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男の友情?

ケヴィンは息を整えた後、少しだけ目を伏せる。


「何故俺の為にそこまでする? 気を利かせる必要なんてない筈だ。俺自身極力お前らとは関わらない様にしていたからな」


「そんなん単純やわ。初日に背中を預け合って一緒に戦った。昨日は俺やグランが色々異能について調べていた時に常に近くで見守っていた。今日も一人で身を削って魔物を討伐に向かっていった。関わらんとこ思うとる奴の行動とちゃうで。あんた天邪鬼やんか」


異世界人に天邪鬼と言う言葉の意味が通じるか分からないが、似た様な言葉は存在している事だろう。


今更過ぎる話だが、エリルはこのデスゲームに巻き込まれてからずっと『日本語』しか話していないにも関わらず、異世界人のケヴィンやグランに言葉が通じる上、彼らの言葉も理解できている状況だ。


勝手に何かしらの都合のいい翻訳魔法が発動しているのだろう。


「そう言うつもりじゃねぇよ。死と隣り合わせの状況で何間抜け面かまして呑気にやってるんだと思っていただけだ」


「にしては妙に優しい表情でこっちを見ていたんやけどな。なあグラン」


丁度そこに遅ればせながらやってきたグラン。


彼の後ろには息を切らしながらも付いてきたジェシカの姿があった。


「初日からずっとそうだったな。仮面の男に炎をぶつけたのも俺達の気持ちを代理してくれたのだろうと勝手に思っている。自分の為に行動してるとか言いそうなタイプだが、その行動が周りの為になる様なタイプだ。俺の仲間にもそんな奴が居たぞ」


「いや何処から聞いてたんや。中々的を得たセリフ言うやんけ」


「なんかそんな雰囲気っぽかったから言ってみた」


「空気読むの激うまかい。あんたモテるタイプやろ」


「多分シアンの方がモテるぞ」


「あいつは……まぁ……うん、せやな」


何となく否定したい気分が芽生えたのは何故だろうか。


「ケヴィン! 無事だったか!?」


「噂をしたら来たやんけめんどい奴が!!」


「面倒とは何だ! これでも黙ってればいい男ランキング20年連続一位だぞ!? かっこシアン調べ」


「自分でかっこまで言うやつ初めて見たわ。あと分かってんやったら少し黙っとったらええやんけ」


恐らくシアンもマップを確認してケヴィンの状況を心配したのだろう。


居ても立ってもいられず、自分達がここへ向かっている事も確認する前に走りだした、と言うところか。


「……そういう事言うタイプだったんですねシアンさん……」


「な? 意外と残念な男やろ?」


「残念……と言うよりは俺は親しみ易いと思うんだがな」


「よさんかい。褒めると調子に乗るタイプやでこいつは」


「ケヴィン、調子はどうだ?」


「そこは調子に乗るとこやろがアホ」


言いながらシアンはケヴィンの隣に屈みこんだ。


エリル達がいる事でそこまで問題じゃない状況である事は把握出来ただろうが、ケヴィンが食事をしていない状況を知っているシアンからすればやはり心配の芽は付きないのだろう。


「……お前らも……わざわざ俺を確認しに来たのか?」


「当たり前だろう。何かあればいつでも助けに来るさ、俺達は仲間なんだからな」


「仲間になったつもりはねぇがな」


「つもりが無くても結構助けてくれてるだろ」


「偶然だろ」


「偶然が何回も続いとったらもうそれはワザとやわ。へったくそな照れ隠しはせえへんでええから、喉が潤った次はこいつを食うとけ」


言いながらエリルはアイテムボックスから食料を取り出した。


「……『ゆで卵』? 確か昨日の夜食でエリルが食べてた奴だよな?」


「せやで。俺の予想通りアイテムボックスの中入れとったら、入れたもんの時間は止まるみたいやわ。せやから今も出来立てほやほや、栄養満点やで。今のケヴィンには丁度いい栄養補給剤やねん」


昨日エリルがアイテムボックスの昨日を把握しようと、中に入れていた食料はこのゆで卵であった。


半日以上経っても鮮度が保たれている状況を確認する為が目的ではあったのだが、先程エリルが言った通り何も食べていないケヴィンに対してすぐに食べる事が出来る栄養補給として確保出来たらとも考えていた。


朝の時点で様子を見たが、時間が経っても全く冷めている様子が無かった為に、アイテムボックスの中は時間が停止しているとエリルは判断した訳だ。


「俺の実験の被害者になったらええねん」


と、エリルはあくまでついでだと言わんばかりにゆで卵をケヴィンへと渡すのだった。


「……お前も……誤魔化すのが下手くそみてぇだな」


ケヴィンにはしっかりと彼の為だとバレていた様だが。


「……済まなかった。そして……ありがとう」


まぁ、それでも良いかとエリルは思った。


ケヴィンはエリルからゆで卵を受け取ると一気に頬張り、大して咀嚼もしないまま飲み込んだ。


よっぽど空腹だったのだろう。


「まだまだあるで。卵は満腹中枢刺激するからこう言う時助かんねんな」


「だがケヴィン……ファミリーハウスへ戻った時には、ちゃんと食事してもらうぞ。いいな?」


そう言うとシアンはアイテムボックスから食事券を一枚取り出し、ケヴィンへとそれを握らせる。


ケヴィンは右手をゆっくりと持ち上げそれを見つめた後、もう一度強く握りしめ再び口を開いた。


「何から何まですまねぇな。この借りは必ず返させてもらうぞ」


「気にするな。もう十分に返して貰ってる」


「戦力としてなら……これからも期待してくれて良い」


「戦力だけとちゃうで、無事に生き残ってくれてたらそれでええねん」


あくまで自分を駒としてしか考えていない様な発言だった為、エリルは敢えてそこを否定した。


「これが……男の友情ですか」


何故か後ろの方でジェシカが呆けた発言をするのであった。



――――……。

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