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手のひら返し

その言葉に、カーラとテキートは立ち止まり、振り返って来る。


「その気があったら、次のミッションの時に言うて来い。俺があんたらを繋げたるから……覚悟だけ決めとき」


言うと二人は少しだけ間を開けた後、ゆっくりと頷きながら部屋から出て行った。


「優しいねぇ、君を無碍に扱った奴らなのに仏みたいな対応するじゃないかぁ」


「あんたにだけは言われたくあらへんな」


「まぁまぁ! 過去の事は水に流してさぁ! それに今までは君がポイントを手に入れなかった事が問題だった訳だしぃ? 確かに強い発言はぶつけてたけどぉ、直接的な被害は向けなかったんだからいいじゃないかぁ」


無碍に扱うと言えばその代表格こそがロキだ。


彼にとってのお気に入り……いや、『価値』のあるシアン達が防波堤になってくれたお陰で、確かに他の者の様に彼から暴力的な行為は受ける事は無かったが、それが無かったら自分も同様の扱いを受けた可能性だってある。


それに口汚く罵られたのは正に昨日の事だ。


寧ろ時間から言えば丸一日経っていない出来事だ。


それを水に流せだのよく言えたものだ。


「あんたが俺の異能の効果を早く教えてくれよったらいくらでも活躍できた筈や。寧ろ今だってシアンもケヴィンも生き残ってたかもしれへん。自分で主神言うんやったらそう言うサポートもするべきやあらへんのか」


「仕方ないじゃないかぁ。何度も言うけど僕等だって『ルール』には逆らえないんだからさぁ。君達には自分で異能の効果を発見してもらわなきゃダメなんだよぉ」


こいつは二言目にはそうやって『ルール』を持ち出して来るが、の割にはいつもギリギリルールの外側を突く様な発言や行動を繰り返し、こちらが有利に動ける様なアドバイスをしていた節がある。


所謂『ずる賢い』と言えるこいつの行動力を持ってすれば、どうにかしてでもこの異能についてヒントを与える事は出来ただろう。


例えば『殴られでもしたら分かるんじゃないか』とか、こいつなら言いそうな事であった。


シアン達がペナルティを利用してポイントの譲渡を行おうとした時は、悪意が無かった為一切反応せずにポイントの意向を諦めてしまったが、異能に対するヒントとしてそう言う言葉を連ねさえすれば、ワザと非戦闘組を挑発して殴られると言った行為だって出来たかもしれない。


……全て今更では有るが、それに気付けなかった自分にも悔しい思いがある故に、ロキに文句をぶつけていると言う部分もある。


「でもぉ、結果的に君はポイントゲットしてさぁ、身体強化も手に入れて今回は『フレイ』のファミリーを全員ぶち抜いてくれたもんねぇ! 本当に見事だったよぉ。条件が同じだったら君はとても強いって事も分かったし、これからはグラン達と組んでどんどん活躍してよね! 君の異能を考えればもの凄いポイントが入った筈でしょぉ? どんどん自分を強化して無敵の存在になっちゃいなよぉ!」


「……言われんでもそうするつもりや」


エリルには目的がある。


ロキに鼓舞されなくても、やるべき事はやり尽くす腹積もりである。


「いいよいいよぉ! その意気だねぇ!」


「で、今回は何しに来たんや。わざわざあいつら追っ払ってまで俺一人にしたっちゅう事は、俺に用があるって事やろ? まさか、あんたみたいなアホ神がなんの意味も無しにほんまに俺を褒めに来ただけな訳ちゃうやろ」


「エリルはあったまいいねぇ! まるでシアンみたいじゃないかぁ!」


……本当にこいつが彼らの名前を出す度に殴りつけそうになるが、それは『まだ』我慢だ。


いずれにせよ、彼は目的があってここに来たのは事実らしい。


「実は今回はお願いがあって来たんだよねぇ。もう君の事だから、今回の僕らのこのゲームが神同士の遊びの中で起こっている事で、君達が望んでいるミッションは他の神から仕掛けられてる物だってことは気づいてるでしょぉ?」


確かに、以前の質問の答えや会話の流れからもそうである事は重々承知している。


神の『遊び』とあっけらかんと言い放ってしまうこいつの神経は理解できないが。


「僕もさぁ、他の神の『駒』を相手取る際に、君達が戦ってきた魔物達の様に色々と『ポイント』を使って配置していかなきゃいけないんだよねぇ。このポイントってのは毎回相手取る神達のレベルに合わせられてミッション前に付与されるんだけどさぁ、あ、前にそれっぽい事は言ったよね? 君達は生存人数が多いから他のファミリーに課せられている魔物よりも遥かに多くて遥かに強いって」


確かにそれは聞いた。


人数に合わせられて魔物の平均値が上がっているから、自分達は他のファミリーよりも多くの敵と戦い、そして多くのポイントを手に入れていると。


そして今のロキから得られた情報を繋ぎ合わせれば、先日対峙したキングドラゴンも、そのミッションで勝ち合った神側がポイント消費して召喚した物なのだと言う事も理解出来た。


「その付与されるポイントを上手い事使って配置する魔物を選んだり、ミッション内容を選択したりしてるんだけどぉ、いつも上手に『駒』達が連携すれば全員生き残れる程度のポイントしか与えられないんだよねぇ。まぁ逆に言えば下手すれば全滅してしまう程度には魔物を配置する事が出来るんだけどぉ。あ、今回の対人戦はそう言うポイントとかは一切関係ないから気にしないでね?」


何を気にすると言うのだ。


「僕がさぁ、初日にケヴィンから500ポイント奪った事あったじゃん? あれさぁ、実のところ相手に仕掛けるミッションに対して魔物を配置するポイントにも使えるんだよねぇ」


成程……だから三日目にしてケヴィンにポイントを返した時、500ポイント全て返した訳じゃなかったのか。


そして、その内容を言った事によって彼が何を頼まんとしてきているのかが分かって来た。


「エリルはその異能によって莫大なポイントを手に入れられるじゃん? だからさぁ、僕にちょーっとで良いからポイントを――」


「誰がやるかドアホ」


「もー! ひどいよエリルぅ。まだ全部言って無いじゃないかぁ」


「聞かへんでも分かるやろが。何で俺があんたの為にポイントを分け与えなあかんねん」


つまり、一回のミッションで誰とも比べ物にならないポイントを入手できるエリルにポイントを譲渡してもらい、今後の他のファミリーに与えるミッションを優位にしようとしていると言う事だろう。


彼らは自分達を使って代理戦争をしている。


神格ランキングを決める為に他の神達と毎日競い合っている。


だからこそ難易度の高いミッションを与える為にもポイントを大量に必要としていると言う事なのだろう」


「なぁんでさぁ。そんなに沢山ポイント有るんだからちょっとぐらいいいじゃんかぁ」


身体をクネクネさせながらおねだりす様な発言をするロキ。


3メートルもある大男がそんな動きをした所で気持ち悪い限りだ。


「俺になんのメリットがあんねん。それにあんたにポイントを与えたら、他のファミリーの奴らが苦しむだけやろ。どんな方法を使ったかは知らへんが、あんたの様に卑怯な手を使って大量のポイントを入手した奴が、昨日のキングドラゴンを配置したんやろ? あんたは俺に他のファミリーへ同じ事をする手助けをせぇって言ってるんやで? する訳ないやろ」


彼に手を貸す事はつまり、他のファミリーへ被害を齎す事へ間接的に関与する事に直結する。


自分達が優位になる為に容赦こそはしないが、だからと言って今日の様に自ら相手を殺す様な事はしない。


他のファミリーの者達にも、自分にとってのシアンやケヴィンの様な存在が居るかもしれないからだ。


「おっとぉ、驚いたなぁ。君は今日一人で相手選手を全滅させて、相手に一切のポイントを与えないと言う行為を取ったから他のファミリーの事なんてどうでも良いと考えているタイプかと思ってたんだけどなぁ。今まではああ言うタイプの試合内容では、いつも互いのファミリーが協力して互いに高ポイントを稼ごうとずる賢い行動をする奴らが居たんだけどねぇ。どうせ将来的には『殺し合い』する事になるんだから意味が無いのにさぁ」


「俺が今回容赦せぇへんかったんは俺らのファミリーの為を思うて行動しただけや。相手のファミリーには得をさせへんつもりもあったけども命を奪うつもりはさらさらあらへんねん。そこがあんた等との考え方のちがいやわ」


中々に聞き捨てならない言葉も飛び出して来たが、エリルは自分の主張を貫き通す。

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