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全部お前が悪い

そもそもあの風圧を飛ばすだけの異能が本当にそれだけの効果しか持たないのであれば、どう考えても『ケヴィン』が持っていた『エレメント』の異能の完全『下位互換』と化してしまう事だろう。


空気圧程度の風魔法ならケヴィンはいくらでも放てていた。


その上で彼は他の属性も扱えていたのだ。


確かに上位互換、下位互換と言う物は存在しないとも言い切れないが、ただの風圧だけで終わる筈がないと睨んだ結果、それはほぼほぼ確定的な物だと判断したのだ。


相手側のもう一人のハンターはジョージ。


それが分かったからこそ、6日目の先攻でディムには『ヨーコ』を侵攻させた。


たとえ警備員が居たとしても、勝てる要素は大いにあった。


先程も言った様に、ファミリーが五人以下になった時に発動する能力向上がある。


その時点でディムの能力は1.7倍化している。


そして『それだけ』では無かった。


片方のハンターが居なくなった事で発動する、ハンターにのみに効果のある救済処置。


ディムのシステムメッセージに表示された能力の『二倍化』と言うメッセージ。


通称『ローンウルフ化』と言う処置が施された事で、現在ディムの能力は二倍化しているのだ。


直訳すれば一匹狼。


人狼ゲームをモチーフにしている事で、『ハンター』と言う役職ではあるがローンウルフ化と言う名を付けられているのだろう。


そして勿論、この現象は相手ファミリーにも同様の処置が施されている筈だ。


ボブがハンターだった事は指定フェーズの際に判明している。


テュールファミリーもジョージが最後のハンターとして残っている。


つまりジョージもローンウルフ化している状況と言う事。


いずれにせよ、能力アップしている状態のディムなら、警備員が居てもヨーコを落とす事は可能だろう。


問題は『制限時間』だ。


ハンターが入出後、その部屋で行動出来る時間は五分と決まっている。


ここでディムがヨーコと警備についている存在のどちらも降参する形にまでもって行けば、相手陣営のハンター以外の存在が一人となり、こちらの勝ちが確定する。


だがそれは欲張りすぎだろう。


警備員が必死になって室内の人物を五分間守り切ると言う事も不可能では無い。


警備員を落とすと言う方法もあるが、能力が向上している警備員を狙うよりも、監視員、もしくは一般人であるヨーコを倒す方がよっぽど現実的だ。


そして、ディムはその難易度の高いミッションを無事にクリアした。


ヨーコを降参させる事に成功したのだ。


しかも状況はこちらが予想していたよりも遥かに過酷な状況だった様だ。


相手側はジョージがハンターである事がバレていると踏んだのか、それとも一種の賭けだったのか、単純にハンター二人掛かりが出来た事で味をしめたのか……ヨーコをアリッサとデイヴィットの二人掛かりで『警備する』と言う行動を起こしていたのだ。


だが、その状況でディムはヨーコを集中的に狙い、丁度三分経つ頃に彼女が降参せざるを得ない状況を作り出して、ヨーコを降参に導いたと言う事だ。


ある意味で、ローンウルフ化のシステムがディムにとって良い様に働いたのだろう。


彼は普段から身体強化2を使っていた。


ローンウルフ化の影響で能力が二倍化すると言う事は、ディムからすれば『普段の動き』が出来るのと同意語だった。


その影響で彼が出せる最大の出力を発揮できたと言う所だろうか。


どちらにせよ、これで4対3の状況が作り上げられた。


後は相手の侵攻フェーズを耐え抜くだけだ。


仮に、ディムがハンターだとバレていたとしよう。


次の協議フェーズからの指定フェーズの際にディムがハンターだと指定されたとしても、こちらは同じくジョージをハンターとして指名する。


その場合ルール上は引き分けとなり得られるポイントも双方のファミリーに振り分けられる事となるが、より生き残っている人数が多い方が得られるポイントが増えると言う仕組みが作られている。


ディムが作った人数差を守る事。


それが今エリル達に与えられたミッションでもあった。


だからエリルは、最も可能性の高い生き残る為の采配を行った。


グランにジェシカを警備してもらう事。


それが一番人数が減りにくい形となり、かつ相手側がもっとも狙いうちを行いそうな場所であった。


あくまでディムがハンターだと露見している事を前提に考えた配置だ。


ローンウルフ化が発動しているハンター同士で争う事はほぼほぼあり得ないだろう。


ハンターが分かっている状態で、指定フェーズで確実に退場させる事が出来るのに敢えてそこでハンターを狙う事等する筈がない。


そんな事したって人数差を覆せないからだ。


ではどうするか。


ディムがやった時と同じ様に、例え警備が居たとしても本気をだせばなんとか降参まで持っていけそうな人物を狙うと言うのが最善の判断となるだろう。


彼女を悪く言うつもりは無いが、五分と言う間で降参まで持っていけそうな存在は、こちらのファミリーではジェシカしかいない。


エリルは初日にハンターを追い返している実績がある事から、無理にそこを狙ってくると言った事は考えにくい。


手強いと分かっている相手よりも、より可能性の高い方を狙うのは当然の事だ。


寧ろエリルが相手側だったら同じ事をすると考えている。


そう言った思いから、ジェシカが狙われる可能性が非常に高いと考え、グランに彼女の警備をお願いした。


……した筈なのだが。


『ハンターが入室しました』


相手の侵攻フェーズで、ハンターが狙ってきたのはまさかの自分であった。


しかも、来訪者はそれだけでは無かった。


『グランが警備に駆けつけました』


入り口側へ相手ハンター、そして真隣りにグランがほぼ同時に登場する。


「……何してんねんグラン……」


「よく考えてみれば、あれだけ煽り散らかしているお前を相手のハンターが放置するなんて考えられなかったからな。全部お前が悪い」


……まったく、どいつもこいつも予想外の行動しやがって……とエリルは嘆く。


相手のハンターにしてもそうだ。


何故このタイミングでエリルを狙うのか。


ポイントの確保を諦めたとでも言うのか。


本当にグランの言う通り……ただプライドが許さないからと言って最後の自分を倒しに来たとでも言うのか。


なんて非効率な行動だとエリルは思う。


これまで非常に優れた、頭の回るブレインだなと捉えていたのだが……ここに来て悪手を取るなんざリーダー失格だとも考えたのだ。


……だが、そう言った『人らしい行動』も……実は嫌いではなかったりする。


そして何より、『ジェシカを守れ』と指示したにも関わらずそれを破ってここへ来たグラン。


結果だけ言えば……助かったと言えよう。

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