一度は諦めた夢を追い求める航空業界に憧れた少年の物語です。
《プロローグ》
「当機はまもなく離陸いたします……」
耳を傾けるとそんな機内アナウンスが聞こえてきた。
ふと目を開けてまわりをいちべつする。アイマスクをつけてすでに寝ているサラリーマンやはしゃぎながら窓の外を眺めている子ども、修学旅行なのか制服姿の学生もいた。
もう一度目を閉じて大きく深呼吸をする。
いま僕が座っているのはコックピットの椅子じゃない、客席でもない。CAが座るジャンプシートだ。
《第一話》
いつものように窓の外を眺めると青空の中に白くて丸い雲が浮かんでいた。
教壇の前では先生がいつものごとく眠たくなる様な声で授業を進めている。
最後の授業だからか、それとも先生のせいなのか、教室内ではうたた寝をしている生徒が多いようにも思える。
少しため息をつきまた窓の外を眺めた。
いつもならば高三の大事な時期によそ見などをしてはいない。
しかし今日はもう授業などを受ける気にはなれなかった。
キーンコーンカーンコーン……
ここでやっと終了のチャイムがなり一気に教室の中が騒がしくなった。
ぼくは荷物をまとめさっそうと教室を抜け出す。
『お〜い、凌央!』
ゲッ
気づかれないように出たはずなのに、、、
『どうしたの、陸空?』
牧原陸空…幼稚園からの幼馴染で小中高とずっと同じクラスだった。
『どうしたんだ、凌央?そんなに急いで。このあとみんなでカラオケ行こうって話してたけど凌央も一緒行かね?』
『ごめん、陸空。今日は図書委員の当番があるからいけないや…』
『そっか。また誘うわ‼︎じゃあな〜』
陸空の背中を眺めながら本当に悪いことをしてしまったと自分で反省をする。
本当は今日、図書委員の当番なんかは無い。
今日だけは一人で居たかった。