適当がすぎる
少しばかり落胆したのも事実だ。
だが全てが終わった訳では無い。
まだ可能性は確実に残っているだろう。
だが、すぐにシアン達を生き返らせる事が出来ると思っていた反動で少しだけ凹んでいた。
何れにせよこの空欄表示されたアイテムを入手できるようになるまで、自分は生き残る必要がある。
これからも魔物はどんどん強くなっていく可能性がある為に、今直ぐに復活アイテムがゲット出来ないのであれば己を強くする為の品を入手する事が優先されるだろう。
そう思考を切り替えた際、エリルがまず選んだのは最優先事項となった『身体強化3』を入手した。
グラン達から聞いていた通り、身体強化3の場所に次のツリーが発生し、身体強化4が表示され必要ポイントが50000Pとなっていた。
普通であればそのままこの身体強化4を入手すべきであろう。
単純に強く成る為にはそれが手っ取り早い選択肢である。
ただ、エリルは現在復活アイテムが手に入らない状況と言う事であれば、一つ試しておかなければならない物が有る事を思い出す。
先程エリクサーを購入した時に現れた空欄が、表示バグで無い事を確かめる方法。
グングニルを入手した際にツリー表示された二つの???の項目だ。
先程どちらかを試しに交換する事を断念し、復活アイテムの為にも50000Pを残しておいたのだが、今の状況であればこの???の何方かを交換する事でバグ表示では無い事が証明出来る状況に有る。
このまま希望を持ち続ける為にも、可笑しな表示となってしまっている項目が正しいものであると証明するべきだ。
エリルはそう判断を下し、早速二つ存在する???の片方の交換を行う。
身体強化3を手に入れた事で更に思考がクリアになったと言うべきか、今後の対応に関しても頭の中での構想が早くなった様な気がした。
50000Pを消費して交換した品はある意味でエリルの予想通りであった。
システムボードに表示された文字である『グングニルの強化を入手しました』と言う文言によって、先程手に入れたばかりのグングニルが強化された事を理解した。
これ見よがしに一度光り輝いたグングニルだが、光が治まった所で姿形は何も変わっていない。
重さの変化も無ければ、手に馴染む感覚もそのままだ。
元々の威力を知らない為に本当に強化されたかどうかも分からないが、恐らく何かしらの効果は有ったのだろうと判断する。
そして再び商品一覧に視線を向けると、二つあった???の内先程選択した方は間違いなく消えたのだが、やはりもう一つの???は残ったままであった。
片方が武器強化だった場合、もう片方は一体何のアイテムなのだろうか。
現状確認するにはもう一度50000Pを消費する必要が有るのだが、流石に今は持ち合わせが無かった。
ただ、エリルにとっては事態が好転したと言っても良い。
二つ存在した???はバグ表示では無く、両方交換アイテムとして存在している事が確定した為、エリクサーのツリーとなった『空白表示』も、それが表示バグでは無い事が証明された。
何よりグングニルの強化の際に選択していた方の???。
なんとそちらには更にツリーが発生し、そのツリーがこれまた『空白表示』と化したのだ。
恐らくだが次は500000Pで更にグングニルの強化が施される様な品であり、現状は手に入れられる条件を満たしていないと言う事になる。
そもそも500000Pが通常入手できるかどうかは置いておいて、この空白がグングニルの更なる強化を見込めるアイテムと言う可能性があるのならば、やはりエリクサーのツリーで空白となった項目はそれよりも上位となるアイテムである可能性が高いと言う事。
それこそがエリルの知りたかった情報であり、エリルが求めているものである可能性が高まったと言う事。
入手条件がいつになるかは分からないが、猶更死ぬことは出来ないなとエリルは考え、次のミッション迄に何か出来る事は無いかと模索し始めた時であった。
『彼等』がやって来たのは。
「自分の為にポイント使わんかい、俺はなんも要らへん言うとるやろ」
「でも……この500ポイントはあんたのお陰で手に入ったもんだ……それに俺は以前あんたに食事券も恵んで貰った。それどころかあんたを口汚く罵った事だってあった……どんな形であれ何かあんたにお返ししなくちゃ……気が気じゃないんだよ……」
エリルの部屋に、『二人』の来訪者が現れたのだ。
ミッション外で顔を合わせる事が出来る存在と言えば、当たり前に『ファミリー』のメンバーに限定されるのだが、やって来たのはグランでもジェシカでも、ディム達でも無く『非戦闘組』の者達であった。
先日エリルへ暴行を行った者達でも無く、もはや台詞で確定しているのだが一人は『スパイク』が死んだ際にやたらと絡んで来ていた人物だ。
ケヴィンへ暴行を加えようとした所をシアンへ止められ、正当防衛で10ポイントを失ってしまったあの男。
「てかあんた何て名前やねん。ええ加減自己紹介したらどうや?」
「『テキート』だっての! 『テキート・マッソー』! 自己紹介は初日にやっただろう!?」
確かに……とエリルは名前を聞いてやっとその人物の名前を思い出した。
思い返せば間違いなくジェシカの後に彼が自己紹介を続けていた。
だが何故か『適当過ぎる』名前だなと言う感想が先行してしまい、エリルはその瞬間に彼の名前を忘れてしまっていたのである。
「せやったか? 『カーラ』は覚えてたか?」
言いながら、エリルは誤魔化す様に彼と共にエリルの部屋へと赴いた女性へ視線を向ける。
『カーラ・エヴリン』は両肘を抱える様に腕を組みながら、エリルの質問に淡々と答えた。
「……忘れたわ」
「な! そんなバカな!」
「と言う事で解散や。お疲れさん」
言いながら手をヒラヒラとさせ、部屋から出ていけと言うジェスチャーを取るが、二人は一向に出て行こうとしない。
「なんやねん。俺は今忙しいねんからもう帰ってくれへんか?」
「いやだから! あんたのお陰で手に入れたこのポイントであんたに必要なものを好感して渡すから、それを指示してくれって言ってるんだよ!」
「せやから要らへんいうてるやろが!」
ずっとこの調子なのだ。
彼らが部屋に入って来てから数分間、何故か頑なに彼等は先程のミッションで手に入れたポイントをこちらに渡そうとしてくる。
ライアンが居なくなった中で、ある意味で非戦闘組の代表格の様になっていたこの二人が、一体どういった風の吹きまわしでその様な考えに至ったのだろうか。




