第88話 武器(4)
橘さんに、武器に関することを聞いてみる。
「師匠。ティフブルー軍の装備関係とかって、どんな仕組みになっているんですか?」
「…なんじゃ? そんなことも、知らんのか?」
「えっ? 知らんのか…って、もちろん知りませんよ。 だから、聞いているんです。」
(なんか最近、このジジイ…ボケがいいな。)
もしかして……これが「地」?
「おお~。そうじゃった、そうじゃった。 おぬしは、まだあそこに、行ったことが、なかったのぉ~。 よし、いい機会じゃ、案内してやろう!」
笑顔の師匠。
(…ボケじゃなくって、モウロクだった。)
「ゴツンッ!」
「あいたっ!」
(なぜだ?!)
師匠の顔が怖かった…。
「すんません……。」
素直に、謝った。
師匠は、思考加速だけじゃなく、読心術もあるようだ。
反省しよう。
「おぬしの考えなんて、バレバレじゃ!」
(な…なんと!!)
俺は、猛烈反省した。
…と、話しを戻して…
俺は、賢司とマウアーを連れて、師匠が言う「あそこ」とやらに、向かうことになった。
「ゲート」にて、出発。
なぜか、橘さんとマウアーが、手を握り合っていた。
マウアーのニコニコ満悦の笑みで…。
(こいつは、橘さんに、「お爺ちゃん」って感じで、甘えているからな。)
橘さんも、心なしか、ニコニコしている。
ハタから見ると、まさに「お爺ちゃんと孫」の光景だ。
橘さんからすれば、「かわいい孫」ができたみたいな感じなのかもしれない。
(そういえば、師匠には、家族っているのかなぁ?)
…そんなことを考えていたら、もう転移していた。
ちなみに、俺と賢司は、橘さんの肩に、手をあてていた。
男同士だし!
転移した先は、王都の一画にある「武器製造工場」だった。
かなりの規模の建物だと、ひと目でわかる。
工場自体も、頑丈そうな造りの建物。
煙突が何本も出ていて、煙が上がっている。
「へぇ~。立派ですね~。」
賢司も、感心しているようだ。
「ここは、王都イチの武器工場だよ。」
マウアーが、簡単に説明してくれた。
(マウアーは、ジモピーだから、知っていてあたりまえか。)
ゲートにて、転移してきた俺たちに、衛兵さんが近付いてきた。
「あっ? これは、橘様。お久しぶりでございます。」
丁寧に、挨拶してきた。
(さすが、橘さん。)
顔パスである。
「うむ。お疲れさん。久しぶりじゃな。 今日は、弟子たちに、ここを見学させたくてのぉ~。 ジローは、おるか?」
「はい。 アカシ殿は、いつものところに、いらっしゃいます。」
「そうか。ありがとう。 案内は、不要じゃ。」
「そうですか。 では、お気をつけて。」
衛兵さんは、敬礼して持ち場へと、戻っていった。
「ジローさん? 日本人ですか?」
俺は、橘さんに質問する。
「ああ~そうじゃ。 昔、保護したやつじゃ。 今は、ここの責任者をしておるよ。」
「そうですか。」
「あとは、本人に聞くがよい。 さぁ、行くぞ。」
「了解です。」
俺たちは、橘さんに、ついて行く。
その建物は、石造りの二階建てで、頑丈そうな造りだった。
かなり大きな建物で、俺たちの倉庫の10倍以上は、ありそうな広さだった。
中央入り口の扉から中に入ると、すごい熱気が伝わってきた。
金属を叩く音や、削る音で、その作業場所は、満たされていた。
中央には、巨大な炉があり、そこで金属加工がされているようだ。
この作業工場だけでも、300人くらいの職人さんたちが、剣や盾、防具などを造っている。
この王都には、2カ所の武器製造工場がある。
ひとつは、「魔法道具製造工場」。
いわゆる、マジックアイテムの類の武器を専用に扱う工場。
フォウさんやマウアーが持っている「魔法杖」なども、そこで造られた。
一方、ここは、剣や盾などの一般的な武具を専用に扱う工場。
魔法剣や魔法盾などの大元は、ここで、造られる。
ちなみに、ドレンさんのパイソンも、ここで、複製された。
~うんちく~
王都では、武器製造工場と、一般の生活用品の製造工場は、別々にある。
あたりまえの話しだが、平和で穏やかな雰囲気のこの世界でも、やはり、そのあたりのセキュリティーは、ちゃんとしているのだ。
やはり、国家の最先端技術が、集中するところは、軍部だからね。
さあ、やってきました。
ティフブルー王国の武器製造工場に。
ホークは、内心で、ワクワクドキドキのピコピコピコ太郎です。
メカオタクだからね。
それにしても、橘に甘えるマウアーは、かわいいね。
たしかに、お爺ちゃんと孫のような年の差だけど…。
さて、次回は、橘の顔パスのおかげで、なんの問題もなく軍の工場に入れたホークたち。
どんな武器を入手できるのかな?
そして、ジローなる人物との対面にも、ワクワクですね。
お楽しみに。




