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カッコいい剃刀尾根の天空の頂、伯耆大山剣ヶ峰

9月28日午後22時10分・・・


今日も仕事を終えてシャワーを浴びた後に少しベッドに横たわっていた若宮朱莉のスマホにSNSの通話着信音が鳴った。着信相手を見てみると、先日の富士山ロケで一緒に登った天音琴美であった。富士山ロケでSNSの交換をして以来、ずっとチャットでの会話だけだったので音声通話とは珍しい。不思議に思いながら若宮朱莉は通話に出てみると天音琴美が「朱莉ちゃん、お久しぶり!もう寝ちゃってたかな?」と言った。


若宮朱莉「今、シャワーを浴びて落ち着いていたところなので大丈夫ですよ」

天音琴美「実は再来週の連休なんだけど7日と8日、仕事がオフになって伊吹山でも行こうかと思っているの」

若宮朱莉「伊吹山ですか?」

天音琴美「うん、まだ予定は決まってないんだけど、せっかく関西に行くから朱莉ちゃんも一緒にどうかなって思って連絡したの」

若宮朱莉「ごめんなさい、その日は涼真さんと伯耆大山に行く予定になっていまして・・・」

天音琴美「伯耆大山か、あたしも3年くらい前、弥山に登ったなあ。階段だらけの道でアブも多かったから大変だった記憶があるわ」

若宮朱莉「涼真さんは弥山ではなく剣ヶ峰に登るっておっしゃっていましたよ?」

天音琴美「えっ!?剣ヶ峰って禁止されているルートよね?まさか縦走するの?」

若宮朱莉「三ノ沢ルートという大山の南壁側から登るとおっしゃっていました」

天音琴美「そのルートって禁止じゃないの?」

若宮朱莉「一部禁止区域があるようですが、そこは自己責任とのことです。えっと少しお待ちください。涼真さんが撮影した伯耆大山の写真を3枚ほど送りますね」


若宮朱莉が3枚の写真を天音琴美のSNSへ送信すると天音琴美は「ひゃー何これ!!?まるでアルプスじゃない」、もう一枚の写真を見ると「この稜線カッコよすぎ!!ここ歩いてみたい」、最後の写真を見ると「この迫力ある谷も実際にみるとたまらないだろうね」と通話の向こうで騒いでいた。


若宮朱莉「この伯耆大山剣ヶ峰も実は父が達成できなかった山の一つなんです」

天音琴美「伯耆大山にこんなところがあったなんて知らなかった。ねえ、伊吹山は諦めるから、わたしもこの伯耆大山にご一緒させてもらえない?」

若宮朱莉「伊吹山はいいんですか?」

天音琴美「もともと行くところに困っていて、伊吹山はまだ登っていなかったから行ってみようかって感じだったの。それに予定も何も決めてたわけじゃなかったし・・・お願い、涼真さんご一緒したいとお願いしてもらえない?」

若宮朱莉「わかりました!わたしも天音さんとご一緒したいですし、涼真さんにお願いしておきます!!」

天音琴美「ありがとう!7日と8日はオフだから一泊二日も可能だし、テントも持っていくから!」



9月29日午前9時50分・・・


この日は朝から写真の加工をしていた水城涼真であったが、アウトドアウォーカーの執筆作業が予想以上にボリュームがあってかなり時間に押されていた。今回は夜景だけではなく、その街の歴史や分化、観光地なども紹介しなければならない。そんな時に部屋のチャイムが鳴った。水城涼真は「はーい」と返事をすると、玄関のドアが開いて薄い紫のカーディガンに白いシャツ、ライトグレーのミニスカートを履いた若宮朱莉が入ってきた。若宮朱莉は「涼真さん、ちょっといいですか?」と言ったので水城涼真は「朱莉ちゃんか、入ってくれてええよ」と言った。


若宮朱莉「実は昨日の夜、天音さんから連絡がありまして、今度の連休に行く伯耆大山三ノ沢ルートにご一緒させていただきたいとお願いされましたがいかがでしょう?」

水城涼真「俺は別に構わんけど一泊二日は大丈夫なん?」

若宮朱莉「天音さんは7日と8日は仕事オフなようで一泊二日も可能とのことです」

水城涼真「それやったら、朝9時には出発したいから朝一の新幹線で新大阪まできてほしいって伝えといて。あと、今回は立入禁止区域の場所も歩くわけやから完全に自己責任になるってことも伝えといて!」

若宮朱莉「わかりました。また天音さんとご一緒できるなんて嬉しいです!!」

水城涼真「でも、お父さんの登山計画ノートの一つを達成させるのに、天音さんが一緒におってもええの?」

若宮朱莉「天音さんにもそのことは伝えていますし、そういうこだわりはありませんので大丈夫ですよ」



10月7日午前8時50分・・・


若宮朱莉が伊達メガネをかけながら変装して待ち合わせである、新幹線中央改札口で天音琴美を待っていると、サングラスをかけたピンク色のハットをかぶって、黒いインナーシャツにピンク色のポロシャツ、濃いグレーのトレッキングパンツを履いて、少し大きめの50リットルザックを背負った女性が前に出てきた。いくら変装しているからといっても、若宮朱莉には天音琴美だとすぐにわかった。そしてお互いに手を振り合って「天音さんー」、「朱莉ちゃんー」と呼び合った。


車に乗って国道432号線・新御堂バイパスを箕面方面へ走らせていると、車内では天音琴美と若宮朱莉がテンションを上げながら話していた。そして府道2号線・中央環状線に入って池田市へ車を走らせていると水城涼真が「あんたら、テンション高いけど、明日登るルートは危険地帯があって立入禁止区域になってるところやから自己責任で覚悟しとかなあかんで」と言った。すると若宮朱莉が「わたしは涼真さんを信じていますから!」と言うと天音琴美も「それなりの覚悟で来ましたから」と言った。それから中国自動車道・池田インターチェンジに入って、広島方面へ車を走らせた。


天音琴美「涼真さん、少しお話聞かせていただいてよろしいですか?」

水城涼真「ん?」

天音琴美「涼真さんは二年間東京に住んでいたと朱莉ちゃんから聞きましたが、関東周辺で一番面白かった山ってどこですか?」

水城涼真「うーん、いろいろあってすぐに思い浮かべへんのやけど、両神山はおもろかったな」

天音琴美「両神山ならわたし日向大谷口から登りましたよ。でもそんな楽しいというイメージはなかった気がします」

水城涼真「あれは八丁峠から登らんと意味あれへん。両神山のギザギザをクリアしてこそ価値があるんよ」

天音琴美「八丁峠からのルートって完全に上級者レベルのルートですよね?」

水城涼真「レベルがどうなのかは知らんけど、あの鎖場の上り下りがたまらんくてアドレナリンがばんばんでたわ。もちろんピストンやったで」

天音琴美「わたしにはまだわからない世界ですが・・・あと、バカ尾根は登られましたか?」

水城涼真「あれは鍋割山から塔ノ岳へ縦走して下りで使ったけど、ただ長い尾根ってだけで暇やったな」

天音琴美「逆にしんどいと思った山はなかったんですか?」

水城涼真「一つだけあったんやけど、忘れもせん西沢渓谷から甲武信ヶ岳に登った時やな。さすがに最後はバテたわ」

天音琴美「甲武信ヶ岳はまだ登ったことありませんが、毛木平から登るのが一般的ですよね?たしか、西沢渓谷からのルートは上級者レベルじゃなかったですか?」

水城涼真「そこは気合入れて西沢渓谷から登らなあかんってのが俺のポリシーやってん。でもあとで後悔したけどな・・・あははは」

天音琴美「なんだかあたしにはとても真似できないような登山されていますね」

水城涼真「あとは瑞牆山に登って、その足で金峰山に登った時かな。富士見平に戻ってきた時、足の付け根が痛くなったんやけど、その帰りに景信山へナイトハイクに行ったんよ。さすがに3つの掛け持ち登山をして、次の日は完全に足がやられてたわ」

天音琴美「瑞牆山と金峰山って一泊二日のコースですが、それを日帰りして、帰りにナイトハイクしたなんてめちゃくちゃしてたんですね。朱莉ちゃん、涼真さんは化け物よ」

水城涼真「まあでも、今同じことはよーせんわ」


そんな話をしていると中国自動車道・作用ジャンクションから鳥取自動車道へ入った。それからも3人で何気ない登山話をしていると、鳥取自動車道・鳥取インターチェンジに到着した。時刻は午前11時40分になっていた。本来、伯耆大山に直接向かうのであればこのまま山陰自動車道を進めばいいのだが、水城涼真は鳥取市内でやりたいことがあった。


水城涼真「二人とも、鳥取砂丘には行ったことないやろ?今日はまだ時間があまってるからちょっと観光すればええ」

天音琴美「ありがとうございます。朱莉ちゃん、一緒に砂丘を歩こうか!?」

若宮朱莉「はいっ!」



午後12時10分・・・


鳥取砂丘に到着して、水城涼真は入口のベンチに座っていると天音琴美と若宮朱莉は手を繋ぎながら砂丘をテクテクと歩いていた。休日なので人は多いものの、意外と有名人であるこの二人に誰も気づかない。20分程経って、天音琴美と若宮朱莉が戻ってきたので水城涼真は「そろそろ昼食やな。カレーの店があるんやけど、そこでええ?」と聞くと二人とも「はい」と答えた。ちなみにこのカレー大山どりを使用した自家製カレーである。水城涼真は「夕食があるから、今はあんま食べんといてな」と言った。


昼食を終えた3人は車に乗り込んで浦富海岸に向かって車を走らせた。そして時刻午後13時50分を過ぎたところで浦富海岸に到着した。さすがにこの時期には海水浴している人などいない。水城涼真はそのまま西側の山へ上がっていった。海水浴場から離れると漁港があり、さらにその奥に進んでいくと海水がエメラルドグリーンに輝き、数メートル底まで透けているとても綺麗な磯場の風景へと変わった。その先にある鴨ヶ磯海岸という場所で車を停めると、水城涼真は「ここは山陰海岸自然歩道っていう海辺を歩く遊歩道なんやけど、大した距離でもないしブラブラ歩きながら綺麗な海でも眺めようや」と言った。


天音琴美「車の中から見てたけど、本当に綺麗な海ね」

若宮朱莉「うんうん。すごい透明感です。天音さん、一緒に散歩しましょう」


まずは海岸まで500mほど山道をくだっていった。水城涼真は二人の後ろからついていったのだが、なんどかこの自然歩道は歩いたことがあるのであまり驚くことはなかった。


天音琴美「朱莉ちゃん、海の中に洞くつがあるよ!」

若宮朱莉「すごい!なんだか神秘的な感じがします」


海岸線沿いを歩いている二人は感嘆な声を上げながら隣の城原海岸に到着した。そこで遊歩道は終わって道路まで階段を登っていって車に戻った。その後、鳥取市内に戻って大型スーパーに立ち寄った。若宮朱莉は「涼真さん、スーパーで何を購入されるんですか?」と聞くと水城涼真は「鳥取の名産を買って、今夜はそれを肴に宴会するねん」と答えた。天音琴美は「だからトランクにクーラーボックスを積んでいらしゃったんですね」と言った。水城涼真は買い物かごに佐治谷豆腐という鳥取県東部にしか売っていない絹豆腐3丁と、鳥取県中東部地方の郷土料理であるちむら産の蒸しとうふちくわを6本、5匹入りパックのハタハタを3つ、あとは500ミリリットルのビールを18本購入した。スーパーから大量の氷を袋に詰めていたき、トランクにあるクーラーボックスに入れた。続いてスーパーの隣にある小さな鮮魚直売書に入っていくと、新鮮なサザエを6個購入してクーラーボックスに入れた。


水城涼真「これで鳥取の名産での宴会の準備は整ったわ。あとはサンセットを見たら、伯耆大山に向かおうか」

天音琴美「あの、お魚を購入されていたようですが、お恥ずかしい話、わたし魚料理って苦手なんですよね」

水城涼真「ハタハタは普通の魚料理とはちょっと違うんよ。まあ、最初は抵抗あるかもしれんけど、一口食べてみたらわかるわ」

天音琴美「はぁ、そうですか・・・じゃあチャレンジはしてみます」


このスーパーでの買い物が意外と時間がかかり、時刻は既に午後16時40分を過ぎていた。



午後17時15分・・・


国道9号線沿いにあるサンセットビューポイントともいうべき白兎海岸という石柱がある展望台に到着した。既に空はオレンジ色に染まっており、間もなく日没を迎える。3人は展望台のベンチに座っていると間もなく陽が海岸へと沈み始めた。そんな光景を目の当たりにしながら天音琴美は「わたし、太陽が海に沈む光景なんてみたことがなかったのでちょっと感動しちゃいました」と呟いた。一方、若宮朱莉も「海がオレンジ色に染まってとても不思議な感じがして幻想的です」と小声で言った。完全に陽が沈むと水城涼真は「さあ、伯耆大山へ向かおうか」といって、3人は再び車に乗った。



午後20時58分・・・


本日の宿泊施設である大山の下山キャンプ場に到着した。辺りはすっかり真っ暗になっていて、管理棟にも人はいなかったのだが、料金は朝になってから払えばいいのだ。水城涼真は即座にテントサイトを探しはじめたのだが、連休のわりに人は少なく駐車場から100mも離れていない二つのテントサイトを発見した。水城涼真「ここテーブルもあるしベストなんやけど、テントは二つしか設営できんのよな。あと一人はちょっと下に降りたところで設営せなあかん」と言って少し困惑していた。そこで天音琴美が「だったら、朱莉ちゃん、あたしと二人で寝る?あたしのテント2人用なんだけど、少し大きいのよ」と言うと若宮朱莉は「お邪魔でなければご一緒させてください」と答えた。水城涼真は若宮朱莉の一人用のテントを持ってきていたが、そういうことであれば余計な手間を省けると思った。


水城涼真はテーブルの上にビールを置いて、紙皿に乗せた大きめの佐治谷豆腐の冷ややっこに醤油をたらし、それぞれの席にとうふちくわを2本ずつ、とれたての刺身盛り合わせをテーブルに置いて、テーブルの真ん中にバーナーを置いてハタハタ3匹を網焼きにして焼いていた。テーブルの向かい側に若宮朱莉、向かって右側に天音琴美が座っていた。そしてビールの缶をあけて「乾杯!!!」と言ってビールを3人はビールを一口飲んだ。若宮朱莉は「なんだかハタハタがいい匂いがしてきましたね」と言うと天音琴美は「それでも・・・」と少し魚には抵抗があるような言い方をした。


それから10分程して、水城涼真は他の二人の前に配った小皿に焼きあがったハタハタをのせていった。そしてスーパーの袋から次なる6匹入りのハタハタを取り出して網の上に並べた。


水城涼真「まずは魚料理が苦手な天音さんから食べてもらおうか」

天音琴美「えっ、あたしから!?これ、お箸でどう食べればいいの?」

水城涼真「手で頭と尻尾を手で持って身の部分をかじればええんよ」

天音琴美「ちょっと抵抗がありますが食べます!カリッむームシャムシャ、あっ!?これあまり魚って感じがしなくて脂身が乗っていてめちゃくちゃ美味しいです!!」

水城涼真「じゃあ朱莉ちゃんも食べてみて!」

若宮朱莉「はい!これ超美味しいですね!!ビールによく合います!!」

天音琴美「この奴も美味しい。水が違うのかな・・・」

若宮朱莉「とうふちくわってはじめて食べましたけど、これ豆腐そのものですね。ビールが進みます」


3人ともビールのピッチが早くなってきた。あれだけ魚料理が苦手といっていた天音琴美であったがハタハタが焼けると率先して食べるようになり、ついにハタハタは完売してしまった。そして、佐治谷豆腐の大きな冷ややっこも天音琴美と若宮朱莉は残さずたいらげており、とうふちくわもいつの間にかなくなっていた。ビールも残り4本となって最後にサザエを焼きながら、とれたての刺身盛り合わせを肴に残りのビールを飲んでいた。


水城涼真「天音さん、ハタハタととうふちくわ食いすぎとちゃうか」

天音琴美「だってハマっちゃいましたから」

若宮朱莉「それにしても山で鳥取の名産といいますか、魚介類を食べれるなんて最高の宴会になりましたね」

天音琴美「さすがにお腹いっぱいになっちゃったけど、まだサザエが残っているのよね」

若宮朱莉「サザエで〆ましょうか」

水城涼真「もう午後22時30分過ぎとるし、あとは明日すぐ行動できるようにさっさと片付けて、そろそろ寝よか」


3人は〆にサザエのつぼ焼きを食べてビールを飲んだあと、さっさと片付けをしてテントに入って眠った。



10月8日午前8:40・・・


昨晩に片づけをして登山の準備をしていたおかげもあって、テントを片付けるとそのまま車に乗って文殊谷登山口にある文殊堂駐車場へ向かった。祝日でありながら、駐車場は結構空いていてスムーズに車を停めることができた。三人は車から降りるとさっさと登山準備をしていたが、これから登る大山南壁はかなりガスっていた。


天音琴美「ずいぶんガスっていますね。このまま登って大丈夫でしょうか?」

水城涼真「大山はちょっと特殊な気象条件で朝方は気温や湿度などの条件が揃ってガスが発生しやすいんよ。歩いてたらそのうちガスははけてくるわ」

天音琴美「なるほど」

若宮朱莉「準備できましたのでいきましょうか」


これから3人が登る大山三ノ沢ルートの歩行は禁止されているが、法的権限はなくあくまでお願いベースであり、最終的には自己責任で登ってほしいとのことである。だからといって、稜線は持つところのない細尾根になっているので滑落したら命を落とすことすらある危険なルートなのだ。文殊谷登山口から入山して堤防をいくつか超えていき、一時間程経って最後の砂防ダムを超えると伯耆大山の南壁が姿を現した。まだガスが完全にはけていない状態で全容は見えてなかったが水城涼真は「ここで40分ほど休憩して、ガスがはけるのを待とう」と言った。天音琴美と若宮朱莉はお茶と行動食を出すと少し大きな岩に後ろむきに座ってまったりしていると、風が強まってきてガスが上空へと吹きあがりだした。それから20分ほどすると青空が出てきて、どんどんとガスがはけて伯耆大山南壁の全容が姿を現した。水城涼真が「お二人とも、ついに伯耆大山の南壁が姿を現したで。後ろ向いてよく見てみ!!」と言うと二人は岩から降りて振り返った。


天音琴美「ひぁーカッコいい!!!一瞬、涸沢かと思いましたが、あたし、こんな大山ははじめてみました」

若宮朱莉「これは絶対に登りたいです!山肌がカッコよすぎますよ!!」

水城涼真「じゃあそろそろ登ろか。稜線に出てからが問題なんやけどな」


3人は砂防から右側のガレ場をひたすら登り始めた。ここから稜線までは急斜面のガレ場がつづくのでペースが一気に落ちてしまう。一時間程登っていると、ガレ場が終わり槍ヶ峰の下をトラバースして稜線に登り詰めた。


天音琴美「この槍ヶ峰って槍ヶ岳よりカッコいいかも。写真は撮ったから登ってきてもいいですか?」

水城涼真「登れんことはないけど、やめといたほうがええかも。実は俺が数年前にルートを崩してしまったんよ」

天音琴美「涼真さんが崩しちゃったんですね。責任とってくださいよ!!って危ないので辞めておきます」

若宮朱莉「ここからずっと細尾根が続くんですね」

水城涼真「ここからはストックの用意をして。ストックあるとバランスとって歩けるから!」


3人とも2本のストックを出して準備した。水城涼真は「バランス崩さんように歩いてきてな」と言って先頭に立って歩き出した。そのまま天狗ヶ峰を通り過ぎていよいよ伯耆大山剣ヶ峰のピークが近づいてきた。少し道が広くなっている場所で水城涼真は「2人とも後ろ向いてみ」といって後ろを振り向くと、今まで歩いてきた尾根が鋭利のごとく、まるで剃刀のようであった。そして左側を見ると迫力ある谷があり、踏み外すと間違いなく地獄に叩きつけられるのは間違いない。水城涼真は少し先にいって剃刀のような尾根の上で立ち止まってる二人の写真を撮影した。そして、午後11時45分、ついに標高1729mの大山剣ヶ峰に登頂した。山頂からは晴天で日本海もバッチリ見えているが、二人とも大山の山容に心奪われているようであった。


天音琴美「あたし、今回のことで山に対する考え方がかわりました。もう1700mという標高は関係ないないんですね。深田久弥さんが「誇るべき一つだった」とおっしゃっていた意味や伯耆大山の魅力が魅力がよくわかりました。あまりにもカッコよすぎます!」

若宮朱莉「父が伯耆大山で何を見たかったは、この超カッコいい天空の剃刀尾根だったんですね。わたし、これが大山の本来の魅力なんだと共感できた気がします」

水城涼真「お二人とも大山の魅力がわかったみたいで、連れてきたかいがあったわ。さあ、カレーでも作って食べよか」



「山陰・山陽へ名山探しに行った私は、結局この地では大山一つしか推し得なかった。 しかしこの一つは誇るべき一つであった。」・・・「大山がそれ以上に私を感嘆させたのは、その頂上のみごとな崩壊ぶりであった。東西に長い頂稜は、剃刀の刃のように鋭くなって南面・北面へなだれ落ちている。まるで両面から大山を切り崩しにかかっているように見える。」(深田久弥「日本百名山」より)



三人はそれぞれザックからジェットボイル出してくると、それぞれパックご飯を開けてジップロックにご飯を入れると、レトルトのカレールーとご飯を入れたジップロックと一緒に水を少し入れたジェットボイルへ一緒に入れて温めはじめた。実は、ジップロックにご飯を入れてレトルトカレーと一緒に10分弱温めることによって同じタイミングでご飯とカレールーが温まるのだ。そしてカレーを食べ終えた3人は片づけをして下山の準備をはじめた。


水城涼真「下山時も最後まで油断せんよう慎重に歩いてや」

天音琴美「はい。さすがに尾根道は怖いですから」

若宮朱莉「最後まで気を抜けないです」


3人とも慎重に一歩ずつ踏み込んで下山していき、40分弱で稜線が終わってガレ場まで下ってきた。そして午後14時40分に砂防に到着すると、それは西日になってちょうど青空が広がりガス一つない見事な伯耆大山の南壁を見ることができた。水城涼真は「これこそが伯耆大山の魅力なんよ。夏山登山道で登るとこんな景色見られへんからな」というと天音琴美と若宮朱莉は「うんうん。めちゃくちゃカッコいい!!!」と言いながら何枚も写真を撮っていた。



10月8日午後15:20・・・


無事に文殊堂駐車場まで下山した3人は、近くにある温泉へ直行した。実は、天音琴美は次の日の朝から仕事があるとのことで、米子空港から最終便の飛行機で東京に帰る予定になっていた。時間はたっぷりあるとのことで、天音琴美は費用は出すから少しお高い温泉旅館に行って夕食もとろうと提案した。さすがの水城涼真や若宮朱莉はそれには遠慮していたが、天音琴美は「今日は素敵な山に連れていってくださって本当に感謝していますので、遠慮なさらないでください」と言った。そのお言葉に甘えて境港の近くにある温泉旅館へ行った。それにしても天音琴美と若宮朱莉は手を繋ぎながら砂丘をテクテクと歩いたり、一緒のテントで寝たり、今日の温泉も一緒に入るなど、相当仲がよくなったといえる。



10月8日午後19:00・・・


米子空港に到着すると天音琴美は「わざわざ送ってもらってごめんなさいね。あたし、買い物して帰るからここで解散でいいよ」といった。


若宮朱莉「天音さん、また絶対に一緒に山に行きましょう!」

天音琴美「うんうん!きっとだよ!絶対にまた一緒にいこう!!」

水城涼真「天音さん、気を付けてね!」

天音琴美「涼真さん、大山だけでなく、鳥取砂丘や綺麗な海、海に沈む夕日などわたしの知らない世界を見せてくださってありがとうございました。またよろしくお願いします!!」


そう言って天音琴美は飛行場の中へ入っていった。


水城涼真「さあ、帰るか!」

若宮朱莉「かなり遠くまできちゃいましたけど、運転は大丈夫ですか?」

水城涼真「帰りはさすがに高速道路使うよ。それより伯耆大山はどうだった?」

若宮朱莉「カッコいい剃刀尾根の天空にある頂が伯耆大山剣ヶ峰だったという感じでした。」

水城涼真「なんやよーわからんけど、満足できたんやったらそれでええわ」


そんな話をしながら高速道路に入って大阪方面へと車を走らせた。


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