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はじめてのモデル撮影は鈴鹿最後の秘境イブネ

10月31日午後19時30分・・・


大阪の某テレビ局での情報番組の仕事を終えた若宮朱莉が自分の楽屋前に戻ると、マネージャーの井野口晃が「朱莉ちゃん、今日もお疲れ様でした。ちょっとお仕事の話があるんだけどいいかな?」と声をかけてきた。若宮朱莉は「わかった。楽屋の中に入って」と言うと二人は楽屋に入り、楽屋内のテーブルの前にあるソファーに座った。


若宮朱莉「井野口さん、お仕事の話って何?」

井野口晃「実は急な依頼なんだけど、朱莉ちゃん、山ガール雑誌のファッションモデルのお仕事してみない?」

若宮朱莉「雑誌の表紙の撮影はしたことあるけど、ファッションモデルはしたことないから想像できないなあ」

井野口晃「先日の富士山ロケを見た雑誌社の編集部から朱莉ちゃんにモデルをお願いしたいとのことなんだよ」

若宮朱莉「そういうことならやってみてもいいけど、撮影場所はやっぱ東京になるよね?」

井野口晃「いや、今回は山ガールのファッションモデルだから、実際に山に登っての撮影になるとのことなんだ」

若宮朱莉「どこの山に登ることになってるの?」

井野口晃「それがまだハッキリ決まってないんだけど、朱莉ちゃんは大阪が拠点だから雑誌社からは鈴鹿山脈のどこかにしたいと言われてる。今、候補にあがってるのは綿向山と竜ヶ岳という山なんだけどね」

若宮朱莉「鈴鹿山脈の山かあ、わからないなあ」

井野口晃「そこで相談なんだけど、今回も水城さんに登山ガイドをお願いして、鈴鹿山脈でファッションモデルの撮影に適した山を決めてもらえないかと思っているんだけど、お願いできないかな?」

若宮朱莉「涼真さんに聞いてみるけど、撮影日はいつなの?」

井野口晃「急なんだけど11月13日の予定なんだ」

若宮朱莉「本当に急ね。じゃあ今日帰ったらすぐに涼真さんに相談してみるよ。ちなみになんて雑誌なの?」

井野口晃「山ガールライフって雑誌だよ」



午後22時10分・・・


水城涼真はシャワーを終えた後で先日行った双門ルートの途中にあった巌の双門の行き方についての執筆をしていた。これは雑誌に掲載するものではなく、雑誌社のウェブサイトにコラム記事として載せるものである。地図で位置を示しているものの、今回は詳しいルート解説を文章にするのは非常に難しく感じていた。執筆で頭を悩ませていると部屋のチャイムが鳴った。こんな時間に訪ねてくる人といえば若宮朱莉しかいないとわかっていた水城涼真は「はーい」といって玄関のドアを開けた。


若宮朱莉「こんな時間にごめんなさい。ちょっと急ぎの案件がありまして・・・少しお邪魔してもいいですか?」

水城涼真「急ぎの案件!?まあとりあえず上がって」


二人は部屋に入ってテーブルに向かい合って座った。そして若宮朱莉は井野口晃と話した山ガール雑誌のファッションモデルについての案件などの詳細を水城涼真に話した。


水城涼真「山ガールライフはたしか俺が執筆してるアウトドアウォーカーと同じ雑誌社やから、俺が登山ガイドをするんやったら直接編集部と話してもええで」

若宮朱莉「本当ですか!だったらそれはお願いします。わたし、鈴鹿山脈の山は全くわからないんですが、雑誌社が候補にしてる綿向山と竜ヶ岳ってどういう山なんですか?」

水城涼真「うーん、綿向山は正直積雪期やないと絵にならんと思うわ。竜ヶ岳はどのルートから考えてるんかわからんけど、シロヤシオの羊の群れのシーズンやないと厳しいと思う」

若宮朱莉「どこか山ガールのファッションモデルの撮影に適した山はないですか?」

水城涼真「鈴鹿か・・・考えられるのは釈迦ヶ岳なんやけど、それもなんか違う感じがするんよな。雨乞岳は山に慣れてないスタッフにはちょっと難易度が高いし、御池岳はよく雑誌で紹介されてるから面白味がないやろうしな」

若宮朱莉「涼真さんはどのくらい鈴鹿山脈の山を登っているんですか?」

水城涼真「数えたことないからわからんわ。まあ有名な山とセブンスマウンテンや鈴鹿10座は制覇してる・・・あっ最も撮影に適してる山あったわ!」

若宮朱莉「どこですか?」

水城涼真「イブネってところなんやけど、もうそこ以外に考えられへんわ!」

若宮朱莉「イブネってなんだか変な名前というかカタカナなんですね。どんな山なんですか?」

水城涼真「山というか苔が広がってる高原地帯になってて、鈴鹿の山々を望むことができるんよ」

若宮朱莉「へえ、そこいいですね。わたしも行ってみたいです!」

水城涼真「じゃあ、山ガールライフの編集部には俺から話しとくから、マネージャーさんにも伝えといて!」

若宮朱莉「ありがとうございます。よろしくお願いします」


撮影場所はイブネを候補とすることで話がまとまると、若宮朱莉は自分の部屋へ戻って行った。



11月1日午前10時・・・


昨晩の山ガールライフの話は急ぎの案件だったようだったので、水城涼真は早速アウトドアウォーカーの片瀬彩羽に電話をかけた。


水城涼真「片瀬さん、お疲れ様です。今少しよろしいでしょうか?」

片瀬彩羽「水城さんからのお電話なんて珍しいですね。今は大丈夫ですよ」

水城涼真「たしか山ガールライフという雑誌ってそちらの雑誌社でしたよね?」

片瀬彩羽「はい。山ガールライフはうちで発行しているものですが、それがどうかしました?」

水城涼真「実は山ガールライフの編集部が若宮朱莉を山ガールのファッションモデルの撮影を山の上でしたいとのことで、その登山ガイドをお願いされているんですが、そのことで山ガールライフの編集部長と直接お話できないかと思いましてお電話しました」

片瀬彩羽「なるほど。確認してまいりますのでしばらくお待ちください」


それから5分程経って・・・


片瀬彩羽「お待たせしました。山ガールライフ編集部長の清水も水城さんとお話したいとのことですので、このまま繋いでもよろしいですか?」

水城涼真「繋いでもらって構いません。ちなみに片瀬さんってその清水さんと知り合いなんですか?」

片瀬彩羽「私と清水は同期でして、ときどき飲みに行ったりしてます。ではお繋ぎしますね」


山ガールライフの編集部長は清水紗理奈という32歳の女性であった。


清水紗理奈「清水でーす。水城さん、どうもはじめまして!」

水城涼真「こちらこそはじめまして。よろしくお願いします」

清水紗理奈「片瀬がいつもお世話になってまーす!えっと若宮朱莉ちゃんの山ガールファッションモデルのお話でしたね」

水城涼真「撮影場所としてそちらが候補にあげている鈴鹿山脈の山なんですが、どちらも季節外れで撮影は難しいと思うんです。そこで私のほうで撮影場所に最高に適した山がありまして、それを提案しようとお電話させていただきました」

清水紗理奈「最高に適した山!?ほうほう、それってどこの山ですかぁ?」

水城涼真「イブネという鈴鹿山脈の場所です。ちょっとマニアックなところで関東で知ってる人は少ないと思います」

清水紗理奈「イブネ!?なんでカタカナ?ってそんなことはよくって・・・ちょっと今検索してみまーす」

水城涼真「イブネ・クラシと検索すると出てくると思います」

清水紗理奈「よし検索に出てきた・・・ほうほう、鈴鹿の秘境で、おぉー写真を見てみると山頂は広大な台地で360度の眺望、しかも鈴鹿の山々が見えてるときたこれ!たしかにここのローケーションは最高ですなぁ」

水城涼真「登りに約3時間かかりますが、単に距離が長いだけで途中も撮影ポイントがありますし、最初はほぼ平坦な道が続くので体力的にも楽なんです」

清水紗理奈「ほいじゃぁ、撮影場所はこのイブネで決定しますのでよろしくお願いしますっ!」

水城涼真「清水さんだけの意見で決めて大丈夫なんですか?」

清水紗理奈「私は編集部長なんですよぉ~偉い人が決めたことだから誰も逆らえないんですよぉ!」

水城涼真「わかりました。では、それで話を進めてください」

清水紗理奈「はぁ~い。ほいじゃあ最後に片瀬に繋いじゃいますね」


清水紗理奈のテンションの高さにさすがの水城涼真も圧倒されたが、この性格は嫌いではなかった。


片瀬彩羽「お待たせしました。清水とちゃんと話せましたか?」

水城涼真「話はまとまりましたが、清水さんってものすごいテンションですよね。まあ、あの性格は大好きですが・・・」

片瀬彩羽「ふふふ、少し変わっていますが明るくてとてもいい子ですよ」

水城涼真「そう思います。それではありがとうございました」


そうして山ガールのファッションモデルの撮影ロケ地はイブネで決定した。



11月13日午前5時30分・・・


本日の滋賀県東近江市の天気予報は高気圧に覆われて雲一つない快晴とのことであった。登山準備を整えた水城涼真と若宮朱莉がアパートの入口で待っているとマネージャーの井野口晃が運転する黒いワゴン車がやってきた。


若宮朱莉「井野口さん、おはようございます」

井野口晃「おはようございます。水城さん本日はよろしくお願いします」

水城涼真「井野口さん、おはようございます。朱莉ちゃん、道を案内せんとあかんから行きは俺が助手席に乗るよ」

井野口晃「では水城さん、道案内をお願いします。しかし、他のスタッフには道がわかりますでしょうか?」

水城涼真「たしか今回のスタッフさんは大阪から来るとのことで、名神高速・八日市インターチェンジ前のコンビニで待ち合わせになっていましたよね」

井野口晃「はい、そう聞いておりますが、もしはぐれてしまったら迷われるのではないでしょうか?」

水城涼真「一応、登山口に関してはスマホのマップアプリでの座標を送っておきましたので大丈夫だと思います。それでは行きましょう」


そうして3人とも車に乗り込んで車を走らせた。名神高速道路・吹田インターチェンジより高速道路を走らせて1時間20分ほどで八日市インターチェンジに着いた。料金所を出て一般道路に出るとすぐ目の前にあるコンビニの駐車場に車を停めた。待ち合わせ時間は7時30分だったので少し早めに着いたのだが、井野口晃はスタッフの車を探していた。それから10分程経って、メタリックシルバーのワゴン車がコンビニの駐車場へ入ってきた。その車を見た井野口晃が戻ってきて「スタッフさんとご挨拶するから車から降りてください」と言った。するとメタリックシルバーの車からは4人の男性と2人の女性が降りてきた。そこで身長150cmほどの少し茶髪のショートヘア、目がパッチリしていて小鼻、唇も小さく丸顔の女性1人が前に出てきて「どうもどうも、山ガールライフ編集部長の清水でーすっ!本日はよろしくお願いします」と挨拶してきた。


水城涼真「ええええええーーー!?清水さん、わざわざ東京から来られたんですか?」

清水紗理奈「そうだよんっ!昨日、新幹線で大阪に来てたんですよぉ。あなたが片瀬といつもイチャイチャしてる水城さんですね!?へぇ~」

水城涼真「イチャイチャなんかしてませんよ!それより清水さんも今日は山に登られるんですか?」

清水紗理奈「もちろん登るよぉ。これでも私の趣味は登山なんだじょぉ!」

水城涼真「でもどうして今回来られたんですか?」

清水紗理奈「有名タレントをモデルにするのは初めてだったから撮影現場を見ておきたかったのと、イブネが私を呼んでたからだよんっ!」

水城涼真「なるほど・・・」


その後、他のスタッフとの顔合わせがはじまった。どうやら男性2人はカメラマンで1人は照明担当者、女性の一人はヘアメイクアップアーティストとのことだった。挨拶を終えると全員が車に乗り込んで、井野口晃が運転する黒いワゴンを先頭を走って登山口へと向かった。



午前8時10分・・・登山口


渋川沿いの細い林道に沿いに広くなった駐車場所に到着したが、平日ということもあって一台も車は停まっていなかった。全員が車から降りると登山準備をはじめた。さすが登山をしながらの撮影ということで、スタッフ全員はちゃんとした登山スタイルになっていた。ただ、水城涼真はヘアメイクアップアーティストの女性だけが70リットルのザックを背負っていたのが気になったので「重くないですか?」と聞いてみた。するとヘアメイクアップアーティストの女性は「ほとんど着替え用の衣類が入っているだけですので大丈夫ですよ」と答えた。全員が準備を終えると清水紗理奈が「ほいじゃぁ出発しましょう。よろしくお願いします」と言った。


登山口には滋賀県の道路関連のマスコットとして有名な”飛び出し坊や”に雨乞岳・イブネ・御在所岳登山口という看板が掲げられていた。そして岩谷林道起点となるこの場所の入口には車止めのチェーンがされており通行止めという大きな看板が掲げられていた。みんなそのチェーンをまたいで入山となった。しばらく林道歩きをしていても景色は変わらず撮影場所なんてなかった。かくれ岩から桜地蔵尊、タイジョウ分岐を過ぎた頃には既に時刻は8時50分になっていた。しかし、その先のツルベ谷出会でスタッフが立ち止まった。そしてカメラマンの一人が「この苔がある付近で何枚か撮影しようか」と言った。するとスタッフがザックの中から機材を出して、へメイクアップアーティストの女性はザックの中からこの雰囲気に合いそうなジャケットとズボン、帽子を取り出して「若宮さん、これに着替えてください」と言った。若宮朱莉はこういう時のために少し厚めのトレッキングタイツを履いていたのですぐに着替えることができた。帽子をかぶってヘアスタイルを整えると撮影がはじまった。あらゆる表情をしたり角度を変えて撮影すること30分が過ぎた。


そして時刻は午前9時40分になると蓮如上人旧跡に到着した。登山道を少し進んだところに蓮如上人旧跡という小さな小屋があった。ここは蓮如が難を逃れた場所という伝承があり、室町時代の館跡とされている。水城涼真は「ここで20分間休憩します。しっかり水分補給をしておいてください」と言った。特に重い機材を運んでいるスタッフはゴクゴクと水を飲んでいた。ここからは標高1042mの杉峠まで一気に登って行くことになる。休憩時間が終わって登山を再会すると、シデの並木、一反ぼうそうと登っていく途中で撮影してみたが、どうにもカメラマンの二人はしっくりしない表情をしていた。



午前11時20分・・・杉峠


どうにも絵になるような風景がなく、スタッフは少し不安な表情をしながら登っていた。そこで清水紗理奈が先頭を歩く水城涼真のところへやってきた。


清水紗理奈「ねぇねぇ水城さん、歩き出してかれこれ3時間くらい経つけど、私が恋するようなすっごい景色はまだなの?」

水城涼真「まあ、そう焦らないでください。撮影で40分くらいロスしてますけど、稜線に出たら一気に雰囲気は変わりますから」

清水紗理奈「本当にぃ!?嘘だったら片瀬に水城さんに襲われたって愚痴っちゃうからね!」

水城涼真「そんなめちゃくちゃな・・・って清水さん、稜線が見えましたよ!」

清水紗理奈「おぉーやっとかぁ~」


稜線の手前からは芝生のような地帯になっており樹林が少なくなって空が明るくなっていた。そしてそこを登り終えて標高1042mの杉峠に到着した。水城涼真が言った通り、稜線に出るとこれまでの景色とは一変して、綿向山などの鈴鹿の山々や遠く近江冨士と呼ばれる三上山が見渡せて登山道の雰囲気も変わった。ちなみにこの杉峠は四辻になっており、南側を登ると雨乞岳、そのまま東側を下って行くとコクイ谷、そして北側に行くとタイジョウやイブネに行ける。カメラマンの一人が「よし、ここからずっと撮影してのでみなさん用意してください」と言って、スタッフは撮影の準備をはじめた。


水城涼真「清水さん、これで襲われたっていうのは無しになりましたか?」

清水紗理奈「そうですなぁ~でもまだ私は恋してないから、水城さんに告白されたくらいの愚痴にしておくじぇ!」

水城涼真「それもやめてください」

清水紗理奈「そんな照れなくてもいいじょ!」


杉峠からは歩きながら若宮朱莉の撮影が続いていった。杉峠ノ頭(標高1121m)を過ぎたところで一旦撮影は落ち着いた。しかし、タイジョウとの分岐点を過ぎてイブネの山容が見えた地点からは撮影が再会されて、コル部となる佐目峠では若宮朱莉は何度か着替えをしていた。



午後12時10分・・・イブネ(標高約1160m)


さまざまな表情の若宮朱莉の撮影をしながらゆっくりと登っていくと、ついにイブネ(標高約1160m)に到着した。このイブネは山のピークというわけではなく、広大な平坦地の標高を指しているという認識を持たれていることが多い。この一帯は鈴鹿山脈の雲ノ平と呼ばれる苔地帯で美しい景観が広がっている。そして鈴鹿山脈の最深部にあることから「鈴鹿の奥座敷」「鈴鹿最後の秘境」とも呼ばれている。景色も360度パノラマ台絶景ともいうべ、雨乞岳をはじめ、鎌ヶ岳、釈迦ヶ岳など鈴鹿山脈の山々と遠く伊吹山まで見えている。


若宮朱莉「涼真さん、ここ素晴らしいですね!苔地帯になった台地に大絶景じゃないですか。めちゃくちゃ感動しちゃいましたよ!!」

水城涼真「鈴鹿の山はハズレが少ないんよ。ただ、人が多いのと夏はヒルだらけやからあんま行かんだけなんやけどな」

若宮朱莉「この景色は是非父にも見てもらいたかったです・・・」

水城涼真「お父さんの登山計画ノートに雨乞岳と鎌ヶ岳があったから、これと似たような景色は見てると思うで」

若宮朱莉「そうなんですね・・・ここは最高の景色ですし、あそこに続いてる道を歩いてみたいです!」


少し話をしていると若宮朱莉はカメラマンに呼び出されて早速撮影開始となった。水城涼真は一つの気がかりになっていた清水紗理奈のほうへ移動して話しかけた。


清水紗理奈「うほほーい。やふぃーここ最高だわぁ!素晴らしすぎる!!」

水城涼真「清水さん、これでどないですか?」

清水紗理奈「いいね、いいねぇ~私が求めてたのはこれなんだよ!いい写真が撮れそうだじぇ」

水城涼真「それはよかったですが、これで告白されたってのも無しになりましたよね?」

清水紗理奈「そうだなぁ、私はこの景色に恋してしまったから、片瀬には水城さんにも恋をしたと伝えておくじぇ!」

水城涼真「いや、そういうのも辞めてください。あとで片瀬さんに何言われるかわかりませんので・・・」

清水紗理奈「うふふふ、冗談だよ冗談!それにしてもこのイブネをチョイスしたのはかなりグッドだったよん。私もわざわざ東京から来たかいがあったじぇ」


その後、イブネ北端からクラシの手前までの登山道を歩きながら撮影が続いた。ここからは途中で清水紗理奈も口を出すようになっていた。何度も着替えをしてヘアスタイルを整えるといった作業をする若宮朱莉は面倒だとはいわなかったのは、やはり仕事に対しては真剣に取り組んでいるからだろう。そして、午後14時前になるとイブネに戻って遅い昼食となった。この若宮朱莉の昼食するシーンまでも何枚か撮影されたが、あまりいいシチュエーションではないせいかカメラマンは首をかしげていた。昼食をとりながら東側の眺望を見ていた水城涼真はかなり向こうのほうから薄っすらと白い台形の山が見えていることに気がついた。カメラを向けてズームしてみるとそれは雲ではなく雪がかぶった山であると確信した。水城涼真は「朱莉ちゃんと清水さん、ちょっとこっちへ」と声をかけと若宮朱莉と清水紗理奈は水城涼真のほうへ行った。


水城涼真「あの方向に薄っすらやけど、白い台形のような山が見えない?」

若宮朱莉「えっと、かなりちっちゃいですけど雲じゃないんですか?」

清水紗理奈「あのちっちゃいやつか・・・あれは雲か煙じゃないの?」

水城涼真「じゃあ、このカメラの画面を見て!これズームしているんだけど雲やないよね?」

若宮朱莉「本当ですね。山の向こうからちょっと飛び出してる」

清水紗理奈「ふむふむ。たしかに雲じゃないなぁ・・・煙でもなさそうだし」

水城涼真「これ富士山なんよ。この方角、この形とちゃんと剣ヶ峰まで見えてるから間違いあらへん」

若宮朱莉「えええぇーーーこんなところから富士山なんて見えるんですか?」

水城涼真「鈴鹿の山からは富士山が見えるんよ。俺も何回か見たことあるから間違いないわ」

清水紗理奈「どひゃぁーーーっ!まさか富士山まで見えるとは、びっくり仰天だじぇ!!」


それから水城涼真が富士山が見えると他のスタッフに話すと、カメラマンの一人が望遠レンズで富士山を撮影した。一眼レフの300ミリ望遠レンズで撮影すると鮮明に写っており、間違いなく富士山であることがわかった。


その後は西日になってからの撮影をして時刻が午後3時を過ぎたので撮影を終了して下山することになった。2時間程で駐車場まで下山することができて、解散となったが、清水紗理奈は大阪にもう一泊してから東京に戻るとのことで井野口晃の車に乗り込んだ。


若宮朱莉「涼真さん、わたし、鈴鹿の山が好きになりました。また連れて行ってください」

水城涼真「お父さんの登山計画ノートの予定にあった鈴鹿の山に行く予定やけど、それは残雪気がええねん。まあそこも別の意味で最高の場所やから楽しみにしといて!」

清水紗理奈「私も鈴鹿の山が気にいったじぇ!東京に住んでると関西の山のことなんてわからないから、今日は新鮮な感じだったよ」

水城涼真「ところで清水さんはどうしてこっちの車に乗ってこられたのですか?」

清水紗理奈「そんなの大阪に着いたら飲みに行くからに決まってるからだじょ!水城さん、若宮さん、私がおごるから付き合っておくれ」

水城涼真「これからですか!?朱莉ちゃんは明日の仕事ですので無理ですよ」

若宮朱莉「わたし、少しくらいならお付き合いしますよ。清水さんとお話してると面白いですから」

清水紗理奈「これで決まりだ!登山後の酒は最高だからな」

井野口晃「朱莉ちゃん、お酒はほどほどにね」


そういうことになり、大阪に到着すると水城涼真、若宮朱莉、清水紗理奈の3人は近くの居酒屋へ飲みに行った。

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