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最強格

「つ……使ってしまった物は仕方がないだろう!? ワシもいきなり大量に手に入ってびっくりしたんじゃ! 驚いた反動でつい身体強化を押してしまったんじゃ!」


「なるほどな。偶然魔物を倒して、スコアボードに表示されたポイントにびっくりして、わざわざこのファミリーハウスに戻って来てもまだその驚きが止まらずに、その反動でシステムボードを改めて開いてBPをタッチして画面をスライドさせて身体強化をタッチして確認メッセージすら『はい

』を押したと。その驚きの反動とやらはやけに器用な驚き方をするもんだ」


首振りながら、溜息をつくグラン。


聞けば分かるが、ライアンのその一連の行動は『有り得ない』工程を経て実行される物だ。


エリルはまだポイントを一つも手に入れていない事から、BPのメニューでの操作はどういう形になっているか分からなかった為、初めてそう言う確認メッセージが出てくる事を知った。


それはそうだろう。


現代でさえスマートフォンの誤タッチ等がある世の中だ。


似た様な操作性を持つこのシステムボードでも誤タッチが起こりえるのだから、確認メッセージが出てきても不思議では無い。


兎に角グランはワザとライアンがやったであろう行動を口にする事で、彼があたかも自分の意思でBPを使ったのだと言う事を知らしめた。


「そ……そうだ! あくまでわざとじゃない! 間違えて使ってしまったんだから情状酌量の余地はあるじゃろう!?」


そう言えばこの男は、シアンの世界では確か裏金問題とか何かで都知事の座を追われたと言っていた。


その時の今の様に言い訳をしていたのだろうか。


「やたらと元気な体だな。それだけ元気ならお前には食事券は必要なさそうだ」


「な! な! な! 何を言うか! 何故その様な事になる!?」


「あくまで俺達が譲歩していたのはポイントが手に入れられない人の為に、最低限の善意で渡していただけだ。ポイントが手に入れられるならこれ以上渡す必要はないだろう。返してもらうならまだしもな」


「おかしいんじゃないか!? 不公平じゃないか!? なぁそうじゃろう!? 他の者はどう思う? こ奴らはこのご老体に食事を与えないと言っておるのじゃぞ? おかしいじゃろ!」


「……」


「な……何を黙っておるか! ここは反論すべきじゃろう!?」


「……」


ついには非戦闘組の中からも蔑む目で見られ始めるライアン。


全てのポイントを自分の為にのみ使ってしまった。


これ単体の話であれば全く問題の無い様に聞こえるが事態が事態だ。


温情を尽くして、自分達が自ら命を賭けてまで稼いだポイントを消費して食事を恵んでくれるシアンやグランと、自分でポイントを手に入れたにも関わらずその上で更に食事を恵んでもらおうとするライアンでは、反応の差が出るのは当然の事だろう。


「カーラ……お主もか?」


「し……仕方ないじゃない。今貴方に味方したら、私の食事だって取り上げられてしまうわ。一日一食しか食べられなくなるのよ? それとも明日から貴方が私の為に戦ってくれるの?」


どこまでも人頼みなカーラの発言ではあるが、それでも現状ではどちら側に付く事が正しいのかくらいは理解している様だ。


「グラン……すまない。折角俺の為に悪役になってくれた所悪いが、ちゃんとライアンにも食べて貰おう」


「……あんたならそう言うと思ったよ」


グランの肩に手を置きながらそう語るのはシアンだ。


とことん甘ちゃんな奴だが、それが彼の正義で有りそこが彼の魅力でも有るのだろう。


「ただし、ライアン。流石に今回ばかりはあんたを優遇する事には他の人に示しが付かない。ポイントを手に入れたあんたにも食事を渡すなんて不公平だと言う声がいつか出て来る」


「……」


膝立ちしながらしょぼくれているライアンに向かってシアンは言葉を続ける。


「だから……あんたは折角手に入れたその身体強化の力を使って、明日からちゃんと戦闘に参加して欲しい。それだけで俺は凄く助かるんだ」


「……分かったわい」


納得したのか、折れたのか。


真意は分からない上に明日も適当こいて戦わないと言う行動を取りかねない奴だ。


だが……だとしても身体強化を手に入れたライアンは貴重な存在となったのは間違いない。


あの強さを目の当たりにすれば、優先的にそれらの入手を目指すべきだと自分なら考える程の協力な物であった。


だから出来るなら……今回ジェシカだけでなく、他の者にもとれるものは強化を取って行って欲しいとエリルは思った。


「待てシアン。あんたあまりポイントを消費しない方が良い」


「いや、でも一食には成ってしまったけど皆にはちゃんと食べて貰わないと」


「あぁ、ちゃんと食べてもらうのは構わない。だけどそれはあんたの分をちゃんとキープしてからだ。今日の自分の食事分合わせて『104』ポイント残る様にな」


……そういうことか。


「104ポイント? 計算がかなり飛んでいる気がするが……」


シアンが不思議そうな表情でグランを見つめていたが、彼はくるりと首を回転させるとこちらへ視線を向けて来た。


「エリル、それで良いよな?」


「何で俺に確認取って来るかは知らへんけど、でも確かにシアンは104ポイント残すべきや。あんたはさっきケヴィンに一日分の食事を渡しよったから残り108ポイントやろ? そこからあんたに今日必要なポイントを除いた4ポイントだけしかあんたは使ったらあかんねん」


遠回しな表現をしているが、シアンは本来なら既に『それ』を手に入れる為のポイントは入手出来ていた筈だったのだ。


だが彼の性格が影響して自分の事を随分と後回しにした事によって入手できなかったが、今ならグランも恐らく協力するつもりなのだろうから、シアンは『それ』を取るべきなのだ。


「俺の今日の分は4ポイントだけで足りるんだが……」


こいつは地頭が良い筈なのにこう言った自分の事になると鈍感になる事が有る様だ。


だからちゃんと口にしてやらなきゃ分からないのだろう。


「シアン。あんたは今日、BPをつこて『身体強化』と『異能強化』の二つを手に入れるんや」


このファミリーハウスに集った30人をロキは仲間だと言った。


共に戦う存在だと表現した。


であるならば、この仲間達の中で最大戦力となっているシアンには、ここでさらに最強格となってもらう事こそが、このファミリーが生き残る最大の術となる事だろう。



――――……。

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