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緩和

リーダーと言う存在はこう言った局面では心の支えとなる存在でもある。


ライアンがそう言った役目を担っていたかと言えば、素直に首を振れる状態では無いのだが、シアンを見れば一目瞭然だろう。


彼がこのファミリーを纏め上げ、二強として君臨するケヴィンともスムーズに連携を取り、背中で多くの事を語って来た。


その結果として最強角の一人であるグランが彼を支持し、元シアンチームの面々は皆立派に戦力として貢献するまでに至っている。


これは彼がリーダーとして役目を果たしているからこそ実現出来た事で、例えば彼が存在しなかった場合には単独行動ばかりとり続けるケヴィンや、元シアンチームの面々が全くチームとして機能しない等と言う弊害が必ず出て来る筈だ。


早い段階でグランが代わりに纏める様な立場になったかも知れないが、何れにせよ今自分がこうやって武器を振るい続けていられるのも、あぁやってシアンが一番危険な場所で戦い続けてくれているお陰でもある。


それ程の存在とまではいかない者の、そう言った立ち位置を元非戦闘組からしたらライアンが担っていたにも関わらず、そのライアンが正にボロ雑巾の様な扱いを受けて死んで行った事で、皆の心に深い傷を作り出したのである。


いつかきっと、自分が戦い続ける事で皆が再び立ち上がれる様に出来たらいい。


完全な願望でしかない言葉だが、昨日シアンはそう言った言葉を連ねていた。


彼の専らの目標は、果てしくなく遠くにも思える『次の強化』を見据えているのだ。


つまり、『身体強化3』と『異能強化3』だ。


必要ポイントはそれぞれ『5000P』にも及ぶ。


あの謎のBP商品である『???』と同じだけのポイントを消費してやっと手に入れられる強化だ。


恐らくポイント的にも、正に桁が違う力を手に入れられる事だろう。


シアンだけで無くその強化はケヴィンもグランも目指している。


三人の内誰か一人でもそれを手に入れる事が出来れば、きっと戦況は大きく変わる筈だ。


例え強力な魔物が現れようと、それさえも簡単に凌駕出来る程の力がきっと。


自分達はファミリーの生存数が他のそれと比べると多すぎるらしく、それに伴って魔物の数や強さが増える傾向にあると言う。


何となくだが原理は分かる。


例えば一回のミッションで皆が平均50ポイント取得出来るだけの魔物が配置されていたとする。


この平均は一人でも30人でも変わらない状態にあるのだとエリルは考えている。


とすれば、ファミリーがたった一人だった場合に出現する魔物はボス個体のフォレストウルフ一体だったり、レアスライム系統が一匹だけ出たり等で済む場合もあるが、それと同時にファミリーが十人いればスケルトンジェネラルレベルの魔物が登場しなければ平均50ポイントにはならないと言う計算である。


そうでなくともボス個体のフォレストウルフが10体現れる等、こう言った討伐ポイントを取得する様な形で人数が多ければ多い程現れる魔物が強くなる様な状況なのであれば、間違いなくシステム的にそう言った作用が盛り込まれているであろう事が考えられる。


ゲーム的な思考かもしれないが、何度も言うがこれは『デスゲーム』である。


公平性を保つ為に全てのプレイヤーが均等にポイントを取得するには、生存者×数ポイント分の敵と言う機能が必要不可欠なのだ。


問題は、今自分達は本来27人で挑むべき魔物達に、その三分の一の9人で挑んでいると言う状況だ。


一人頭の負担が通常の三倍と言う高難易度での攻略が求められてる傾向にあると言う事。


裏を返せは通常の三倍のポイントを取得出来ると言う考え方も出来るのだが、だとすれば戦闘組と非戦闘組の強さはただただ開く一方だ。


このままこの状況が続くのであれば、やはり非戦闘組はいずれ強力な異能を持っていても戦えなくなってしまうだろう。


シアンやリアムの様な強力な前衛が居れば、援護を受けて安全にポイントを稼ぐ事が出来るのかもしれないが、エリルからすれば正直な所『そんな価値』が彼らに有るのかとも思えてしまう。


集団で自分の保身の為に他人を見殺しにしようとし、そうやって生に縋っている割には自分で戦況を打破しようと思わず七日目にしても尚シアン達ばかりに戦わせて自分達は安全圏に居る。


確かに先日のライアンの死に方を見てしまえば気持ちを分かる。


ただ、いつ同じ様な光景が再び訪れるか分からないのに、それに対抗出来るだけの準備すら怠って全ての責任をこちらに擦り付けている彼らを、そうまでして守る必要が有るのかと言うのがエリルの本音だ。


実際にエリルは殺されそうになった側だ。


自分を殺そうとした相手の為にいつまでも戦い続ける事等出来るほどエリルの心は強くない。


確かにライアンの事はそれとは関係なく助けようとは思った。


だがそれは自分の命を懸けてまでする事じゃない。


あの時、はっきりと自分達は賛成なんかしていないと言ったカーラともう一人の男だが、彼女らは今日このスタンピードに対して直前まで参加する意思は見せていた。


震える体で何とか抗おうと魔物を目にするまではここに立っていたのだ。


その努力こそエリルは認めよう。


そうする意思が少しでも有るのならまだ認識は改められる。


しかし全てを投げ出して全てを他人任せにして自己保身にしか走らない奴を守る意味をエリルは見いだせなかった。


そして先日、ほぼ全員がライアンの死によって有耶無耶になってしまった『とある事象』を見落としてしまっている状況にある。


エリルはあの場で唯一、現場を俯瞰してみて居た立場だ。


勿論シルバーゴーレムが現れる直前の話なのだが、自分が殺されかけた事に対して冷静に対処しようとしていた事でとある事実に気づいてしまった。


言い訳を繰り返して自分がエリル殺しの首謀者では無いと言い放っていたライアンがアレクシアを『殴った』時の話である。


以前、それこそ件のエリルに文句を言っていた男がケヴィンに殴り掛かった時の事件の時、シアンが取り押さえる事で事なきを得た際、シアンとその男の目の前にシステムメッセージが出現していた。


基本的にシステムボードが開いた際には、他の人物達にも自分のそれが見える様になっている。


その為処罰が与えられた男のシステムメッセージも、補填が与えられたシアン側のそれも、あの時全員が表示されていたシステムボードを目撃していた筈だ。


だが昨日ライアンがアレクシアを殴りつけた際、いつまで経っても彼らの前にその類のシステムメッセージは出現しなかったのだ。


身体強化の効果が乗った状態で殴りつけられたアレクシアは、あの時目も当てられない程の大怪我を負っていた。


あんな状態になったとしてもお咎め無し等有る筈が無いのである。


あの後アレクシアはシルバーゴーレムによって即死させられたり、ライアン自身も断続的の攻撃を加えられた事からそう言った部分が有耶無耶になってしまっていたのかも知れないが、仮にそうでなかった場合にはエリルにとってはかなり死活問題となる事象が起こっている事となる。


あくまでこれもエリルの仮説ではあるのだが……恐らくミッション中のファミリーへの攻撃は、規模にもよるのかも知れないが『ペナルティの範囲外』である可能油性があると言う事。


何故そう思うかと言えば、今目の前で繰り広げられている激しい戦いの中で、シアン達はただの一度も誤射が無く戦っているものの少々の見方からの攻撃の被弾は有ってしかるべく状況だと言う事。


特にケヴィンの広範囲魔法に関しては、余波程度でしか無いか熱を感じたり冷気を感じたり程度の被弾は確かに存在してる。


勿論それは不可抗力であり、その上その程度であればなんの影響もない事から誰も気にしてはいないのだが、つまりは戦闘中であれば稀に仲間へ被害が出る可能性が有るかもしれないと言う事。


そう言った際に一々マイナスポイントを受けてしまえば、全力を出すにも億劫になってしまう事だってあるだろう。


つまりその為にも、ミッション中の味方への攻撃に対するペナルティは、少なくともある程度の緩和が施されている可能性が有ると言う事。


何しろスケルトンジェネラル戦の際に、攻撃の意思は無かったとは言えエリルはマーロンからの異能をその体に受けているのだ。


その合計三度程グランからの投擲をキャッチすると言う動作を繰り返している。


グランもマーロンもあれを攻撃として意識していない為と言い訳も出来るかもしれないが、見た目だけで言えばエリルに向けて異能を使っていると言う事実が存在する。


それらも踏まえて、ミッション中の味方に対する攻撃にペナルティが存在しなかったり、緩和されているのだとすれば……それに気づいた非戦闘組の誰かがまた偶然を装って自分へ異能を『わざと』ぶつけてくるかもしれない。


それがエリルにとっての死活問題なのだ。


仮に自分へそう言った行為をされた場合には……今のエリルに抵抗する手段は存在しない。



――――……。

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