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(三)-2

「いやあ~、すいませんねえ~」

 季節外れのアロハシャツを着た中高年の男性だった。その顔は一瞬しか見なかったが、ヘラヘラと笑っていた。

 気持ち悪いと思ったので、そちらを見ないようにしながら「何階ですか」と尋ねた。

「あなたと同じ、五階です」

 その言葉を聞き、私は思わず男性の方に振り向いた。行き先は同じ五階の人間……。

 その男性は、503号室の竹浦さんのご主人だった。

 竹浦さんの顔は笑みで満たされていた。笑っているというより、妙に緩んでいる、にやけているような笑顔で、私は気持ち悪く感じた。だから私はすぐにエレベーターの操作盤の方に顔の向きを戻した。


(続く)

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