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LIE≠CENSE  作者: Hiromwell
1/4

記憶

評価お願いします。

声が、聞こえた。

だが、何と言っているのか分からない。

それどころか、「もう一度言って」と返事をすることもできないのだ。

ここはどこなんだろう。俺は今まで何をしていたんだろう。

ただただ疑問が生まれては消え、生まれては消え、を繰り返す。

周りを確認しようと首を動かすこともできない。

暗闇の中で縛られている、そんな感覚がある気はした。

そもそも俺に話しかけてくる奴は誰なんだ。

俺はこいつを全く知らない。どこかでちらっと見た、というわけでもない。

なのに、ひどく懐かしく感じるのはなぜだろう。


相手はまだ何かを喋り続けている。

俺が見えているのだろうか。全く赤の他人に呼びかけているのだろうか。

だとすればかなり変わった人だ。

それでも相手は話を続ける。

でも、赤の他人に向ける瞳ではないような気がした。


そんな中、唐突に。

俺の思考を貫くように、相手の声が今までよりも圧倒的に大きく聞こえた。

「約束して!」

とても悲しそうな声だった。

そしてそれを聞いた瞬間、激しい頭痛が俺を襲った。

言葉では表せないような痛み。

痛みに悶えながら相手を見ると、なぜかはっきりと見えた。

風か何かで髪がなびき、目からは涙がボロボロとこぼれていた。

それを見ると、なぜか俺も悲しくなった。

何か応えないといけないような気がした。

必死に口を開こうと、叫ぼうとする。

だが、口は全く動かない。

再び相手を見ると、少し小さくなっている気がした。

いや、気がした、ではない。

しっかり小さくなっている。いや、離れているのだ。何かの光に包まれながら。

そして突然、相手に反応するかのように、右手が動いた。

自分の脳による命令ではない。

まるで待っていたかのように、手がしっかりと伸びている。

相手を逃がすまいと、必死に。

それに続くように、カッと目頭が熱くなった。

ボロボロと涙が、とめどなく溢れ続ける。

俺は…泣いているのか?なぜ?

そんな疑問も、今はどうでもいいような気がした。

全然どうでもよくないのに。

そして。

今の今まで全く言うことを聞かなかった口が、突然開いた。

よし話せる、と気づくよりも前に、言葉が舌を通り抜けた。

「約束しよう!そして…またどこかで…もう一度会おう!」

誰の声だろう。俺の声ではない。明らかに俺よりも低い。

だが、俺の口から出た言葉だった。


分かったことは、さっきの返事だということ。

相手も察したようで、涙でぐちゃぐちゃだった顔が、パッと明るい笑顔になった。

それを見ると、なぜかひどく落ち着いた。安心した。

あんなに激しかった頭痛も、今は感じない。

もう一度相手を見る。

相手は笑顔のまま光に包まれて、フワッと消えた。


静寂な暗闇の中。

残ったのは、寂しさと、悲しさと、ちょっとした幸せ。

今のはいったい、何だったんだろう。

分かるような気がしたが、やはり全く分からなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かなり感じました。ふぅ(〃∇〃)
[良い点] 夢がこれからの伏線になっている気がして興味深かったです。今後の物語の展開に期待しています。小説投稿頑張ってください。
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