第85話 武器
お花見も終わり、また日常の訓練に明けくれる日々が始まる。
「ちょっと、先輩! この前ドレン様が持っていた拳銃ってヤツ、私たちには、ないの?」
朝トレが終わったマウアーが質問してきた。
「なんだマウアー? 銃に興味あんの?」
(おまえは、魔法使いだろ?)
……あっ?
だから、相性がいい武器になるかも?
「もちろん! あの黒くて重量感のある武骨なフォルムが、私はカッコイイと思うぞ! 断然気に入った!」
なにやら、キラキラした目で、訴えているマウアー。
「先輩! ぼくも、ちょっと興味あります!」
賢司も、同意見のようだ。
「ふぅ~ん。まぁ、いいかもな。ちょっと、橘さんと相談してみるよ。」
(もう、量産のメドもたっているかもね。)
「わぁ~い! やったぁ~!」
「よろしくおねがいします。」
マウアーと賢司は、うれしそう。
新しいオモチャでも、もらえるように。
俺も、武器のことは、気にしていた。
(そういえば、ここの軍隊の装備関係は、どうなっているんだろう?)
あとで、師匠に聞いてみよう。
…で、話しを戻して、マウアーは、魔法使いだ。
いえば、中遠距離の戦闘向きだろう。
実際に、俺はまだ…「魔法使いの戦い方」がよくわかっていなかった。
師匠からの話しなどからしか、想像できない。
俺のイメージでも、接近戦闘よりも、中遠距離戦闘のイメージだった。
(シルビアさんとの訓練もそうだったし…あのときのマウアーも、そうだった。)
やはり、魔法使いの戦闘スタイルは、中遠距離が基本だろう。
よくよく考えてみる。
この世界は、弱肉強食。
魔法なんかが、有効有力な世界。
では、単純に腕力や武器力は、どうだろう?
身近な人でいうと……
師匠は、日本刀しか使わない。
魔法も使えるけど、戦闘で使っているところを見たことがない。
師匠のスタイルは、「変幻自在」だろうな?
ある意味、特殊な特化型だろう。
ドレンさんも、似たような特化型タイプ。
肉体の強靭さに、能力を重ねた、もろインファイター。
あのふたりは、純粋に戦闘能力がぶっちぎりだ!
……あんまり参考に、ならないな。
もっと、ふつうに考えよう。
マウアーは、第4部隊内の魔法能力では、トップレベルだった。
…が、接近戦闘の格闘技では、ふつうの男子隊員に、劣るレベルだった。
それでも、「班長」という地位にあったのは、やはりマウアーの魔法能力が高いためなのだ。
その秀でた能力が、彼女の特性だ。
やっぱり、ある意味…特化型タイプ。
そして、その戦術としては、中遠距離戦闘が、得意分野なのだろう。
だけど今からは、隠密部隊に相応しくなるべく……
ここの訓練を受けて、強くなるだろう。
なんてったって、剣術は、師匠から…格闘技は、俺から教えてもらえるのだから。
…で、本題に戻って……
今のマウアーの装備というと。
その「魔法杖」と「短剣」。
魔法杖は、専門外なので、今は、おいておく。
短剣は、長さ40センチ程度の両刃の剣。
本人は、「護身用」と、言っていた。
まぁ、たしかに実際の戦闘では、あまり役に立たないだろう。
今までは、それだけの武器で、よかったかもしれないけど……
これからは、「隠密」に、どっぷりと浸透してもらいたい。
なので、あらゆる武器を使えた方がいい。
中遠距離の攻撃が得意なマウアーには、ドレンさんが持っていた「魔銃」は、いい武器になるだろう。
あとは、接近戦闘の剣術と格闘技を体得すれば、一人前の戦士になるだろう。
一方、賢司は、オールラウンドプレーヤー。
なんでも、ソツなくこなす。
魔法に関しても、同じ日本人とは思えないほど、精通しているようだ。
よく、マウアーと魔法談義をしているからね。
(ほんと、ふたりとも魔法オタクだよ。)
剣術に関しても、かなりの腕前だ。
(これからも、師匠の地獄で、さらに強くなるだろうな。たのしみだ。)
格闘技に関しても、なかなか強い。
(格闘技は、俺が指導するし!)
…で、この1ヶ月ほど、賢司に接してみて、感じたことは……
「優等生」
このひと言だ。
賢司は、俺と違って、知能指数がかなり高い。
いわゆる「頭がいい」のだ。
ほぼ本能で動く俺とは、違い…
賢司は、思考し判断して動いている。
そして、手先も器用だった。
(料理なんかも、すぐに覚えるし。)
まさに、勤勉な日本人を体現した奴だった。
(はっきり言って、うらやましい!)
…おっと? 失礼…。
そんな、万能型の賢司には、スナイパーとして、訓練しても、面白いかも?
……と。
なので、こいつらに、マグナムを持たせることは、得策と考える。
こいつらの様々な可能性に、ニヤリとする俺だった。
「うわ~っ! なんか先輩がヘンな想像してる~! キモっ!」
「ヘンな…じゃない! マジメな想像だ! おまえといっしょにするな!」
「ええ~最悪! マジメにヘンな想像してんのぉ~! やっぱりキモっ!」
ちょっと、イラッとした。
「ほぅ。 では、マウアーくん。ヘンな想像に付き合ってくれ!」
と、同時に、マウアーに1本背負いを仕掛けた。
投げられたマウアーは、空中で体をひねり、見事に着地してみせた。
「ほぅ。 なかなかやるじゃないか!」
訓練の成果は、出ているな。
「へへーん。どうよ!」
ドヤ顔であおるマウアー。
ニヤリと笑う俺。
(やれやれ……また、始まったよ…。)
あきれる賢司。
そして、いつものように、バトルロイヤルが始まった!
相変わらずの様子ですね~。
なかなか楽しくやっているみたいで、なによりです。
ホークも、隊長らしくなってきたね~。
まだまだ、子どもだけど…。
賢司とマウアーも、隠密部隊になるべく頑張っているんだね~。
では、次回は、武器調達に、行きましょう。
…と、その前に、ホークの疑問がまだあるようです。
お楽しみに。