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原因の張本人

「よし、お前等どんな死に方がお望みだ? 今なら焼死や凍死以外にも感電死や圧死もなんでも選び放題だぞ」


「遠慮しておきますよケヴィンさん」


「あ、ちょっと俺は用事を思い出した気がする」


笑顔で拒否をするディムに、適当に誤魔化すリアム。


一同に軽く笑いが起きた事で、雰囲気が軽くなった様にも見える。


「……サンキューやで、ケヴィン」


「礼を言われる事じゃねぇよ。……少なくともお前とシアンには……死なれたら寝覚めがわりぃと思ってるだけだ」


それはきっと……彼なりの恩返しと言う意味と取っても良いのだろう。


恩を着せたつもりは無いが、それでも今回ケヴィンの提案に助けられたとエリルが感じたのは事実である。


暫くの問題はこれで解決したかの様に思えた。


死者が出た事で一時期はどうなるかと思ったが……比較的和やかな雰囲気が醸し出されていると思った矢先であった。


「え、なんであんたら笑ってんの? スパイクさん見殺しにしといてその態度無くね?」


突然男が割り込んできたのである。


その人物は、先程エリルとグランのチームの中に居た者の一人で、やたらとエリルにケチをつけていた男性だ。


「……その話はもう着いたやろ」


思わず。


と言った感じで、反射的に反論をしてしまうエリル。


あの場を落ち着かせる為にエリルは自らチームを去ったと言うのに、ここぞとばかりにそれを再び持ち上げて来るその男に多少苛立ちを感じてしまったのである。


「いやいや、いやいやいや。何もついてないでしょ? スパイクさん死んじまったんだぜ? その原因の張本人が何言っちゃってんの?」


何がこの人物をここまでさせるのか。


まるでワザと話を焚きつけて仲違いを起こさせようと躍起になって居る様にしか見えない。


「原因の張本人? なんだ? 自己紹介か?」


そう返すのはケヴィンである。


先日のやり取りで分かった事だが、ケヴィンは本当に良く口が回る。


腕っぷしが強いだけでなく頭の回転も速いのだろう。


自分も口喧嘩は強い方だと思っていたが、ここに来て少々自信を無くす程度にはケヴィンのそれは凄いと思った。


「は? 何言っちゃってんの? どう考えてもそっちの関西人の方に原因があるでしょ」


「なるほど。どう考えてもって言うが、本当にそれはどう考えたんだ? それこそ『どう考えても』こいつに非がある様には有る様には思えねぇ俺に教えてくれ」


「いやいやいや、それぐらい自分で考えろよ。何で自分で考えもせずに簡単に答え聞こうとしてんだよ」


「テメェ会話が出来ねぇ馬鹿か? こっちは自分で考えた上で分かんねぇつってんだろ。テメェだけ翻訳が機能してねぇのか? それとも理解出来る知能を持ってねぇのか? はっきりとした理由もねぇのにただただ絡もうとしてるだけなら怪我する前に引っ込んどけよ」


「わっかんねぇ奴だなぁ! 賢い俺が説明してやるよ。その関西人の奴があまりにも無能過ぎた結果スパイクさんは死んじまったんだ! これぐらい少し考えたら分かるだろ。人に馬鹿馬鹿言ってねぇで自分が馬鹿だって事自覚しろよなぁ」


言われたケヴィンは少し上を向きながら何か考え事をしている様な素振りを見せた後、まるで哀れむような表情で男へと再び視線を向ける。


「言う通り少し考えてみたが、確か状況としては列の真ん中辺りにいたスパイクが、岩陰から出て来たアシッドスライムを発見して、グランの静止も聞かずに向かっていって死んだって話だよな? そんでエリルはその時グランと一緒に後方に居て手が出せる状況じゃなかったって話だが……合ってるか?」


「おぉ! 合ってる合ってる。何だ分かってんじゃんー。エリルが異能が使えないポンコツ野郎だから、その時スパイクさんを助ける事が出来ずに死んじまったんだよぉ。本当に困るよなぁ」


「で、テメェはその時何処に居たんだ?」


「ん? 俺? 俺はぁ……そのぉ」


何故か途端に視線を彷徨わせる男。


都合が悪い事でもあるのだろうか。


「スパイクの隣にいましたよ、それどころかむしろスパイクが討伐に失敗したら横取りしよう……そう言う風に見える位に、スパイクと共に行動していた様に私には見えましたがね。あそこで罰が悪そうな表情をしてる女性と一緒にね」


と、ディムが現場状況を詳細に口にする。


彼が後付けした女性とは、男と一緒になってエリルを否定していた人物だ。


スパイクが死んだ時に一番恐怖していた人物とも言える。


「あぁ成程。つまり隣に居ても助けられない程にほぼ瞬殺状態だったスパイクを、距離の離れたエリルが助けられなかったからエリルは無能って言ってる訳だ。その理論がまかり通るんだったら……テメェは無能以下の存在って事になるがそれで良いのか?」


「はぁ!? 誰が無能以下だよ!」


「だからテメェだよ。ちょっと理解するのが遅すぎるんじゃねぇのか? 悪いのは顔だけかと思ってたが、同時に頭も悪いとか勘弁してくれよ」


「お前……ふざけ……ぐぁ!!」


男がケヴィンの煽りに逆上したのか、ケヴィンへと殴り掛かろうとした瞬間である。


伸び始めた手が素早く巻き取られ、肩口に手を当てられながら激しく地面へと叩きつけられる事で男の動きは完全に静止する。


「それは流石にやり過ぎだ。俺の堪忍袋の緒が切れる前に止めてくれないか?」


意外にも、男を制圧すると言う行動を取った人物はシアンであった。


彼は仲間内での横暴な態度に対しては、何かと甘い手段を用いて収めようとして居た節があった。


実際に飴と鞭で言えば雨がシアンで、鞭をケヴィンやグランが担っている様な雰囲気があった。


その行動は良い意味ではただただ優しい人物と言えるのかも知れないが、悪く言えば『事なかれ主義』とも捉えられかねない行動であった。


しかしよくよく考えてみれば、シアンは成り行きでリーダーになっただけであり自らそう言う立場を望んでいた訳でも無い。


かつどちらかと言えば仲間内ではシアンはまだまだ『若い』方だ。


自分やケヴィンと言う未成年組が居る事で20歳でも大人側として見られがちだが、普通に考えればその年代で年上さえも纏める立場になる事は難しい。


だからこそのあの甘い態度だったのかも知れない。


相手がどんな人物か分からない状況で、いきなり強気な態度を取る事はしなかっただけなのかもしれない。


「ちょ……何すんだよシアン……お前……この! ……ラ……『ライアン』さん! こいつらが生意気ッス! 助けてくれよライアンさん! ライアンさん!!」


言いながら男はライアンに視線を向けて、彼に懇願する様に叫ぶ。


自分の力で何も出来ないのに、何故彼はここまで強気な態度を取れるのだろうか。


その上で自分が窮地に陥ったら人頼み。


全く情けない存在だ。


しかし、助けを求められたライアンは動かない。


視線を少しだけ彷徨わせた後に、ゆっくりとそっぽを向いてしまった。


「何でですかライアンさん!? こんなやつらさっさとぶちのめして下さいよ! ライアンさん身体強化持ってるんだから余裕ですよね!?」


あぁ、そう言う事か


『それ』が彼の勘違いか。


「テメェが頼りにしてるライアンさんは助けてくれねぇってよ。無理もねぇわな、あいつがいくら身体強化を所持して様が、テメェを取り押さえているシアンも……テメェが襲い掛かろうとした俺も、同じ様に『身体強化』を持ってんだよ」


ケヴィンは先程のミッションまでは異能強化しか取得していなかったが、やはりと言うべきかそのミッションでもポイントの獲得量はぶっちぎりの一位であった。


そしてそのポイントを利用して、今回身体強化の方も取得したのである。


「さて、ここで馬鹿なテメェに問題だ。身体強化は文字通り体のあらゆる能力を上げてくれる魔法だ。恐らくだがこの強化幅に関しては個人差は存在してねぇ。似た様な能力を『現実世界』でも使ってた俺だから分かるが、強化幅はどうにも固定されている様に感じるからな。そこでだ、この身体強化が無い素の状態で武術を収めているシアンと、何もしていないライアンが二人して身体強化を授かった場合……同じ能力の上り幅だった結果どっちがより強くなってると思う?」


「あ……く……」


項垂れると言った所か。


単純な足し算の問題だ。


ライアンが一般人の能力として贔屓目に見て1と言うレベルを持っていたとする。


それに対してシアンは2や3と言ったレベルを持っている状態だ。


実際にはライアンとの差はもっと有るのだが、そこに身体強化と言うプラスレベル10の魔法が加わった所で、ライアンは絶対にシアンを越えられないと言う計算が成り立つのだ。

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