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後攻

「まだ相手には誰が監視員だなんてバレてないだろ! だったら誰が襲われるかなんて分かったもんじゃない! それなら戦闘経験があって例えハンターに襲われても勝利する可能性があるあんたらよりも、一番死ぬ可能性の高い俺を守る事が勝利への一番の道だろ!?」


「言いたい事は分かるけどよぉ、戦闘経験が無いのは自業自得っしょ。お前が選んだ結果でそこに俺達は関係なくね? ルールをちゃんと理解してたら監視員を守るのはマストっしょ。そんぐらい誰でもわかるっしょ、あんだーすたん?」


やたらと横文字を使いたがるネイサンは、煽る様にツギシーヌへ反論する。


今までずっと守られていた癖に今更何を言っているんだと言う思いもあっての言い回しなのだろう。


「あんたは良いよな!? 『ハンター』だもんな!? 通常よりも能力高いから、襲われたって返り討ち出来る可能性高いもんな!? 俺ら一般人は何も出来ずに殺されるのを待つだけなんだよ! せめて役職がバレるまで警備してくれたっていいじゃねぇか!? お前らもそう思うよな!?」


言いながらツギシーヌはこちらへ視線を向けてくる。


ロキと言うこいつと言い、どう言う神経をしていたらこうやって何事も無かったかの様に平気で言葉を掛けてくるのか。


本当に信じられないと思いながら、彼へと冷たい視線を向けるのであった。


ツギシーヌの言う通り、ネイサンは『ハンター』の役職が与えられた。


他にももう一人のハンターは『ディム』に与えられ、残されたエリル、カーラ、テキート、ツギシーヌが今回役職無しの一般人としてこのミッションに参加している。


相手陣営に襲われた場合には、抵抗手段が一切無い最弱の役職だ。


「別に……個人として負けても、ファミリーとして勝てるならその為に協力するべきだとあたしは思うわ」


「殺されるかもしれないんだぞ!? 何をそんな呑気な!!」


「殺されたら殺されただろ。俺達はずっとその役割をこいつらに押し付けてきたんだ。ずっと守れらて来て命を救われ続けてきたんだ。ここでこいつらにその恩を返さなきゃ、俺達に一体何ができるんだよ?」


「お……お前……何偽善者ぶって……」


「ええから黙っとれや。あくまで能力の平均化はミッションの中だけの話や。もっと言えば侵攻フェーズにのみ適用されるルールや。今のあんたと俺の間には、そのルールは適用されてへんねん。つまり、あんたは今このファミリーの中で最弱で、誰にも意見出来る様な立場には無い、何の貢献も出来へん『無能』やねんから、大人しゅうしとくんが身の為やで」


テキートに何かを訴えようとしたのか、軽く右手を伸ばしていたツギシーヌへ、エリルは淡々と事実を述べた。


別に今更彼に恨みは無い。


何度も言うがポイントを手に入れる一番のきっかけとなった人物だから感謝すら向けれる程の存在でもある。


ただ、これ以上彼にこのまま我儘を言わせるのは時間の無駄でしかない。


もうすぐ侵攻フェーズが始まるのだ。


それぞれが相手のハンターからの攻撃に対して準備をしなければならない。


彼に構っている時間等存在しないのだ。


……言い方が悪かった事だけは認める。


今まで自分が無能扱いされていた事を返す様な言い回しになったのは良くない事だ。


それに対して恨みつらみを言うつもりもないし、それを意識した訳でもない。


だが今は自分が憎まれ役になってでもこの場を収めようと発言したのだ。


何か思う事があるのは分かっているが、今はその感情を抑えてくれと、難しい表情を見せているグランに軽く目配せをするエリルであった。


一同の目の前にシステムメッセージが出現する。


『一日目が始まります。先攻チームを決めます。表の場合『ロキファミリー』が、裏の場合『テュールファミリー』が先攻となります』


そのメッセージが消えると共に、やたらと白い空間の上部に設けられたスクリーンに映像が出現する。


少なくとも100インチは有りそうなそのスクリーンに映し出されるのは、机の上で激しく回転するコインだ。


誰が回しているのか、どこから流れている映像なのか。


そんな事はどうでも良い。


今大事なのは、そのコインの回転力が弱まった事でコインの『裏表示』が机の上に向けられたという事実。


つまりロキファミリーである自分達がこの人狼ゲームの『後攻側』となってしまった訳だ。


『ロキファミリーの方達は自室にお入りください』


再び現れたシステムメッセージに従い、一同は今回自分達に宛がわれた無機質な部屋へと入室していく。


「お、おい! 俺を守れよ!?」


性懲りもなく入室する前にツギシーヌが警備員であるグランとリアムに声をかけていた。


だが二人ともそれを相手にする事は無い様だ。


この特殊チーム戦人狼ゲームは、ルールを理解すれば明らかに『先攻』が有利になっている事が分かる。


ハンターの能力は平均化された中で1.5倍化されている。


つまり一般人を狙って侵攻すれば、ほぼ確実にハンター側が勝利を収める事だろう。


そこに警備員が居たとしても優位性は変わらない。


二人を退ける事は困難だが、能力的にはハンター側の方が上なのだから勝てない場合はあったとしてもほぼほぼ負ける事等無い。


つまり高確率でハンターは狙った対象をゲームから追放出来るのだから、先攻側がいきなり二人を脱落させる事でゲーム早々に10対8の状況を作り出せる事が出来る可能性がある。


しかもそれが役職持ちであった場合は、後攻側は役職を失った状態で侵攻を始めなければならないのだ。


百歩譲って負けた存在が一般人だったらまだしも、仮にあちらのハンターが偶然にも一発目でこちらのハンターを指名してしまい、あろう事かその襲撃でこちらのハンターが負けてしまえば、こちらはハンターが一人欠けた状態で侵攻フェーズに入らなければならないという圧倒的不利を強いられる。


幸いにもこちらの役職持ちは皆戦闘組から選ばれた事で、たとえハンターに狙われても返り討ちにできそうな組み合わせが出来上がっている。


一般人である自分達を守るメリットはゲームのルール上あまりない為に、一般人枠の自分達がハンターに狙われてしまえば残念ながらそこで諦めるしかない。


せいぜい降参する前に相手に殺されない事が一般人に出来る事だろう。


『普通』ならば。


エリルは自分に与えられた部屋へと入った。


本当に何もない空間だ。


ただ白い壁が四方を囲み、独房の様なものかと思えばファミリーハウスにある自室よりも遥かに広い。


先程皆が自室に入る時にくぐった筈の扉間の距離を計算すると、明らかに広さがバグっているとしてか思えない程の空間が広がっている。


結局はそれは『ゲームだから』と言えば済んでしまう様な話で、むしろこれだけ部屋が『広い』理由の方が重要だ。


どう見てもこの『自室』とされる何もない空間は、相手側の『ハンター』に攻められた際に『戦う』事を想定して作られた広さとなっている事だろう。


普通の人狼ゲームと違うのは、狙われた側の『抵抗』が出来る事。


指定した人物を強制的に追放するのではなく、あくまで対人戦で『勝った場合』にのみ相手を追放出来る。


狙われた側が『返り討ち』に成功すれば、例えハンターから狩りの対象の対象にされたとしても生き延びる事が出来るのだ。


その為、必ず生き残らなければならない役職持ちの監視員が警備員とタッグを組んでハンターを迎え撃つ。


こちらの主力となるハンター自身が例え狙われたとしても、ハンターの役職を持つ存在は侵攻されている状態でも能力が1.5倍となっている為、ハンター対ハンターが起こればより実力が上の方が勝つ事となるだろう。


但し仮にこちらのハンターが相手のハンターに狙われて返り討ちにした場合、あまりにも強い事から相手陣営にその人物がハンターである事がバレてしまう事にもなりかねない。


シンプルな様でしっかりと心理戦も必要なミッションとなっていたのだ。

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