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はぐれ狩り

『ミッションクリア』


システムボードに表示された文字を見て、一同深いため息を吐く。


所謂『やっと終わったか』と言う心境の表れなのだろう。


ケヴィンの問題が終わった後、再び一同は持ち場へと戻り、自分達が受け持ったエリアの殲滅を続けていった。


運が良かったのかエリルチームが請け負ったエリアに関しては、割と手こずる事無く魔物を見つける事が出来たのだが、問題はセーフエリアであった最初の集合地点のA-1と真逆に位置する『D-4』で起こった。


一応はケヴィンが担当するエリアだったのだが、彼はソロで動いていた事で他のチームよりも僅かに遅れが生じていた事で、先に自分の持ち場が終わった者から最終エリアとなるD-4へ集合する手筈を整えていた。


真っ先にエリルチームがD-4へ辿り着き魔物の討伐を始めていったのだが、数こそそこまで多くないものの、そのエリアだけやたらと魔物が『隠れる』様な行動を取る事が多く、クロウラビットもスライムも草陰から全く飛び出してこないと言う状況が続いた。


ゴブリンでさえこちらから巣穴と思わしき森の中へ足を踏み入れなければ姿を見せず、魔物達との遭遇にやたらと時間が掛かってしまったのだ。


やがてシアンチームも合流し、最後にケヴィンもやってきたのだが、それでも殲滅するまでにかなりの時間を要した。


後半になれば時間経過と共に辺りが暗くなった事で、ケヴィンの炎魔法で光源を確保しながらの捜索まで行わなければならない始末となり、格段に効率が落ちてしまった状況だ。


虱潰しに探したものの終ぞ見つからず、苛立ちも相まってそこら辺に転がっていた人の頭部くらいの大きさの石を八つ当たり気味に蹴りつけた時であった。


多少の足先への痛みを覚悟しての蹴りだったのだが、予想に反してエリルの足はその石らしき物体へと深くめり込んでいたのだ。


そしてその感触で直ぐにエリルは気づいた。


こいつは『スライム』だと言う事に。


そして深々とその石の様なスライムへとレイピアを突き刺した事で、この目の前のシステムボードが現れる事となったのであった。


エリルは屈み込みながら、リザルトを眺めていく。



討伐数合計



クロウラビット 200匹

スライム    150匹

ゴブリン    100匹

擬態スライム   1匹

はぐれスライム  1匹




『こいつ』か。


エリルは討伐対象の名前の中に見つけた一匹の魔物の名称を見つめながら、心の中でそう思った。


『擬態スライム』と言う名称の魔物。


十中八九これが最後にエリルが倒した魔物の名称だろう。


他にも気になったのは『はぐれスライム』と言う名称だが、自分は目にしていない事から他の誰かが倒したのだろうと思った。


それにしてもこの全滅系のミッションでの『擬態』スキルを持っている魔物は非常に厄介だ。


その擬態を利用して襲い掛かって来るならまだしも、その能力をただ『隠れる』だけの為に使われてしまえば、これからもこの様な状況が起こり得る事だろう。


ましてや異世界人であるケヴィンやグランでさえこの魔物の登場を予想していなかったのだ。


魔物に関する知識の無い自分達は、これからもこう言った特殊な魔物の生態系に脅かされる事も多々あるだろう。


それを想像した時、妙な脱力感に苛まれるエリルであった。


うんざりしながらも、エリルはシステムボードの閲覧を続けた。



ケヴィン



クロウラビット     58匹 ポイント58

スライム        46匹 ポイント46

ゴブリン        28匹 ポイント56


計 162ポイント



ジェシカ



クロウラビット     18匹 ポイント18

クロウラビット(援護)  22匹 ポイント11

スライム        22匹 ポイント22

スライム(援護)     14匹 ポイント7

ゴブリン        16匹 ポイント32

ゴブリン(援護)     12匹 ポイント12

擬態スライム       1匹 ポイント50


計 152ポイント



シアン



クロウラビット     34匹 ポイント34

スライム        28匹 ポイント28

ゴブリン        25匹 ポイント50


計 112ポイント



グラン



クロウラビット     32匹 ポイント32

スライム        14匹 ポイント14

ゴブリン        18匹 ポイント36


計 82ポイント




単独討伐数はやはり圧倒的にケヴィンだが、ジェシカのポイントが凄まじい。


今回は偶然にも最後に擬態スライムなる前回のボスモンスター以上のポイントを持った魔物を討伐した事も含まれるが、援護で入手できるポイントがかなりの量だ。


下手すれば一生それだけでポイントに困らない程度の稼ぐ事が出来ている程だ。


シアンに至っても団体行動で仲間を守りつつ戦いつつも、自分は好成績をキープし続けるのは流石だ。


グランの討伐数とジェシカの援護数に差異がある理由は、グランが自力で雑材を投げつけて倒している場合も有るから発生している物だろう。


援護ポイントが入る上に、グランにとって損する事が無いのであれば、全部ジェシカが作ったナイフを投擲する方が良いのかも知れないが、いずれにせよ自分のポイントとは関係ない為そこは二人に任せる事としよう。


勿論アドバイスは言うつもりだが。


「……」


そしてエリルがシステムボードをフリックして、次のポイント獲得者を確認した時だった。


順当に行けば、そこにはシアンチームの誰か……『ネイサン』辺りが名前を連ねると思っていたのだが実際には違った。



ライアン



はぐれスライム      1匹 ポイント50


計 50ポイント



次に名前が載っていた人物は、『ライアン・コルゾフ』であった。


エリルは眉間に皺を寄せる。


何故ここに彼の名があるのか。


しばし考えてみるが、マップ上で彼がA-1から動いた気配は伺えなかった。


各エリアの魔物を全滅させる事が目的だった事から、エリルはしきりにマップを見ていたのだからまず間違いない。


つまりライアンに魔物を狩る機会は無かった筈だ。


「まさか……」


しかしエリルは思い出した。


ケヴィンが倒れていた事でうやむやになってしまったが、あの時マップを眺めていた際、A-1が赤く点滅した様に見えた事を思い出したのだ。


つまりあの時の点滅は見間違いでも何でもなく、やはり本当に赤く光っていたのだ。


時間経過と共に初期地点に魔物が現れる。


A-1には魔物が居ないと思い込んでいれば気づかない様なトラップだろう。


今回のこの全滅系のミッションでこれをやられると、進軍していたところからスタート地点へ戻らされる形となる。


その上名前からして本来なら見つかりにくいタイプの魔物だったのだろう。


最後に倒した擬態スライムの様な形で討伐難度が高い魔物、例えば逃げ回り続ける様な魔物だった可能性もある。


そこを偶然にも、戦いに参加するつもりのない面子が初期位置で待機すると言う、普通では起こり得ない状況と初期位置に魔物が出現すると言うギミックが偶然にもマッチした事で、早々にレアモンスターが討伐された……と言う様な状況なのだろう。


ライアン・コルゾフが持っている異能は確か『一撃』と言う名だった筈だ。


大体その名称から想像できる効果は、一撃だけ特大のダメージを与える事が出来る様な能力となるだろう。


彼は咄嗟にその能力を使った事で偶然にも魔物を倒してしまった……そう言う事だ。

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