援護ポイント
そしてエリルはグランが予想した通り、ジェシカが作り出したその薙刀をとある部分に向けて投げて欲しかったのである。
今迄の経験上、異能を通した力は魔物に対して特効の様な効果が有るのか、魔物に対して与えるダメージが大きい様にも見える。
今回のスケルトンジェネラルに至っては正直イレギュラー的な強さを持っている為に大した効果が与えられていない様だが、これまでの相手に関しては相当な効果を齎して来た。
ただの木の棒では全くダメージを与えられなかったスケルトンナイトに、ジェシカの作った薙刀を手にした瞬間あっさりと刃が通ると言う状況が作り出される。
そしてグランも最初はただの石ころを投げていただけにも関わらず、当たりどころが避ければそれだけでクロウラビットを一撃で倒していたのだ。
以前に行っていた再現なのだが、グランがジェシカの作ったナイフを投げた時の様に、異能で作られた武器を異能で投げれば相乗効果が認められるだろうとエリルは予想している。
後は狙い通りにグランとマーロンが動いてくれれば、スケルトンジェネラルの一部の脅威は取り除ける筈だ。
エリルはグランへ軽く事情を説明した後、薙刀を彼に預けて走り出す。
スケルトンジェネラルはシアンが上手く引き付けている事で、後ろに回り込もうとしている自分なんかには目もくれていない。
それにしてもあれは身体強化の影響なのか、シアンは全ての攻撃を紙一重の最小限の動きだけで回避している。
神がかっているとしか思えない程に、あの動体視力と反射神経の凄まじさに、同じ武術家としても惚れ惚れする程である。
何にせよ彼のその卓越した動きによってスケルトンジェネラルはシアンへと集中し、裏ではエリルが動きやすくなる。
スケルトンジェネラルの右側後方へと辿り着いた時、その対角線上にグランが移動を終えた事を確認するエリル。
マーロンに視線を合わせ右手を挙げた時、エリルは全身を浮遊感に包まれる。
まるで誰かに引っ張り上げられたり持ち上げられたりする様な感覚で、早くは無いがそれでも確かに体は浮き始めた。
自分が持ち上げられる程度の重さなら念力で持ち上げる事が出来るとマーロンが言っていた通り、恐らく彼の中でも今のエリルは念力を通して『持ち上げている』様な状況なのだろう。
大体3メートル程上昇した所だろうか、スケルトンジェネラルの頭部が見下ろせる位置まで上昇した所で、こちらの準備は万全となった。
後はグランの技術とタイミングに掛かっているのだが、異能強化の掛かっている彼の投擲ならほぼほぼ外れる事はないとエリルは考えている。
そしてグランがスケルトンジェネラルの動きに集中し、それが頭上高く『武器』を振り上げた時であった。
「せえいっ!」
グランは力強く薙刀を再びやり投げの要領で投げ飛ばした。
それは見事にスケルトンジェネラルを挟んで対角線上にいる自分の元へと真っすぐ飛んでくる。
エリルが何故この位置にまでマーロンへ持ち上げて貰ったのか。
それはグランの投げた薙刀をそこで受け取る為だ。
ジェシカは今負傷して木陰で休んでいる状態。
その状態でグランが大きく投げ飛ばした薙刀を取り消し、再び異能によって薙刀を作り出すと言う作業をやらせるには、彼女にしんどい思いをさせなければならない為出来るだけしたくない。
その為エリルはグランが投げた薙刀が遠くへ飛んで行き過ぎない様に受け止める役目を担っているのだ。
では何故わざわざグランにその角度で投げさせたのか。
単純に投げやりの要領でダメージを与える事が目的であるならば、対角線上に並んでキャッチボールの様にエリル自身も地上で受け止めればいいだけである。
しかし、エリルの考えとしてはその攻撃でスケルトンジェネラルにダメージを与える事が目的では無かった。
エリルのやりたい事は『脅威』を取り除く事。
そしてその脅威たるスケルトンジェネラルが持っている『大きな武器』が地上で攻撃を捌いているシアンへ振り下ろされようとしていた時であった。
研ぎ澄まされたタイミングで、スケルトンジェネラルの刃とグランの投げた薙刀がぶつかる。
それは武器の腹の部分へと激突し、薙刀が貫通した事でスケルトンジェネラルの武器の刀身には風穴が空いたのだ。
そしてその威力によって武器が後方へ持っていかれ、軽く仰け反るスケルトンジェネラル。
エリルは飛んできた槍をキャッチすると共に、遠心力を利用して体を一回転させた。
エリルがその位置に居た理由は『もう一つ』存在する。
最初にライアンが『一撃』の異能で武器の内部へダメージを与えたであろう事を確認したエリルは、その傷口をグランの投擲で広げてもらう事を一番の目的にしていた。
あわよくばそこでエリルの目的は完遂される筈だったが、念の為自分も『最期の一押し』が出来る様に己をポジショニングしていた。
グランのお陰で両手には薙刀が存在し、更にはスケルトンジェネラルが仰け反った事でそれの武器が今『目の前』に存在している。
後は簡単な仕事だ。
その武器の風穴の空いた部分に力いっぱい薙刀を振り降ろす事で、エリルの力でも武器の効果も相まってスケルトンジェネラルの武器を『破壊』する事が出来たのだ。
武器を壊せばスケルトンジェネラルの攻撃による殺傷能力は著しく低下する事だろう。
自分の様な身体強化を得ていない存在は普通の攻撃ですら一撃で潰れてしまうだろうが、それでも身体強化を得ている側の『彼等』なら剣以外での攻撃になら耐えられるのではないか。
そう、例えば『彼』なら。
「うおぉぉおおお!!」
『リアム・アームストロング』は前進すると共に『盾』の異能を発動する。
そうする事で一瞬だけエリルに向き変えたヘイトを己へと移す事が出来る計算なのだろう。
そして正にその計算通りの状況が目の前で起こり、武器を失ったスケルトンジェネラルはそのまま右腕を振り回す様にしてリアムへと攻撃を仕掛ける。
彼は両腕を力強く突き出し、真正面からそのスケルトンジェネラルの腕を受け止め、多少地面を滑りはしたがその動きを停止させた。
身体強化を手に入れた事と、異能の相乗効果によって殺傷能力の下がったスケルトンジェネラルの攻撃なら、リアムはあっさりと受け止める事が出来る様になったのである。
そうなればもはやスケルトンジェネラルは脅威にならない。
勝機と見たか、シアン達は一斉にスケルトンジェネラルへと飛び掛かる様に攻撃を開始し、自分への攻撃への危険が無くなった事で、エリルもマーロンによって地上に降ろされると共に攻撃を仕掛ける。
やむを得ない状況の為か、スケルトンジェネラルも必死に抵抗を始め、本来なら防御に使うであろう左手に取り付けられた盾も振り回し、攻撃に利用しようとしていた所をマーロンの念力によって盾が引っ張られ始める。
その影響で前のめりになった所をネイサンが穴を開ける事で片足を取られ、もう片方の足をディムが蹴り飛ばす事でスケルトンジェネラルは大きく転倒。
ライアンが頭上の兜目掛け一撃を放った事でそれが粉砕され、透かさずケヴィンが頭部を冷却した後にさらに炎で延焼させた。
恐らくだがそれは『熱割れ』を狙った放出したものなのだろう。
最期の一押しと言わんばかりに頭上に向けてグランが鉄球を投げ込み、目に見えて罅が刻まれた所へエリルが薙刀を突き刺す。
そしてエリルは薙刀を手放して後方へ下がった所で、ディムが薙刀の柄の部分を『蹴りつけた』のだ。
その攻撃によって完全に頭蓋骨へと切り口を刻む事に成功した事で、エリルとディムは二人掛かりで頭上から薙刀を引き抜く。
「ほなよろしく」
すれ違い様にエリルは『シアン』とハイタッチをかまし、彼は右手を手刀の様な形にしてスケルトンジェネラルのひび割れた脳天へと突き刺した。
そして頭蓋の奥底で、『切断』を発動する事によってスケルトンジェネラルへ完全な止めを刺したのであった。
アンデッドタイプの魔物でも、人型に近い存在なら弱点は頭上にある。
これらはグランから事前に情報を聞いていたもので、それを知っているからこそ倒れ込んだスケルトンジェネラルへ、一同はしつこい程頭上にダメージを与えていったのだ。
まさか骸骨だからと言って頭蓋の中に脳が残っているとは思えないが、恐らくスライムで言う『核』の様な物が存在しているのだろう。
何にせよ、非常に強固でダメージの与え辛かったスケルトンジェネラルだが、今回も何とか……無事に討伐を果たせたのであった。
『ミッションクリア』
その文字がシステムメッセージとして表示された後、いつも通り今回のポイント取得ランキングが表示されていく。
……勿論、そこに『エリル』の名前は存在しなかった。
討伐数合計
クロウラビット 50匹
スライム 50匹
ゴブリン 200匹
ファングリザード 150匹
アースウルフ 100匹
スケルトンナイト 50匹
スケルトンジェネラル 1匹
ケヴィン
クロウラビット 12匹 ポイント12
スライム 9匹 ポイント9
ゴブリン 42匹 ポイント84
ファングリザード 21匹 ポイント105
アースウルフ 15匹 ポイント150
スケルトンナイト 15匹 ポイント450
スケルトンジェネラル(援護) 1匹 ポイント200
計 1100ポイント
シアン
クロウラビット 5匹 ポイント5
スライム 4匹 ポイント4
ゴブリン 12匹 ポイント24
ファングリザード 8匹 ポイント40
アースウルフ 6匹 ポイント60
スケルトンナイト 12匹 ポイント360
スケルトンジェネラル 1匹 ポイント500
計 993ポイント
グラン
クロウラビット 8匹 ポイント8
スライム 6匹 ポイント6
ゴブリン 32匹 ポイント64
ファングリザード 15匹 ポイント75
アースウルフ 11匹 ポイント110
スケルトンナイト 8匹 ポイント240
スケルトンジェネラル(援護) 1匹 ポイント200
計 703ポイント
ジェシカ
クロウラビット 4匹 ポイント4
スライム 4匹 ポイント4
ゴブリン 21匹 ポイント42
ファングリザード 9匹 ポイント45
アースウルフ 8匹 ポイント80
スケルトンナイト 8匹 ポイント240
スケルトンジェネラル(援護) 1匹 ポイント200
計 615ポイント
リアム
クロウラビット(援護) 12匹 ポイント6
スライム(援護) 14匹 ポイント7
ゴブリン(援護) 52匹 ポイント52
ファングリザード(援護) 24匹 ポイント60
アースウルフ(援護) 11匹 ポイント55
スケルトンナイト(援護) 6匹 ポイント90
スケルトンジェネラル(援護) 1匹 ポイント200
計 470ポイント
その後に続き、ネイサン、ディム、マーロン、ライアンと続いていく。
スケルトンジェネラルの破格のポイントにより、援護を行った存在全員に200ポイント言うとんでないポイントが入ったのだが、当然エリルには1のポイントも入らない。
そればかりは仕方ないと彼は考えているの為軽く流していたのだが、リアムのポイントの入り方が少しだけ面白くてクスりと笑ってしまうのであった。
彼は身体強化を持っているのだから、自分で魔物を倒す事も出来たろうに、恐らく一緒に行動している者達の為に自ら盾役を続け、全てのポイントを仲間に渡していたと言う事なのだろう。
援護ポイントがこれだけ入っていれば、それでも構わないのかもしれないが。
――――……。




