第82話 花見(3)
いや~。豪華なお弁当ですね。
ジーク様とミカ様とフォウさん…
王家の方が3人も参加するんだもん。
そりゃあ、豪華になるってものですよ。
今日の言い出しっペの俺たちは、完全に甘えていた。
ちなみに、この豪華お弁当の中身は……
「ローストビーフ」「骨付きチキン」「タンシチュー」「ロールキャベツ」「ポテトサラダ」「オニオンフライ」「カルパッチョ」…etc.
マジですごいお弁当だった。
「今日は、良き日じゃ。このサクラに感謝しよう。皆も存分に楽しむがよい。では
乾杯じゃ!」
―――「かんぱ~い!」―――
ジーク様の音頭で、お花見が始まった。
お酒もたくさん用意されている。
「ビール」「日本酒」「スパーリング」「白ワイン」「赤ワイン」
…と、ぜいたくなラインナップだった。
そして、この豪華お弁当は、カイトさん、レベッカさん、シルビアさんをはじめ、王宮の料理人さんの力作だった。
「いただきま~す。」
パクリ…
(なんだ? めちゃくちゃうまい!)
日本にいたときも、こんなおいしいお弁当を食べたことがない!
それほど美味しかった。
感動すら、覚える。
思わず賢司と、目が合った。
同感らしい。
俺と同じ反応をしている。
マウアーも、びっくり顔だった。
そして、みんなも美味しそうに、飲み食いして、お花見が盛り上がる。
しかし、このサクラは、ほんとキレイだった。
うすいピンクの花びらが、一斉に俺たちを見つめているようだ。
―――「サワサワ~」―――
いい風が抜ける。
「ありがとう。サクラさん。」
俺は、サクラに乾杯するように、グラスを合わせる。
お花見の礼儀だな。
この見事なまでの満開の桜に、敬意を示す。
「この人、ヘンなところでロマンチストだよね。」
チャチャが入った。
もちろん、マウアーだ。
「愚か者め! サクラの偉大さが、わからないやつには、天罰だ!」
俺は、マウアーが食べようとしていたローストビーフを、ヨコからパクリと、いただいた。
「う~ん。おいしい!」
そして、お酒を飲み干す。
「ぷはぁ~。最高だ!」
「な…なんてことをするんだ! わ…わたしのローストちゃんが~!」
マウアーが、マジで泣いている。
ほんとバカだ!
見ていて、おもしろいけど。
「吐けっ! 吐き出せっ! それは、わたしのローストちゃんだぞ!」
「ふふふ。もう遅い! すでに俺の胃袋で消化が始まっている。」
「うっ…うっ…… 先輩のばかぁ~~!」
そんなアホなやり取りをした後は、賢司がツッコむ。
「はいはい。泣かないでください、マウアーさん。まだたくさんありますよ~。」
と、新しいローストビーフを取り分けていた。
(さすが賢司!)
「ありがとう~賢司。おまえだけだよ~
やさしくしてくれるのは~~。」
そう言って、オロオロ~と、泣き真似するマウアーと、慰める賢司だった。
(最近、こいつらの芸も細かくなってきたなぁ~。)
感心していると、
みんなは、俺たちのやり取りを隠し芸と思ったのか、大爆笑し始めた。
(やめて!恥ずかしい!)
やはり、この世界のツボがわからないが…とにかく俺は、テレ隠しでお酒を飲んでいた。
…が、マウアーは、ウケて楽しかったのか、なんだかポーズをキメている。
ほんとバカだった。
その後、マウアーは、レベッカさんとシルビアさんに挟まれて、イジメられていた。
どうもマウアーは、ふたりの後輩らしい。
(体育会系は、上下関係がキビシイからな。)
マウアーの次は、賢司がターゲットになっていた。
(あいつは、少しニヒルぶったところがあるから、ちょうどいいかも?)
お姉様方に、揉んでもらいなさい!
と、心の中でゲキを飛ばしたのがわかったのか?
賢司の目が「助けてください~!」と、俺に訴えているが、軽くスルーしておこう。
逆に解放されたマウアーは、今度は、オッサン陣に捕まり、「夜の蝶」になっていた。
おっと?
「夜の蝶」で思い出した。
もしかして…あのガセネタの出所は、このふたりの先輩では、なかろうか?
…ふと、頭に浮かんだ。
試しに…
レベッカさんに、俺が「夜の蝶」をしながら(笑)聞いてみた。
「どうぞ、レベッカさん。」
「ありがとう、ホーク。」
クイッと、相変わらずいい飲みっぷりのレベッカさん。
「ところでレベッカさん。夜の蝶って、知ってます?」
「夜の蝶? ……ああ…あのこと…」
「なんかマウアーが「夜の蝶」が恥ずかしいって、言ってたんですよ~。 …で、聞いてみたら、先輩たちに教えてもらった~
って…。」
「ふふふ…。相変わらずのバカねぇ~。
マウって。 でも、その出所は、私たちじゃないわよ。出所は、あそこ…。」
なんか妖しく微笑むレベッカさんの視線の先には、ミカ様がいた。
なんと!
大元は、ミカ様だったのだ!
「マジですか~?!」
俺は、叫んでしまったようだ。
俺たちの「夜の蝶」の話しを聞きつけたミカ様がやって来た。
「あら? 楽しそうなお話しね?」
俺は、そつなくミカ様に、夜の蝶(お酌)をしながら答える。
「あのマウアーが、ずっと騙されていた「夜の蝶」のことなんですよ~。」
「夜の蝶?」
ミカ様は、何のことだ?という顔をしていた。
(あれ? ちがうと?…)
と、思い…夜の蝶のことを話した。
「ああ~そのこと……。」
ミカ様は、なにかを思い出したらしい。
聞けば…なんでも、ミカ様が日本にいたころ……
(明治時代だ。)
……まだ「キャバレー」と、呼ばれる以前のお店。
カフェバーなどで、女給さんがお客さんにお酌をするサービスがあって、
そのサービスをする女の人のことを「その華やかなイメージ」から「夜の蝶」と、呼んでいたらしい。
…で、真相は、こうだ。
「ある飲み会の席で、ミカ様にお酌をしたレベッカさん。」
→「その華やかさを「夜の蝶」だとミカ様が言った。」
→「その女給さんの話しを聞いたレベッカさんが、別の飲み会で、当時まだ、結婚する前のシルビアさんに、その話しをする。」
→「また次の飲み会の席で、シルビアさんがアタックしているドレンさんに、お酌したいるところを「夜の蝶」と言ったレベッカさん。」
→「その後、めでたくゴールインしたシルビアさん。」
→「その事がウワサになり、「夜の蝶」をすると結ばれる…という感じになり、それをおもしろおかしくセリカさんがマウアーに伝えた可能性が高い。」
…やはり、ウワサって怖いな。
そして、極一部で「夜の蝶」伝説が始まったようだ。
その伝説は、いまだに巷では、はびこっていて、都市伝説となったのだ。
しかも、その内容が、だいぶ湾曲して……
あとは、おもしろおかしく、世俗にまぎれている現実だった。
…ほんと、ウワサって怖いな!
(なるほど。)
納得した俺は、探偵ゴッコも、このくらいにして、お花見を楽しみましょう。
まだまだ、お花見は、始まったばかりだ!
しかし、あの御夫婦…シルビアさんからのアタックだったのかぁ~。
後日談。
レベッカさん曰く。
シルビアさんには、ある特殊なファンクラブがあったようだ。
ドレンさんと結婚したことで、そのファンクラブの男たちが号泣していた…と。
だが…そのファンクラブは、解散することもなく、いまだに存在している。
なんとなく、わかるような気がした。
俺もシルビアさんは、「キレイなお姉様」みたいで、憧れます。
そして、たまに垣間見る…あの……
マッドサイエンティストな笑みが……
そそられるのだ。
……やっぱり男って…バカ?
まぁ、その話しは、おいておきましょう。
それよりも、豪華お弁当は、美味しそうですね~。
よかったね、ホーク。
キレイな桜と、おいしいお弁当と、お酒!
お花見は、こうでないとね。
ホークとマウアーの漫才もだいぶ板についてきて、賢司くんのツッコミもいい感じになっているみたいです。
ホークは、いまだにこの世界のツボがわからないようですけど…。
…ってか!
あんたは、隊長だろ!
漫才師か?
私がツッコミを入れよう。
おっと?
話しを戻しましょう。
「夜の蝶」の謎も解明したし、楽しくお花見をしてください。
次回もまだまだ、続きます。
宴会が!
好きなんです。
宴会が!!
では、お楽しみに。




