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異世界にクラス転移したら全員ハズレスキルを持たされた  作者: アタラクシア
第一章『神は我らに死ねと申すか』
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第23話『瀕死で元気』

「あー死ぬ。これ死ぬ。あーヤバい。ヤバいわこれ。ヤバい」


「うわーん。痛い、痛いぃ……」


「うるせぇなぁ。俺だって痛てぇよ」


 一方その頃、復活した三人は脚を引きずりながら村へと向かっていた。

 その場に留まることも考えたが、また敵が襲ってくる可能性もあるし、なにより村が心配だった。


 とはいえ三人とも瀕死も瀕死。

 不破は片腕が折れ、もう片方の腕にも深い切り傷。歯も折れたし頬も割れた。

 飛鷹は裂傷多数。血もかなり流れた。骨折はしていないのでこの中だとまだマシな方だ。

 彩葉は内蔵の一部が破裂。さらには肋骨も三本はイかれている。三人の中じゃあ特に重傷だ。


 飛鷹が一人で村まで行って救援を頼むという選択肢もあったが、野獣が怖い。前のようなミカンクマやウェアウルフが襲ってきても困る。

 そんなわけで現在三人は痛みに泣きながら下山していたのだった。


「飛鷹くぅん……抱っこしてぇ……」


「無茶言うなよ。俺見てみ? 血すっごい流れてるからね?」


「伊落さん! 俺! 俺抱っこするよ!」


「不破君って自分の両腕が見れないタイプ?」



 そんなこんなで森を抜け、村が見えてくる──そこにあったのは、村が炎に飲まれる光景であった。

 人工的な炎ではない。おそらくはマナの魔法。となると戦闘中ということになる。


 村を覆うほどの大魔法。それだけ相手は強敵。村も相応に危険な状態ということだ。


「早く行かないと……!」


 心配だ。マナも心配だし、村の人たちも心配だ。自分たちが行ってどうこうなる問題じゃないのは分かっている。それでも心配なのだ。

 痛みを忘れて三人は走る──。


「──待って待って! ほんとに無理! ほんとに死ぬ!」


 ──実際に走れたのは飛鷹のみ。重症の二人は二歩進んで急ブレーキをかけていた。


「痛い! 無理! 走れない! 飛鷹君おんぶして! それか抱っこ!」


「だから無理だって! ていうか彩葉ちゃん結構余裕あるでしょ!」


「ねぇ腕の感覚無くなったんだけど」


「無理無理! 痛いもん! 叫んでアドレナリン出さないと痛くて死にそう! 呼吸するだけで痛いんだよ!? なんでアニメのキャラは皆『肋が何本かイッたか……』で済ませられんの!? 普通動けないってこれ!?」


「やっぱ余裕あるでしょ伊落さん!」


「ねぇちょっと俺腕残ってるよね? 腕の感覚なくなったんだけど。指動かせないんだけど。これ回復魔法でも治るよね? ね?」


 ……実は三人とも結構余裕ありそうだ。

 そんな感じでワチャワチャしながら、三人は村へと移動していった。



* * *



「──不破!」

「──飛鷹!」

「──彩葉お姉ちゃん!」


 三人を見つけた子供たちはダッシュで駆け寄る。


「おぉ、無事だったか……良かった」


「不破こそ無事──大怪我じゃん!?」


 よく見なくても三人とも大怪我だ。心配した村の住民たちも駆け寄り、三人を支えながら座らせる。


「その傷……あの敵兵にやられたのか?」


「ま、まぁそんなところ。これは油断しただけで実際は楽勝だったから!」


「こんなタイミングで強がらなくてもいいわよ。誰か月光草を持ってる人いる?」


「私! 私持ってるよ!」


 村の若者が懐から取り出した黄色い草を握りつぶし、三人の口の中に染み出た汁を垂らす。

 青臭い。生臭い。そして死ぬほど苦い。死ぬほど不味い。


「吐き出さない! 飲み込んで!」


 止まらない嘔吐感を我慢して汁を飲み込んだ──。

 するとあら不思議。今まで体を蝕んでいた『痛み』は一転。何事も無かったかのように消え去った。


「どう? まだ痛い?」


「い、痛くない……」


「これ凄い……」


「痛みが完全に取れた。腕の感覚も取れちゃってるけど」


 月光草は満月の夜にのみ咲く草。汁にして飲めば万病を治す、と言われるほどの自然治癒効果を持つ。

 だが今回は加工するほどの余裕もなさそうなので原液を使用。傷を治すほどの効果はないが、痛み止めくらいにはなる。


「ありがとうございます……助けてもらってなんなんですけど、回復魔法を使える人は居ないんですか? 腕の感覚がないから怖くなってきたんですけど」


「この村で回復魔法を使えるのはマナちゃんだけなの。そのマナちゃんは戦ってる」


「そうですか……」


 腕の感覚はとりあえず我慢。今は痛みと危険から開放された安堵に身を委ねることとしよう。



「君たち……無事だったのか」


 兵士の一人が申し訳なさそうな顔で近寄ってきた。


「すまない。助けに行けなくて……」


「気にしないでください。それより、これどういう状況なんですか?」


 絶え間なく鳴り響く叫び声。金属音。爆発に、建物が壊れる音。

 阿鼻叫喚の地獄絵図。村人たちの近くにも黒装束の死体が転がっている。


「ナイトメアの襲撃だよ。しかも『傲慢』直々のご登場だ。今は副団長が相手してくれているが……それもどこまで持つか」


 状況はよく分からないが、劣勢のようだ。兵士の苦い顔からもヒシヒシと伝わってくる。


「あと三十分耐えてくれればなんとかなるんだが……」


「三十分? なんで?」


「遠征中の他の部隊と今日、合流することになってるんだ。その部隊が領域の存在に気がついてくれれば援軍に来てくれるはず」


「援軍……」


 とは言っても、ズタボロの三人にできることなどありもせず。指を噛みながら、劣勢な状況を眺めることしかできなかった。



* * *



 ──荒波のように燃え上がる炎。

 ──その隙間をナイフは通り過ぎていく。


 マナ対アローラ。二人の戦いは熾烈を極めていた。


 マナは中から遠距離戦がメイン。アローラは近から中距離戦がメインの戦い方。つまり必然的に互いの制空権である中距離戦での戦いとなる。

 大規模な魔法攻撃に対し、的確に相手を殺しにいく飛びナイフ。マナの方が火力や範囲は上だが、アローラのスピードは凄まじく。マナは次第に翻弄されていく。


「っ……スピア・フレア(刺し穿つ炎の槍)!」


 鉄をも溶かし、空気を膨張させるほどの熱量。触れれば最後。触れなくても最後。全てを燃やし尽くす業火の炎がアローラに襲いかかる。


「ふふ──」


 ──しかしアローラは至って冷静。発射される烈火の槍を三歩半で躱し、散弾銃かのようにナイフを前方広範囲に渡って投げる。

 弾丸にも勝るスピードだが、この世界基準なら、別にそう大した速さではない。

 マナは炎の壁を生成して防御。鉄製のナイフはすぐに融解点を迎え溶けて消えていった。


「やるじゃない」


「学校でも優等生でしたから──っ!」


 炎の壁を変化させて攻撃へと転化する。対抗するようにアローラもナイフを追加。手数はより一層多くなった。


「でもそれだけ魔力を使ってたら、すぐにガス欠になるんじゃない?」


「いい着眼点ですね。しかしその予想は外れですよ。人と比べて魔力は多い方なので!」


 縦横無尽に動き回るアローラ。焔は追いかけるのではなく、先の場所を予測して置くように生成されていく。

 戦いは力押しだけでは勝利できない。必要となるのは地力だけでなく知能や頭脳も必要となってくる。


「──そう。それじゃあゴリ押しは厳しそうね」


 ──またナイフ発射。前方の広範囲を狩り尽くすように投げつける。

 同じ攻撃なら対応も同じ。マナは直撃する部分だけ炎の壁で防御。あとの攻撃は無視する。


 続いてのナイフ投擲──なんとこれはあらぬ方向へ。マナよりも上空を通り過ぎた。


「投擲ミス……追い詰められて焦ったようですね!」


 今日一番の魔力量。莫大な魔力に比例し、炎も今日一番の火力が生み出される。

 残った魔力の大半を使う大技。現状マナが使用出来る最大火力。その炎を相手へ放つ。


ヘル・フレア(地獄の業火)──」


「──若いっていいわね。単純で」



 ──背中に突き刺さる鋼の刃。


「え……」


 吹き出す血飛沫。突然の裂傷に魔力は崩れて消え去る。

 なんで。なんで急にナイフが。投げたナイフは全部外れたはず──。


「殺し方は何通りも作っておくものよ。お嬢ちゃん」


 ──そのタネは。上を見れば分かることであった。


「──反射、させた……!?」


 広範囲に投げたナイフにナイフを当てて軌道を変える。単純ながら、神がかり的な精度がなければできない高等技術。

 あの時。マナは投げられたナイフを全て溶かしておくべきだったのだ。


「──残念だったわね」


 ──後悔しても、もう遅い。


 乱れた隙にアローラは超接近。手にしたナイフでマナの腹部を刺突。

 さらに奥へ押し込むため、ナイフの柄頭を膝蹴り。マナの体は耐えきれずに後方へと殴り飛ばされた──。

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