歴史ある琵琶湖夜景の後は富士山です
9月1日午前10時20分頃・・・
執筆業務が一段落したところで、水城涼真は103号室へ行ってチャイムを鳴らした。部屋の中からは何の音も聴こえてこなかったが、103号室のドアがゆっくりと開くと、ベージュのシャツに黒いロングスカートを履いた若宮朱莉が出てきた。
若宮朱莉「あっ!涼真さんでしたか・・・珍しいですね。どうかしました?」
水城涼真「えらいビシッとした服着てるやん」
若宮朱莉「これから情報番組の出演なので、あまりラフな恰好はできないんです」
水城涼真「そうなんや。えっと、来週富士山ロケになるんやけど、ずっと沢登りばっかで登山道歩いてなかったやん?だから明日の午後、足慣らしにナイトハイクでも行けへんかなって思ってな」
若宮朱莉「土日はお仕事オフなので行きます!でも、どうしてナイトハイクなんですか?」
水城涼真「俺の取材ってこともあるんやけど、まだ昼間は暑いやん。直射日光を浴びながらの登山なんて地獄やからな」
若宮朱莉「なるほど、たしかにまだまだ暑いですからね」
水城涼真「滋賀県大津市の長等山テラスってところに登るんやけど、そこからは琵琶湖夜景が見えるんよ」
若宮朱莉「琵琶湖夜景ですか!?わたし、滋賀県って新幹線で通るくらいで実際に行ったことがありません。それに琵琶湖もちゃんと見たことがありませんので楽しみになってきました!!」
水城涼真「朱莉ちゃんには事前に天気のことを調べといてほしいねん。今日の明日やけどな」
若宮朱莉「はい。お天気のこと調べておきます!」
水城涼真「じゃあ明日の午後14時半にアパート入口で待ち合わせでよろしく!」
軽い打ち合わせのような形で長等山テラスへナイトハイクすることが決まり、水城涼真は201号室へと戻っていった。
9月2日午後14時30分・・・
水城涼真がアパートの入口まで歩いていくと、既に青のチェックシャツに青と紺色のストライプ柄になったトレッキングタイツの上に薄いベージュのキュロットパンツを履いて、紫色のザックを背負った若宮朱莉が立っていた。水城涼真が「お待たせ、じゃあ行こうか」と声をかけると若宮朱莉は「はい」と答えて二人は駐車場へ向かった。その後、名神高速吹田インターチェンジから名神高速道路に入り、京都方面へ車を走らせると水城涼真は「今日の天気予報についてちゃんと調べてきてくれた?」と聞いた。すると若宮朱莉は「はい!今日は全国的に高気圧覆われていて快晴。滋賀県大津市の気温からして夕立の危険性などはなさそうでしたし、登山指数も最高値でした」と答えた。それを聞いた水城涼真はさすがによく調べていると内心では関心していた。
若宮朱莉「関東の山で涼真さんが秘境感を感じた場所ってありましたか?」
水城涼真「うーん。大峰のような秘境感はないけど、西丹沢の檜洞丸とか奥多摩の御前山とかは静寂でシーンっとした雰囲気がかなり気に入ったよ。景色もそこまでやないんやけど、人があんまりおらんのが良かったわ」
若宮朱莉「わたしもそういう雰囲気は大好きです。沢はどうでしたか?」
水城涼真「取材で西丹沢のユーシン渓谷を遡行してみたんやけど、まずヒルが多かったんと、水質は綺麗なんやけど前鬼川ほどでもない感じやったかな。とにかく人が入り過ぎてるんやよ」
若宮朱莉「東京近郊の山って人がたくさんですからね」
水城涼真「それにしても、東京育ちやのに、よー大阪に引越ししてきたな」
若宮朱莉「わたし、中野は好きなんですが昔からあまり都会にはなじめなかったんです。大阪の都心部は東京よりごちゃごちゃしている感じがして住みたくなかったのですが、大阪のベッドタウンでしょうか!?吹田市はかなり落ち着ける場所だと感じました。こっそりほたか壮を見に来ましたが、ここなら落ち着いて生活ができると思いました」
水城涼真「吹田はインフラが発達してて京都や神戸にもすぐいけるし、大阪駅まで電車で10分やからな」
若宮朱莉「それにほたか壮の部屋は昔の8畳でかなり広いですし、涼真さんのアパートということもあって”ここだ”と思いました」
水城涼真「最初はびっくりしたけど、ちゃんと考えてたんやな」
そんなことを話をしているうちに、京都東インターチェンジから西大津バイパスに入り皇子山ランプでバイパスから出ると、数分で大津京駅のコインパーキングに到着すると、二人は大津京といういうべき長等の地に降りた。長等とは滋賀県大津市にある地名のことで主に長等山として知られている。飛鳥時代に天智天皇が唐や新羅からの攻撃に備えるために飛鳥から近江大津京に都を移した。ところが壬申の乱によってわずか5年余りで廃都となったため「幻の都」とも呼ばれている。そして平安時代の人々はこの長等という地名は「古い都があった」、「今では荒れてしまった古都」というイメージを持っていたといわれる。
二人は車のトランクから各自の荷物を下して登山の準備が整えた。水城涼真は「朱莉ちゃんにもこの地図渡しとくから、ちょっと読図の勉強をしながら登ろう」というと、読図を少し勉強していた若宮朱莉は「早尾神社から尾根に取り付いて、尾根を南西に登っていくわけですね!?」と言った。水城涼真は「当たってるよ」と言って先頭に立った。二人はまずは早尾神社に向かって皇子が丘公園の中を歩いていった。
そして早尾神社手前で左にそれた道を行き、左西大津バイパス高架のすぐ手前のところで右に折れて入山となる。しかし、この入山口は道標がないので非常にわかりにくくなっているのだ。以前、水城涼真がに登ろうとした時、この入山口の場所がわからなかったのだが、同行していた樫田裕が発見したのだ。二人が入山口付近に到着すると、若宮朱莉が少し困惑していた。
若宮朱莉「入山口がわかりませんね。急斜面のところにトラロープがありますが、まさかここを登っていくのでしょうか?」
水城涼真「そうやねん。ちょっとここわかりにくからな。最初だけ急斜面やけど、ちょっと登ったらあとは踏み跡のある楽な道になるわ」
若宮朱莉「これはわかりにくいですね。じゃあ、わたしが最初に登っていきます!」
若宮朱莉はトラロープを掴んでわずかながらの急斜面を登っていくと、後ろから水城涼真も登っていった。急斜面になっている入山口を登ると、あとは踏み跡のある登山道をひたすら歩き続けていくだけとなる。そして大津京駅から約一時間少しで標高300メートル地点にさしかかった。その付近にある右手の木に長等山テラスというプレートが取り付けられており、登山道から右に折れて岩場を登ると長等山テラスに到着した。まだ日没まで時間があるが、昼間の景色でも十分に迫力があって素晴らしい。
若宮朱莉「山の上から琵琶湖を見るなんてはじめてのことですが、想像より大きな湖で海と間違えそうです」
水城涼真「しかもこの位置からやから迫力ある琵琶湖が見えてるんは、かなり貴重やねん」
若宮朱莉「そうなんですね。昼間の景色もいい感じですが、夜景が楽しみです!」
水城涼真「とりあえずコーヒーとチーズタルトも持ってきてるからお茶にしよか」
水城涼真はザックの中から一眼レフカメラを取り出して三脚に取り付けて撮影の準備を終えると、お湯を沸かしながら二人分のコーヒーの準備をしていた。若宮朱莉はコーヒードリップを出して二つのカップにセットした。二人はコーヒーとチーズタルトを口にしながら長々と何気ない話をしていると日没を迎えた。水城涼真は完全に陽が沈むまでに急いで後片付けをした後で撮影にとりかかった。若宮朱莉もスマホ専用の三脚をセットして暗くなるのを待っていた。時刻が午後19時を過ぎるともう辺りは真っ暗になっていよいよ本格的な撮影開始となった。
ちなみに長等山テラスからは琵琶湖の南西から湖西側までの広い視界、湖岸沿いに沿った景色が市街地の景色が一望できる場所であり、特に湖西側のそびえたつホテルや高層マンションが一望できる素晴らしいく珍しい場所であった。しかも長等山テラスから琵琶湖までの直線距離は近いので迫力ある琵琶湖夜景を望むことができる。南側は琵琶湖が逆C字構図になっており、湖面には夜景の光が反射してという非常に美しい光景と化している。
若宮朱莉「涼真さん、湖面に浮かんでいるあの赤や緑やオレンジの光は何ですか?」
水城涼真「琵琶湖噴水やね。噴水時間はもう終わってもうたけどな」
若宮朱莉「琵琶湖に噴水って想像できませんね。あと北側に大きな橋が架かっていますが、あれは何でしょう?」
水城涼真「あれは有名な琵琶湖大橋やな。この夜景はちょっと普通とは違う見え方してるからな」
若宮朱莉「わたし、夜景といえば河津桜で有名な松田山(神奈川県)にロケで行ったことありますが、琵琶湖夜景は全く別物ですね」
水城涼真「まあ全く違う夜景とはいえるな。ちなみにここはお父さんの登山計画ノートにも書いてて達成してたみたいやで」
若宮朱莉「そういえば長等山テラスへナイトハイクと書いていましたね。達成したってことは父もこの夜景を見たということですね」
水城涼真「絶対に見てると思うわ」
若宮朱莉「父はこの素晴らしい琵琶湖夜景を見てどう感じたのかはわかりませんが、それがわたしと同じであれば誰も見たことのない夜景という意味でも非日常感に溢れていたのだと思います。それにわたしはこの夜景を”うわーすごい綺麗!”だけで終わらせたくありません」
水城涼真「朱莉ちゃん、風景の見方がわかってきてるやん。俯瞰夜景も山の風景の一つやってことやな」
その後、二人は琵琶湖夜景を何枚か撮影をして下山していった。
9月6日午前11時・・・
いよいよ今日から富士山ロケがはじまる。水城涼真は吉田口の天気予報をチェックしていた。まだ日本列島は太平洋高気圧に覆われていて快晴が続いているのだが、来週の中半からシベリア高気圧が南下して太平洋高気圧とぶつかって秋雨前線が発生するという予報になっている。今回の富士山ロケはギリギリのタイミングで天気に恵まれたといえるだろう。登山準備を整えた水城涼真はアパートの入口へと歩いていった。そこには既に黒いワゴン車が停車していて、若宮朱莉が水色の40リットルザックをワゴン車のトランクへ積み込んでいた。
水城涼真「おはようございます。えっと今日は井野口さんがずっと運転されるんですか?」
井野口晃「そのつもりですが何か?」
水城涼真「今回は井野口さんも富士山に登るんですよね?」
井野口晃「いえいえ、私は五合目で待機しています。さすがにこの恰好では登れませんからね」
水城涼真「そうですか。時間はたっぷりあるんでこまめに休憩を挟んでください」
そうして井野口晃が運転するワゴン車は名神高速、伊勢湾岸道を経て新東名高速道路に入った。浜松のサービスエリアで十分に休憩をとってそのまま御殿場インターチェンジから東富士五湖道路へ入って富士吉田インターチェンジまで走らせた。その後、富士スバルラインをあがって行き、午後16時30分に富士スバルライン五合目の駐車場に到着した。
井野口晃は車を停めるとすぐに外に出て行ってロケバスを探していた。それから10分程経って、井野口晃が車へ戻ってくると「大日テレビの方々と合流できましたので、みなさん降りて挨拶してください」と言った。水城涼真や若宮朱莉を含めて、数人のスタッフが黒いワゴン車から降りて、大日テレビのロケバスから降りてきたスタッフと顔合わせになった。まず、大日テレビの企画部長である蒲田博之が挨拶をすると、水城涼真が蒲田博之と拍手をしながら挨拶をした。
あらゆるスタッフ同士の挨拶と名刺交換が行われた後、ピンク色のハットをかぶって、黒いインナーシャツにピンク色のポロシャツ、濃いグレーのトレッキングパンツを履いた女性が前に出てきた。この女性はセミロングの黒髪とアーモンド形をした大きな目に鼻筋が通っていて少し丸みのある唇が曲線的、ひし形の輪郭をした小顔で身長は165cm程の少し高めでスリム体型な美女でありながら笑顔がとてもキュートな一面もある。その女性と同時に若宮朱莉も前に出てきた。
天音琴美「関西からお越しの皆さん、はじめまして!今回のロケ収録に出演します天音琴美です。よろしくお願いします」
若宮朱莉「はじめまして!タレントの若宮朱莉です。天音さんとご一緒にお仕事するのが楽しみです。よろしくお願いします」
天音琴美「若宮さん、よろしくね!」
若宮朱莉「わたしのことは気軽に朱莉ちゃんと呼んでください」
天音琴美「うん、わかった」
続いて若宮朱莉の後ろにいた水城涼真が天音琴美の前に出てきた。
水城涼真「今回、山岳ガイドを務める水城涼真です。よろしくお願いしますわ」
天音琴美「水城さんですね。こちらこそよろしくお願いします」
水城涼真「あーーー俺は堅苦しいのは苦手やねん!気軽に涼真さんって名前で呼んでくれてええから」
天音琴美「ぷっ・・・わかりました」
水城涼真「蒲田さん、この付近で宿の予約はとれてます?」
蒲田博之「もちろんです。では宿のほうへ向かいましょう」
そうしてスタッフ全員が向かったのは宿泊ロッジであった。蒲田博之によると小さな個室と大きめの個室、そして大部屋の三室の予約を取っているという。予定では小さめの個室に若宮朱莉、大きめの個室に天音琴美、大部屋はスタッフがごろ寝をするとの計画になっていた。その計画を聞いた水城涼真は「小さめの個室には俺が寝るから、大きめの個室には朱莉ちゃんと天音さんの二人が寝ればええ」と言った。
若宮朱莉「涼真さん、さすがにそれは天音さんに失礼です」
水城涼真「何が失礼なんよ?山ではそんなこと言ってられへんねん。俺は人が横におったら寝られへんし、天音さんと朱莉ちゃんが仲良くなればええことやろ?」
蒲田博之「水城さんのおっしゃることはわかりますが、さすがにいきなり会った二人が同じ部屋で寝るというのは無理があります」
水城涼真「じゃあ俺らは無理があってもええんですか?ここは芸能界やなくて山の世界やねん。そこには身分なんて関係あらへんし、この二人には仲良くしてもらわんと、ええロケなんてできんと思いますわ」
天音琴美「あたしも水城さん、じゃなかった涼真さんの意見に賛成です。上辺だけの関係の登山だといい収録はできません」
若宮朱莉「涼真さんはただ個室がいいだけなのでは!?と、思いましたがわたしも賛成します」
水城涼真「朱莉ちゃんってときどき一言多いときがあるよな」
蒲田博之「お二人がそれでいいなら構いませんが・・・」
水城涼真「まあ、料理を食べながら天音さんと山の話でもしよか」
夕食の時間になると大部屋に料理と数本のビールが運ばれてきた。蒲田博之はテーブルの真ん中に座っていたが、水城涼真は天音琴美と若宮朱莉の向かい側の席に座ってちょっとした宴会が開始された。少しほろ酔いになった水城涼真が話し出すと蒲田博之も近づいてきた。
水城涼真「庶民が憧れる山は富士山やけど、登山者が憧れる山ってどこかわかる人おる?」
天音琴美「あたしわかるかも。それって槍ヶ岳ですよね?」
水城涼真「槍は正解なんやけど、もう一つあるんよ」
若宮朱莉「映画になってた山じゃないですか?昔、父がよく見ていたのが、八甲・・・なんとかでしたね?」
天音琴美「八甲田山ね!でも違う気がする」
水城涼真「八甲田山は山スキーのメッカやから俺は憧れてるけど、正解は剱岳やな」
天音琴美「あーそういえばそうですね。たしか明治時代、最後に三角点を設置した山でしたか!?」
水城涼真「そうなんよ。未開拓の地やったんやけど、俺は今でもその未開拓の地を求めるような登山をしてるんよね」
天音琴美「それってどういう登山をされているんですか?」
水城涼真「誰も歩いたことない尾根やったり、誰もみたことのないような景色を見るためにあらゆる手段を使って登っていくんよ。まあ、そこには整備された登山道なんかないんやけど、そんなところを歩いていくんが楽しんよ。それで新しい発見をしたら、アドレナリンがバンバン飛ぶんよな」
若宮朱莉「わたしはそんな涼真さんとご一緒させていただいて、いろんなことを学びたいって思っています」
天音琴美「すごいことなさっているのですねえ~あたしはそんな登山をしたことないから想像もつかないけど・・・」
そんな水城涼真の登山話が続くこと一時間半ほどで宴会は終了となった。水城涼真は残ったビールを持って個室のほうへ戻っていったが、若宮朱莉には「天音さんと二人きりで話してみてね」と言っていた。ここでさすがの若宮朱莉も今日初めて会った天音琴美と二人で個室ということに関しては少し戸惑いがあった。一本のビールを片手に持った若宮朱莉は宿の外にある階段に座った。しばらくぼーっとしながら星を眺めながら缶ビールを一口飲んでいた。そこに風呂上りでジャージ姿の天音琴美がやってきた。
天音琴美「朱莉ちゃん、少しお話しない?」
若宮朱莉「あっはい、どうぞ・・・」
天音琴美「涼真さんってかなり変わった人だよね」
若宮朱莉「あはは、たしかにそうですね」
天音琴美「はじめてお会いして、いきなり堅苦しいの苦手とか名前で呼んでくれていいとか、思わず笑っちゃいそうになったよ」
若宮朱莉「それに関してはわたしも涼真さんの意外な一面を見たって思いました」
天音琴美「それにお話を伺っていると、あたしにはとても考えられない登山をされているみたいで、朱莉ちゃんもよく一緒について行くなあって感心しちゃった」
若宮朱莉「そんな・・・わたしなんてまだ登山のお勉強しながら連れて行ってもらっているだけでまだまだですよ!ただ、涼真さんはいつも『時間と金と体力さえあれば誰でも登れる山に興味がない』とおっしゃっていますが、わたしもその意味が少しわかってきた感じです」
天音琴美「それってそういう山をたくさん登ってきたからこそ言えるセリフだと思うの?あたしもいくつかの山に登ってるけど、その意味がわかる日がくるのかなあ」
若宮朱莉「天音さんはわたしなんかより登山経験がありますから、涼真さん押しの秘境の地に行けばすぐにわかると思いますよ」
天音琴美「秘境の地!?朱莉ちゃんがそう思った山の写真とかスマホに入れてないの?」
若宮朱莉「そうですね、、、これは沢登りしたときに撮ったものですが、ブルーの滝と呼んでいます」
天音琴美「うわーーーえっ!?本当にブルーの滝じゃない!?あたし、こんな滝見たことないよ」
若宮朱莉「あとこれはわざわざ雨の日に登って撮影しましたが、ガスと苔地帯が幻想的です」
天音琴美「えっ何これ!?さっきの滝もだけど関西にこんなところがあるの?」
若宮朱莉「はい。これは大峰の行者還岳という山ですが、大峰山脈は年間降水量が多いのでガスってこそ魅力が増大する山とお聞きしました」
天音琴美「なるほど、大峰だったのね。近いうちに八経ヶ岳に登ろうとは思ってたけど、あたしも雨の日を狙おうかなぁ」
若宮朱莉「八経ヶ岳なら日帰りですが厳冬期に登る予定ですよ!天音さんもご一緒します?って忙しいですよね~あははは」
天音琴美「あそこって厳冬期に日帰りなんてできるの?たしか冬は通行止めになるから一泊二日のルートしかなかったような・・・」
若宮朱莉「難易度は上がりますがバリエーションルートなら日帰りできるみたいですよ」
天音琴美「ねぇ、あたしもそれにご一緒させてもらっていいかな?まだ冬に行く山の予定は決まってないの」
若宮朱莉「天音さんとご一緒できるなら嬉しいですが、わたしには判断できませんので涼真さんに直接聞いてみてもらっていいですか?」
天音琴美「そうね、じゃあ明日にでもコッソリ聞いてみる!マネージャーに聞かれちゃうとうるさいので内緒にしといてね」
若宮朱莉「それわかります!わたしもほぼ内緒にしていますので大丈夫ですよ!!」
天音琴美「ありがとう!あたしね、朱莉ちゃんと出会えて本当に嬉しいし仲良くしたいって思ってるの。この業界で登山が趣味っていう同年代の人っていないんだよね」
若宮朱莉「わたしも天音さんと出会えて本当に嬉しいですよ。登山を理解してくれる人ってなかなか居ませんから仲良くしたいです」
天音琴美「よかった・・・そうだ!せっかくだしSNSの交換しない?」
若宮朱莉「いいですよ。わたしのアカウントはこれです」
その後いろんな話をした後、若宮朱莉と天音琴美の二人は個室へ戻って寝ることにした。登山者に悪い人はいないんだという人も多くいるが、この二人は登山を趣味とする共通点があることからお互いに仲良くしようという気持ちになったといえる。特に天音琴美は水城涼真の登山スタイルに惹かれているような発言をしていた。はたして明日からはじまる富士山はロケは一体どういうものになるんだろうか。




