよか」


2人は入口で拝観料を支払うと境内へ入って行った。仏舎利塔の石造のトラナや西院の河原で石仏群、本堂(阿弥陀堂)などを見ていき、竹林の小径の階段を上がっていったりと結構な観光となった。天音琴美はずっと有本淳史の腕を組みながら自分が女優ということを忘れてプライベートを満喫してる様子であった。


天音琴美「あたし、歴史にはうといけど、化野念仏寺で古都を感じさせられたわ」

有本淳史「満足できたんならよかったよ」


化野念仏寺の境内から出た2人はそのまま愛宕街道を歩いていき愛宕神社一の鳥居を抜けた。そこから六丁峠のほうへ道路を歩いていったのだが、最初は結構長い坂道になっていた。ところが登山に慣れていた2人の歩くペースは早く、10分程で六丁峠に到着した。そこからは長い下り坂になっていて清滝川まで一気に下りていくことになる。六丁峠から15分程下って落合橋に到着すると、東海自然歩道のルートから外れてトロッコ保津峡駅へと向かった。そして道路から鵜飼橋を渡り、午後14時30分過ぎにトロッコ保津峡駅に到着した。


有本淳史「最後にトロッコ列車に乗って嵐山へ戻るのが今日の予定コースやね」

天音琴美「あたし、トロッコ列車に乗るのははじめてだからなんだか楽しみ!」

有本淳史「嵐山に着いたらちょうどええ時間になるしな」

天音琴美「ねえ、嵐山に着いたら最後に湯豆腐食べに行かない?」

有本淳史「別にええけど、結構高いよ?」

天音琴美「今日のお礼にあたしがおごるよ。それに、もう少しだけあっちゃんと一緒に居たい・・・」

有本淳史「わかった」


それから10分程してトロッコ列車がやってきて2人はトロッコ嵐山駅へと戻っていった。



午後15時20分・・・嵐山デートの終わり


トロッコ嵐山に到着して2人は駅からほど近い豆腐料理店に入ると湯豆腐定食を注文した。


天音琴美「あたし、お豆腐が大好きだから楽しみ」

有本淳史「それやったら涼真さんが大峰に行った時の帰りに立ち寄ってる天川村の豆腐屋に行ってみるとええかも」

天音琴美「天川村のお豆腐?そんなのはじめて聞いたんだけど美味しいの?」

有本淳史「かなり美味しいよ。天川村の水が綺麗やからやろね」

天音琴美「たしか伯耆大山に行った時、涼真さんにおススメされた鳥取県産の佐治谷豆腐もかなり美味しかったわ」

有本淳史「あの人、かなりの豆腐好きやからね」


そんな話をして15分程経つと鍋に入った湯豆腐と自然薯のてんぷらなどが運ばれてきた。鍋の蓋を開けると16等分にカットされた絹ごし豆腐が入っており、にわかに昆布出汁の香りが漂ってきた。天音琴美は何度も「美味しい」と言いながら湯豆腐を口にしていた。それから湯豆腐を食べ終えた2人は店を出ると嵐山駅へ向かった。そして午後16時半前に嵐山駅前に到着すると天音琴美は少し立ち止まって有本淳史の手を握った。


天音琴美「あっちゃん、一つだけお願いがあるんだけどいい?」

有本淳史「お願いって?」

天音琴美「ときどきでいい、あたしが淋しくなったり切なくなったした時、あっちゃんにSNSの通話を繋いでもいい?」

有本淳史「そのくらい別にええよ。あんまり遅い時間やと寝てるかもしれんけど・・・」

天音琴美「そんな遅い時間には繋がないよ。あたしね、普段は自分のウィークポイントを隠して我慢してるんだけど、あっちゃんの前なら素直になれるの」

有本淳史「まあ話くらいならいつでも聞くので通話繋いでくれてええよ」


そこで天音琴美は有本淳史に抱きついて「ありがとう!それに今日のデートは楽しかったよ!!」と言った。有本淳史は「ここは目立ちすぎるから離れて」と言うと天音琴美は離れた。


有本淳史「今日はこれから大阪に行くんやね?」

天音琴美「うん。予約してるホテルが岸部駅なんだけど、ここから一旦梅田駅まで行って乗り換えかな」

有本淳史「岸部駅に行くんやったら正雀駅で降りたらええよ。そこから歩いて岸部駅まで10分もかからんと思うわ」

天音琴美「そうなんだ!?じゃあ正雀駅で降りるね!」

有本淳史「ふぅーこれで琴美ちゃんとのデートの約束は果せたわけやね」

天音琴美「何言ってるの!まだ登山デートの約束があるでしょ?」

有本淳史「えっ!?それと今日のデートは別なん?」

天音琴美「当たり前でしょ。それはそれこれはこれなんだから!あっそろそろ電車がくるみたいだから行くね」

有本淳史「じゃあ気をつけてね」

天音琴美「あっちゃん、またね!」


そう言って天音琴美は駅へと入っていき、2人の嵐山デートは終了した。



午後22時・・・水城涼真の部屋


水城涼真の部屋には若宮朱莉が来ていて明日の大峰・釈迦ヶ岳へ行く際の服装について相談していた。


水城涼真「明日はそんな寒くないからソフトシェルジャケットでええと思うで」

若宮朱莉「じゃあハードシェルは持っていかなくてもいいんですね」

水城涼真「うん。レインジャケットだけザックに入れといたらええわ」

若宮朱莉「わかりました。ところで、今日のあっちゃんと天音さんのデートはどうなったんでしょうね」

水城涼真「朱莉ちゃんも悪い子やなあ~ホンマはその話がしたかったんやろ?」

若宮朱莉「えへへ、バレちゃいましたか・・・でも気になるじゃないですか」

水城涼真「まあ、天音さんが甘えまくって、あっちゃんが対応に困ってた感じとちゃうかな」

若宮朱莉「たしかに天音さんってあっちゃんの前では態度が違いますからね・・・明日、それとなく聞いてみたいです」


あっちゃんと天音琴美の嵐山デートの話題で少し盛り上がっていたが、明日は朝早いということで若宮朱莉は部屋に戻っていった。

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