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適応力

相変わらずのシアンの適応力の高さにも驚かされるが、それはもはや今に始まった事では無い。


何方にせよ、ケヴィンやグランがヤバいと称する程のこのキングドラゴンを相手に生き残る為には、この二人の果てしないポテンシャルの高さだけが希望となる。


自分は役に立たないかもしれない。


何れかの強化の一つも手に入れていない自分は、ここに存在していても邪魔なのかもしれない。


……だが、どうせなら肉壁にでもなってやるぐらいの気持ちでこの場に留まった。


ジェシカから預かったレイピアを強く握りしめ、決してそれを振り落とさない様にした後……シアンが突き進んだ後ろに続いて、エリルも走り始めた。


ケヴィンが放っている風によって身体が押され、一瞬にしてキングドラゴンの足元まで辿り着く。


シアンが拳を叩きつけ切断を発動するが、金属に弾かれたかの様な音が鳴り響くだけで何事もなかったかの様に状況は変化しない。


エリルもがむしゃらにレイピアを突き立てるが、腕が砕けるかと思う程に威力による跳ね返りを食らい、右腕を抑える始末になる。


これは確かにマズい。


確かに今までも何度も強敵と戦ってきた。


スケルトンジェネラルだって、シルバーゴーレムだって間違いなく強敵だっただろう。


だがそれらと今の明らかな違いは、攻撃が通用するかどうかがカギとなる。


スケルトンジェネラルもシルバーゴーレムも、並外れた装甲を持ってはいたが傷つける事自体は出来ていた。


その為何度も何度も攻撃を当て続ければいずれは倒せる事が分かっていたのだ。


だが今はどうだ。


傷一つどころか、下手すればこちらの武器や肉体の方がダメージが多い可能性がある。


キングドラゴンはまだ攻撃する動作を見せない。


自分は絶対の強者だとアピールでもしているのか、虫けらを放っておく人々の様に、自分へ害のない存在に対しては反応すら見せない。


そう言った態度を見せつけられているかの様に思えて腹が立つと同時に、ふつふつと湧き上がってくる『絶望』を精一杯エリルは抑えつけていた。


ケヴィンが氷魔法を放っている。


普通では届く筈のない、キングドラゴンの『胸部』の位置に氷の刃を放っている。


異能強化2によって初期の頃より格段に威力も大きさも上昇しているその氷の刃だが、やはり『龍の王』には通用しないのか。


キングドラゴンの胸部の鱗の表面に霜を張らせる程度の効果しか見込めていない。


ドラゴンへの対処法をケヴィンが知っているが故の行動なのかもしれないが、例えそこがキングドラゴンにとっての急所だったとしても氷の刃が鱗を貫通する気配はなかった。


続け様に炎魔法を同じ個所に当てる。


以前スケルトンジェネラルに対して起こした『温度割れ』を狙っているのかもしれないが、対象がデカすぎる事によってあまり意味がない様にも見えてしまう。


しかしケヴィンはまるでそんな事お構いなしと言わんばかりに氷と炎を交互に放出し続けていた。


こちらも手を休めている暇などない。


無駄としか思えない程に無傷の表面を保っているキングドラゴンの足に、シアンとエリルは切断の異能とレイピアを叩きつけ続けている。


もし仮に自分がキングドラゴン側であったのなら、攻撃されている感触さえも感じないレベルの攻撃を喰らっていればあくびの一つでもかましているかもしれない。


そう思えるだけの種族としての強さの差が、自分たちのキングドラゴンの間には存在した。


しかしそんな緊張感の無い意味の無い攻撃を続けていた時、ほんの僅かに体を震わせたキングドラゴンが大きく右腕を振り上げ始めた。


その様を見た瞬間、シアンは突然後方へと走り始める。


「そのまま攻撃を続けていろ! 俺に考えがある!」


回避行動を行った訳では無い事が発言から分かるが、仮にキングドラゴンのあの腕の振り上げが『ケヴィン』を狙って起こした動作であったのなら、シアンはわざわざ自分からその攻撃範囲内に向かっている事になる。


彼等の今の身体能力であれば、回避に集中する事でその攻撃を避ける事は可能なのだろうが、自ら向かう意味は何なのだろうか。


ケヴィンが気づいていないとでも思ったのだろうか。


エリルはシアンのその行動が、ケヴィンを守る為に起こした行動だと思っていた。


しかしケヴィンの能力を顧みるに、エリルからすれば十分に驚異的な速度の腕の振り回しに見えるのだが、彼からすればシアンと同じく避ける事自体は可能だろうとエリルは予想していた。


二人の身体能力的差は殆どない。


武術を学んでいる分シアンの方が上かと思いきや、戦いの場に身を置き続けてきた人物独特の気配をケヴィンから感じる事もある。


要するに二人とも達人の域に達している存在である事に間違いは無く、だとすれば互いに互いの限界も理解できている事だろう。


だがシアンはケヴィンに駆け寄った。


そしてその行動の意味は、エリルの想像の遥か上に存在している物であった。


ケヴィンは氷の刃と炎の球を交互にキングドラゴンの胸部の同じ個所へ当て続けながら、後方へ跳ね飛ぶ様にしてキングドラゴンの大きな爪による攻撃を『ギリギリ』で回避していた。


シアンも滑り込む様にして地面とキングドラゴンの手の間を同じく『ギリギリ』通り抜けた時、直ぐに立ち上がると共に頭上を駆け抜けたキングドラゴンの腕に向かって跳ね飛んだ。


全く同じタイミングでケヴィンも回避を終えると同時にキングドラゴンの腕へと飛び込み、二人してキングドラゴンの手の甲を『蹴り飛ばした』のである。


激しく鈍い音が鳴り響くと同時に、キングドラゴンの腕は振り下ろした時よりも倍近く早い速度で上空へと戻って行く。


シアンとケヴィンが蹴りつけた事で、遠心力も相まって力のベクトルが跳ね上がったのであろう。


そしてその状況でまさかの展開が起こる。


腕の速さを制限しきれなかったのか、キングドラゴンが己の腕の遠心力に巻き込まれる様にして体を半回転させ、それと同時に大きな音を立てながら地面へと横たわったのだ。


要するに……龍の王が『バランスを崩してこけた』のである。


その瞬間シアンは素早くキングドラゴンの頭部へと駆け上がり、体が大きいからこそ一挙一動の遅いキングドラゴンが未だ倒れこんでいる事を利用して、自分の体よりも大きな龍の瞳に向けってシアンが拳を叩きこみ、『切断』を発動した。


瞬間、今までこちらの攻撃に対して一切の反応すら見せなかったキングドラゴンが、鼓膜が破裂せんばかりの雄たけびを上げると共に、地面を転げ始めたでは無いか。


その瞬間シアンは素早くキングドラゴンの頭部へと駆け上がり、体が大きいからこそ一挙一動の遅いキングドラゴンが未だ倒れこんでいる事を利用して、自分の体よりも大きな龍の瞳に向けってシアンが拳を叩きこみ、『切断』を発動した。


瞬間、今までこちらの攻撃に対して一切の反応すら見せなかったキングドラゴンが、鼓膜が破裂せんばかりの雄たけびを上げると共に、地面を転げ始めたでは無いか。

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