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勘違い

ボクシング鑑賞が日課と言った後に『レッドフィールド』の名を出したのであれば、こちらもその対象は日本ボクシング最高傑作と名高い『ナオヤ・レッドフィールド』の事を差していると思われる。


だがやはり意味不明だ。


彼の試合を全部見ている事が、現状の何に繋がるのだろうか。


まさか全試合を見ているから、それを見ている自分も強い等と考えたりするのだろうか。


確かにそう言う考えを持つ人物がいないとも限らない。


強い人の動画を見れば自分が強くなった様な気がしたり、歌の上手い人の歌を聞けば、自分も上手くなった様な気分になったりするものだ。


だが当たり前にそれは『勘違い』であり、どちらかと言えば妄想の域に近い。


そんなバカみたいな考え方であってくれるなよと思いながら、男へ再び視線を向けるエリル。


「俺ぁレッドフィールドの試合からボクシングの技術を学んでんだぁ。そんで俺の異能が『パンチ』ってんだからそれはつまり俺が最強ってこったろうよ」


……そんなバカみたいな考えを持った奴だった事が判明した事で、エリルは肩をガックリと落とす。


彼が日頃からボクシングに精を出していて、世界屈指のトップレベルと最前線で戦っており、そんな状況でナオヤの動きから学ぶ事が多いと言う意味で言っているのなら理解出来るが、彼の体型からそれは有り得ない事が理解できるうえ、何故か突然『シュッシュッ』と機関車の音真似でも始めたかと思う様な言葉を吐きながら腕を振り回した事で、きっとそれが彼なりの『シャドー』なのだろうと想像するが、決して褒められる技術では無い事から、やはり妄想の域を出ていない事が確定する。


何故こうも連続で日本屈指のトップアスリートの名を出してくるのか。


異能暴露やスピード自慢と同じで、それが脅しになると思っているからこその行動なのだろうか。


聊かエリルにとっては謎過ぎる。


……確かにこの程度の相手であるならば、非戦闘組が勘違いしてしまうのも無理ないのかもしれない。


ただ、あくまで彼等は今日この日まで生き延びてきた者達だ。


少なくとも……いや、ほぼ確実に身体強化2と異能強化2を取得するまでには辿り着いている筈だ。


だとすればやはり非戦闘組では手も足も出ずに負けるのが落ちだろう。


敢えて現実を見せつける為にそう言う手段を取るのも構わないかもしれないが、非戦闘組の一人が口にした様にあくまで多数決で出場者を決めるルールがある以上、彼らをこの場に出すのは難しいだろう。


そして出した所で相手に一方的に負けて無駄に相手側のポイント加算になってしまう。


今対峙している『フレイ』と言う神が司るファミリー達も、自分達と同じ様にラグナロクに巻き込まれた存在で同情する気持ちこそあるが、正直な気持ちを言えば相手には悪いがこの戦いで彼等には一ポイントも与えるつもりはエリルには無かった。


最初に互いに談合して5勝4敗と言う形を作れば、両陣営に400から500ポイントが流れる様に出来ると言った。


互いの事を思うのであれば、そうやって手を取り合って得する形を作る事が一番だろう。


だがあくまで……自分達は同じ『被害者同士』ではあるのだが、それでも今は『競争相手』なのだ。


今回は勝敗の判断の一つに『戦闘不能』が用いられている事から、互いに殺し合いに発展する事は無いのだが、今後もずっとそれが適用されるとは考えられない。


寧ろ『デスゲーム』を謳っているのだから、どちらかと言えばメインはそう言った形が主要となる可能性だってある。


つまり今は交流を図って手を組む事が出来たとしても、何れは互いが己の命を守る為に殺し合わなければならない可能性だってある。


そうなった時に、彼等へ仮に400ポイントを与えていた場合、それが原因でこちらの敗北に繋がる可能性だってないとは言えない。


だからこそ、先を見越して行動するのであれば、ここで彼らにポイントを渡す訳には行かないのだ。


エリルが目指すのはこのまま一人で全機撃墜。


勝ち抜き戦と言うルールである事を利用して、エリルだけで相手の五人を全員倒すつもりだ。


もちろんグラン達に期待してない訳でも無く、むしろ言った通りグランに任せた方がより確実に相手を倒せるだろう。


だがエリルは今、一ポイントでも多くポイントが欲しい。


既に条件は満たしているが、それでも少しでも多くのポイントを手に入れて一秒でも早くシアン達の復活に近づきたいのだ。


ポイント交換の対象である商品のラインナップに存在してる『???』と言うアイテム。


あれが仮に復活系アイテムじゃなかった時の事を考えて、そこからツリー状に展開される可能性を踏まえてより多くのポイントを手に入れようとエリルは考えている。


既に相手チームを三人連続で倒し、300ポイントがこちらのファミリーに入る事が確定している。


しかしそれとは別に、カーラが口にした『撃退ボーナス』も今回に限っては存在しているのだ。


5対5の戦いに参加して、見事に相手を退けた本人にはプラスで50ポイントが付与されるルール。


エリルが5人全員倒せば、一人だけ合計750ポイント手に入る仕組みになっている。


今まで手に入れたポイント数からすれば、この撃退ボーナスは少し低めに設定されている様に感じるが、これがエリルに関しては話が変わって来る。


エリルの異能である『100倍』は、取得バトルポイントが100倍化される物。


1ポイント入っただけで100ポイントになるエリルからすれば、たかが一人頭50ポイントだとしても莫大なポイントになるのだ。


今回750ポイント手に入れれば、それだけで75000ポイントとなる。


『???』の項目が復活アイテムじゃなかったとして、例えばエリクサーを買った後に強化系の商品の様に次のツリーが出現する事が有れば、それこそが復活アイテムだったとした場合に予想できるポイントは『50000ポイント』になるだろう。


強化系や回復系のアイテムがワンランク上がる毎に必要ポイントが10倍になっている事を鑑みての計算だ。


エリルはそうであった場合においても購入出来る様に、より多くのポイントを求めていると言う状況なのだ。


その為、目の前でナオヤとの関係性が皆無だと判明している彼、現役ボクサーとは程遠く、恐らくただテレビの前で酒を飲みながらボクシングを見ているだけのこの男に、負けてやるつもり等サラサラない。


今回はそれを分からせる為に敢えて相手の土俵に乗ってやろう。


先程の二代目異能暴露に関してはそれを避けたが、こう言う勘違い野郎には目を覚まさせてやる為にお灸を据えてやる事も大事だ。


毎度の様にカウントが0になったタイミングで踏み込んできた相手に合わせてこちらも前進する。


身体強化を入手していなければ、恐らくそう言った動きは出来ないだろうなと思える程度には、男は素早いステップを踏んでいるのだが所詮こいつこそ『素人』だ。


何故そう言う『らしい』動きをしているにも関わらず、ジャブも打たずにただ大ぶりの右フックを繰り出してくるのか理解出来ないが、エリルはそのまま相手の右脇側に体勢を低くしながら踏み込み、そのまま顔面にカウンター気味に右手を打ち込んだ。


スピード自慢野郎とは別の形で首が回転し、90°近く捻った所でそのまま気を失う勘違いパンチマン。


もはやここまで来るとギャグか何かを疑ってしまう程に手応えが無い。


だが事実として、自分が今日この日もポイントを全く取得出来ていなかったら、この様な立ち回り等出来ていなかっただろうなとエリルは考えた。


……あまり調子に乗るべきではないと、自分の中で気持ちを引き締めるのであった。

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