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協議フェーズ

互いの侵攻フェーズが終了し、現在ロキファミリーとテュールファミリーは一斉に集っている。


と言っても、互いの陣営の間に境界線を敷きながら、少しだけ離れた位置で顔合わせをしている様な状況だ。


現代で見たことあるインターネット上での『人狼ゲーム』でもこの様な状況を見たことがある。


確かその時は椅子に座りながら参加者が円を描いている様な配置だった筈だ。


今回はそれがチーム対抗戦である為、全員が横一列に椅子に座り込んで相手チームと対面している形になる。


合計人数は『19人』だ。


互いに10人ずつでこの人狼ゲームが開始された為、どちらかのメンバーが一人欠けた事になる。


見ればすぐに分かる事だが、欠員が出たのは相手チーム……つまり『テュールファミリー側』だ。


こちらのハンターである『ネイサン』が入室した部屋に、恐らくだが警備員もいなかった事により役職無しと思わしき一般人が存在した。


ネイサンは『エリルの指示』で『異能』を扱わずにその人物を翻弄し、『タイムリミット』を経過させた事で相手に『降参』させる事に成功した。


ハンターの特権として、ハンター側は好きなタイミングで入室した部屋から退出する事が出来る。


あくまでシステムボードを経由している事から、システムボードを操作出来る状況である事が絶対条件だが。


それに対して自室に侵入された側、ターゲットにされた狩られる側にも、『降参』と言うコマンド自体は用意されている。


一番最初の方で説明があった様に、ハンターが相手を退場させる方法に生死は問わないとされている。


つまりそれは相手を『殺す』と言う手段を取れると言う事にある。


そうなった場合大抵の者が、ハンターとの実力差がある事で勝てる筈が無いのだからすぐに降参コマンドを押しそうなものだが、この『獲物側』はそう簡単には降参する事が出来ない。


設定された一定時間、獲物側は生き残り続けなければ降参コマンドは出ないのだ。


恐らくだが名目として『デスゲーム』と称されているこの代理戦争において、獲物側がすぐに降参して退場する事が可能となってしまえば、人狼ゲームとしては成り立ったとしてもデスゲームとしては成り立たない事からそういう対策をされているのだろう。


まったく趣味の悪いルール設定だとエリルは心底感じる。


獲物側が降参コマンドを使用出来る様になるまでに設けられた時間は『3分』だ。


意外と短く感じられるかもしれないが、自分より格上の存在に対して3分間生き残り続けると言うのは体感的には凄まじく長く感じられる事だろう。


……自分が追い返した側の為になんとも説得力の無い言い回しだが。


『普通』はエリルの様にハンターに立ち向かおう等とは考えられない筈だ。


ルールとしてハンターは通常よりも1.5倍強化されていると謳われているのだから余計にだ。


ネイサンから聞いた話でも、やはりネイサンが狙ったその役職無しの人物もほぼほぼ無抵抗だったらしい。


軽く拳を交えただけですぐにこちらには勝てないと悟ったのか、降参するから時間が欲しいと交渉を持ちかけてきた様だ。


勿論退場させる方法自体はネイサンに任せていた為に、例え相手を殺してしまったとしてもエリルはネイサンを責める事は無いが、それでも彼は自らの判断で対峙した相手を『生かす』と決めた様だ。


ほぼ三分間対象を監視するだけに終わり、相手は降参コマンドが使用可能になった瞬間それを実行して室内から消えていった様だ。


それによって相手は9人となり、合計人数が19人となったのだ。


もう一人のハンターである『ディム』は上手くいかなかった様だ。


入室した先に不幸にも警備員が存在しており、1対2の状況となったのだ。


もちろんディム側にもエリルは『異能』を使うなと指示を出していた為、ディムもネイサンと同じく異能を使わずに対峙。


その状況では流石に能力で上回っていたのだとしても相手を倒しきる事が出来ず、ボロを出さない様にして早い段階で退室する判断を行った様だ。


それはそれで全く問題ない。


寧ろその室内に居た二人が、まんまと『異能』を発動してきたらしく、ディムは二人の人物の異能の情報を持って帰ってきた事になる。


これは退場させる事が出来なかったとしてもこちら側に大きな利益をもたらす結果になったと言えるだろう。


その情報を元に、ロキファミリーはディムが戦った二人以外に監視員のコマンドを仕掛ける事にした。


一人目は栗毛の男性、『ジム』と言う名の人物が『音』と言う異能を持っている事が監視能力で認識できた。


異能名だけ聞けば、中々優秀な異能ではないだろうかとエリルは思う。


想像できる効果としては自分が発する音か何かを利用して、その音量を上げたり下げたり出来るのではないかと思う。


音を利用する事で攻撃を行ったり、無音状態にして気配を察知出来ない様にしたり等、使い方がいろいろ想像できる能力だなと、少々羨ましささえも感じられた。


次の人物は赤毛の女性、名を『シンディ』と言った。


そして彼女の異能は……『爆発』であった。


その監視結果が出た時、ロキファミリーの一同はエリルに視線を向けていた。


勿論エリルが経験した事も彼らには共有している。


だからこそ誰もが思っただろう。


エリルを襲ったハンターはこの『シンディ』と言う女性ではないのかと。


一日の終わりのこの対面した状況で、双方のファミリーはハンターと思わしき人物を指名する事が出来る。


勿論指名を行わないと言う手段も存在しており、何故なら指名を行った人物がハンターでは無かった場合は、逆に自分達側の陣営から『ハンター以外』の者がランダムで即退場させられてしまうからである。


このゲームはルール上相手チームのハンターを二人とも当てる、もしくは退場させるか、相手のハンター以外の人物が自陣のハンターの人数と同人数になる事で勝利判定となる。


現状としては双方にハンターが二人残っていると言う状況であれば、相手チームを『四人』にした状況で協議フェーズを終え、ハンター二人が追放されなければ勝利と言う形だ。


やけに中途半端な人数が勝敗判定となるが、これは単純にハンター二人がそれぞれ残った一般人二人を同時に攻撃する事で相手のハンター以外を全滅させる事ができる為という、なんとも投げやりなルールが作られているからだ。


そもそもその様な状況になっても相手のハンターが分からないなんて事はほぼほぼ無いだろうが。


今回の様にエリルが返り討ちにしたハンターらしき存在が、監視員のコマンドによって浮き彫りとなった。


となれば十中八九今回の協議フェーズでこのシンディと言う人物を指名すれば、ほぼ確実に相手側のハンターを一人退場させる事が出来るだろう。


因みに相手の侵攻フェーズの際、もう一人のハンターからは誰も襲われなかったらしい。


これは相手のハンターが侵攻を行わなかった為では無く、恐らくグランかリアムのどちらかが狙われた事によって起きた現象という事だ。


警備員は相手の侵攻フェーズが始まったタイミングで、自室から警備対象の部屋へと飛ばされる。


そうなった際に本来の警備員の自室だった場所は空室扱いとなり、そこに入ってしまったハンターは無駄足となってしまう事となる。


1ターン無駄にさせたと捉える事も出来るが、逆に今回グランかディムが警備員だとバレてしまったと捉える事も出来る。


警備員はその能力上、バレたところで大した情報にはならないのかもしれないが。

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