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外れ枠

「なるほどぉ、君が今回の『外れ枠』かぁ。運が無かったねぇ、そのパターンの異能は毎回毎回使えないんだよ本当に。『戦いには何の役にも立たない』からさぁ。今までにも居たんだぁ、5倍だったり10倍だったり20倍だったりさぁ。その中でも『100倍』なんてのは、数値だけ見ればすごい異能に見えるし、事実今までの『その系統の異能』の中では最大の数値にはなってるんだけどぉ……使えないから意味無いんだよねぇ。実際にその異能を持ってる人達……みぃんな即死しちゃってるからさぁ。あ、ごめんねぇ? 一応ルールでさぁ、僕はどれだけ異能の事を知ってても口にする事は出来ないんだぁ。本当に小難しいルールだよねぇ」


やはり、余計とも言えるが随分と情報が得られる言葉をペラペラと発言してくれた。


まず発覚したのは、自分に与えられた異能は『戦闘面では役に立たない』と言う事実。


今までかならず戦いに関係した異能である事を想定して探っていたのだが、今彼の言葉からはっきりとそう言った類ではない事が発言された。


絶望は更なる絶望を呼ぶ事となったのだが、呆れにも似た何やら力の抜ける感覚が己の中に起こる。


今後は戦闘面以外で何かを百倍に出来ないのか模索していく事となるだろう。


それが分かっただけでも大きな収穫だ。


そしてそれを知る為に投げかけた質問で、ロキはいくつかの情報を口にした。


一つはこう言ったデスゲームの様な意味の分からない行事が過去にも何度か開催されていたであろう疑惑だ。


今までにも自分と同じ系統の異能を持った者が居たと言う発言を行っている。


そしてロキ自身が何やら『ルール』に縛られて行動を制限されていると言う事実。


神とされるロキが自分の思うがままに行動できない状態でも、それに従っている様な様子を見せる事で、彼自身もこのデスゲームの主催ではある物の、彼よりも上位の存在が居る可能性が有ると言う事。


もしくは自分と同等の立ち位置の者達とルールを決めて、そのルールの範囲内で争っている可能性が有ると言う事だ。


「んー、君の異能では確かにポイント取得は難しいだろうねぇ。今まで生き残れたのは奇跡の連続かぁ、それとも君のポテンシャルがめちゃくちゃ高いとかぁ? 自力で魔物は倒せないけどぉ、戦闘の役にはめちゃくちゃ立ってるからそうやってケヴィン達が君を守ろうとしてるとかぁ。もしそうだとしたらぁ……そんな『使えない異能』のせいで君を失うのは惜しいよねぇ。でもぉ、残念ながらこれもルールで、僕の方から君のポイントを付与したりは出来ないんだよねぇ。ケヴィンの場合は僕が無理やり奪ったポイントだから返せただけなんだぁ。だから君にはなんとか自力で稼いでほしいんだけどぉ、ま……無理だよねぇ!」


慰めているの馬鹿にしているのか。


恐らく後者であろう彼の発言を耳にしながら、いずれにせよ自分の力で打開策を見つけ出さなければならない事が判明する。


先程からずっとルールだと口煩く述べているが、勝手な感想ではあるが彼程自分自身を重要視……とでも言うのか、自分にとっての損得でしか動かない様な存在が従わざるを得ないルールと言うものは、それを破る事によってよっぽど彼……もしくは彼等にとって不都合な事でもあるのだろう。


……むしろそのルールの全貌を知る事が出来れば、それを逆手に取ってこいつを窮地に立たせる事が出来るのでは。


そう思った所でエリルは思考を止める。


例えそう言った状況を作れたとしても、今の『無能』な自分では何もできない状況に陥る可能性が大きい。


優先事項はやはり己の強化だ。


彼らに反抗する為にも、このデスゲームを生き残る為にも、どっちみち自己強化は必須事項だろう。


ロキはよく口を滑らす。


初日にも己の炎を喰らわせたケヴィンに対し、ダメージを与えるには『レベル』が足りないと言い放ったのだ。


それぞれに与えられた異能がこいつら『神』によって作られた物だとして、その異能を扱う事で彼等に抵抗出来るかどうかは不明では有るのだが、ロキの発言を顧みればそれは出来る可能性が有る。


下手をすればロキ達は今、己の首元に刃を届かせる様な存在を育てている状況でも有るのだろう。


何度もこう言ったゲームの様な物を開催しているのであれば、彼等がその事実に気づいていない筈が無い為に、やはり強化を得てもまだ彼等にとっては『余裕』なのかもしれないが。


「どっち道このままなら君は遅かれ早かれ何も出来なくなるだろうけどねぇ。気付いていると思うけどミッション毎にどんどん今より強い魔物達が追加されて行って、初期に出てきてた様な弱い魔物は減少傾向にあるからぁ。次はもうスライムとかは出てこないかもしれないよねぇ。そうなったらエリルみたいな能力が使えない人は全く戦えなくなっていくよねぇ。君達も本当に戦える内に戦った方がいいよぉ? エリルと違って戦う手段が有るんだからさぁ、一々恐れ戦いてないでさっさとポイント稼いでとっとと強くなっちゃいなよぉ。エリルとは違うんだからさぁ」


ここぞとばかりに自分の名を使って元非戦闘組を煽るロキ。


今の内にポイントを稼いでおかなければこいつみたいになるぞと言う脅しなのだろう。


まったくもってその通りだとしか言い様が無い為に腹も立たないのだが。


「二段階強化の終わったエレメントをテメェで試し打ちしてやろうか?」


「それは良いな。俺も身体強化2と異能強化2のダブルアップでどれだけ切断の威力が上がるのか興味があるな」


「ジェシカ、今お前が作れる最高の武器を作り出してくれ。俺も今の身体能力で投擲を試してみるべきだと思う」


代わりにと言うべきなのか、先程から自分を守る様に立ってくれている彼らが……自分の代わりに怒りを口々に表現してくれていた。


……有難いと思う反面、正直不甲斐なさの方が強かった。


「おー怖いねぇ。トップ3の猛攻撃にあったら流石に僕も痛み程度なら感じるだろうからぁ、そう言う行動はやめて欲しいなぁ。まったくぅ、君達は僕のお気に入りなのに、僕の方なぁんでこんなに嫌われてるんだろうねぇ。人間の心境は分かんないやぁ。せぇっかく今回は二段階目の強化を取得した人が現れたから賛美しに来たのにぃ」


そう言えば、彼の前回の登場も丁度シアン達が一段階目の強化を取得したタイミングだった。


彼がここを訪れる際の動機は不明だったが、何か大きな変化や区切りが有ったらこうやって訪れる腹積もりなのだろうか。


だとすれば先日、初めての死者が出てしまった際にも訪れるべきだとは思うのだが……彼にとっては『そんな事』どうだって良いのかもしれない。

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