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第96話 油虫(5)

  PM 8:25

 作戦続行中。


 この洞穴……下に向かって、傾斜していた。

 そして、次第に……

その音が はっきりと、聞こえてくる。


「ザァ―――――――」

  間違いなく、水の音。

  地下水脈だ。


「ヤツも生き物。水は、必要…ということだな。」


「ああ~。そうだね。」

 俺の質問に、マウアーが答える。


 俺たちが、たどり着いた場所は、鍾乳洞みたいな洞窟だった。

 洞窟の真ん中を 地下水が流れていた。

その水は、冷たくて、透明だった。


「うわっ!冷た!」


 地下水は、魔法灯のあかりで、虹色に、光っている。

 それは、まわりの鍾乳石の反射光だった。

 洞窟の天上からは、いくつもの鍾乳石が伸びていた。

 その表面は、青や緑、ピンクや黄色など、色彩豊かに、光っていた。

 なかには、そのツララが 地面と繋がり「柱」になっている鍾乳石がある。


 どれほどの年月が かかったのだろう?

想像も、つかない。


「うつくしい………。」


 それほど立派な鍾乳石だった。

  まさに、自然の神秘。

  まさに、自然の芸術。


 そこは、とても美しい鍾乳洞だった。


「ほう……。

 これほどの鍾乳洞があるなんて、ワシも知らなかったぞ。」

師匠も、感動で、キョロキョロしている。


「ほんと、スゴいですね~。

 ぼくも、鍾乳洞なんて、中学の修学旅行で、秋吉台で見ただけですよ。」


「なんだ?

 賢司も山口だったの?

 俺たちも、中学の修学旅行は、山口やったよ。」


「やっぱり、九州の学校は、同じようなところですね。」


「おう。

 でも、最近じゃあ、高校の修学旅行は、ハワイが、主流らしいぞ。」


「えっ?

 マジですか~?

 変われば変わるもんですね~。」


「だな。

 でも…ハワイって……

 もう…なんの修学旅行か、わからんね。」


「たしかに。

 でも、海外に修学旅行なんて、憧れますね。」


「そうやね~。」


 ……そういえば、俺も賢司も、中学の修学旅行までしか、体験していなかったんだよね。

 賢司は、中3のときに、この世界に来たし。

 俺は、高校の修学旅行は、家庭の事情で、参加しなかった。

 それを考えると、賢司は、寂しかっただろうな………。


  ……おっと?

 すまない。

しみじみしてしまった。

  話しを 戻そう。


「修学旅行って、なんだ?」


 やはり、マウアーが、聞いてくる。


 こいつは、けっこう、俺たちの世界のことを聞いてくる。

 かなり、興味があるようだ。

だから、俺も、わかる範囲で、いつも答えていた。


「学校のクラスのみんなで行く、旅行のことだよ。

 現地の社会見学をかねての。」


「ふぅ~ん。

 やっぱり、先輩たちって、変わっているね。」


「ほっとけ!」


 ……と、遊んでいる場合じゃない!

  なんかいるぞ!


「いたぞ!」


 目標物を認識した俺が、声をあげると同時に、マウアーが魔法を発動させた。


「ば…………っ!」


  俺は、念を 込めた!


 ―――――ガキンッ!―――――


 マウアーの攻撃魔法を 阻止した。


「………?

 なにをする?!

 ここだったら、火炎攻撃でも、問題ないだろ!」


「いや、ダメだ!

 この鍾乳洞を壊さないように、するんだ!」


「なんで?」


「もったいないからだ!

 こんな神秘的な鍾乳洞は、世界遺産だ!人間が壊しては、いけない!」


「ふふ……。

 やっぱり、先輩は、ロマンチストだな。」


「おうよ!」


 俺は、胸を張って、答えた。


「了解した。」


 マウアーも、わかってくれたみたいだ。


 俺の考え方を この世界の人に、強制するつもりは、ない。

 この世界にある価値観を 否定できない。

 でも、この美しい自然を 大切にしたい気持ちは、どこだろうと、同じのはずだ。



 ………で、どうする?

    このゴキブリ……?


 目の前に存在する…このゴキブリ……

もうすでに、「ゴキブリ」の概念を 打ち破った存在に、進化していた。


 体長は、1メートル以上。

高さも、60センチくらいは、ある。


 ただ……見た目の凶悪さとは、反対に…

凶暴さは、なかったみたいだ。

 俺たちに、襲いかかってこない。


「ガサガサ……………」


 俺たちを察知したゴキブリ魔獣は、この美しい鍾乳洞の奥深くへと、消えていった。



「………どうする?

 探知魔法で、探しだす?」


 マウアーが、俺に、聞いてくる。


「……なんか。

 この神秘的な大自然の前にすると……

ゴキブリくらい、どうでもいいかも。」


「そうじゃなぁ~。

 ワシらに対して、直接的にどうこうするなら、話しは、別じゃが……

 今は、かまわんじゃろ。」


「賛成です。

 でも、隊舎につながる穴は、封鎖しましょうね。」


「だな。

 賢司の言う通り!

 ……ということで、おねがいします!

 マウアー先生!」


「ふふふ……。

 人使いが荒いな……先輩は…。」


「あたりまえだ!

  隊長だからな!」


「了解。」


「あはははっ!」


  俺たちは、笑った。



  PM 9:10

   作戦完了。









 いやいや。

無事に、作戦完了してよかったね~。

壮大な大自然を前に、ゴキブリなんて……どうってことないよ。

たぶん……。

それにしても、ホークたちも、自分の足元に、こんな鍾乳洞があったなんて、驚いただろうね。

そして、美しい鍾乳洞を大切に残そうとするホークに、マウアーも賛成しましたね。

よかったね、ホーク。

では、次回は……

やっぱり、後始末です。

正規部隊ですから、上告は、必須です。

では、お楽しみに。





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