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人狼ゲーム

『人狼ゲーム』


そう言う名のゲームは現実の世界にも存在した。


人狼と言う役職を得た人物が、その日の夜に他のプレイヤーを指定して退場させる。


そしてその人狼は村人に成りすまして他のプレイヤーを欺き、一緒に人狼へ怯える振りをする。


村人側は、様々な状況から人狼を推察して特定し、村から追い出す事で人狼から身を守る手段をとる。


複数人参加しているプレイヤーの中で、村人と人狼の人数が同人数になれば人狼側の勝ち、村人側は見事人狼を特定して人狼を全て追放する事が出来たら勝利となる。


と言うシンプルなルールから始まったその人狼ゲームだが、後天的に様々な役職が追加される事でルールは複雑化し、人狼側の有利になる時もあれば村人側が有利になる時もある。


はたまた第三勢力が飛び出して人狼側も村人側もどちらも出し抜いてその第三勢力が勝利する場合もある。


端折った説明となるが、そう言ったゲームやそれをモチーフにして作られたゲームを人狼ゲーム、人狼テイスト等と呼んだりする。


何故いきなり現世にあるそのゲームの話をしだしたかと言えば、今正にその『人狼テイスト』なデスゲームが開催されているからだ。


それが12日目のミッション。


二人の『ハンター』と呼ばれる狩り人が、一般人を狙って攻撃を仕掛ける。


一日に一度、このハンターは対象を選出して攻撃を仕掛ける事ができ、見事対象を倒す事が出来ればその対象はゲームから離脱。


この『倒す』と言う意味合いに、勿論『生死』は含まれない。


通常の人狼ゲームと違うのは、この一般人を襲う『ハンター』に対して、一般人側も『反撃』が出来るところにある。


襲われたからと言って強制排除とはならず、ハンターに抵抗できるのであれば返り討ちにしても構わないシステムが組まれている。


ただし、その状況ではハンター側よりも一般人側の方が強かった場合に、ゲームとして成立しない可能性がある。


その為の対策として『今回に限り』、全参加者の能力が『一律化』されると言う制限がルールに加わった。


つまりエリルやグランが身体強化3を持っている現状においても、今回は身体強化1を所持している状態と変わらない能力に設定されるという事。


逆に言えば、身体強化を持っていなかった存在も身体強化1を持っている状態に上書きされるのだ。


ある意味でこれは『神が作りそうなルール』だとエリルは思った。


どこがそう思ったのかと言えば、こうやって死に物狂いで身体強化3等を手に入れた現状を嘲笑うかの様に、それを『意味のないもの』とする様なミッションとなっているからだ。


能力の一律化。


表向きには全員が平均的な能力となって参加者毎の偏りがなくなり、より公平性が保たれている様に見える。


ただこれは『デスゲーム』だ。


能力強化は個人の財産で有り、その人物が今後生き残る為に絶対に必要な産物なのだ。


それを皆無とするこの状況は両手を挙げて受け入れる物ではなかった。


だが唯一、『エリル』にとっては『別の不満』が沸いていた。


何故こう言ったルールを『もっと早く』適用しなかったのかと言うもの。


本来であれば今回だけとなるが、エリルも能力を『奪われている側』だ。


しかしエリルがそう思った理由は、やはり数日前の自分の立場に原因があった。


今回の様に能力が一律化され、プレイヤー同士の本当の実力での戦いが起こった場合には、どちらかと言えばエリルの様な武術家にとっては最大のチャンスへと変わるからだ。


ポイントを手に入れる事の出来なかったエリルは、こう言ったルールの元で戦った場合は身体強化等を得ていなくても勝てる可能性が非常に高い。


そしてそれはエリルがポイントをゲットできる可能性を大きく引き上げ、早い段階で彼の異能である『100倍』が発動した事になっただろう。


いつまでもたられば発言となってしまうが、それをシアンとケヴィンが生きている時代に成し遂げさえすればきっと……。


エリルは幾度も繰り返してきたその思考を、首を振る事で押しとどめる。


今はそれに対して悩んでる時では無い。


現状のルールで以下にして『ファミリー』が生き残るかを考えるべきである。


先程も言ったが、参加者は皆能力が一律化される。


……しかし、その中でこの『ハンター』こそが特例の状態にある。


ハンターは他の参加者よりも能力的な『強化』が施されているのだ。


ルールとしては約『1.5倍』程度に、一般人よりも能力が高く設定されているらしい。


このルールが適用されている影響で、いくらハンターに対して一般人が反撃できるからと言っても、ほぼほぼ一般人側に勝ち目はなく一方的に蹂躙される展開が想像出来る。


「……今回は俺がジェシカの『警備』につく。リアムはマーロンの『警備』につく形が理想だと思うが……」


「初日の行動は重要ですからね。まずは『監視員』を生き残らせる事が先決の為、その方法で行きましょう」


グランの発言にディムが賛成の意を示す。


会話の内容としては、それぞれの『役職持ち』が今回どの様に動くのかという作戦会議である。


人狼ゲームテイストである為、『ハンター』意外にも二つの役職が存在している。


それが『警備員』と『監視員』の二つだ。


片方の『ファミリー』に参加者が『10人』存在し、その内の二人が『相手のファミリー』に襲撃をかける役職の『ハンター』として存在し、相手のハンターから味方を守る役目である『警備員』も二人存在する。


そして相手のファミリーの参加者の行動を監視する為の『監視員』も二人存在し、その他残された『四人』がなんの役職も持たない『一般人枠』だ。


その計10人を『チーム』として、相手ファミリーを全滅させる事が勝利の条件となっている。


そう、この人狼テイストのこのゲームが、従来の人狼ゲームと違う唯一の点として、本来では成り立たない筈の『チーム戦』のルールが適用されていると言う事。


まさに『代理戦争』の代名詞の様な、チーム同士で相手を偵察、攻撃、防衛しながら相手チームを壊滅させる事でチームの勝利となるルールが適用されているのだ。


「ふざけるな! 俺を守れよ俺を! 俺はこの中で一番『弱い』んだぞ!? ハンターに襲われたら真っ先に死ぬじゃねぇか!」


そう吠えるのは、今回唯一と言える『非戦闘組』からの参加者である『ツギシーヌ』だ。


先日エリルへ暴行を加えたメンツの中にいた代表格の様な存在でもある。


「何言っておるんだ。ルール聞いてただろうに、俺らは皆能力が平均化されてるから誰が弱いだの強いだのはなかろうて」


そんなツギシーヌに釘を指すように言葉を連ねたリアム。


事実しか言っていないのだが、それでも吠えるのはやはり非戦闘組『らしい』と言うべきか。

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