18.
散弾銃。
その他、銃身の長い武器を手に手に数名が、釆原たちのいる階の床を踏みしめる。
数登たちの様子を伺い身を潜めていた階段部分から、上がって来たのだ。
辺りの帯電は強くなっていった。
掴みかかったというより、レブラは数登に飛び掛かったと言っていい。
殴ってはいないが組み伏せ合っている。
下の騒ぎも大きいものになった。
今いる数名だけではない数の人々が上がってきそうな勢い。
釆原と僚稀は息を詰めていたが見つかるのは、時間の問題だ。
やっぱり、と釆原は思った。
数名のうち一人がこちらへ来たのだ。
ついでにこっちも火花が散るのか。
釆原は少し用意したが、相手は声を掛けてくる。
「あなたも追って来たんですか」
少々面食らう。
「追って来たというかまあ……。僕は成り行きですけれどね」
僚稀は苦笑しながら言った。
「盗みがあったのは御存知でしょう」
ということは捜査員か。
「レブラは香炉を下にいる仲間へ投げて渡しちゃったみたいですよ。今この階にはないっぽいです」
僚稀の言葉に捜査員は動揺の色を見せる。
「どうやら複数だったようですよ」
釆原は言った。
何やらエンジン音のようなものも激しくなってくる。
数登とレブラは素手。
一方捜査員は武器携帯。
釆原と僚稀は丸腰だ。
数登とレブラは捜査員には気付かない。
レブラは数登の襟首を掴んでいる。数登が劣勢のようだ。
「偽物だと言いたいんだな」
「ええ」
「では本物はどこにある」
数登はレブラの腕を掴んで体勢を立て直した。
「今は、恐らく会場へ」
「言わせておけば」
「事実です。九十九社の仲間に運んでいただきました。定金さんです。あなたも御存知のはずでは」
「定金」と聞いて釆原と僚稀は顔を見合わせた。
レブラが飛び掛かるのを数登は避けるように、そして脚でレブラを倒した。
スーツから何か取り出す。
「いくつか持ち合わせていた贋造品です」
その手から零れ落ちたのは宝石の粒。
「あの金の香炉は一部が本物でした。装飾のスピネルがそうです。途中で抜き取って換えておきました。定金さんには本物のスピネルをお渡しして、それを運んでいただけるように」
「僕の受け取ったケースって……」
「そういうことだな」
定金が僚稀から受け取ったケースには数登が抜いたスピネルが入っていたのだろう。
ドームを出てきた途端に定金が戻った理由がようやく分かった。
レブラは数登の脚を打って組み伏せた。