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異世界にクラス転移したら全員ハズレスキルを持たされた  作者: アタラクシア
第一章『神は我らに死ねと申すか』
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第12話『安心感』

 ──その後、不破たちは彩葉を背負って帰宅。事情を知らない飛鷹と一悶着がありながらも、みんなで村へと帰っていった。

 そこからさらに時間は過ぎ。三人とマナは村長の家へと向かった。



「今日は本当にありがとうな、不破と……彩葉ちゃんだっけ?」


「は、はい。伊落彩葉って言います」


 村長は彩葉を品定めするかのような目で見つめる。


「……似てる。不破と飛鷹もそうだが、顔の作りが似てるな。兄妹だったりするのか?」


「いいや? 違いますよ」


「へへ、まさか伊落さんと顔が似てると言われるとは……さすがは村長。見る目ある!」


「顔の作りだからな。顔が似てる、じゃないからな」


「二人よりも私の方が顔がいいと思う」


「言うねぇ彩葉ちゃん」


 一点の曇りもなく言い放つ彩葉。自信しかないその言葉に反論などできようはずがなかった。


「まぁいいや。とりあえず──お前らが居なかったら子供たちは死んでいたかもしれない。今一度感謝する。ありがとう、子供たちを助けてくれて」


 ──村長の綺麗なお辞儀。感謝を受け取った二人は気恥しさでモジモジする。


「その……私たちは特にそんな凄いことは……」


「そうですよ。実際にミカンクマを倒したのはマナですし、子供を庇ったのは伊落さんです」


「でも不破さんが最後に子供たちを庇ってくれなかったら、私も間に合いませんでしたから」


「あちゃー。それ言わないでよ……こういうのは人知れずにやるのがかっこいいのに」


 謙虚な姿勢。ただ実際にミカンクマを倒したのはマナだ。冷静に考えてみると、別に助けたわけではない。


「ならそうだな。言い方を変えよう。──ありがとう、子供たちを守ってくれて」


 あまり変わってない気もするが……そっちの方が実感が湧いてくる。

 感謝をされて喜ばない人間など居ない。謙虚な姿勢を見せていた二人だが、恥ずかしさに耐えきれずに笑ってしまった。



 ──そんな様子を快く思わない人間が一人。


「つぅいみたち……なぁに俺が居ないところで活躍してるんだよ」


「あれ、お前いたっけ?」


「居たよ! その場には居なかったけど!」


「飛鷹君は何してたの? 私たちが死にかけてる時」


「嫌味な言い方! ごめんって、子供たちと水遊びしてました!」


 二人が主人公じみた活躍をしてた時。飛鷹はマナや子供たちと川で遊んでいた。それはもう呑気に。それはもう楽しく。

 魚を捕ったり、鬼ごっこをしたり、マナとラッキースケベをしたり──まぁ特にこの様子を語ったりはしないが。


「俺が『土壇場でスキルの新たな使い道を発見する』っていう主人公ムーブをかましてた時、お前は水遊びをしてたと。ほほーん……『格付け』は終わったようです裁判長」


「判決を言い渡す──『モブ』」


「はい飛鷹はモブキャラ! 俺と伊落さんがダブル主人公、です!」


「ま、待ってくれ裁判長! これは何かの間違いだ!」


 ……目の前で突然、迫真の演技を見せられる者の気持ちはどんなものでしょう。答えは『困惑』だ。

 ダイナミックな演技をしてる三人に困惑しながら、村長はマナに囁く。


「ほんとに血縁者じゃないんだよな? こいつら」


「多分……」


「コイツらの故郷はさぞかしうるさいんだろうなぁ……」



 雑談は一旦終わり。また真面目な話へ針路を戻す。


「お前たちは村の子供をクマから守ってくれた。そこで何か褒美を出したいんだが、欲しいものはあるか?」


「飛鷹は何もしてないです」


「言わなくていいわ」


 欲しいもの、と急に言われても困る。『すぐに元の世界へ帰れる券』とかがあるなら頼み込んで貰うが、そんなものないだろうし。

 ──不破が悩んでいる横で、我先にと彩葉が手を挙げた。


「はい! 私もスキルを見てほしいです!」


「へ……そんなことでいいのか?」


「いーんですよ。二人だけスキルを持ってるのとかズルいもん」


 スキル鑑定は対価も時間も要求されない。子供を助けた報酬としては軽すぎる気もするが、スキルというロマンの塊には女性の彩葉も興味があった。


「本当に謙虚な子だな」


 村長は昨日と同じ水晶玉を彩葉の前に置いた。


「じゃあ彩葉ちゃん。水晶の前に手を出してみて」


「はーい!」


 ワクワクと期待に胸をダンスさせながら手をかざす。準備は完了。スキル鑑定が始まった。

 虹色に光り輝く水晶。閃光が空間を侵食していく。


「──見えた」


 そして村長の一言で閃光は花火のように儚く消えていった。


「見えたって、スキルですよね!」


「……うん」


 ……あれ。この顔を見たことがある。後ろで待機していた二人が全く同じことを思った。

 苦虫を噛み潰したような顔。テンションが上がっている彩葉はその顔に気が付かず、自分のスキルを告げられるのを嬉々として待っている。


「私のスキルはなんです!? 『超パワー』? それとも『天地創造』?あ、『超再生』とか強そう! それか『コピー』みたいな搦手とかも主人公みたいで憧れますよね──」


「……」


 前二人ならこのタイミングで話していたが、今回の村長はまだ渋っている。

 これは……かなりダメなやつだろう。


「ねぇねぇ村長さん! 教えてくださいよ! もしかして、そんなに渋るってことは──すっごく強いスキルなんですか!?」


 前二人の能力を聞いてなかったのか。少なくとも実際に見ている不破の能力を見れば、自分が強い能力を持ってるとは思わないはずだが。

 それほど興奮しているということだろう。物事はあれやこれやと想像して期待してる時が一番楽しいのだ。


 しかしこれ以上は渋れない。村長は覚悟を決めて口を開いた。


「……か」


「か? ……『改変』ですか!? 『現実改変』とか、『過去改変』とか!? それ最強じゃないで──」


「髪の毛……生やす」






 ……。……?は?ごめん今なんて言った?


「……カミノケ? ハヤス?」


「そう。触れた場所に髪の毛を生やす……スキル……」


「……触れた……場所に?」


「そう、触れた場所」


「髪の毛を……生やす」


「うん。触れた場所に髪の毛を生やす」


「……花とか植物じゃなくて」


「違うよ。髪の毛」


「へぇ……髪の毛……」


 ……呼吸を整える。思考を整える。頬を軽くつねり、現実であることを思い知る。そして──叫んだ。


「──クソスキルじゃん!!」



 これは見事なフラグ回収。世界大会なら上位に食い込むほどの美しさ。かつてこの絶望感と悔しさを経験している二人は後ろで後方理解者ヅラをしていた。


「え、触れた場所に髪の毛を生やす?くっそ地味! どういう状況で髪を生やさなきゃいけなくなんの!? いつ使うねんこんな能力!?」


「分かる。その気持ち分かるよ。凄く分かる」


「叫びたいよね。泣きたいよね。泣いていいんだよ彩葉ちゃん」


 心からの叫びに頷く二人。……を、悲しい目で見る現地住民二人。


「なんなの!? せっかく異世界来たのにイケメンはいないしさぁ! 起きたら女のオークに乱暴されそうになるしさぁ! それで使えるスキルは『触れた場所に髪の毛生やす』って──神様はどれだけ私のことが嫌いなんだよ! 私も嫌いだよ!」


「だよなぁ。神様って不平等だよなぁ。分かるよ。俺もいきなりウェアウルフに襲われそうになったもん」


「俺だって初っ端から知らん女の子に捕まって食べられかけたんだよ? 難易度調整を絶対にミスってるよな神様」


 傷をベロベロと舐め合う三人。なんかもう傷口が腐り切ってる気もする。


「でもあれだよ。俺だって『一センチしか使えない瞬間移動』なんだよ? まぁ新たな使い道は発見したけど」


「俺だって『三分間だけ水中で息を止められる』ってやつだしさ。使うタイミング限られすぎだろ、ってな」


「それに比べたらさ。ほら、伊落さんの『触れた場所に髪の毛を生やす』のだってさ。使い道はあると思うよ」


「例えば……な、ほら、あー、ね? ……あ! そう……あー……な!?」


 フォローしてるように見せかけ、その実まったくフォローしていない。それどころかさっきまで舐めてた傷口をえぐりにかかった。


「……村長さん。スキルってどうやって使うんですか?」


「え? 使うイメージをして念じるだけだけど……な、何するの?」


「ふふふ──コイツらの身体中に髪を生やすんですよ!」


「「うそぉん!?」」


 ナチュラルに煽ってきた二人に襲いかかる彩葉。ワチャワチャとのしかかり、二人の口元に触れようと暴れ回る。

 毛むくじゃらにされるのは勘弁。てなわけで傷つけないように笑いながら抵抗。不破は地味に瞬間移動を使いこなし、彩葉の手を回避する。


 サラッと飛鷹が不破を攻撃したことにより幼馴染組二人も敵対。いつの間にか一体一体一(全員敵)のバトルロイヤルとなっていた。


「……元気ですねぇ。ついさっき死にかけてたっていうのに」


「こりゃ、村が騒がしくなりそうだな」


 楽しそうに喧嘩する三人を見て、マナと村長は嬉しそうに笑っていた──。

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