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エリルのせい

「おい! そんな事より何で俺に警備をつけなかった!? 俺が襲われてたらどうするつもりだったんだよ!?」


「明日の動きでも確認しておこう」


ツギシーヌが遠巻きに何か叫んでいるが、それを無視する様にグランが話を続けた。


あいつの話を聞いていても、間違いなく何も建設的な話にはならないだろう事をここに居る者達は知っているからか、それに同調する様に言葉を続けた。


「次の警備対象はそのまま『交換』する形で良かばい? それとも誰か別の対象に切り替えるとね?」


恐らくわざと方言をとっ散らからして使っているマーロンは、監視員として守られていた事により次の動きの確認がしたかった様だ。


警備員の役職持ちが警備をつけられる対象は、連日同じ人物を指定する事は出来ない。


警備員が二人存在している時点であまり意味のないルールかもしれないが、グランは明日もジェシカを、リアムはマーロンを指名防衛する事は出来ないのだ。


しかしマーロンが言った通り二人が警備対象を交換する形であるのなら実行できる為、ある意味で連日同じ人物を指定していると同意語である。


このルールに苦しめられる様になるのは、警備員が一人になってしまった時だろう。


そうなると連日同じ人物を選択できないと言う縛りの影響で。必ず守りたい人物を指名できないタイミングが発生してしまう事となる。


ただ、今は相手チームもこちらのチームも、警備員は生き残っている状態なのであまり深く考える必要はなかった。


しかし警備対象を変えると言う作戦は、今後の相手との心理戦においては必要な手段となってくるだろう。


こちらとしては相手の異能を見抜く為にも監視員は守りたい。


どちらの陣営も最初はほぼそれを主として警備対象を定めているのだろうが、相手側に監視員の正体がバレた時にはその限りでは無くなる。


監視員の正体がバレた場合、本来ならゲームのルール上重要な役職である事から相手チームもなんとかして監視員の退場を遂行したいと思うだろう。


自分達の異能が相手にバレるという事は、ハンターの正体が明かされる大きな要因となるからだ。


だからこそ高確率で両陣営は監視員を守る為に警備員をつける事となるが、それを逆手にとってハンターは警備員の『付いていない』別の参加者を狙うと言う手段も取れる。


ディムが警備員付きのジョージを降参させる事が出来ずに退散してきた時の様に、いくらハンターであっても1対2は分が悪い時がある。


もしかしたら勝てない可能性もあると言う状況で、それが分かっていて監視員を狙うよりかは、この際こちらの異能がバレると言うリスクは諦めて、確実に勝てる参加者を狙う方が結果的にいい場合だってある。


そう言った互いの心理を読み取り合って、相手のハンターが訪れそうな場所に警備員を配置すると言うのも、今後必要になってくる作戦の一つだろう。


「だから!! 俺を守れって! 今回は確かに狙われなかったけど今回も無事かどうかなんて限らないだろう!?」


「まだこっちの役職はほとんどバレてへんのやから、ひと先ずはそれでええんとちゃうか? 俺自身は次は絶対狙われへんやろうけどな」


徹底的にツギシーヌを無視しながら話を進める事で、彼がいくら喚いた所で無駄だと言う事を知らしめる。


次々と降って沸いてくるこういう輩達は、相手をすればするほど付け上がる事を学んだからだ。


「くそ……おめぇら! 俺にそんな態度とりやがって……今に見てろよ! 必ず後悔させてやるからなぁ!」


と、誰も視線を向けていないが視界の端で恐らく中指を立てているであろう仕草を見せながら、ツギシーヌはずかずかとその場を去っていった。


「そんで、次の作戦やけどな」


彼が居なくなった事で、より詳細な話を切り出し始めるエリル。


何をどう後悔させるつもりかは知らないが、彼にこちらの作戦を伝える事は避けた方がいいとエリルは考えていた。


協議フェーズを見ていて思ったがのだが、あの場所では発言するタイミングは限られていると言えど、発言してはいけないというルールは存在しない。


そんな中で信用のおけないツギシーヌへ作戦を伝えて、彼があの場でこちらの不利になる事や相手にとって有利になる様な発言を行い兼ねないとエリルは考えたからだ。


流石に自分達のチームが不利になる様な行動はしないと思いたいが、念には念を……と言ったところであった。


エリルは次に行う作戦内容を、ツギシーヌ以外の者達へ詳細に伝えた。


エリルはハンターでは無い。


だが相手はハンターを追い返した事で、間違いなくエリルをハンター候補として扱っている事だろう。


確信が持てなかったからこそ一度保留にして指定を行わなかったのだが、次もそのままエリルをハンターだと思い込ませ続ける事は難しい可能性がある。


エリルの言った通り十中八九次の相手の侵攻フェーズでエリルが狙われる事は無いだろう。


勝てない可能性がある存在に二度連続侵入を試みる事等ない筈だ。


そのアドバンテージを利用して、エリルは相手側に更に自分がハンターだと思わせる様な仕掛けを発案していくのであった。



――――……。



「くそ……くそ……あいつら馬鹿にしやがって……調子に乗ってられるのも今の内だ!! 俺は……俺だけは絶対に生き残ってやる……」


ファミリーハウスの自室に戻り、自分のベッドに向かって拳を何度も振り下ろしている。


自分の力ではあの場にいる誰にも勝てないから何かに当たるしかないのだ。


実際にはテキートあたりには勝てるのかもしれないが、殴ったところで手痛いペナルティを食らうのが落ちだ。


先日エリルを殴り飛ばした時に彼は大事に貯めていた100ポイントを丸々失ってしまっていた。


いざと言う時に使おうと隠し持っていたのに、あの一発で全てを失い絶望しかけていたのだが、その翌日には何故か最前線でエリルが活躍しまくり、まんまと500ポイントものポイントをもぎ取って来た。


最初は八つ当たり的にエリルを選抜として送り込んで、相手選手からぼっこぼこにされる様を見て溜飲を下げようとしていたのだが、まさかのたなぼた式にポイントを手に入れられる事となった。


おかげ様で身体強化2を手に入れられて喜んでいたのも束の間、まさかそのタイミングで次のミッションの10人目に選ばれる羽目になるとは思ってもみなかった。


いつもの様にうまい事ピンチを凌いで自分は安全圏からポイントを取得する手段を模索する事しか考えていなかった彼が、突然戦いの場に頬りだされる事になろうとは。


どれもこれもすべてエリルのせいだ。


ポイントを奪ったのもエリル。


ポイントを自分に与えて身体強化2を手に入れさせて、今回の人狼ゲームに参加させられてしまったのもエリルのせいだ。


そうに違いない。


だから……今に見てろ。


必ずお前を……地獄に叩きつけてやる。


そう言った小物過ぎる思考回路が、彼を自ら破滅の道に進めている事を本人は知る由もなかった。



――――……。

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