表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/251

取得

「くそ……」


再びエリルの思考は、二人が死んだ事実によって染め上げられる。


もう随分長い間悩んで居る様に見えるが、実際に二人はつい先ほど死んだばかりなのだ。


特にエリルに関しては最も近くで二人の死を目撃している。


死を看取る事さえしてしまっているのだ。


「くそ……くそっ!!」


エリルは地面を強く殴打する。


何度も、何度も、拳が壊れる事等お構いなしに地面を叩く。


何故自分はあの場に居た、何故自分だけが生き残った、何故自分は力が発揮できない、何故自分はこれほどまで無能なのだ。


永遠に自分への『何故』が飛び出して来る事で、その上でそれぞれの答えなんて出る筈も無くただ二人の死を悔やむ事しか出来なかった。


「なんやねん……何にしてんねん俺は……」


殴られた痛みよりも激しい胸の痛みにもがき苦しみながらも、シアン達を失ってしまった感情と自分の不甲斐なさが相まって、ぶつけ様の無いやるせなさが自分へと襲い掛かって来る。


ああしておけば良かった、こうすれば良かった。


そんな意味の無い反省と後悔を幾ら並べ立てても現実は変わらない。


どうすれば良いのだ。


どうすれば自分は彼等の仇を取れる?


異能も全く効果を発揮しないこの状況で、培ってきた無形影棍流の技術も全く役に立たないこの世界で、自分が出来る事は何だ?


「ふざけんなや……終わりたないねんこんな所で……俺は……終わったらあかんねん……」


彼らへ感じている恩義に報いる為にも、シアンが一方的では有るがこちらへ託した思いを成就させる為にも……自分は強く成らなければならない。


だがその方法が全く持って分からない。


意識で変えられるのなら、とっくに強くなって居る筈だ。


とっくに結果を出している筈だ。


終われない、こんな所で終わりたくないのに、完全に積んでしまっている状況。


これからどんどん魔物も強くなっていく上、二強だった二人を失ってしまった今、自分達に与えられるミッションの難易度はどんどん高くなって行くことだろう。


泣き言を言っている場合では無いのに、どうして良いのか何の想像もつかない。


「俺を……こんな所で終わらせなや……あいつらに帰さなあかんねん……俺が与えられた物……託された物……全部ちゃんと守り切らなあかんねん。でも無理やねん……なんやねんこれは……どうしたらええんや……俺を……俺をこんなしょうもない男のままで終わらすなやボケ!!」


床を更に強く叩きつけるエリル。


少しばかり振動が発生する程に強く殴った事により、拳に鈍い痛みが走った。


手首か何か痛めてしまったか。


だがいずれにせよこのファミリーハウスに居れば数分後には完治だ。


そう言う魔法を掛けられているのだから、ここにいれば正直いくら怪我しても問題ない。


既にツギシーヌとか言う奴らに殴られた痛みも全く持って感じない程に消え去っている。


この効果が……ほんの少しでも彼等に与えられていれば……シアンもケヴィンも死ななかったのにとエリルは思った。


「……ほんまイラつくわ」


エリルの前へシステムメッセージが現れる。


そこに掛かれていた文章は警告で、簡単に言えば『自傷行為』を禁止する為の文言であった。


自傷行為によってポイントを十ポイント取り上げると。


それを見た時に、ツギシーヌが身体強化を用いて殴りつけた事で、彼が『100ポイント』ものポイント消費をした挙句、自分にはそれに伴って10ポイントが付与されたとメッセージが浮かび上がっていた事を思い出す。


これでによってそのツギシーヌから受けた暴力によって取得した10ポイントは無くなってしまったなと苦笑しながら、エリルは念の為後幾らポイントが残っているのかを確認しようと、システムボードを開いたのだった。


「……は? ……なんやこれ……?」


エリルはゴクリと生唾を飲み込んでしまう。


そう言う反応をせざるを得ない程、エリルの目前にはとんでもない光景が記されていたからだ。



エリル・エトワール

17歳 男性

血液型 AB

技能 無形影棍流(槍術)

異能 100倍

BP 2990



何度も何度も繰り返し見た自分の簡易的すぎるステータス表示。


ミッション終了後、ポイント取得ランキングに一切乗らない事で分かっては居たのだが、それでも何か奇跡的な、バグ的な何かでポイントが入っていないかと何度も『BP』の部分をエリルは確認した事があった。


何かの間違いだろうと思いエリルはシステムボードを一度消して、再びシステムボードを表示させる。


しかし表示されている文言は全く一緒だ。


自分がポイントを求めすぎて、錯覚を起こしているのではないかと思える程に、何度も何度もポイントを見直すが、どこからどう見ても『2990』の文字が表示されている。


「どう……言う事や……?」


震える手でバトルポイントをタッチするエリル。


そしてシステムボードから別枠のウィンドウが表示され、初日に見たBP交換アイテム一覧表が表示される。


今迄はポイントを持っていない事から交換する事が出来ない事を意味する『暗転』状態から、BPのポイント表記と同じ様に青白く光る商品のラインナップ。


エリルはそのまま一番最初に表示されている『食事券』をタッチする。


ステータス表示の表記が2989となり、間違いなく食事券が交換できた事がシステムメッセージに現れる。


「嘘……やろ?」


エリルは直ぐに商品一覧をスライドさせた。


エリルの目に飛び込んできたのは、何度欲しいと願ったか分からない交換商品の一つ。


『身体強化』


エリルは他の商品と同じく青白く光っているその表示をタップした。


『身体強化を取得しました』


それと同時に、システムボードの商品から身体強化が消え、ステータス表示の残ポイントが2939となる。


間違いなく身体強化の必要ポイントである50ポイントを消費した事で起こった現象だ。


エリルは自分の体の変化があまり感じられず、本当に身体強化が手に入ったかどうか疑心暗鬼になる。


そもそもBPの表示さえ何かのバグだと思っているエリルは、全く持って実感が湧いてないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ