方言
「来るぞ!!」
シアンが叫ぶと共に、彼がいる場所へと真っ直ぐにスケルトンジェネラルが武器を振り下ろしてくる。
横へ跳ぶ事が比較的安全な避け方に思えるが、シアンはそこでほぼ前方へと突き進んだ。
左足で大地を蹴って、ジェネラルスケルトンの剣をスレスレで避けると共に対象の懐へと潜り込んでいた。
若干斜めに進んだことで、シアンの目の前にはスケルトンジェネラルの脇腹が存在し、前進すると共に右腕を引いていた彼は、それ以上反動をつける事なく、そのまま身体の回転の威力を利用する様に、スケルトンジェネラルの脇腹へ右拳を叩き付けた。
コンパクトに最短距離を突く攻撃を仕掛けるあの動きは、確か一昔前のアクション映画俳優が使っていた武術の筈だ。
無限一刀流は体術にも相当力を入れているのか、武器を持っていなくとも相当に理にかなった動きを見せている。
何より拳を当てると同時にシアンは『切断』を発動する事で、見た目以上のダメージをスケルトンジェネラルへ与えている事だろう。
盾を持っていると言えど、その使い方がままならないのか、それとも威力を優先したのか、スケルトンジェネラルの左腕は大きく上がっていた。
シアンはそのまま重心移動を起こしながら、前のめりなった影響で頭部の下がっているスケルトンジェネラルへ左ストレートを顔面に、軽く後ろへ下がりながら右フックを当てた後、右足の踵で正面から向こう脛を蹴り飛ばすと共に、独特なステップで距離を取っていた。
何れの攻撃にも切断の効果が発動した状態での行使だ。
そしてその瞬間に襲いかかる数々の魔法や、ソフトボール程の大きさとなっている鉄球。
それらの追撃を受けてもスケルトンジェネラルは少し怯む程度で、致命的な効果には至って居ない様子。
先に喰らわせていたシアンの切断も、多少の傷を作る程度の効果しか得られていない。
ケヴィンがこの魔物を警戒する理由も頷けるというもの。
身体強化、異能強化を授かっている状態の攻撃で、この程度の影響しか与えられていない。
こう言ったミッションで選定されている魔物達の強さが、一体どの様な計算を用いて宛てがわれているのかは分からないが、少しばかり……いや、明らかにオーバーな調整では無いだろうか。
あくまでデス『ゲーム』と言う括りである以上、所謂『無理ゲー』の様な難易度では攻略不可能だ。
エリルがそう思った理由は、シアン、ケヴィン、グランと言う最高戦力の三人の同時攻撃によってこの程度のダメージ効果しか得られなかったことから来ている。
どちらかと言えば過剰戦力とも言えなくもないこの三人からの効果でこの程度しかダメージが通らないのであれば、以前よりケヴィンやシアンが予想していた、自分達と同じ境遇の存在達が居たとして、その者達が今の様な強さの魔物に対応出来るとは思えないからだ。
確かにロキは前回の登場の際に、『全員生存』していた事に賞賛の意を示していた。
これは単純に生き残る事が難しいとロキ自身も捉えているか、或いは先程もあげた同じ境遇の他の者達には既に多数の犠牲者が出ているからこそ出てきた言葉なのだろう。
それが事実なのであれば、自分達にこのデスゲームをクリアさせるつもりが無いとも捉える事が出来るのだが、では何故こんな事をしているのか……。
いや、そんな事今考えても仕方がない。
そもそもが数による暴力で数十人の異能の同時行使で攻め立てる事こそが攻略の鍵なのかもしれない。
生憎……と言うよりも最悪な事にロキによって集められたメンバー達の協調性は壊滅的た。
そう言った手法が取れない以上、個々の強さで相手を凌駕するしか無い。
そういう意味で幸いにも、協力的な姿勢を見せる者達の中には猛者が集っている。
効果が薄いだけで効果が見れない訳では無い。
幾度も攻撃を続ければ何れ倒す事は出来る。
そしてそのチャンスを手繰り寄せるだけの力が彼らにはある。
ならばその力を信じて、エリルも矛を振るうだけである。
「このやろう!!」
何かにイラついているのか、以外にもライアンが前へと躍り出て拳を振るおうとしている。
しかし彼にシアン並の反射神経がある筈もなく、それに反応したスケルトンジェネラルから振り下ろされた武器によって被害に遭いかける。
しかしネイサンが魔物の足元につ作り出した大穴によってバランスを大きく崩した上に、マーロンの念力によってライアンの目前で武器が止まる。
「打て! ライアン!!」
シアンが叫ぶ事によって我に返ったライアンが、彼の異能である『一撃』を放ち、目の前まで迫った武器をおおきく弾く。
パキりと言った音が僅かに鳴った事により、エリルは視線をスケルトンジェネラルの武器へと移す。
表向きには全く変化が見られないが、恐らく内部的には何かしらの影響がある事だろう。
……やってみるか?
エリルからしても、他の者からしてもあの大きな武器は非常に危険なものだ。
あれが破壊出来れば。
エリルはそう判断したタイミングで、作戦に必要な人物の元へと駆け寄る。
本当は彼以外にも、作戦を実行するには必要な人物が一人いるのだが、恐らくその人物はエリルの考案にはほぼ『無条件』で賛同してくれる筈だ。
その為、作戦の要となるだろうもう一人の人物へ、エリルは先に相談を投げ掛けるのであった。
「『ローマン』、あんたどんくらいの重さやったら『念力』で持ち上げられるんや?」
エリルが話し掛けたキーマンとなる存在は、シアンチームの最後の一人である『マーロン』であった。
「おいどんはマーロンでんがなですエリルの親方。いい加減わたくしの名前を覚えろなさいでゲス」
ヘンテコな日本語を使う彼は、聞けば日本へ留学していた北米人だったらしい。
地方への訪問が多かった事により、様々な方言が合わさった絶妙な日本語を覚えてしまったが為に、こう言う喋り方をしているのだ。
「某の異能は今の所ワテが自力で持ち上げられる程度の重量ならなんとか持ち上げられまんねん。つまりうぬ程度ならばたちまち持ち上げられる程度と覚えておいてごしない」
「せやったら頼みたい事があんねん」
「なんやねん、言うてみい」
「……なんで関西弁だけイントネーション完璧なん……」
手っ取り早くエリルは、己が今咄嗟に考えた作戦をマーロンに伝える。
「合点招致」
意味を分かって使っているのかもはや不明だが、話は成り立っている為後はぶっつけ本番で頼むと彼に依頼し、エリルは次の目的の人物の元へと移動した。
「と言う事や。後は頼んだで」
「いきなり近づいて来てと言う事だなんて言われても、分かった! なんて言う訳ないだろ」
「えー!! あんたと俺の仲やのにそんなんも分からへんのんかいな!!」
「緊張感無いのかよ。それで何をやって欲しいんだ? 多分俺にまた『そいつを投げてくれ』とでも言うんだろ」
「分かっとるやないかい」
エリルが必ず自分の考案の無条件で賛同してくれると考えていた人物は、やはり『グラン』であった。




