第86話 武器(2)
訓練か遊びか、わからないバトルが終わったあと、俺は、質問を再開する。
「なぁ、マウアー。おまえの戦闘スタイルって、どんな感じ?」
「ん? 戦闘スタイル?」
「だから…おまえの戦いやすい手段とか距離感とかだよ。」
「ん~とね……。そうだね…私は、やっぱり魔法使いだから、どうしても中遠距離の戦闘スタイルかなぁ?」
「やっぱり? じゃあさ…なんで魔法使いって、中遠距離スタイルなの?」
「…ん? なんでって……ああ~先輩って、魔法オンチだったね。」
マウアーがニヤけている。
「勉強中だ!」
「ふふふ。いいよ。マウアー先生が、教えてあげよう!」
「…おねがいします。」
素直に、頭を下げる俺。
マウアー曰く。
やはり、魔法が発動するまでの時間が問題だった。
どうしても魔法を使うには、脳内で、魔法陣を構築して、魔力を込める過程がいる。
それから、魔法反応までのタイムラグが発生する…と。
だから、魔法使いは、戦闘時には、相手との距離を保つ必要がある…と。
例外として、超上級魔法使いになると、「思考加速」という技を体得しているらしいが、そんな魔法使いは、極少数だと。
ちなみに、マウアーは、「思考加速」というものを使えるらしい。
(…やっぱり、こいつって、優秀?)
「じゃあ、おまえ…あのとき、なんでその技を使わなかったの?」
「はぁ? 別に殺し合いじゃないから、いらないだろ! 格闘は、楽しまないとね!」
すっごく、いい笑顔で答えるマウアー。
やっぱり、こいつは「戦闘オタク」だった。
まぁ、要は…ふつうの魔法使いは、中遠距離の戦闘スタイルが基本ということだった。
…しかし、俺は、油断しない!
「思考加速」という、なんか危険な言葉を聞いたからだ。
マウアーは、
「あとは、秘密!」
と、言っていたからね。
その加速が、何倍までかは、不明だが…
もし、2倍としても、かなりの脅威を感じる。
要は、1秒の感覚が2秒だろ!
とんでもないぞ!
もし、10倍とかだったら、100%勝てないな!
だって、1秒が10秒だぞ!
あり得んだろ!
そりゃあ、弾丸も軽くよけるぞ!
(あっ? なるほど…)
もしかしたら、師匠は、その技を持っているのか?
納得できる。
(くそぅ~。思考加速がなんだ!)
みておれよ~。
絶対に、負けん!
俺は、さらなる修羅業を誓った。
~うんちく~
「思考加速」とは、その言葉通りの能力です。
思考するスピードの加速。
ホークの言う通り、10倍だと、10秒間の思考が、1秒間に圧縮することですね。
でも、実際には、ホークの言うようなこととは、少し違うようです。
正確に言うと、10秒で考えられることが、1秒で考えられる…ことです。
かといって、10秒で行動できることが、 1秒で行動できるわけでは、ないのです。
あくまで、「思考」の「加速」。
肉体行動の加速とは、違います。
たとえ弾丸の軌道が見えた…としても、
その弾丸をかわすこと…とは、違います。
1秒の時間の中で…
その刹那の時間の中で、肉体を動かすことは、また違うことなのです。
あくまで、思考の加速なのです。
だから、「思考加速」とは、魔法使いにとっての「裏技」みたいなものなのです。
脳内で、10秒かかって、魔法陣を構築する過程が、1秒で構築できるのです。
思考加速の有用性は、魔法戦闘における有用性が高いことですね。
一方で、格闘戦における思考加速も、有利なのは、確かですが、その刹那の時間に、動くことができる肉体を必要とします。
だから、格闘戦においては、一概に思考加速が無敵…というわけでは、ないようです。
ちょっと、難しい話しになりました。
ホークも、頭がかゆいみたいです。
まぁ、「魔法使い」さんの危険性がわかったから、ヨシとしましょう。
次回は、武器調達に出発します。
さて、どんなところですかね?
お楽しみに。
追申。
「サウスランド・ミカ」のイラストが出来ました。
「みてみん」さんに、画像をのせているので、興味のある方は、「ラビットアイ」で検索してみてください。
よろしくお願いします。




