夢
目の前に広がる荒れ果てた村、倒れて崩壊した家、そして、大地から生えてきている普通じゃあり得ないような大きさの木の根が村の至る所で崩れた建物や車を潰すようにその上に乗っていた。まるで“大量の木の根一本一本がさっきまで動いていたよう”だった。
1人じゃ怖くなって誰か人がいないか探そうとしたその時、どこか遠くから声が聞こえて来た。「...」何を言っているのか聞こえない「…い」少し聞こえた、なんて言っているんだ?「ぉーぃ」ん?「おーい!」その時俺ははっとした。
「流、いつまで寝てんだよ!次理科室だから早くしないと遅れるぞ?」とクラスメイトが言ってきた、さっきまでのあれは夢だった、俺は授業中居眠りしていたんだ。
「やっべ忘れてた!」俺はさっきの夢について考えるのを一旦やめて急いで机から教科書とノートを取り出して理科室に向かった。キーンコーンカーンコーンと6時間目終了ののチャイムが鳴って教室に戻り、帰りの会を済ませて外に出た。
そして俺はさっきの夢はなんだったのかとまた考え始めた。実は、どこかであの光景を見た事がある気がするんだ。思い出せないが、すごく昔に本当に現実で見たような、そんな感じがした。
思い出せそうで思い出せない記憶を思い出そうとしながら家に帰っていると、向こうで子供2人が炎や水を操って遊んでいるのが見えた。
そう、この世界では特殊能力を使える人間と使えない人間がいるのだ。まず、どんな人でも例外なく生まれつき治癒能力は使える。でも、他の能力に関しては正直運だ。
生まれる直前にこの世に数えきれないほどある能力の中からランダムで神から能力を与えられる。だから、あの夢で見た木の根もなにかの能力なのかもしれない。
ちなみにもちろん治癒能力以外持ってない人だって沢山いる、というか他の能力を持ってる人の方がだいぶ少ないんだ。ちなみに俺は持っている、青色の球体のような物を放てる能力、エネルギー弾?みたいな感じだ。
当たると爆発する。この青いのを掴んで殴ったと同時に握り潰すと殴る威力+爆発でただのパンチの威力が跳ね上がったりするし、ジャンプすると同時に足元で青いのを爆発させたら爆風+ジャンプ力でめっちゃ高く飛べる。
だからこれを応用すると前にいる敵とかにえげつない速度のタックルも可能になるという結構汎用性が高い能力だ。
でも俺は自分の能力を家族以外に伝えた事がない。
なぜなら注目されてしまうから。能力を持っているのは恐らくこの学校では俺だけ、バレたらみんなに変な目で見られるかもしれないという恐怖心から誰にも言ったことがない。
だからもし襲われたりした時能力を使わなくても勝てるように身体能力を鍛えまくった。
だから体育の成績だけは飛び抜けてる!でも、ちっちゃい頃から筋トレとかしてたせいで身長は高2で165cm、自分で言うと悲しくなるけどすごくちっちゃい。ストレッチちゃんとしておけばよかったって今でも思う。
そんなこんなで歩いていると、おかっぱみたいな赤い髪をした高身長イケメンと俺よりちょっと背が小さいブカブカなパーカーを着てフードを被った男2人が俺の横を通り過ぎた。
そして多分、俺も見られていた。黒パーカーの方だと思う、鋭い視線を感じた。
俺はあの2人の事がすごく気になった、“俺と同じ”ような気がした。
あの2人は確か俺と同じ学校で同学年だったはず、別の教室で顔を見た事があるから多分そうだ。
明日確かめよう、あいつらも能力を持っているのか。