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ケヴィンの提案

「そうか……ついに死人が出てしまったか」


「俺が付いて居ながら……本当に申し訳ない」


「お前のせいじゃねぇだろ。て言うか誰のせいでもねぇ。敢えて誰かのせいだって言うんなら、そりゃ本人のせいだ。スパイクだかなんだか知らねぇが、弱い癖に人の忠告も聞かねぇそいつが悪いんだろ」


「ケヴィン……そう言う言い方は……」


「良くねぇってか? お前どこまで甘い考え持ってんだよ。死の危険がある状況だってのは初日から理解してたろ。それにグランが魔物の情報に詳しい事はここでは共通認識だった筈だ。そいつがやべぇって言ってんのにそれでも聞かねぇなら、全責任は死んだそいつ自身に有るだろ」


先程の全滅系ミッションが終わり、一同はファミリーハウスに戻る。


味方が死亡した際に何かしらのシステムメッセージが有った訳では無い為に、エリルが元居たチームの面々以外はスパイクが死んだ事等ここへ戻るまで誰も知らない状況だった。


30人もの人々が一斉にファミリーハウスに戻るのだから、その時点で誰かが欠けているなんて分かる由も無く、スコアボードも上位陣が変わらない面子であった為、一人死んでしまった事を皆が集ってから気付く事となる。


あの後グランチームの進行度は、やはり戦闘に対して殆どのメンバーが億劫になってしまった事が原因か、それまでと比べれば格段に効率が落ちる事となっていた。


エリルは一人行動をする事となったのだが、当たり前に出来る事等存在しない為、安全が確保されたエリアを適当に彷徨う事を繰り返していた。


マップ上で移動が確認できる程度には動いておかなければ、幾度もマップの確認を行うであろうシアンあたりが心配してこちらに向かって移動を始めてしまうだろう事を危惧しての行動だ。


安全地帯のマップを移動し続けるのであれば、前回の全滅ミッション時に登場したはぐれスライムの様に、時間経過と共に現れる魔物を警戒している様に見せかけられると思ってのエリルの行動だったのだが、結局ファミリーハウスへ戻ってきた際にシアンやケヴィンからその行動の真意を問われる事となった。


無事だろうと言う事は分かっていた為、特に合流しようとはしなかったらしいが、どうにも不審な行動に見えて仕方が無かったと言う。


特に単独では戦闘を行えない筈のエリルがその様な動きをしていたのだから、何か考えがあってそう言う行動を取っていると考えられた事から、戻った時に質問攻めにあったと言う状況だ。


そして詳細を話す事で、スパイクが死亡した事もその時に彼らに伝える事となった状況だ。


「わっはっは! 見ろ! ワシは大量にポイントを持っておるぞい! これでワシはいつも満腹じゃわい!」


少し距離の離れた場所では、元非戦闘組が円を作ってライアンの戦績を覗き込んでいた。


身体強化を入手したライアンは、まだまだ強力な個体とは言えない程度の敵しか出てこない現環境では、ほぼ無双状態となっていたらしい。


シアンの援護も必要とせず、単身で目に映る魔物に片っ端から殴りかかって行ったらしい。


あまりにも彼が狩り過ぎる事で上手に分配が出来ない事を懸念したシアンが静止する事で、やっと大人しくなる程度にはライアンは調子に乗っていた様だ。


シアンは身体強化も異能強化も何方も入手している上、本人が武術を収めている完全な強者。


ライアンはそれを知っているからかは分からないが、一応シアンの言う事は現状は素直に聞いているらしい。


「さすがライアンさんだ! 頼りになりますねぇ!」


意味が分からないのが、そんな状況でも元非戦闘組がおべっかを使う相手はライアンである事。


この環境でそんな事をして何の意味が有るかは不明だが、何故か偉ぶるライアンに対して一同は彼を誉め讃えている。


それ自体は現状シアンも放置を決め込んでいる状況だ。


そもそも止める理由も無い上に、非戦闘組だった彼が活躍する事で次は自分だと意気込む者も現れないとはかぎらない。


そう言った人の心理を利用する為に、シアンはライアンがある程度活躍する事は総合的に見ればいい事だと判断しているらしい。


だとしてもポイントを稼いだツートップはシアンとケヴィンだったのだが。


ジェシカは確かにエリルの手を借りなかった事で今までの様な高得点は手に入らない事にはなった。


ただそれでも個人の力でしっかりとポイントを稼ぎ、ちゃんと一人でも戦える事を示していた。


「これはきっとネイサンが居てくれたからだと私は思うなぁ」


「いやそんな事無いっしょぉ、ジェシカが一人で頑張った結果だと俺っちは思うぜぇ?」


何故か腰をクネクネさせながらネイサンと仲睦まじく話している事だけは笑いそうになるが、それでも独り立ち出来るに越した事はなかった。


スパイクの死に関して真剣に考えている者は正直少ない。


目の当たりにした面子の中でもここに集っているのは僅か四人。


エリル、グラン、ディム、リアムだけだ。


つまり元非戦闘組の者達の中であれだけスパイクの死に恐怖して叫んで、エリルは糾弾した者達は誰一人としてこの情報共有の場に参加していないのだ。


今は何をしているかと言えば、元非戦闘組で集まってライアンのスコアボードを覗いて何やら楽しんでいる状況だ。


ハッキリ言って何がしたいのか理解不能である。


同じ人種とは思えないくらいに考え方が違うのだろう。


「どっちにしろここでうだうだ言っててもそのスパイクって野郎が死んだ事実は変わんねぇだろ。大事なのは次を起こさない為にどうするかって事じゃねぇのか?」


「……ケヴィンの言う通りだな」


言葉使いが悪くぶっきらぼうな物言いをするが、ケヴィンの言っている事に間違いは無い。


冷たく聞こえるかもしれないが、失われた存在は戻ってこないのだから残った者達で進むしかない。


「チーム分けはもう少し考えた方がええやろうな……俺は戦力にならへんやろうから、今後は何処にも所属せえへん方がええと思うで」


「いや、それは危険すぎるだろう。何処に居ても魔物が出現する危険性は有るんだから一人行動はしない方がいい」


「そう言うてもな、今の俺は完全に足手まといだ。かと言って俺が何処かのチームに所属して問題が起きたら、また誰かが俺のせいにする様になるやろ。あいつらは言い訳の拠り所を見出そうとする連中ばかりやからな。それでもこのファミリーハウスのメンバーは皆仲間なんや、協力してかなあかん様な状況で俺と言う特異点が存在するのは良く無いねん。これから魔物はどんどん強くなって行くで。そうなったら必ず人数と言う武器が必要になってくんねん。その時に仲間の向いてる方向がバラバラやったら勝てるもんも勝たれへんで」


「だけど……く……」


悔しそうに歯ぎしりをするグラン。


目の前であの状況を見ていたからこそ否定しきれないのだろう。


「なぁ、それならエリルは俺と来たらいいんじゃねぇか?」


そう言いだしたのはケヴィンだ。


一同は目を丸くさせながらケヴィンへと視線を向ける。


「俺は元から慣れあうつもりはねぇって宣言してたからか知らねぇが、お前等が頑張って協力していこうって言ってる最中に俺だけ単独行動を取っていても、あいつらは誰一人として俺を咎めねぇだろ。だったらその俺にエリルが付いて来たって何の問題もねぇ筈だぞ。さっき俺は身体強化も手に入れたから足手まといが居たとしても窮地に陥る事はねぇだろうしな」


「はっきり言うやんけ」


「自分で言ってる事を俺が反復しただけだろ」


「……ケヴィンさんがそんな事を言うとは驚きましたね……」


「確かに……なんだかんだ言って俺には関係ねぇ……とか言い出す様な気がしとったんだがなぁ」


ディムとリアムは、互いの耳元で内緒話をしているつもりらしいが、その言葉はハッキリとこの場の全員に聞こえている声量だ。


恐らくワザとなのだろう。

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