役職
「だけど戦闘経験には差があるだろ! 俺はお前らと違って命を大事に大事に守ってたんだから戦える訳ない!!」
「そう言うけんども、あんた様はワテらと同じで役職持ちじゃ無いでっしゃろ? それなら守られる優先度は低いぜよ」
相変わらず何処から方言を持ってきているのか分からない言葉を連発するマーロンだが、言ってることはゲームを攻略する為には正しい事だ。
それぞれの役職を説明すると、『警備員』は己のファミリーの中で誰かを指名して、文字通り『警備』につく事が出来る。
これは相手チームの『侵攻フェーズ』の際に、仲間と共に相手ハンターを迎え撃つ事が出来る役職だ。
能力としての強化は存在していないが、この警備員は唯一襲ってきたハンターに対して『二対一』を作り出す事が出来るのである。
今回こちらのファミリーで警備員の役職が与えられた存在は『グラン』と『リアム』。
彼らはグランの立案どおり、それぞれ『監視員』の役職を与えられたジェシカとマーロンを警備する事を明示した。
少しだけルールが複雑なのだが、今回のミッションは実のところ数日間に渡ってミッションが進行する。
その一日の中でそれぞれのチームで順番に侵攻フェーズが訪れ、互いの侵攻フェーズが終了すると共に両ファミリーが集って『協議パート』へと移行する。
両陣営が対面で互いの意見を主張し、相手チームの誰をハンターとして追放するか、如何に自分の陣営のハンターを守るかと言った協議が行われる。
それが終わればミッションの一日が終了。
互いの陣営のどちらかが3名未満になるまでそれを続けるか、ミッションの期限である『19日目』……つまり八日目の協議パートを終えた時点で決着が付かなかった場合に、両陣営の生き残りの人数が多い方の勝利となる。
今回のミッションの面倒な所は今までと違って日を跨いでミッションが継続されると言う所。
そして少なくとも相手陣営に勝利しない限りBPがいつまでも貰えないところにある。
一秒でも早く復活アイテムの為にポイントが欲しいエリルには、なんともじれったい思いをさせられるミッションではあるが、いずれにせよミッション回数を熟さなければアイテムリストが更新されない為、黙って現状を受け入れるしか手段がなかった。
最悪なのはこのミッションで『敗北』した場合だ。
勿論相手陣営の誰かをハンターが倒したり、相手陣営のハンターを追放する事に成功した場合には、前回のミッションと同じようにファミリー全員にポイントが入るのだが、それ自体は微々たるポイントだ。
と言っても一人100ポイントは入るのだが、8日掛けたミッションでたったそれだけでは割に合わない。
このミッションで大きくポイントをゲットする為には、相手チームに『勝利』する事が絶対条件となっている。
勝った側のチームは『一人頭5000P』と言う莫大なポイントが手に入るのだが、負けた側にはそれは『無し』だ。
そしてこのミッションは19日の時点で終了する為、その翌日のミッションはあの『ゲリラボス』が登場するであろう『20日目』になるという。
つまり負けた場合は、ほとんど大きくポイントを獲得できないまま、再びファミリーは強力なボスへと立ち向かわなければならない状況にあるという事だ。
ほぼほぼ今回のミッション敗北が、ファミリーの壊滅へと繋がってしまうミッションとなっている事から、ミッションの勝利は絶対条件となっている。
その為今回のミッションの参加者はほぼほぼ挙手性だったのだが、10人の参加者に対して九人が戦闘の意思である者で固められた。
そもそもの戦闘経験者……と言うよりもファミリーの主戦力であるエリル、グラン、ジェシカ、リアム、ディム、マーロン、ネイサンの七人を揃え、そこに先日エリルと約束を交わした事でグラン達のチームへと合流したカーラとテキートを加えた九人。
ルール上必ず十人を揃えなければならない状況の為に、残りの一名を無理やり非戦闘組から選出する事となり、非戦闘組の満場の一致で唯一『身体強化2』を持っている『ツギシーヌ』が選ばれたのである。
先日のミッションでエリルが全勝した事で手に入った500ポイントを、ちゃっかりと己の強化に使っていたツギシーヌ。
エリルへの暴行でマイナス100になった筈なのだが、それでも身体強化2を手に入れる事が出来るとは、一体どこにそのポイントを貯めていたのやら。
表向きは非戦闘組に属しているが、なんだかんだライアンに付きまとって彼自身もポイントを秘密裏に入手していた事がそこから判明した。
よって少しでも勝率を上げるためにと、非戦闘組から生贄の如く選出された人物が彼だった訳だ。
そんな形で無理やり参加させられた彼は運悪く役職無しと言う状況で、ただただハンターに襲われるのを待つだけの一般人となってしまった事で、現状を嘆いて恐怖し、自分を守れと警備員役職の者へ訴えている状況と言う訳だ。
しかしグランが守ると発案したこの『監視員』は、相手のハンターの正体を突き止める為に非常に重要な役割を担う事となる。
監視員が出来る事は文字通り相手陣営の『監視』。
と言っても相手側の行動を全て監視出来ると言ったものでは無く、相手陣営の中から『一人』を選ぶ事で、その人物がもつ『異能』を見破る事が出来るのだ。
今回のミッション。
相手の異能を知る事は相手陣営のハンターを突き止める為の大きな情報源となる。
例えばこちらの陣営が相手ハンターに襲われて敗北したとする。
その際に敗北者はミッションから追放されるのだが、現場状況からハンターの痕跡を探る事が出来るのだ。
勿論一日毎にミッションが終了した際、参加者達はファミリーハウスへ戻る為に、襲われた人物が生きてさえいれば結局そこで情報共有が出来るため、その痕跡と言うのはあまり意味を為していないのだが、それは『生き残っていた場合』だ。
このミッションは相手陣営の『生死を問わない』と言うルールが存在してる。
相手のハンターに襲われた際、その襲われた参加者が『死んでしまった』場合には、情報の共有ができなくなる。
そう言った場合には、殺された人物の『死因』から相手陣営のハンターを予測していく事となる。
例えば死因が『刺殺』であれば、『槍』を持つエリルが犯人候補だったり、刺す事が出来る『異能』を持った存在が犯人候補として挙げられるだろう。
そう言う場合にこの『監視員』の能力で相手の異能を把握する事が重要となるのである。
相手陣営のハンターはこちらの陣営へ襲い掛かってくる際に、フード付きのローブを身に纏う事で正体が隠される。
その為に例え襲われた人物が敗北して退場こそしたものの、生き残ってさえいれば情報共有自体は出来る。
どんな戦いのスタイルだったのか。
どんな異能を使っていたのか。
そしてそれはヒントとなり、より監視員からの情報に重要性が増す様になるのだ。
エリルは先日戦ったフレイファミリーの者達の顔を思い出し、あいつらの様に自らの異能を暴露する様な連中であれば、きっとそいつらの相手陣営はハンター特定は楽勝だな等と考えてしまった。
兎に角このミッションでは相手の情報を入手する事が、ハンター特定への大事な要素。
その為に監視員と言う重要な役職を持つ存在は必ず生き残らせなければならない為、警備員は率先して監視員を守る様に立ち回る事が必須になるだろう。




